臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第二十一話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

「今日は、ミャーの番ニャ。適当に相手するから好きに攻めてくるにゃ」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

今日の早朝鍛練の相手は、【黒猫】の二つ名を持つクロエさんだ。彼女の武器は、両手に持っている二本のナイフ。

 

 

「【プロモーション・ルーク】!」

 

「ほうほう、それがケンマの魔法かニャ」

 

「そうです。では、行きます!」

 

 

小手調べではないが無難に何の策もなく聖剣で上段から切り掛かる。しかし、クロエさんはそれを欠伸をしながら二本のナイフを交差して聖剣を受け止める。

 

 

「軽いニャ。ほら、次々攻めてくるニャ」

 

「もちろん!」

 

 

それから何度も何度も切り掛かるがLV. の差というよりも場数、対人戦闘での経験の差から軽くあしらわれている。

 

リューさん、ルノアさん、ミアさんとも全く違う戦闘スタイルで、こちらが攻めているのに深く攻めきれていない感じがして矢鱈と神経がすり減っている気がする。

 

 

「ほらほら、そんなボケッとしてる危ないニャン♪」

 

「がっ!?」

 

 

今、何があった? どうして、顔に痛みが走ってるんだ?なんで、視線がクロエさんから外れてるんだ?

 

自分の画面に殴られたような痛みが走った思ったら、視線がいつの間にかクロエさんから外れて、顔を右へと向かされていた。そのことに困惑しながら口の中に広がる鉄の味、それによって少しだけ口の中を切ってしまったのだと理解するとドライグが俺だけに聞こえるように答えを教えてくれた。

 

 

「なにが…………」

 

『尻尾だ、相棒。あの小娘、尻尾で相棒の顔面を鞭のようにしならせて殴って見せたぞ』

 

(尻尾ってマジかっ!? てか、やっぱりドライグにはクロエさんの動きは見えてるんだな)

 

『当たり前だろう。神器に封印されたとはいえ、腐っても俺は天下の二天龍だぞ』

 

 

ドライグの答えでどうして顔面に痛みが走り、クロエさんから視線が外れているのかが明らかになった俺は、口の端から垂れる血を脱ぐってから再び視線をクロエさんに定めて集中力を高める。

 

クロエさんの性格は、『ハイスクールD×D』の黒歌に似ている。同じ猫キャラで黒髪、黒毛だからなのかは分からないが相手を翻弄して隙を狙って仕留めるタイプ。戦闘スタイルが未だに中途半端の俺には、かなり荷が重い相手という訳だ。

 

なら、こっちも翻弄とまでは居なくても翻弄されないようにスピードで攻めて見ることにした。

 

 

「魔力の無駄遣いで嫌だけど、【プロモーション・クイーン】!」

 

 

鍛練のことを考えて、安直に『戦車』からスピード重視の『騎士』と【プロモーション】するのではなく、全アビリティに補正がかかる『女王』を選択。けれど、これだけではいくら補正効果があったとしてもLV. の差によって対応されてしまう。

 

なので、更にここから昨日のミアさんとの早朝鍛練で大体の感覚を掴んだ死神を代行する高校生が使う歩方をイメージしながら【魔力操作】を使って、地面を蹴る瞬間に足の裏に溜めた魔力を解放して、一気に加速する。

 

 

「はあああッ!!」

 

「ッ!!」

 

 

唐突な俺の加速に、クロエさんは目を見開くが即座に対応して見せた。だが、こちらもまだまだ終わらない。地面を蹴る瞬間に足裏に魔力を爆発させたあとは、今度は魔力を聖剣に乗せて斬撃の威力を高める。

 

お互いに真剣のため、剣とナイフが交わる度に火花が散る。五~六回ほど刃を交わせば俺の力量を把握したのか、クロエさんは最初のように悠々と俺の攻撃を捌いていく。

 

 

「なるほど、これがケンマの全力かなニャ。ミア母ちゃんが認めるだけのことはあるニャン」

 

「まだまだこれからですよ!」

 

「なら、お手並み拝見ニャ」

 

 

それを最後に再びクロエさんに切り掛かるもひらひらと躱わされ、翻弄され、煽られて、むきになっては切り掛かるを繰り返していると唐突に身体から力が抜けて、身体がぐらりと揺れる感覚に襲われた。

 

オーラを使い果たした時とはまた違う感覚、身体に力を入れようとしても上手く力が入らないことに俺は訳が分からなくなってしまう。

 

 

「な、なんだ………これ………」

 

 

身体から力が抜けていくと、次は意識が重たくなってくる。

 

 

「まさか……これが………」

 

「おニャ? ケンマは、魔法を使ってるのに『精神疲弊』を経験するのは初めてだったのかニャ。なら、今度からはそうならないように気を付けて戦うことをオススメするニャン」

 

 

意識が混濁している中、何とかクロエさんのアドバイスだけは聞き逃すまいと意識を保とうと踏ん張るが次第に瞼が降りてきて、意識が暗闇へと沈んでいく。

 

最後にクロエさんが何か叫んでいた気がするが、目の前が真っ暗でその叫びを聞き取ることは叶わなかった。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「こ、ここは…………?」

 

 

目が覚めて最初に映ったのは、木製の天井。

 

 

『目が覚めたようだな、相棒。気分はどうだ?』

 

「ドライグか。気分は普通だよ」

 

『それは何よりだ。精神疲弊とやらの後遺症も残っていないようだな』

 

「精神疲弊………あぁ、そうか。クロエさんの鍛練でむきになり過ぎて『精神力』を使い過ぎで精神疲弊を起こしたのか」

 

 

自分がどうしてベッド上で寝ていたのかをドライグのお陰で思い出すと、部屋の窓から床に差し込む太陽の光を見て、今が何時なのか大体の予想がつくと直ぐに頭の中に「遅刻」という単語が浮かび上がった。

 

その瞬間、俺は慌ててベッドから飛び起きて、部屋を出て、誰かに今が何時間なのか正確な時間を確かめるために階段を駆け下りた。

 

階段を降り切ると最初に出会ったのは、いつものウエイトレス姿のヴィクトリアだった。

 

 

「おはよう、ケンマ」

 

「ヴィクトリアか、ベルはもう来たか?!」

 

「ええ、来たわよ。でも、二日酔いのヘスティアを看病するために今日の探索は休みするみたいよ。こっちも、ケンマが精神疲弊で気絶してたから丁度良かったわ」

 

「そうか、タイミングが良かったのか」

 

 

ベルとリリに迷惑をかけていないことに心底安堵した息を吐いてしまう。

 

 

「安心してるところ悪いけど、ミアが怒ってたわよ」

 

「え“っ?」

 

「野菜の皮剥きもせずに精神疲弊で呑気に気絶してるんだもの。そりゃあ、怒るわよ。ま、その尻拭いはケンマを精神疲労まで追い込んだクロエがやってたけどね」

 

 

ヴィクトリアからその話を聞いて脳内でクロエさんの「理不尽だニャ!」という幻聴が聞こえてきたのと共に申し訳なさがふつふつと沸いてくる。

 

 

「と、取り敢えず謝りに言ってくるわ」

 

「そうしなさい」

 

 

ヴィクトリアと分かれたあと、そのまま厨房に向かって、開口一番にミアさんに謝罪してから何か手伝えることはないかと訪ねるといつも通りに皮剥きを頼まれたので早速【武具破壊】でパパっと皮剥きを終わらせる。

 

皮剥きが終われば、もう終わりだと言われて自由の身になったのだが今日はダンジョンに行かないため、手持ち無沙汰になってしまった。

 

 

「今思えば、怒涛の一週間だったな………」

 

 

『ダンまち』の世界に転生して、その日にミノタウロスに追いかけられているベルと出会って、アイズとも出会った。次の日には、『豊饒の女主人』で働いているリューさんに師事して冒険者としてのいろはを教えてもらうことになった。

 

そして、その三日後にはルノアさんを切っ掛けに『豊饒の女主人』にいる他の元上級冒険者の皆さんからも色々な戦い方を教えてもらうことになった。一番最近の出来事はリリをサポーターとして俺たちのパーティーに雇うことになったこと。

 

 

「本当、前世ではあり得ないようなことが周りで起きてるな」

 

 

改めて、自分が異世界へと転生したのだと実感させるには十分な一週間であったことを再認識したところで、本当に今の手持ち無沙汰な状況をどうするか考える。

 

前世であれば、暇な時はスマホのアプリゲームをやるか、二次元創作を書いていたが今はそういった近代的な娯楽は皆無。最早、何をしていいのか分からない状況に陥っている。

 

 

「娯楽を求める神々の考えが分かってしまった」

 

 

娯楽に飢えている神々の心境を僅かに共感しながら、宛もなくオラリオの街をぶらぶらと散策するのだった。

 

しばらく街の中を散策しながら色々な店をひやかし続けていると、後ろから突然声をかけられた。

 

 

「あっ、あの時のお兄ちゃんだ!」

 

「ん?」

 

 

後ろを振り返ると、そこにはいつぞやの『怪物祭』でパックンフラーこと食人花から逃げ遅れていたのを助けた子供がこちらに駆け寄ってきていた。

 

 

「キミは、あの時の子か!」

 

「うん!お兄ちゃんのお陰でお母さんとも会えたよ!」

 

「そっか、なら良かった。あの時、俺はモンスターにやられてたから心配してたんだ」

 

 

正直、この子とはすっかり頭から消えていたが自分で「お母さんとも会えた」と言っていたので、あの時、エイナさんたちに任せて正解だったようだ。

 

 

「お兄ちゃん、もう怪我は大丈夫なの?」

 

「ああ、この通り!あの時、近くにいた【ロキ・ファミリア】のエルフのお姉ちゃんの回復魔法で、完全に治ってるぞ」

 

 

あの時、最後に食人花からレフィーヤを守ろうとして躍り出た時の光景をこの子供は見てしまったようで俺の怪我を心配してくれた。

 

なので、その心配はいらないと分かってもらうために、その場で数回跳び跳ねて怪我の心配はいないことを証明する。

 

 

「良かったぁ」

 

 

どうやら、跳び跳ねても平気な姿を見て安心してくれたようだ。

 

 

「○○! どこにいるの!?」

 

「あっ、お母さんだ」

 

「これ以上、心配かけたらいけないないからお母さんところへ帰りな」

 

「うん………お兄ちゃんは冒険者なんだね?」

 

「ああ、勝利を司る女神ヴィクトリアの眷属で【ヴィクトリア・ファミリア】の冒険者だ」

 

「なら、いつかあたしもお兄ちゃんの【ファミリア】に入って冒険者になる!」

 

「うちの【ファミリア】の冒険者になるか………。なら、もっと大きくなって色々なことを勉強してから来るといい。それまでは、運動や勉強を頑張れ!」

 

「うん、分かった!バイバイ、お兄ちゃん!」

 

「またな」

 

 

あの時助けた子供が、まさか俺たちの【ファミリア】に入りたいなんて言い出すとは思っても見なかったが前世の義務教育も終わっていないような子供だ。そんな幼い子供を死地に赴かせる訳には行かない。

 

だから、あの子には俺がLV.3 以上に【ランクアップ】した頃に【ヴィクトリア・ファミリア】へ入団して欲しくて、勉強と運動を頑張るように促した。

 

 

「これで、また強くならないといけない理由が出来たな」

 

『だが、その想いが相棒を強くさせるための力となるはずだ。イッセーも冥界のガキどものために、リアス・グレモリーのためにサイラオーグとの「レーティングゲーム」で立ち上がってみせた』

 

 

ドライグの言葉を聞いて、俺の頭にイッセーが初めて『真紅の赫龍帝』に覚醒した時の詠唱文が浮かんで、それを口ずさむ。

 

 

「我、目覚めるは覇の理を捨て去りし、赤龍帝なり」

 

『相棒、それは!?』

 

「無限の希望と夢を胸に抱え、王道を往く」

 

『あいつの、イッセーの………!?』

 

「我、紅き龍の王者となりて───」

 

『………ひどく、懐かしく感じるな……』

 

「汝らに誓おう。真紅の光輝く未来を見せると」

 

 

禁手にすら至っていない俺が、この詠唱文を唱えたところで何が起こる訳でもないが赤龍帝というモノに、兵藤一誠という一人の男に憧れを抱いたのはこれが原点だ。つまりは、赤龍帝となった俺のオリジンである。

 

 

「さぁて、改めて何をしようかな~!」

 

 

このあと、ちょっとしたひらめきがあって、ホームの中で永遠と色々な属性や能力を付与した魔剣や聖剣を創造し続けていた。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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