臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第三十四話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

突如としてオラリオの街に現れた『巨大な赤飛龍事件』のあと、リリから聞いた話では何でもナァーザさんがベルに詐欺行為をしていたのは【ディアンケヒト・ファミリア】から借金返済のためにやっていたのだとか。

 

ふざけるなよ?

 

しかし、ベルから騙し取ったお金でも対した返済額にはならないらしく。ダンジョン探索でお金を稼ごうにも過去に、ダンジョンで片腕をモンスターに食われたトラウマからモンスターを目の前にすると戦うことも逃げることもできない。また、主神であるミアハは無償で回復薬を配る癖があるらしくて、それが合わさって全くといっていいほど借金が返済できない状況。そして、借金生活から抜け出すために新たにベルに冒険者依頼を出したそうな。

 

フザケルナヨ?(二回目)

 

最早、俺はナァーザさんに対しての評価は最低辺と下落している。確かに片腕を食われたトラウマからダンジョン探索が出来なくなるのはわかる。しかし、それをベルに詐欺を働いていい大義名分してもいい訳ではない。まぁ、ベルとヘスティアが許している時点で俺がとやかく言うのは間違っているので、このモヤモヤとしたやるせない気持ちは胸の中に仕舞っておくしかないのだろう。

 

そんな訳で【ミアハ・ファミリア】の借金返済を手伝うために、新たに発注された冒険者依頼を受けたベルを手伝うために早朝鍛練をいつもよりも少しだけ早く切り上げさせてもらって、ベルと共にミアハたちの下に赴き、色々と準備をした後、俺たちはオラリオの街を日の出と共に出た。

 

因みに、何故かミアハとヘスティアも一緒である。

 

 

「ん、たまには馬車っていうのも快適だね?」

 

「そうですか? 俺は初めて馬車に乗るので乗り心地はなんとも…………」

 

 

呑気にヘスティアが馬車の乗り心地の感想を述べたので、俺も思わず生まれて初めての馬車に乗車した感想を口にする。内心では、めちゃくちゃ揺れるし、座席の座り心地は固くて酔いそうだと思っている。

 

現代の自動車技術はとてつもなく偉大であったことを痛感する出来事であった。

 

 

「あの、神様、その格好は………?」

 

「ああ、オラリオの外に出るんだからねっ! 旅と言えば、まずは格好からだろう?」

 

 

なるほど、だからいつもとは違って、某狩猟ゲームの受付嬢のような格好をしているのか。普段の格好は、まるで夜の営みをするかのような格好なので今のヘスティアは新鮮味がある。

 

 

「そんなものですか………?」

 

「まったく、ヘスティア様は浮かれすぎです。遊びに行くのではないのですよ? これだから、世間知らずの神様は………」

 

「キミだって十分すぎる浮かれているじゃないか!? なんだい、その気合の入りまくった格好は!?」

 

 

ヘスティアの言う通りリリも普段のボロボロのローブとは違って、どこぞの商人の娘みたいな格好をしていて、こちらも新鮮味がある。

 

しかし、二人の発言は同族嫌悪のブーメランにしか聞こえない。

 

 

「ヘスティア様ほどじゃありません」

 

「なにをーっ!?」

 

 

そんな二人を見かねたのか、ベルが介入する。

 

 

「あの………ナァーザさんが呆れていますから………」

 

「ああ、ごめんごめん、ナァーザくん」

 

「いえ………」

 

 

そう答えるナァーザさんも昨日とは違って、黄色のコートに焦げ茶色のマフラー、ジーンズにしたパンツという現代人の女性が着ているような服装だ。

 

それぞれ普段とは違った服装をしている女性陣に対して、男性陣の俺たちはいつも通りの服装である。俺とベルは普段とおり戦闘服、ミアハは昨日と同じ服装だ。

 

 

「それにしてもベルくん、朝早くからお疲れ様だったね。随時と早起きしてミアハたちを手伝いに行ってたみたいじゃないか?」

 

「は、はははっ………」

 

 

ベルのその苦笑いで誤魔化しているのを見て、察してしまった。

 

 

「え、えーと、ナァーザさん。それで、今日は昨日話していた通り………」

 

「うん。今日中にお金を用意しないといけないから、時間ない。だから一発逆転の新商品を開発して、【ディアンケヒト・ファミリア】に直接売り込む………」

 

「昨日も聞いていて思いましたが、上手くいくのですか? 新しい商品を作るなんて簡単に仰りますが………」

 

「それと態々ライバル【ファミリア】である【ディアンケヒト・ファミリア】に売り込んで、もしも新商品の製法がバレて同じ薬を作られたらどうする? それこそ、ネームバリューで売り物にならなくなるぞ」

 

 

前世でも日本のアニメやゲームをとある国がめちゃくちゃ真似て色々と騒動になってたりするので、その辺りの忠告もしておく。でなければ、態々俺たちが手伝った意味がなくなってしまう。

 

俺たちの忠告を聞いてナァーザさんは、リリの問い掛けには自信満々に答え、俺には昨日の件があってか未だに怯えながら自信なさげに返答してきた。

 

 

「大丈夫、新商品の当てならあるから………でも、製法の機密についての方は………自信ないかも」

 

「ナァーザさんなら大丈夫です」

 

「ありがと………頼りにしてるよ、ベル」

 

「まあ…………まずは冒険者依頼の『卵』を手に入れないとどうにもならないことですね」

 

「うん………」

 

 

リリの言うと通り、目的の素材が見つからなければ何にも何の解決にもならない。しかし、一体なの『卵』なのだろうか? 回復薬に使う『卵』となると普通の『卵』ではないのは明白。オラリオの街を出る前に、ナァーザさんが自分とミアハだけでは駄目だと言っていた。

 

元冒険者でありモンスターにトラウマがあるナァーザさんと戦闘力皆無の神であるミアハで駄目だとなると、自ずと浮かび上がってくるのはモンスターの『卵』が出てくる 。本当にモンスターの『卵』であれば、気を引き締める必要がある。

 

そう思っているとヘスティアが今向かっている目的地について訪ねる。

 

 

「先を聞いてなかったけど、この馬車はどこを目指しているんだい?」

 

「セオロの密林だ。長丁場と言える距離ではないが、もうしばらくかかる。せっかくの場だ、到着するまで交流を深めるといい」

 

 

そう言ってミアハは、俺とナァーザさんを一瞥する。その一瞥には、昨日のことが関係しているのだろう。

 

ベルを騙して当たり前ようなことを言われて少しキレた俺がオーラを抑え切れなかったことで怯えてしまったナァーザさんもお互いに今日まで一切会話をすることはなかったから。

 

 

「ナァーザ様、冒険者から薬師に転職とお聞きしましたが、やはり『調合』のアビリティをお持ちになっているのですか?」

 

「うん、そうだよ………製薬の手伝いを通して【経験値】が溜まったみたいで、運良く発現できた………」

 

「えっと、『調合』って言うのは………?」

 

 

発展アビリティをあまり知らないベルは、『調合』の発展アビリティについて皆に訪ねる。

 

 

「回復薬などの薬剤をお作りになられる時、より品質の高い物にできる発展アビリティのことですよ、ベル様」

 

「他にも『鍛冶』の発展アビリティがあれば、特殊な効果を付与した武器を作れるようになる。例えば魔剣や特殊武器とかな」

 

「へぇ……って、発展アビリティを持っているってことは……」

 

「ん、私はLV.2だよ……。中層まで行けたんだけどね、そこでモンスターに丸焼きにされて両手と両足をぐちゃぐちゃに食い荒らされちゃったんだ」

 

「え───」

 

「中層で丸焼き………『ヘルハウンド』だな」

 

 

『ヘルハウンド』はアニメにも出てきて、外見は狼のような見た目で特殊攻撃として口から炎を吐き出す中層での初心者殺しの異名を持つモンスターだ。

 

そのため、中層に挑む冒険者にはギルドからは特殊な防具である炎の精霊の加護が施された『サラマンダー・ウール』の携帯が推奨されているはずである。それがなれば、ナァーザさんのようにあっという間に丸焼きにされてしまうからだ。

 

 

「ナァーザさん、あなたは中層に行けていながら丸焼きにされたということは、『サラマンダー・ウール』は身に付けてなかったのか?」

 

「本当、駆け出しにしてはよく知ってるね…………サラマンダー・ウールに防火の加護があるといっても限界がある。それで左腕と両足は何とか戻ったけど、骨を残さず食べられた右腕は駄目だった」

 

 

ナァーザさんは、右腕の義手を擦りながら話を続ける。

 

 

「……それからかな、モンスターと戦えなくなったのは。どんな怪物でも前にするだけで……震えが止まらなくなっちゃう」

 

 

貴重な中層での経験を聞けた俺は、前世から考えて計画していたことを速めるべきだと判断した。その計画とは、全ての魔法や属性攻撃を無力化するこの世界には存在しない《属性殺し》あるいは《魔法殺し》の魔剣と聖剣。

 

この二振りが創造できるようになれば、魔法や属性攻撃をしてくる敵にはかなりのアドバンテージが取れる。また、毎回思うが『魔剣創造』も『聖剣創造』も使い方によって神滅具に匹敵するのでは? もういっそのこと神滅具の仲間入りでいいのではないだろうか。

 

そう思っていると僅かばかり沈黙している俺とベルを見て、ナァーザさんは過去の悲惨な出来事を聞かせて怖がらせてしまったのではないかと考えたようだ。

 

 

「……ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだけど」

 

「あ、い、いえっ……」

 

「貴重な経験を聞けてよかった。ありがとうございます」

 

「……そう。兎に角、ダンジョンを探索する時は気を付けた方がいいよ……。私は【ランクアップ】するのに六年かかったけど……どんなに強くなっても、失う時は一瞬で失っちゃうから」

 

 

成功談だろうが失敗談だろうが先人からの言葉を聞いて、改めて今後のダンジョン探索にはより一層の臆病に注意して行こうと胸に刻みながら自重というものを少しだけ外してみようかとも思考する。

 

 

「それにしてもその義手、本当によくできてるよなぁ。動かすのに支障とかはないのかい?」

 

「はい、自由に動かせます……」

 

「法外な金額を課せられてしまったが、一番良いものをディアンから取ってきた。少し悔しくもあるが、あやつの【ファミリア】の力は信用できる」

 

 

少し重くなってしまった空気をヘスティアがそれとなく入れ替えたあと、青空が広がる下でゴトゴトと馬車は揺れていく。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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