臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第三十二話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

『ブルー・パピリオ』、ダンジョンの7階層に出現すると言われている蝶のモンスター。透き通った青い四枚の翅を持ち、その翅から淡く輝く鱗粉を撒き散らしながは飛行する様子は、冒険者が動きを止めて思わず見とれてしまうほどだとも聞く。

 

また、ブルー・パピリオは『稀少種』であり前世の日本の国民的ゲームでありアニメにも出てくる色違いモンスターに匹敵するレア度だと思えばいいだろう。更に、そのドロップアイテムである『翅』はこれまた日本の代表的な狩猟ゲームに出てくるモンスターの『逆鱗』、『宝玉』、『天鱗』、『天殻』、『天玉』に相当するレアアイテムであるのは間違いないだろう。

 

そしてバベルでリリが色々と道具屋で準備整えたあと、俺たちはブルー・パピリオが出現する7階層へとやってきた。

 

 

「リリはブルー・パピリオって見たことあるの?」

 

 

俺とベルは、ギルドでエイナさんから図鑑に載っている写し絵でのブルー・パピリオしか見たことがないので俺たちよりも長くダンジョン探索をしたことのあるリリに、ベルがそう訪ねる。

 

 

「リリも数えるほどしかありません。ですが『稀少種』の中では、比較的遭遇しやすいと思います」

 

「そうなんだ………でも、やっぱり時間はかかりそうだね………」

 

「色違いモンスターを探すよりかは簡単じゃないのか? 色違いのモンスターにエンカウントする四◯九六分の一よりかは遥かにマシだろう………」

 

「た、たしかにケンマ様が仰っている色違いモンスターよりかは楽だと思いますが………ご安心を。リリにお任せください」

 

「うん、ありがとう、リリ。……それにしても、これ、結果奥まで来てるよね?」

 

「リリ、もしかしてこの先には食料庫があるのか?」

 

「パントリー?」

 

「さすがですね、ケンマ様。ケンマ様が仰る通り、この先には食料庫が存在します。そこでなら、ブルー・パピリオも見つけやすいかと」

 

「なるほどな」

 

 

『食料庫』、それはモンスターたちの餌場のことである。前世でも『ソード・オラトリア』では、闇派閥の生き残りが24階層の食料庫で食人花を量産するために暗躍していたシーンがあることを覚えている。

 

けれど、所詮は映像。実際に食料庫を目にするのは初めてなのでワクワクしている。

 

 

「ほら、見てください。あそこが入り口です」

 

 

リリが指で示した先には、ダンジョンの中に天然の洞窟という不思議な作りになっていた。奥へと進んでいくと、薄緑色の壁や燐光を灯す天井、足元の地面などがでこぼこと表面を変えていく。

 

そして、更に奥深くまで進んで行くと曲がり角の奥から、ぼんやりとした謎の緑色の光が漏れていた。その光を辿りながら慎重に進んでいくと、そこにあったのは巨大な緑色の水晶だった。

 

その余りの美しさとデかさに思わず俺とベルは声がこぼれてしまう。

 

 

「うわぁ………」

 

「これはスゲェやぁ……」

 

 

まさに『秘境』、そう表すには十分な景色がそこにはあった。

 

 

「ベル様、ケンマ様、声を落としてください……」

 

「あ……うん、ごめん……」

 

「わりぃ……」

 

 

注意を受けた俺たちは、声を落としながらリリに謝罪する。そして、リリは食料庫を詳しく知らない俺たちのために、分かりやすくするために指で示しながら説明を初めてくれた。

 

 

「正面にあるのが石英の塊です。あそこから湧き出る液体………泉のようになっているところを見てください」

 

 

指で示した先には、説明通り石英の表面からはまるで樹液のように透明な液体が染み出ていて、まるでクヌギの樹に集まるカブトムシやクワガタのように7階層の様々なモンスターが張り付いて舌を出して美味しそうに飲んでいる。

 

 

「ふふ、驚かれますか?」

 

「ああ。実際に見るのと知ってるのとでは大違いだ」

 

「リリ………」

 

「ここが食料庫………ダンジョンがモンスターたちに恵む、給養の間です」

 

「不思議な場所……だね」

 

「駆け出し冒険者の俺たちからしたらまさに、『未知』の光景だ」

 

 

俺たちの初々しい感想を聞いたリリはくすりと笑う。

 

 

「モンスターが、ただの動物みたいに見えますからね。ですが、モンスターはモンスターですよ?」

 

「う、うん……わかってるよ」

 

「同じく」

 

 

そう、やつらはモンスターである。今はバレていないが、もしもバレようものなら食料庫にいる大勢のモンスターが一斉に俺たちへと襲い掛かってくるだろう。気はしっかりと引き締めなけれならない。

 

 

「どのモンスターも、あの液体を飲んでるけど………」

 

「石英から湧き出す液体はモンスターの食料………言わばこの広い空間が、モンスターたちにとっての栄養源です。ですから、ここは絶えずモンスターの往来があります」

 

「なら、その中にはブルー・パピリオもいる可能性も?」

 

「ええ。闇雲に探し回るより、この場に待ち伏せた方が出くわす可能性が高いと思います」

 

「サポーターとしての経験則から来るものか」

 

「そっか、僕たちはブルー・パピリオを狩猟……この綺麗な食料庫で………」

 

「さぁ、ベル様、ケンマ様。いつまでも見とれてないで、すぐに身を隠しましょう。モンスターたちに見つかってしまえば、それこそ偉いことになってしまいます」

 

「あ………そ、そっかっ」

 

「だけど、どうやって身を隠すんだ?」

 

「ご安心を。ケンマ様はこちらの布を、リリたちはこちらの布を使います。ベル様、少し失礼しますね」

 

 

バックパックを地面に置いて、なかから素早く取り出したのは淡い緑色に着色された大きな布が二枚。そのうちの一枚を俺に、もう一枚はリリがベルと共同使いだした。最早、何も言うまいよ。

 

 

「この布……このために買ったんだ……」

 

「ええ、隠蔽布です。7階層には鼻が利くモンスターはいませんし、大人していればこれだけで身を隠せます」

 

「ちょ、ちょっと、リリ? くっつき過ぎじゃない?」

 

「いえいえ。バックパックも包み切らないといけないので、布に余裕がないのです。えぇそうです。もっと詰めなくては!」

 

「チッ!」

 

『相棒、嫉妬するのはいいが微量にオーラが漏れてるぞ』

 

(そりゃあ、オーラも漏れるだろうよ。隣でイチャコラされてはなッ!)

 

 

隣で一枚の布の中でイチャコラとされて思わず舌打ちをしながら龍のオーラが僅かばかり湧き上がっていることをドライグに指摘されるが、嫉妬の余り喧嘩腰で返事をしてしまう始末であった。

 

いつかは俺も美少女キャラとイチャコラしてやると硬く誓いながら深く深呼吸をしてオーラを抑えることに努めているとベルがリリへ、モンスターの食事についての質問をしていた。

 

 

「……そ、そういえばさっ? モンスターを誘き寄せる血肉ってあったよね?ちゃんと食料があるなら、モンスターたちも引っかからないんじゃあ……」

 

「ベル様は、ずっと同じものを食べ続けると飽きませんか?」

 

「あ……」

 

「飽きるな、絶対に」

 

 

前世ならば、朝昼夕と三食ラーメンで行けたがそれも二日が限界で他の物が食べたくなる。例えば、カレーライスやお好み焼、焼きそば、パスタなど…………そこまで色々な料理を思い浮かべたところで最近ラーメンを食べていないことを思い出して、無性にラーメンが食べたくなってきてしまった。

 

ダンジョンから戻ったミアさんにラーメンを作れないか考えてもらうことを心内で決めた。

 

 

「ふふっ、そういうことです。モンスターたちも食通なんですね。あとベル様、もっと密着してください。食料庫での戦闘は、みんな避けるものなんですから」

 

「そうなの……? これだけモンスターがいれば、狩場にできるんじゃ………」

 

 

それは俺も思った、ここならモンスターを探す手前が省けるんじゃないのかと? しかし、初歩的なことを思い出すとそうではないと思い返す。ダンジョンを下に深く潜れば潜れるほどモンスターが強くなるに比例して金となる魔石の質も向上する。

 

そのことから食料庫のある最奥まで態々来なくとも冒険者にとっては困らないということになる。要は量より質ということである。

 

そのことをリリもわかっているようで、ベルの問い掛けにこう返答する。

 

 

「更に下層に潜って探索するより、ここに来る方が、ずっと時間がかかるのにですか?」

 

「あ………」

 

「ここまで来て安全に狩りができる実力があるのでしたら、もっと下層へ向かったほうか効率もいいです。一度見つかってしまえば、大量のモンスターに押し潰される危険もありますし……基本、階層の最奥部にあることが多い食料庫は戦闘場所として、選択されないのが常です」

 

 

なるほど、だから『ソード・オラトリア』のアニメでも食人花を量産するのに闇派閥は24階層の食料庫を選んだのか。リリが今言ったように、食料庫に態々来てまでモンスターを倒す冒険者は極稀、とても利にかなっている。

 

そんな敵派閥側の立場になって考えていると、肩を僅かに強ばらせたリリが小声であるが俺たちの名前を呼ぶ。

 

 

「……! ベル様、ケンマ様……!」

 

「もしかして、あれが………!」

 

「ブルー・パピリオ………!」

 

 

食料庫に現れた目標の名前を口しながら両目を見開く。

 

優雅に羽ばたく、青い蝶のモンスターであるブルー・パピリオが小さな群れを成して、ここの食料庫へと姿を現した。

 

 

 

「はい、態々食料庫にまで足を運んだ甲斐がありました」

 

「う、うんっ」

 

「だけど、ここじゃあ捕まえられないぞ。どうする?」

 

「モンスターも生き物、腹が満たされれば自ずと食料庫から離れていくはずです。なので、食料庫から出るのを待って、後を追いましょう」

 

「了解」

 

「うん、わかった」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「上手くいって良かったね」

 

「案外簡単な冒険者依頼だったかもな」

 

「はい、ドロップアイテムも運良く回収できましたし。しかもこんなに沢山。倒した稀少種から、全てドロップアイテムが出てくるなんて。こんな幸運、そうそうありません」

 

 

リリの言うと、食料庫で見つけた五匹で一つの群れを成していたブルー・パピリオを倒すと美味いことに五匹全てからドロップアイテムを回収することに成功したのである。『幸運』の発展アビリティがないのにこれは出来すぎていると感じる気がするが今はいいだろう。

 

 

「合計五枚…………これだけあれば十分だよね?」

 

「普通に十分だろう。これ以上の数を欲しいって言われても滅多に今日みたくは上手いことブルー・パピリオの群れに出くわすことなんてないぞ」

 

「だよね………」

 

「ケンマ様の言うとおりです、ベル様。この翅をギルドに持っていくだけでも、きっと九◯◯◯ヴァリスは固いですよ。翅自体に傷がないことも大きいですし。いえ、交渉次第ではもっと値上がるかもしれませんっ」

 

 

何故かリリの目が某海賊王の漫画の航海師の如くゼニ目になっているのは気のせいだろうか。さすがベルも隣で苦笑いしている。

 

 

「でも、ちゃんと届けなきゃ。これは依頼品なんだから」

 

「それそうですが………」

 

「諦めろリリ。もしも猫ババなんてすれば、ベルの信用にも関わるぞ」

 

「う~んっ、少しもったいないですが分かりました」

 

「あはは………」

 

 

こうして、無事に依頼の品である『ブルー・パピリオの翅』を手に入れた俺たちは依頼人であるナァーザさんが待っているであろう【ミアハ・ファミリア】のホームへと足を向けることになった。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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