臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第二十五話

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

「えっ…………10階層に?」

 

 

バベル前の噴水広場で時間通りに集合したあと、今日のダンジョン探索はどこまでにするのかを話し合いを始めた矢先、リリから10階層へ挑んでみないかと提案された。

 

それを聞いた俺は、昨日起きなかったことが今日起きるのだと少し動揺しながら早朝鍛練でリューさんに撃ち込まれた脇腹がまだ痛みが残っている気がするので擦る。

 

 

「ええ、今日はそこまで行ってみませんか? お二人の実力なら大丈夫です!」

 

「けど………この間も7階層でケンマに助けられたばかりだし。そんな僕が10階層に行っても……それに10階層からは大型のモンスターだって出るし……」

 

 

この間のニードルラビットに足を取られ、キラーアントに殺らせそうになったことを思い出したベルは、リリの提案に難色を示している。

 

そこで、俺がリリを後押しするように動く。

 

 

「そのことを理解しているなら大丈夫だ、ベル。それに、エイナさんからはパーティーを組んでいれば10階層に行く許可は貰ってあるだろう。大型モンスターも正面から真っ向勝負をするんじゃなくて、膝を狙っていけばいい。そうすれば何とかなるだろう」

 

「ケンマまで………」

 

「あとは、パーティーリーダーであるお前次第だ、ベル」

 

「それにベル様は『魔法』を手に入れました。あの魔法は強力です。今のお二人には死角は存在しません」

 

 

リリが今言ったように、昨日ベルはアニメ通り『魔法』である【ファイアボルト】を魔導書で発現させて、それが昨日のダンジョンで御披露目となったのである。生で本物の【ファイアボルト】を目にした俺は思わず興奮を抑え切れなかったことは此処だけの話。

 

そのため、普段から俺が見せているドラゴンショットとベルの【ファイアボルト】があるということで、リリは俺たちに10階層程度であれば死角はないと述べたのである。

 

 

「他の冒険者様のパーティーに随伴して、11階層まで降りたことのあるリリが保証しますよ。それと………実は、リリは近日中に、大金といえるお金を用意しなければいけないのです」

 

 

リリの最後に溢した言葉にベルの表情が変わる。

 

 

「っ! もしかして、それって………」

 

「事情は言えませんが、ただ、リリの【ファミリア】に関係することなので………。どうか、リリの我が儘を聞いてくれませんか、ベル様?」

 

 

リリは頭を下げて、上目遣いをする。

 

そんなリリに対して、ベルは心の中で色々と葛藤しているように見えた。しばらくして、ベルは覚悟を決めたのか右手に握り拳を作っていた。

 

 

「わかったよ。行こう、10階層に」

 

 

ベルのその一言にリリの顔に笑顔という花が咲いた。けれど、その花はもしかしたら“毒花“かもしれないと俺の頭に自然と浮かび上がっていた。

 

リリの事情をアニメで知っている身としては、いまさっき頭に浮かび上がった二文字に思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 

今日の目的地が決まると、リリは背中のバックパックから一本の短剣を引き抜くとそれをベルに差し出した。その短剣に、俺は何処か見覚えがあった。それはアニメでも、リリが同じ短剣をダンジョンでベルに渡していたからである。

 

 

「ベル様、これを使ってみてはいかがでしょうか?」

 

 

差し出したれた短剣をベルは受け取ると、両手に持ちながら少しだけ短剣を鞘か抜いて刀身を確認する。

 

 

両刃短剣(バゼラード)?」

 

「はい。今のベル様の武器では、大型のモンスターを相手にするのに少々リーチが短すぎますので」

 

 

ジェスチャーを交えながらリリは、ベルが持っている《ヘスティア・ナイフ》では大型モンスターを相手にするにはリーチが足りないと合理的な指摘する。

 

それを理解したベルは、《バゼラード》を返すことなく使うことを選択した。

 

 

「ええっと、くれるんだよね? でも、タダで貰うのはちょっと気が引けるな………」

 

「だったら、今日の稼ぎから払えばいいだろうベル。後払いってやつだ」

 

「でも、大丈夫かな? リリから貰った武器は初めて使うのに………」

 

「そこは10階層に降りるまでに慣れればいいだろう。成るより慣れろだ」

 

「そこまでケンマが進めるなら試してみようかな。あっ………でも、僕、剣帯の装備ないや………」

 

「ベル様、ベル様。リリの記憶が確かなら、そのプロテクターには武器を収納できた筈では?」

 

 

それを聞いたベルは、《ヘスティア・ナイフ》を一度プロテクターから取り外し、格納装置を調節してからま《バゼラード》を取り付けるとぴったりであった。

 

しかし、《バゼラード》の代わりに《ヘスティア・ナイフ》の収納場所が問題になってしまった。しばらく悩んだ末、ベルは《ヘスティア・ナイフ》を右足に付けているレッグホルスターへと収納した。

 

 

「それじゃ、行こうか?」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

そして、来ました10階層。

 

 

「霧………」

 

「ああ、これはソロだとかなり危ないな。エイナさんがパーティーを組むことを条件にした理由が分かる」

 

 

10階層から今までの階層にないギミックである『霧』が発生しているのだ。その濃度は差ほど濃くはないが、普段よりも視界が悪いことに変わりはない。

 

 

(なぁ、ドライグ。この霧を聖剣創造とかで何とかできると思うか?)

 

『さぁな。相棒以外に複数の神器を宿した宿主に出会ったことがないからなんとも言えん』

 

(ですよねぇ………)

 

 

『ハイスクールD×D』において『魔剣創造』の使い手である木場佑斗が劇中で何度も様々な属性を喰らう魔剣を創造していたので、同じ使い手として霧を喰らうか払うことのできる魔剣か或いは聖剣を創造すれば対処できるのではないかと考察していた。

 

 

「リリ、離れないでね」

 

「………はい」

 

 

何度目かわからないベルから放たれるリリへの注意喚起。さすがのこの霧の濃さではぐれるのは危険性が高すぎるのに加えてベルは、モンスターだけではなく昨日のサポート狩りやその仲間たちにも警戒しているのだろう。

 

ダンジョン内での出来事は全て自己責任。そのためギルドも干渉して来ない、してくるとしたら偶々通りがかった【ガネーシャ・ファミリア】の冒険者くらいだろう。しかし、そうなればリリの過去の出来事が明るみに出ることにも繋がる。

 

俺たちが初めて到達する階層ということで、警戒しながら進んでいると今までの階層にはなかった葉も枝もない枯れ木が辺りに点々としているのが見えてきた。

 

その一本にベルが手で触れてからこれがエイナさんから習った物と合致するのかリリに尋ねた。

 

 

「リリ、これって………」

 

「はい、『迷宮の武器庫』です」

 

 

『迷宮の武器庫』、それはダンジョンによって生み出された天然の武器で冒険者にもモンスターにもメリットとデメリット、両方を与えるギミックの一つである。

 

メリットとしては、武器が破損した際にその場しのぎの代用品として『迷宮の武器庫』を使って地上へ上がることができる。その反面、モンスターも『迷宮の武器庫』を使ってくるので間合いが普段よりも取らされてしまったり、投擲武器としても使われることがあるので場面や場所によって厄介なギミック。

 

けれど、そんな『迷宮の武器庫』はそこまで頑丈ではない。破壊しようと思えば、出来てしまうので慣れればそこまで危険性がある訳でもない。

 

そんなことを一人で頭の中で、エイナさんから教わった内容を思い返しているとリリが口から続けて声が出た。

 

 

「しかし、処理している暇はない様です」

 

 

リリの視線の先からダンジョンの壁を反響するようにドスッ、ドスッという重量感のある足音が聞こえてくる。

 

そして、その足音の主は霧の中から姿を現したのは、俺たちの二~三倍ほどある図体に豚の顔をした大型モンスターで以前『怪物祭』の際にも対峙したことのある『オーク』である。

 

 

『ブグッゥゥゥ………』

 

「やっぱり、大きい、よね………」

 

「どうした? 怖じ気付いたのか、ベル?」

 

「逃げてはいけませんよ、ベル様?」

 

 

こんな強気な言葉を言えるのも、ここ一週間で辛い鍛練と何度も死にかけた経験から多少なりとも度胸が身に付いた証拠。前世のままであれば、オークを目にした途端、パニックなって叫びながら逃げ出していただろう。

 

けれど、それは過去の話。今の俺からしたらオーク程度であれば殺れる。図体が大きいオークならば、手加減されたリューさんよりも圧倒的に鈍重であり、ミアさんよりも脆い。そんな相手に、どこを恐れろというのだ。

 

 

「そうだよね。オークを倒せないようじゃ、この先のモンスターなんて一生攻略できない!」

 

「それで、どっちから行く?」

 

「僕から行くよ!」

 

「了解。その間、俺は少しでも『迷宮の武器庫』を破壊する。しくじるなよ、ベル!」

 

 

そう言いながら俺は腰に差している聖剣を鞘から引き抜ぬき、先行するベルの後を追いかけながら地面を蹴る。

 

ベルがオークとのショートレンジに入り、初撃の大振りを右へステップを踏み込むことで回避、回避際にベルはオークの横っ腹に《バゼラード》で一太刀浴びせていた。

 

それに視界の端で捉えながら10階層の入り口で【プロモーション】を使い、『戦車』へと昇格したことで『力』と『耐久』に補正能力が効いている間に『迷宮の武器庫』を次々と流れ作業のように破壊していく。枯れ木を五~六本ほど粉砕し終わると、ちょうどベルの方も危なげ無くオークの討伐に成功していた。けれど、休む暇もなくお代わりがやってきた。

 

 

「ベル様、もう一匹来ました!」

 

 

リリがベルに注意喚起し、それを聞いたベルが右手を突き出して【ファイアボルト】を放とうとするがそれよりも先に俺がオリジナルの技をオークに目掛けて繰り出す。

 

 

「撃龍拳!!」

 

 

龍のオーラを収束させた左拳を放りぬくと拳から赤い飛龍が低空で飛翔し、咆哮を上げながらその顎でオークの上半身の半分を喰い千切り、魔石だけを残して霧散する。魔石を身体から失った残りオークの身体も命の源を失ったことで灰となり、散った。

 

その光景を見ながら撃龍拳の手応えを見て、感じた俺はブーステッド・ギアの倍加無しでの威力は、かなりの物だと認識すると共に人間相手に使うのは自重しようとも思った。

 

 

「今のは…………ケンマ!?」

 

「どうだ? ドラゴンショットの応用技、撃龍拳の威力は?」

 

「凄いよ!あんな『魔法』初めてみたよ!!」

 

「だろう!ベルも考えと工夫次第ではこんな応用技ができるはずだ」

 

「そうなんだ。あっ、リリ。オークを倒せたよ、ぉ………あれ?」

 

 

ベルは、一人でオークを倒せたこと喜びをリリとも分かち合おうと思って名前を呼ぶが彼女の姿は見当たらない。リリの姿が見えないことにベルは、モンスターに襲われたのではないかと焦り出す。

 

 

「リリ? 何処なの!? まさか、モンスター………」

 

「落ち着け、ベル!今は冷静に────」

 

 

リリがいないことに焦っているベルを落ち着かせようとするが、それよりも先にベルが足元にあった何かを足に当たり軽く蹴り飛ばしてしまった。その何かが少し先に転がると、ようやく正体が判明する。

 

それは、モンスターを効率良く誘き寄せるためのトラップアイテム。それを認識すると今更になって、そのアイテムから放たれる異臭に鼻が襲われ始めて、思わず腕で鼻を抑えてしまう。

 

 

「これって………モンスターを誘き寄せるための?」

 

「トラップアイテムだな」

 

 

トラップアイテムを手に取って更に詳しく観察していると、そのアイテムに誘き寄せるようにオークが四匹、俺たちの向かって駆け出してくる。

 

 

「ベル、リリのことは後だ!今はこいつらを蹴散らすぞ!!」

 

「クソッタレ!!」

 

 

リリのことが心配なベルは、普段使わないような暴言を吐きながらも《バゼラード》を構えてからオークと対峙。その背中をカバーするように俺もベルに背中を預けて、聖剣を構える。

 

そして、次の瞬間、何処から風を切るような音が聞こえてくると背後にいるベルの方からバチンッと何かが弾けるような音が聞こえると、視界の一番端で"何か"か引っ張られてそれが空へと飛ぶ瞬間を捉えた。

 

視界の端でそれを捉えたのはいいが、どうこうする余裕がないのでその余裕を来るためにドラゴンショットを手加減無しで二匹のオークに放つと背後からベルの叫びが聞こえてきた。

 

 

「リリ……? リリ、何してるの!?」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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