臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

40 / 176








第四十話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

フード付きパーカーの戦闘衣を購入した店の鍛冶師に任せてから元々の目的であるヴェルフを探していると、色々な防具や武器が乱雑している店で見つけた。

 

 

「あ、いたいた。ヴェルフ!」

 

「ん? おっ、ケンマじゃねぇか、どうした何か用か?」

 

「どうしたもこうしたも例のパーティーの話がまとまったから伝えに来たんだよ」

 

「本当か!?」

 

「ああ。答えは、オッケーだってっさ」

 

「マジか、オッシャア!」

 

 

俺たちのパーティーに加わることが出来ると知るやヴェルフはその場でガッツポーズを取りながら喜ぶ。

 

 

「喜ぶのはいいが、それを伝えに来るだけにヴェルフを探した訳じゃないぞ」

 

「ん、そうなのか?」

 

「ヴェルフに依頼があってな」

 

「依頼…………どんな依頼だ?」

 

「俺に防具を作って欲しいんだ」

 

 

防具を作って欲しいとヴェルフに言うと、ヴェルフは目を数回瞬きして驚いていた。そこへ、店のカウンターで肘を付いている親爺から『クロッゾの魔剣』の話が飛んでくる。

 

 

「おいおい、坊主。魔剣はいいのかよ、魔剣は? そいつの知り合いなら、そいつが魔剣を打てることを知らない訳じゃあるめぇ」

 

「……………」

 

「ああ、噂のクロッゾの魔剣か。別に必要ねぇな」

 

「「は?」」

 

「だって、俺が欲しいのは数回振って壊れるような消耗品よりも長く俺を守ってくる防具のような消耗品の方がいい。それによく言うだろう? 命あっての物種だってさ」

 

 

本当のところは、態々クロッゾの魔剣よりも汎用性の高い『魔剣創造』で創造したバリエーション豊富で強度もそれなりにある自前の魔剣を使った方が数倍マシである。探索中にポッキリ逝かれてしまっては困る。

 

防具なら易々とは壊れないし、使い所に困ることは大抵ないはずだ。それに俺は臆病者だ。特別な武器よりも今は自分の命を守る鎧をしっかりと揃えたい。

 

 

「は、ハハハ、ハハハハハ!! いいぜケンマ!どんな好きな防具でもお前になら作ってやるよ!!」

 

「それじゃあ、早速だけど前にこの店に置いていた白いライトアーマーの色違いを頼みたいんだ」

 

「白いライトアーマーといやぁ………《兎鎧》のことか? それの色違いって、そんなのでいいのか? なんか他にないのかよ?」

 

「まぁ理由は後で話すよ。それより採寸とか頼む」

 

「お、おう。なら、俺の工房に案内するぜ」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

ヴェルフに連れられてやってきたのは【ヘファイストス・ファミリア】のテナントがあるバベルから外に出て、北東のストリートを歩いていると如何にも職人という風貌の人が多く見られる。更に歩いて行くと箱形の大きな建物、前世の社会科見学で見学した群馬県にある富岡製糸場のような一目で工事だも分かる建物も職人たちが多くなるに連れて増えていく。

 

 

「そこの角、曲がるぞ」

 

 

細い路地を何度が曲がった果てにあったのは、こじんまりとした煙突がある平屋作りの建物、これまたアニメや漫画などに出てくるような代表的な鍛冶屋を彷彿させる工房だった。

 

 

「如何にも鍛冶屋だな」

 

 

そんな在り来たりのコメントしか出てこなかった。

 

 

「その顔を見るからに、ケンマはここら辺に来るのは初めてか?」

 

「ああ、基本的に冒険者通りしか行ったことがない」

 

「そうか。なら一応教えておくが、ここら辺一帯は職人連中の縄張りでな。こんな工房や工場はざらにある。俺たち【ヘファイストス・ファミリア】のホームもすぐ近くだ」

 

「職場環境は充実してるわけか」

 

 

初めての場所で迷わないようヴェルフの後を追いかけることに意識を向けていた所為、そこまで気になることはなかったが改めて周りの景色を観察していると、耳に金属同士が衝突する音や何かに強い衝撃を与える音などが届いてくる。

 

前世では、この響き渡る音が煩わしいと思っていたが異世界への転生して、これから自分だけの専用の防具を打ってもらえると思うとそこまで煩わしく感じることはなくなっていた。逆にワクワクしてくる。

 

 

「突っ立ってないで、そろそろ入ろうぜ?」

 

「わ、悪りぃ………色々と物珍しくてな」

 

 

ヴェルフに招き入れられて、ヴェルフの工房へと踏みいる。

 

最初に感じたのは、濃厚な鉄の臭い。それは小銭を握り締めた後に手の臭いを嗅いだ時と同じくらい強い臭いだった。

 

鉄の臭いに圧倒されている間に、ヴェルフは鎧戸を開けて工房に光を入れる。すると、暗かった室内が光源が入ってきたことで部屋の全貌が明らかになる。

 

沢山の鉄器が壁に吊るされており、他には金属を鍛錬するための鎚や金属を炉に入れるため使う大きめなペンチのような道具などアニメとかで見たことのある鍛冶屋の道具が溢れていた。

 

 

「わるいな、汚い所で」

 

「いや、初めて鍛冶師の工房に来てワクワクしてる」

 

「フッ、そうか。んじゃあ、取り敢えずケンマの要望通り、防具の採寸をさせてくれ。後は俺が勝手にやる」

 

「頼む」

 

 

数字が細かく刻まれている前世で言うところのメジャーのような物をヴェルフが持ってくると俺の身体を一つずつ計測しては紙に値を書いていく。

 

 

「なぁ、ケンマ。本音のところはどうなんだ?」

 

「なにが?」

 

「魔剣だよ、魔剣!さっき親父の店で魔剣はいらないとか言ってたけどよ、本音はどうなんだよ?」

 

「んー、やっぱり俺はいらねぇかな」

 

「理由は店で言ってたのと同じなのか?」

 

「それもあるけどそれだけじゃないな」

 

「それだけじゃないって、じゃあなんだよ」

 

「今は言えないかな」

 

 

まだ出会って日も浅く、パーティーも組んでもいないのにヴェルフに俺の『魔剣創造』を打ち明ける訳には行かない。俺の中では、ヴェルフを加えたパーティーで『中層』に挑む時には嫌でも説明する羽目になるのは予想できているので、それまで引き延ばしたい。

 

 

「言えないならしゃねぇ。んじゃあ、次だ。ケンマが俺の作った防具、兎鎧の色違いが欲しい理由を教えてくれ」

 

「別にいいけど、他言無用だぞ」

 

「分かった、約束する」

 

「それじゃあ、何でその兎鎧の色違いが欲しいのかって言ったらパーティーリーダーがそれを使ってるからだ」

 

「マジか………」

 

「おう、マジだ。加えて、先日のミノタウロス事件は聞いてるか?」

 

「ああ、なんでも9階層にミノタウロスが二体現れたっていう………でも、【ロキ・ファミリア】の冒険者が対処したんだろう。それが何の関係が………」

 

「ところがどっこい、そのうちの一体はうちのパーティーリーダーが単独撃破してるんだ」

 

「は? いやいや、嘘付くならもっとまともな嘘を───」

 

「多分あと二~三日でも経てば『神会』で二つ名まで付けられるはずだ、【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネルにな。更にそのベルから依頼だ。同じライトアーマーが欲しいとよ、ミノタウロスとの戦いで大分傷んでたからな。俺の戦闘衣も傷んでるって言われたしな」

 

 

ネタバレで悪いかもしれないヴェルフにはベルと専属契約を結んで欲しい、できれば俺もだが。そのために、二つ名持ちになるであろう冒険者が自分の作品を贔屓してくれようとしていると聞いて、気にならない鍛冶師はこの場にはいないはずだ。

 

 

「二つ名持ちなるかもしれない冒険者が俺の作った防具を気に入ってくれてる……ハハ、ハハハハ!!」

 

 

自分が丹精込めて作った作品を認められてヴェルフも喜びが隠し切れずに笑い声が溢れ出る。

 

 

「喜んでるところ悪いが、そういう訳もあってミノタウロスから偶然とはいえLV.1 の冒険者を守り切れるほどの防具が欲しいと思ったんだよ」

 

「なるほどな、要はゲン担ぎみたいなものか」

 

「そうそう、そんな感じ。で、色だけど、こんな感じの色合いをすることはできるか」

 

 

防具の色を指定の色にしてもらうために、見本の色合いを持っているブーステッド・ギアを具現化させてヴェルフに見せる。それを見たヴェルフは、大きく目を見開いて固まってしまった。

 

しばらくして我に戻ったヴェルフは、直ぐに興味深そうなに俺の腕ごとブーステッド・ギアを掴んで観察し始めた。 

 

 

「おいおい、一体絶対どうなんてんだそりゃ!? いきなり何もないところからケンマの腕に籠手が装備されたと思えば、見たこともないデザインをしてやがる!!」

 

「こいつの名前は、ブーステッド・ギア。とある龍の素材を使って作られた俺専用の魔道具だ」

 

「これが魔道具!? どう見ても籠手だろう………な、なぁケンマ、こいつを色々調べてもいいか? その代わりに防具の値段はかなり安くするからよぅ」

 

「別にいいけど、防具のカラーリングは頼むぜ」

 

「任せろ!」

 

 

別に見せるだけならば心配はないし、調べると言ってもアザゼルみたく詳しいことは分かるはずもないだろう。

 

それからしばらくブーステッド・ギアを調べるために、ヴェルフは小鎚で叩いて耐久力を試してみたり、ヤスリで表面を削って素材のサンプルを採取しようとしたり、俺の左腕を持ってはあちこち見方を変えながらブーステッド・ギアの観察をしながら全体のフォルムやデザインなどを羊皮紙に描いてみたりを繰り返した。

 

 

「ふぅ………いや、悪いな。見たこともないデザインに未知の素材で作られてる物だったからつい鍛冶師として熱が入っちまった」

 

「別に気にしてないが、やっぱり珍しいか?」

 

「ああ、俺もそれなりにオラリオの街にいるがブーステッド・ギアといったか? こいつは全てが初めてだ。ヘファイストス様に見せたら絶対に俺みたいに色々と調べようとするぞ」

  

 

その話を聞いた俺は、ヘファイストスであれば《エクス・デュランダル》と《真のエクスカリバー》を見せても構わないと思った。その理由は、どちらも刃物であるため刀身が磨耗するのは必然的。そのため、ヘファイストスに伝説の聖剣二振りを研磨してもらおうと考えたからだ。

 

 

「そういや、こいつは魔道具なんだよな。どんな能力があるんだ?」

 

「ナイショだ。ベルたちにもブーステッド・ギアの能力までは話してないしな」

 

「そうなのか。でも、いつかは聞かせてくれよ。もしかしたら今度の防具作成に役立つかも知れないからな」

 

 

あれ? 『鍛冶』の発展アビリティで効果付きの防具って作れたっけ? たしか魔道具を作るには『鍛冶』とは別のレアな発展アビリティが必要だったのをどこか聞いたか読んだ覚えがある。

 

それも俺の記憶が正しければ、この世界でそのレアアビリティを持っているのはウラノスの側近であるフェルズと【ヘルメス・ファミリア】の団長であるアスフィだけが持っていたはずだ。他に誰が持っていたかは覚えていないし、知らない。これがアニメ勢の限界である。

 

 

「次は足周りだな」

 

 

最後は、足の形を採るために少し大きめな羊皮紙に足を乗せてから三角定規で親指と人差し指の先端部に印を付けてから同じ物を今度は踵部分に付ける。

 

次に足全体の輪郭を描いてから指の付け根の出っ張り部分、親指と小指の左右に出っ張っている部分に先ほどと同じ印を刻み、それが終われば付け根の周りを計測。残りは、俺の足の特徴を細かく羊皮紙にメモ書きしていくだけであっという間に終わった。

 

初めて足の形よりも計測などをされて新鮮味のある経験だった。これがオーダーメイドというやつなのだろう。これで俺だけの唯一無二の防具がこれから作られると思うとドキドキ、ワクワクしてくる。

 

 

「よし、これで終わりだ」

 

「完成には大体どのくらいかかりそうだ?」

 

「そうだな………ベル・クラネルの方はもう出来上がってるからいいが、ケンマのは一から全部作るからそれなりに時間がかかる。ざっと一週間前後だと思ってくれ。値段もそれまでに計算しておくから支払いもその時で構わない」

 

「分かった、一週間後だな」

 

 

一週間後に防具が完成すると聞いて、『中層』へ挑むまでに間に合うかと一瞬不安が過るがベルたちにしっかりと相談すれば、完成するまでは待ってくれると思うので直ぐに不安は解消された。

 

 

「今日はこれで終わりだから帰っても大丈夫だぞ」

 

「なら次に来る時はベルも一緒に連れてくるけど、ずっと工房にいるか?」

 

「ああ、当分は工房にいると思う。少しでも早くお前さんとベル・クラネルの防具を完成させたいからな」

 

「分かった。それじゃあ、防具をよろしく頼む」

 

「おう」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。