臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第三十七話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

「さぁて、俺の相手は青いミノタウロス………お前か?」

 

 

リリを逃がしたあと、俺は二体いるうちの青い方のミノタウロスと対峙している。もう一体の赤いミノタウロスは、現在ベルと戦っている。

 

 

『ヴヴォ………』

 

「【プロモーション・クイーン】」

 

『Boost!!』

 

 

ベルと赤いミノタウロスの激闘音を聞きながら俺は静かに【プロモーション】で『女王』へと昇格して、着々と青いミノタウロスと戦う準備を整える。

 

そして、ブーステッド・ギアの倍加による音声によって互いに動き出す。青いミノタウロスは俺を殺すために振り上げた大剣を躊躇なく上から下に振り下ろすが、俺は真面目から対抗するのではなく《天閃の聖剣》の能力を使って瞬速で回避する。

 

 

『ヴヴォオオオオオオオッッ!!』

 

「フッ!」

 

 

先ほどリリの怪我を治療するために使ったリューさんの回復魔法でもブーステッド・ギアの溜めていた倍加が発動されるのが分かったので、同じく【魔力操作】によって行使される【瞬歩】も現在溜めている倍加が発動されるのは間違いない。

 

なので、《真のエクスカリバー》に統合された《天閃の聖剣》の能力であれば、攻撃でも魔法でもないため溜めている倍加が発動することないと予想すると当たりだったようで、ブーステッド・ギアから倍加解放時の音声が鳴らない。

 

 

「悪いなミノタウロス、俺は物語の主人公やベルみたく真正面から戦う勇気を持っていない臆病者でな。生きて勝つためには出し惜しみみたいなナメプなんてするつもりはないぞ」

 

『ヴゥゥ………ヴォオオオオオオオッッ!!』

 

「遅い!」

 

 

青いミノタウロスが再び大剣を振るってくるがそのことごとくを大きく余裕を持って回避する。なぜ大きく余裕を持って回避するのかは、紙一重ではあまりにも大剣が地面へと振り下ろされた時に生じる衝撃波が強力のため、ダメージを受けるとブーステッド・ギアは倍加がリセットされてしまう特性が作用してしまう可能性があるため衝撃波を受けないためにも大きく余裕を持って回避しているのである。

 

臆病者には臆病者の戦い方がある。逃げ出さないだけ頑張っていると評価して欲しいほどにだ。

 

 

『Boost!!』

 

「三回目……。通常種で三回倍加した力でも倒せなかったんだ、強化種であるお前には何回倍加すればいいんだろうな」

 

 

適度に青いミノタウロスとの距離を取りながら倍加を溜めていると少し離れた所にいるベルから痛苦の叫びが聞こえてくる。

 

 

「がぁぁぁっ!?」

 

「ベル!?」

 

 

赤いミノタウロスの隻角がエイナさんからプレゼントされた緑色のベルのプロテクターを貫通して腕に刺さる。そして、そのまま赤いミノタウロスは力任せにベルを地面へと叩き付けた。

 

その光景を見た俺は、日本人としての性なのか負傷した友人のベルに駆け付けようと僅かに隙が生まれ、その隙を付くように青いミノタウロスも俺に目掛けて突進を仕掛けてくる。

 

 

『相棒、エクス・デュランダルを盾にしろ!』

 

「ぐっ!?」

 

『Explosion!!』

 

 

隙を付かれて大きく余裕を持って回避していた間合いも詰められてしまったところをドライグがアドバイスをくれたので、その通りに《エクス・デュランダル》を横にして青いミノタウロスの角から己を守るの加えて、念のための今まで溜めていた倍加も解放する。

 

しかし相手はLV.2 の上位かあるいはLV.3 相当の強化種のミノタウロス、LV.2 に【ランクアップ】仕立ての俺では多少は勢いを殺せても完全には殺すことが出来ずに徐々に押し込まれて行く。つまり、『力』の基本アビリティで負けているということだ。

 

 

「これでもまだ足りないのかよ!?」

 

 

押し込れるまま壁際にまで迫る。

 

 

『相手と同じ土俵で戦うな!擬態の聖剣の能力を使え!!』

 

「分かってる!」

 

 

ドライグに言われながら『力』の基本アビリティで敵わないのであれば、別の基本アビリティで対抗するべく、壁に頭を打たないように注意しながら身体を後ろへ反らし、膝を折って、《擬態の聖剣》の能力で《エクス・デュランダル》を片手剣ではなく刀へと擬態させる。

 

それによって、角を受け止めていた面積が小さくなり、湾曲している角の形に沿いながら刀身を滑らせて青いミノタウロスの押し込む力を逃すとその勢いは壁へと向かっていった。

 

逃された力はそのまま壁へと向かったあと、勢いのまま壁を粉砕して、それによって生まれた砂や岩盤などが俺の顔に振り掛かり鬱陶しく思うが身体を横に転がして青いミノタウロスの懐から脱出する。

 

 

「ペッ、ペッ、ペッ、まだ口の中が砂でジャリジャリしやがる!」

 

『呑気なことを言ってないで戦闘に集中しろ、相棒!』

 

「だから、分かってるってッ!」

 

 

口に入ってしまった砂利を【魔力操作】で生み出した水で吐き出しているとドライグから集中するように咎められるが、視線は青いミノタウロスを捉えたまま《エクス・デュランダル》を振るって聖なる波動の斬撃を飛ばす。

 

 

「はああああッ!!」

 

『ヴゥモ!?』

 

 

予定では余裕を持って回避し続けて溜めに溜めた倍加の力を使って、一撃で仕止めるつもりだったがベルの痛苦の叫びを聞いて、一瞬でも集中力が途切れてしまった自分の甘さが招いたことだと反省する。

 

反省しながら聖なる波動の斬撃をその身で受けたであろう青いミノタウロスがどうなったのかを注意深く観察していると、ゴトッと何が重い物が地面に落下する音が聞こえた。

 

そして、次の瞬間──────

 

 

『ヴヴォオオオオオオオッッ!!』

 

 

聖なる波動の斬撃が当たった時に生まれた土埃の中から刀身が半ば半分折れた大剣を✕印で振り回す隻角の青いミノタウロスが出てきた。

 

 

「嘘だろう!? いくら強化種だからって、エクス・デュランダルの聖なる波動を受けて角一本だけとかふざけんなッ!!」

 

『オオオオオオオオッ!』

 

 

あまりにもダメージが低いことに怒りを込めた《エクス・デュランダル》が青いミノタウロスが持っている刀身が折れた大剣と衝突すると、破砕音を立てながら青いミノタウロスの折れた大剣が砕け散る。

 

大剣が砕けた散る破片に目を細めながら、なぜ聖なる波動を受けて角一本で済んだのかの理由が分かった。それは、この青いミノタウロスは聖なる波動の斬撃を受ける際に砕け散った大剣を盾にしていたからだ。

 

角一本で済んだ答えが分かって頭の中のモヤモヤが解消されるのも束の間、突然腹部へ重い打撃を感じて、骨がメリメリと音を立てながら肺から空気が吐き出される。

 

 

『ヴゥムゥウンッ!』

 

「がはっ!?」

 

 

突然の腹部への重い打撃を受けた俺は思考が定まらない中、今度は背中から強い衝撃を受けて、前後から激痛が走る。肺から空気が抜けて、視界がチカチカと点滅する。

 

何とか立ち上がろうと身体に力を込めると、言い表しようもないゾワゾワとした感覚が走ると合わせて腹の底から何かが逆流してきた。それを抑えることは叶わず、口から吐き出されたそれは血が混じった今日の朝食だった。

 

 

「う“っ、オ“エエェェェ………!?」

 

 

胃の中から吐き出されたそれによって、口の中は焼けるような酸っぱさと苦さでしっちゃかめっちゃかにされてしまった。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

『相棒、聞こえるな。奴の打撃を受けたのは、砕けた大剣の破片が相棒の死角を作ったからだ。そこを利用され、あの拳が相棒の腹に突き刺さったんだ』

 

「そう……いう、こと……かよ……」

 

 

奴め、やってくれる。そう思わずにはいられない一撃だった。何度目からわからない一瞬の隙を付かれて、鍛錬が足りないと改めて思わされた。

 

それと当時に、なぜ今まで使っていた『魔剣創造』や『聖剣創造』を使わないのかと冷静さを取り戻すことに成功した。

 

 

「ぐうっ!【ベホイミ】」

 

 

身体の痛みを和らげるため某RPGの魔法で回復しながら立ち上がり、右手で《エクス・デュランダル》を握り、左手には某オサレなバトル漫画の“切り付けた対象の重量を倍にする能力“を付与した聖剣を創造して握る。

 

《エクス・デュランダル》と片手剣状の《侘助》による二刀流で、いざ青いミノタウロスへ斬り掛かろうと構えたところで彼女たちがやってきた。そう、アイズ・ヴァレンシュタインとフィン・ディムナである。

 

 

『『ゥ、ヴォォ………』』

 

「大丈夫? 頑張ったね」

 

「待たせたね、ケンマ。あとは僕たちが請け負うよ」

 

「ベル様、ケンマ様!」

 

 

アイズはアニメ通りだと分かるがフィンさんはどうして? もしかして、俺がブーステッド・ギアの倍加をリリに譲渡したから物語に変化が起きたのか。

 

そう思っていると、二人の強者が現れたことで、二体のミノタウロスは本能的にフィンさんたちを恐れて後退りをしている。

 

 

「今、助けるから」

 

 

そしてアイズから放たれたその言葉を聞いて、地面に蹲っているベルの身体がピクリと反応するとそのまま起き上がろうと踠き始めて、ようやく立ち上がった。

 

 

「いたぁ!フィンにアイズゥー!?」

 

「なにやってんだよ、お前たちは……」

 

 

あとから続いてティオナとベートもやってきたようだ。ベルはというと、ヨロヨロした足取りで血が流れている左手でアイズの腕を掴んだ。

 

 

「…………いかないんだっ。もうアイズ・ヴァレンシュタインに助けるわけには、いかないんだっ!!」

 

 

ベルの腹の底からの叫びを聞いた俺は、胸の中の何が突き動かされる気がした。

 

青いミノタウロスにナメプはしないと言って置きながら何処かで過信していたのかもしれない。《エクス・デュランダル》という最強の武器とブーステッド・ギアという神滅具あれば楽勝で勝てると思い上がっていたのかもしれない。

 

ならば、どうする? 決まってる。友達であるベルが立ち上がったんだ。俺も全身全霊を持って、目の敵に挑もう。

 

 

「フィンさん、今から見せるものは全て他言無用でお願いします」

 

「どういう意味だい、ケンマ」

 

「こういうことです」

 

「な、なんだいその力は………!?」

 

 

意識を切り替えてから俺の身体から迸る青と白が混ざりあったような神々しい聖なるオーラと赤いドラゴンのオーラにフィンさんもたまらず冷や汗を流すが俺の目には、青いミノタウロスしか映っていなかった。それはベルも同じで、赤いミノタウロスしか映っていないだろう。

 

 

「「勝負だッ………!」」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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