臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
第二話 ※【ステイタス更新】
〈sideケンマ〉
ギルドでもらった色々な【ファミリア】の地図を頼りに訪問を試みたが、どの【ファミリア】も即刻で門前払いを喰らって、一人ベンチで途方に暮れていると一人の女神と出会った。
名前はヴィクトリア。勝利を司る女神。なんでも彼女は、俺をこの世界『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の世界へと転生させてくれる際、公務員の天使から渡された願い事を書く用紙を見て、審査する審査委員の一人だとか。
そんなヴィクトリアだが、俺を転生させたあとに天界の仕事に嫌気をさして、俺についてきたようで、そしてそのまま彼女に【恩恵】をもらって【ヴィクトリア・ファミリア】を結成することになったのである。
「それでヴィクトリア。どこで【恩恵】を刻むんだ?」
「ちょっと伝があってね。その伝で一軒家を借りたのよ」
「一軒家って…………家賃は?」
「まぁ、それはおいおい?」
「やっぱり初回は貧乏からスタートか…………」
どこかで期待していたのかもしれないが、現実はそんなに甘くない。そりゃそうだろう。転生したての転生者が金持ちな訳がない。それと同じで、新しい【ファミリア】を結成して、すぐに金ができる訳がない。
ヴィクトリアの伝で借りた一軒家に到着すると、そのまま寝室へと連れて行かれて、【恩恵】を刻むために上半身裸になることを促される。
「取り敢えず、【恩恵】を刻むから上着を脱いでからベッドの上でうつ伏せになって」
「はいはい」
促されるままにパーカーとシャツを脱いで、ベッドの上でうつ伏せになる。
「それじゃあ、いくわよ」
【恩恵】を刻む前に一声掛けてからヴィクトリアは、俺の背中に自分の血を垂らす。すると、何かジワーと広がるような感覚がするが、これが【恩恵】なのだと納得した。
【恩恵】が刻み終わると、何処から取り出しのか分からないがヴィクトリアは一枚の羊皮紙を俺の背中にペタペタと張り付けて、指先で円を描く。
「うん。わたしたちが決めたものと遜色ないわね」
「どれどれ?」
ヴィクトリアから俺の【ステイタス】が写し出されている羊皮紙を手に取り、自分の目で転生する前に書いた願い事がどういう風に反映されているのかを確かめる。
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石黒ケンマ
Lv.1
《基本アビリティ》
力 : I0
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0
《魔法》
【プロモーション】
・『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『女王』に昇格できる。
・昇格した物によって、一定時間アビリティ能力超高強化補正。
詠唱:【プロモーション・────!!】
【】
【】
《スキル》
【赤龍帝を宿し者】
・早熟、進化する。
・想いの丈によって効果向上。
・想いの丈によって効果持続。
【魔力操作】
・イメージによって対象魔法の行使が可能。
・対象魔法分の体力、魔力、精神力のいずれかを消費。
・効果、威力はイメージに依存。
・任意発動。
【言語和訳】
・全ての言語を和訳。
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うん。一言でいえばかなりチートだ。それも完成された系のだ。『魔法』でいえば【プロモーション】。こいつは、『真紅の赫龍帝』になるための布石として書いたのだが、『スキル』ではなくて『魔法』として反映されるとは思っていなかった。しかも効果が昇格した物によってアビリティが超高強化補正とかヤバすぎるだろう。『女王』に昇格したら全アビリティだぞ。
同じく『魔法』でいえば【魔力操作】。こいつがあれば、もしも今後、この世界での『魔法』が発現しなくても何とかやっていける可能性を秘めている超レアスキルの一つである。
また、よく読めば【魔力操作】の『スキル』で消費するのは、精神力だけではなく魔力と体力でも代用できるような言い回しが記載されているので、こういう所にも【プロモーション】や【赤龍帝を宿し者】のように『ハイスクールD×D』が反映されているようだ。
そして、残念なことに『エクスカリバーの鞘』は、設定上駄目だったようで『魔法』や『スキル』、魔道具としても認めてもらえなかったようだ。
「ケンマ、単刀直入に言うけど慎重になりなさい。下手な動きをすれば、あなたは色々な【ファミリア】の冒険者から狙われるわ」
「了解。そういえば、神器は【ステイタス】に反映されないんだな。それからエクス・デュランダルは? アイテムボックスらしき物も【ステイタス】にも書かれてないけど?」
そう尋ねると、ヴィクトリアは笑顔で懐からアニメとかでよく見る腰袋を差し出してくる。
「エクス・デュランダルは異空間に入っているから、エクス・デュランダルを穴から引き抜くイメージをすれば自由に使えるわ。けれど、今はエクス・デュランダルは出さないでね。ここで出したら、あっという間にこの家が倒壊するから」
「了解」
「さて、【恩恵】は与えたからギルドで冒険者登録してらっしゃい。ダンジョンに行ってもいいけど深く潜っては駄目よ」
「分かってるよ。今日のところは、『スキル』や『魔法』を確かめる程度で止めておくよ」
○●○
「さて、取り敢えずは【プロモーション】を試すか」
ホームとなる一軒家で、『魔剣創造』で手頃な片手剣を創造してギルドに赴き、冒険者登録を済ませると、アドバイザーとなったエイナさんからスパルタ式ダンジョン講義を受けた後、支給品の防具(借金)を身につけてからダンジョンへとアタックすることにした。
そして、今は1階層の洞窟の入り口で心許ない他の防具を補うために【プロモーション】の『魔法』を使う。
「【プロモーション・クイーン】!!」
詠唱式を唱えると共に精神力を込めると脳内に赤い『女王』の駒が鮮明に映し出された。まるで、兵藤一誠が『女王』に昇格する時のエフェクトのようにだ。
それに伴い全身から溢れるような感じたこともない力が漲ってくる。が、『女王』に昇格したといえど生まれて初めてのダンジョンで、びくびくしながらゆっくりと進んでいく。しばらく進んでいると少し先に如何にも狼男ですと姿をしたコボルトが一匹だけ見つけた。
「ここは油断せずに行こう」
穴に手を突っ込むイメージをしながら《エクス・デュランダル》を強くイメージして、何かを掴もうとすると確かな手触りがあったので引き抜いてみると、しっかりと《エクス・デュランダル》が握られていた。
「よし、出来た!」
改めて、《エクス・デュランダル》の持ち手を両手でしっかりと握り直してからゆっくり、ゆっくりと物音を立てないように慎重に距離を詰めて、一気に走り出せば届く距離まで詰めたところでコボルトとはこちらを見る。
「………………」
『………………』
「ヤバッ!?」
『ガアアアッ!』
一度間を置いて、見合った次の瞬間にコボルトは自前の牙を剥いて、噛みつこうと飛んできたので野球のスイングの要領でタイミングを計り、《エクス・デュランダル》をフルスイングする。
「うおおおおおお!!」
フルスイングされた《エクス・デュランダル》がコボルトに命中して、切り裂かれるのを視界に捉えながら安堵するのも束の間、フルスイングした《エクス・デュランダル》は勢いのままにダンジョンの壁に衝突して、壁を深々と粉砕、抉りながら切り裂いた。
「あっ…………」
そのあまりの光景に思わず絶句してしまった。
元々《デュランダル》単体でも破壊力があるのにそこへ《破壊の聖剣》と『女王』に昇格した俺の身体能力が合わさり、Lv.1では到底出し得ないような破壊力がダンジョンの壁へと叩き込まれてしまった。コボルトにも同じのが叩き込まれているのでオーバーキルもいいところだろう。
「エクス・デュランダルの使い方には気を付けよう」
《エクス・デュランダル》のあまりの破壊力に恐れを抱いた俺は、剣の技術がまともな物になるまでは自分の中でルールを作ることにした。そのルールとは、「自分が生き残るために必要な時」、「誰かを守る時」、「無慈悲な力の差を覆す時」、「絶対に勝たなければいけない時」の以上の四つの場合の時だけ《エクス・デュランダル》を異空間から引き抜くことにした。
それ以外は、『魔剣創造』と『聖剣創造』で創造した剣で何とかしていくつもりである。
「あっ、そういえばブーステッド・ギアを覚醒させてなかった」
【ステイタス】にはスキルとして【赤龍帝を宿し者】と発現明記されていてるが、『赤龍帝の籠手』を覚醒させていないので覚醒させなけらばならない。『聖剣創造』と『魔剣創造』は、"木場佑斗"をイメージしながら剣を創造するとあっという間に覚醒した。
それから導きだされる『赤龍帝の籠手』での強い存在のイメージは、やっぱりあの人しかいないだろう。最高にして最強の赤龍帝である兵藤一誠。
「ドラゴンショットを撃てば目覚めるだろう。まずは………体全体を覆うオーラから流れるように手のひらに魔力を集めるイメージで集中…………」
原作やアニメで、姫島朱乃の台詞を口にしながら集中すると割りとあっさりと手のひらにハンドボールほどの魔力の塊が放出された。あとはそれを左腕で殴り付けるだけ。
「行くぜ!ドラゴンショット!!」
兵藤一誠の十八番技であるドラゴンショットを【魔力操作】でイメージしながら身体から魔力の塊を生成してそれを左腕で殴り付ける。するとハンドボールほどの魔力弾が一直線に放たれた。
魔力弾が放たれてから時間差で左腕に真っ赤なドラゴンの腕のような籠手が出現する。その籠手は間違いなく『ハイスクールD×D』の世界に存在する十三種の神滅具の一つである『赤龍帝の籠手』だった。
「よし、無事にブーステッド・ギアも覚醒したな!」
『赤龍帝の籠手』が覚醒したことによって、今後は基本アビリティが飛躍的に成長する筈だ。それがドラゴン系の神器の強みの一つである。
『ん? なんだ、今回の宿主は案外素質があるんだな』
「初めてましてだな、赤き龍の帝王ウェルシュドラゴンのドライグ」
『ほう。素質だけではなく、俺様のことも知っているか……。これは、中々有望そうなやつが宿主になったものだな』
『赤龍帝の籠手』に封印されたドライグも覚醒したことがわかったので、聞きたいことを尋ねることした。
「ドライグ、兵藤一誠という男は知っているか?」
『ああ、知っているとも。相棒いや、兵藤一誠は、歴代の赤龍帝の中でも最弱ではあったが最高の赤龍帝だった。しかし、珍しいな。今代の宿主が先代のことを知っているとは』
「最高の赤龍帝だった、ってことは死んだのか? となると考えられるのは、曹操が京都で使おうとした『覇輝』かシャルバが放ったサマエルの毒が塗られた矢が原因か?」
『何故そのことを知っている!? 貴様は、一体何者だ?!』
「俺は、石黒ケンマ。前世で、兵藤一誠を主人公にした物語を愛読していた只のオタクさ」
互いに自己紹介を終えたところで、兵藤一誠の最期を確認するために情報交換をすることにした。ドライグが覚えているであろう最近のことが分かれば『赤龍帝の籠手』がどういう状況なのを把握できる。これは、いずれ《覇龍》を越えた《覇龍》を会得するには必要なことである。
「んで、どっちで兵藤一誠が死んだんだ?」
『後者のサマエルの毒による呪いだ』
「ってことは、俺が知っている原作みたいにグレードレッドが偶然やってくることはなかったのか」
『どういうことだ?』
「俺が知っている物語だと、兵藤一誠はサマエルの毒で肉体を失い死にかけるが復活する。それもグレードレッドの肉体を一部使った肉体にオーフィスの協力もあって、その肉体に兵藤一誠の魂を入れて、小さな真龍ともいえるアホみたいな存在になるんだよ。で、後々に《覇龍》を軽く越えた《龍神化》とかいう能力にも目覚める」
『グレードレッドが作った肉体にオーフィスの力だと…………俄には信じ難いな』
「無理もないさ。読者の一人であった俺もあの急展開には驚いたからな。とまぁ、ぶっちゃけるとお前は原作とは違って、数あるBADENDの兵藤一誠に宿っていたドライグということになるな」
『BADENDとは、イッセーも報われないな』
ドライグは、最高の相棒だった兵藤一誠を思いながら悲しいそうにそう呟く。
「悲しそうにしてるところ悪いが、これから俺と兵藤一誠みたいに一緒に戦ってもらいたいんだけど、いいか?」
『ああ。宿主がお前である限り、お前が望む想いに応えて力を貸してやる。けれど、悪いが少し時間をくれ。感情を整理したい』
「おう、わかった」
最高の相棒であった兵藤一誠が報われないことにドライグは思わずにいられないのだろう。もしも、俺が前世の友人が報われない死を遂げたら同じ状況になっていたに違いだろう。
なので、今はドライグをそっとしておくためにも『赤龍帝の籠手』を解除する。
「ゆっくり整理してくれ、ドライグ」
オリ主たちの新本拠地候補
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