臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
「ただいま…………」
「お帰りなさい、ケンマ」
ホームに帰ると帰ってきたことを知らせる挨拶をしてからそのままベッドへと倒れ込んだ。するとヴィクトリアが俺の邪魔にならない位置のベッドに腰を下ろす。
「お疲れみたいね」
「ああ。冒険者登録初日から死にそうになったからな」
「詳しく聞かせて?」
一度、起き上がり話せる体勢になってから今日あったことを報告する。《エクス・デュランダル》と『女王』の能力補正を試したらダンジョンの壁を粉砕したこと。『騎士』の能力補正で調子に乗って、いきなり5階層まで降りたこと。5階層に降りると中層から上層へと上がってきたミノタウロスと命をかけた鬼ごっこをした末に返り討ちにあって、意識を失って、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに助けられたこと。元々、争い事とは無縁だった生活を過ごしていたシティーボーイの俺には濃密過ぎる一日だったことを報告した。
「それは大変だったわね。けれど、一日にそれだけの経験をしたのなら【ステイタス】にも大きく影響してるんじゃないかしら」
「だといいけどなぁ…………」
「さぁ、上着を脱ぎなさい。【ステイタス】の更新をするから」
「はーい…………」
重たい体を起こして、胸当てとパーカー、シャツを脱いで上半身裸になってから再び、ベッドにうつ伏せで倒れ込む。
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石黒ケンマ
Lv.1
《基本アビリティ》
力 : I0→I28
耐久 : I0→I58
器用 : I0→I19
敏捷 : I0→I34
魔力 : I0→I31
《魔法》
【プロモーション】
・『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『女王』に昇格できる。
・昇格した物によって、アビリティ能力超高強化補正。
詠唱:《プロモーション・────!!》
【】
【】
《スキル》
【赤龍帝を宿し者】
・早熟、進化する。
・想いの丈によって効果向上。
・想いの丈によって効果持続。
【魔力操作】
・イメージによって対象魔法の行使が可能。
・対象魔法分の体力、魔力、精神力のいずれかを消費。
・効果、威力はイメージに依存。
・任意発動
【言語和訳】
・全ての言語を和訳。
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【ステイタス】の更新が終わるとヴィクトリアは、呆れたような声を出す。
「やっぱり、ドラゴン系の神器で神滅具なだけあるわね。熟練度の成長がトータル180オーバーなんて、普通じゃあり得ない数値よ」
「ダンジョンの中でブーステッド・ギアは覚醒させたからだな」
「なるほどね。明日もダンジョンにも挑むの?」
「ああ。金を稼がないと家賃が払えなくて追い出されるからな」
ヴィクトリアが伝で借りてくれたこの一軒家の家賃は一ヶ月で五◯◯◯◯ヴァリス。日本と大差がないくらいの金額だ。更にこれから自炊やら何やらをするために二~三◯◯◯ヴァリスくらいは必要になってくる。
なので、出来るだけ早く【ステイタス】の熟練度を向上させて、多くのモンスターを倒す必要がある。幸い、武器なんかの修理費は『魔剣創造』と『聖剣創造』のお陰で必要ない。
「わたしもバイトを始めようかな」
「もしかして、ジャガ丸くんのバイトか?」
「あら、よくわかったわね」
「前世で、この世界にいる処女神の一人がバイトしてるのを知ってるからな」
「ああ、それで」
結成したての【ファミリア】の主神は、どこもバイトをする運命にあるようだ。そこまで考えたところで、ある店を思い出す。
「なぁ、ヴィクトリア。バイト先の話だが、ウエイトレスをやってみる気はないか?」
「ウエイトレス?それって、料理やお酒を給仕するあのウエイトレス?」
「ああ、この世界にある良い店を知っている。そこならジャガ丸くんのバイトよりも給料もいいはずだ」
正直なところ、ヴィクトリアをあの店のウエイトレスとして雇ってもらい、その店に雇われているとあるエルフと接触するの目的だ。そして、あわよくば、そのエルフに冒険者としての戦い方を師事するつもりである。
彼女は、【疾風】の二つ名を持つLV.4の第二級冒険者。師事する相手としては不足はないはずだ。
「わかったわ。ケンマがオススメするそのお店には、明日の朝、バイトできるか聞きに行ってみましょう」
「もし、バイトできるなら俺もそこで夕飯を食って帰れば、ヴィクトリアと一緒に帰れるな。あと、弁当とかも頼みたいかな」
「そうね。確かに、そうすればご飯も食べれて一石二鳥ね」
ヴィクトリアの説得は上々のようなので良かった。あとは、俺の努力次第だ。
○●○
翌日、朝食を食べてからヴィクトリアがこれからバイトをするお店を探している。アニメではそれなりに大きな通りだったので直ぐ見つかるはずだ。
しばらく大きな通りを歩いていると見たことのあるウエイトレス服を着ている女性店員を見つけたので、これ以上宛もなく探し回る必要がなくなった。
「見つけた」
黄緑色のウエイトレス服を着た女性が入っていくお店の前にヴィクトリアを連れて行く。
「ここがケンマの言っていたお店?」
「そうだ。『豊饒の女主人』、ここが目的のお店だ。今は準備中だけど、入るぞ」
この世界に電話などはない。更に『豊饒の女主人』は、冒険者の間ではめちゃくちゃ有名な店なので開店時間になればお客が直ぐに来てしまい時間を貰えるかわからない。
「すみません」
なので、不躾であるが準備中に訪問するしかないのである。店の中に入るとアニメよりも綺麗な容姿をしているエルフで【疾風】の二つ名を持つ、リュー・リオンと可愛い容姿をしているキャットピープルのアーニャ・フローメルが準備をしている手を止めて対応してくれた。
「申し訳ありません、お客様。当店はまだ準備中です。時間を改めてお越しになっていただけないでしょうか?」
「まだミャーたちのお店はやってニャいのニャ!」
「いえ、客ではなくて店長にうちの女神をバイトとして雇ってほしいのと、エルフのあなたに冒険者の戦い方を師事したくて」
「バイトの件はわかりました。けれど、戦い方の師事はどうして私なのですか?」
リューさんの質問に俺は返答を考えてしまう。そんな時、隣にいるヴィクトリアが助け船を出してくれた。
「わたしがあなたの主神と交流があるからよ」
「なるほど、あの方とお知り合いでしたか。けれど、改めてなぜ私なのですか? あなたも冒険者であれば、同じ【ファミリア】の仲間の誰かに師事すれば………」
「恥ずかしい話だけど、わたしの眷属はこの子だけなのよ。なにせ、昨日できたばかりの弱小【ファミリア】なの」
「…………それは失礼しました。しかし、戦い方の話は考えさせてください。まずは、ミア母さんを呼んできます。アーニャは、開店準備の続きをしていてください」
そう言い残して、リュー・リオンはカウンターの奥へと姿を消した。
「助かったよヴィクトリア。流石に、前世のことをバカ正直に話す訳には行かなかったからさ」
「貸し一つよ。けれど、あのエルフの子はそんなに強いの?」
「彼女は、元ではあるけどLV.4の冒険者だ。それに腕も鈍ってないはずだからな」
「それで彼女を指名したのね。納得が言ったわ」
しばらくヴィクトリアと話をしているとカウンター奥から俺よりも背が高く、図体もでかい女性がリュー・リオンと共にやってきた。彼女こそが、この『豊醸の女主人』の店主にして、【フレイヤ・ファミリア】の元団長に加えて、オラリオでも数少ないLV.6の冒険者であるミア・グランドである。
実際に目の当たりにすると貫禄がヤバい。
「あんたかい、女神様をうちにバイトとして雇わせたいのは」
「そ、そうです。昼間、ダンジョンに行っている間に暇を持て余すのも勿体ないのと、うちの【ファミリア】は結成したての貧乏【ファミリア】なもので…………」
「なるほどね。それでバイトとリューに戦い方の師事をね。バイトの件はわかった。けれど、戦い方の方は本人に聞きな。悪いけど女神様、おたくの名前を聞かせてもらえるかい」
「わたしは、ヴィクトリア。勝利を司る女神よ」
「なら、神ヴィクトリア。バイトの話をしたいか着いてきておくれ」
バイトの話をするために、ミアさんとヴィクトリアが二階へと姿を消すと、この場に残ったのは俺とリュー・リオン、それからチラチラと俺たちを眺めているアーニャだけである。
「そういえば、師事をお願いしてるのに自己紹介をしてなかったですね。俺、石黒ケンマって言います。ケンマが名前で、石黒が名字です。それから【ヴィクトリア・ファミリア】の冒険者です」
「これはご丁寧に。私は、リュー・リオン。元冒険者です。それで、イシグロさんは私に戦い方を師事して、どうしたいのですか?」
「どうしたい、と言われても強くなりたいとしか答えられないですね。恥ずかしい話、昨日のダンジョンで偶々上層に上がってきたミノタウロスに殺されかけまして、必死に足掻いてみた挙げ句、全く敵わなくて、最終的には偶然居合わせたあの有名な【剣姫】に助けられる始末です」
「それは仕方ないのではないでしょうか。イシグロさんはLV.1の冒険者で、ミノタウロスはLV.2相当のモンスターだ。それなのに、生きて帰れたことは奇跡に等しい」
確かに、この世界でのLV. は一つ違うだけで雲泥の差を生むほどの違いが出てくる。『ハイスクールD×D』の神器でいうところの《禁手》に至っているか否かの差だ。
それだけの差があるのに、生きて帰れたことは確かに奇跡的だろう。
「それでも、勝ちたかったです。とある方からの贈り物ではあるけれど、第一級品の武器もあったのに実力不足で当てることすらできなかった。それがとても悔しいです。だから強くなりたい」
あの時の悔しさを思い出しながら拳を握っていた。
「…………そこまで仰るのならばわかりました。明日の早朝から鍛練を始めます。遅れないように」
「はい!」
どうにか、リュー・リオンに師事することに成功したので良かった。バイトの方は、ヴィクトリア次第なので俺がここにいる理由もないのでダンジョンへと向かうことにした。
「それじゃあ、俺はダンジョンに行くんで、ヴィクトリアにも伝えてもらっていいですか?」
「わかりました。ご武運を」
「ありがとうございます!」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に