臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第四十一話

 

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

「ここら辺でいいかな」

 

 

辺りを見渡し、LV.2 の聴覚で他に誰もいないことを確認してから解号を口にする。

 

 

「散れ───千本桜!!」

 

 

解号に呼応して俺が手に持っている剣の刀身が切っ先の方からヒラヒラと桜の花弁となって舞い散り、周囲を舞い踊る。

 

場所は7階層の奥にある食料庫近くの通路、ここは以前ナァーザさんの冒険者依頼で来たことがあり、滅多に他の冒険者も来ることがないことは覚えている。そのため、青いミノタウロスを倒したことで成長した『聖剣創造』と『魔剣創造』の状態を確認するには持って来いの場所である。

 

 

『どうやら、念願の桜の魔剣が完成したようだな相棒』

 

「だけど、制御が難しいな」

 

 

今朝、リューさんの鍛練で試した無数の魔剣を操作して、雨のように頭上から降らせたり、黒髭危機一髪のように全方位から魔剣で襲わせたりするよりも《千本桜》の制御が何十倍も難しい。それを億単位で制御する某オサレなバトル漫画のわかめ大使の兄様はどんだけ鍛練を積んだのか。

 

てか、あれは剣にも自我があるので俺よりも難易度低いのではないかと思えてきた。そこで俺は考えてみた。

 

 

「なぁ、ドライグ。お前が内から魔剣創造を操作できたりしない?」

 

『無茶を言うな。ブーステッド・ギアならまだしも、他の神器は専門外だ』

 

「ですよねぇ………」

 

 

もしもドライグが内側から『魔剣創造』や『聖剣創造』を操れるのであれば戦い方に広がり増えると思ったのだが、そう思うようにはならないようだ。

 

内心残念に思っていると食料庫の方から食事を終えたモンスターの一行がやってきたので、試し切り感覚で右手をモンスターたちに突き出して《千本桜》を操作する。食事を終えて心地の良い満腹感が浸っているところへ無数の小さな桜の刃が襲いかかり、あっという間にモンスターたちを細切れにして見せた。

 

 

「リアルだとエグっ!?」

 

『ほう、これは中々いい武器だ』

 

「今の見て、俺の頭に色々とエグい戦法が浮かんでしまったのだが大丈夫かな?」

 

『相棒も相当エグい戦法を考えるものだ。敵の口から《千本桜》の桜刃を飲み込ませて内部から臓物をズタズタにするという鬼畜を超えて、最早外道の域の戦法を。だが、それも立派な戦法の一つだ』

 

「止めて、止めてくれ! 青いミノタウロスを倒した時から先手必勝で魔剣で目を潰して、そこから更に魔剣を生やして脳髄を剣山にしてやれば一切ダメージを受けることなく楽勝で勝てたとか外道極まりない考えがあったんだからさ!!」

 

 

本当に自分で考えて置いて外道極まりない。某正義の味方が闇堕ちした男の必殺技と同等かそれ以上の外道技だよ。これがテレビアニメなら間違いなくG-R18(グロい18禁)指定される技だ。ベルだとか、リリだとか、春姫だとかには見せられない。

 

そう思いながら俺は食料庫へと足を踏み入れて、前回は愚作だと思っていた食料庫内でモンスターとの戦闘を《千本桜》の操作に慣れるため強行した。

 

 

『キャインキャインッ!?』

 

『ピギャギャッ!?』

 

『ギャギャッ!?』

 

『ギィギィッ!?』

 

 

意外と何とかなるものだった、というよりも操作になれてしまえば7階層のモンスターでは物足りないのが現状だった。最初こそ《千本桜》の操作に手間取って、背後からの攻撃を体術で捌いたり、新しく別の剣を創造したりと試行錯誤を続けていた。

 

けれど、今となっては座ってるだけで食料庫に集まってくるモンスターがホイホイと寄って来ては無数の桜刃に切り裂かれて魔石とたまにドロップアイテムを残して灰に散っていくだけとなった。

 

これならば、今まで一番伸びが低くかった『器用』の基本アビリティも爆上がりするのではないかと期待してしまう。

 

 

「そろそろ次の魔剣に移るか」

 

 

それなりに《千本桜》の操作にも慣れて、わかめ大使のように使用者の周囲半径八十五センチメートルの間合いだけ桜刃が入って来ない絶対領域、『無傷圏』の形成に成功した。けれど、オリジナルのように無意識レベルとまでには至っていない。

 

『無傷圏』を形成するには、台風をイメージして台風の目の周りにある雲が桜刃と例えながら比較的安全圏である台風の目を『無傷圏』と位置付けることで桜刃が俺の周りに届かないようにすることが出来ているのである。

 

そして、次の新しい魔剣を試すためにもまずは《千本桜》で倒したモンスターの魔石やドロップアイテムなどを拾わなけらばならない。こういう時にサポーターであるリリの有難味が凄く感じられる。

 

 

「ふぅ…………これで全部だな」

 

『思いの他、ドロップアイテムが出ていたようだな』

 

「ああ、これは俺もちょっとびっくりだな」

 

 

久しぶりに埃を被っていたギルドで支給されたバックパック限界に魔石やドロップアイテムが収まっている光景を見て、《千本桜》の試し切りで一体何十匹のモンスターを倒したのだろうかと僅かに頬が引き連れる。

 

魔石とドロップアイテムの回収が終わったら、少し手間ではあるが『敏捷』の基本アビリティを鍛えるために【プロモーション】の魔法で『騎士』へと昇格して、バベルの中にある換金場まで全力疾走することにした。

 

 

「【プロモーション・ナイト】!!」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「ふぅ………さすがはLV.2 の身体だ、LV.1の時と比べて滅茶苦茶体力が付いてる」

 

 

 

バベルの換金場で魔石をヴァリスに換金した後、このあと試す新しい魔剣に使う道具をバベルの道具屋で買い揃えると言っても買う物は精神力回復薬だけであり、購入した精神力回復薬をバックパックに詰めて、再びダンジョンへと戻る。

 

そして、今度赴いた階層は5階層で《千本桜》を試した時と同様に正規ルートから外れて他の冒険者が立ち入らないような場所を目指す。

 

 

「ここまでくればいいかな」

 

 

周囲に人の気配がないことを確認してから特殊効果のある魔剣を大剣サイズで創造する。創造できたらそれを地面に突き立ててから少し距離を取る。

 

あとは、その魔剣に向かって魔法を放つだけの簡単なお仕事。

 

 

「手始めに…………ドラゴンショットッ!!」

 

 

拳から放たれた赤い魔弾が魔剣へと迫ると、命中するはずの僅か手前で不思議にドラゴンショットが魔弾と同じ赤い粒子となって刀身に吸い込まれたからだ。

 

その光景を目撃した俺は口角がこれでもかもと上がる。何故なら、前々から考えていたある種、理想の魔剣が出来上がったからだ。

 

 

「よし!対魔法用の魔剣、名付けて《魔法喰らい》の完成だ!」

 

 

ただこれで完全ではない、そう俺は思っている。いくら魔法を消し去る魔剣が出来てもそれは俺が創造できる力量の範囲での話だ。これが『穢れた精霊』の超長文詠唱の魔法を消し去ることができるのかと問われれば、答えようがない。

 

なので、現段階でどこまで《魔法喰らい》が魔法を消し去れるのかを把握する必要がある。そのために態々、精神力回復薬を買ってきたので色々と試す。

 

 

「次は………借りるぜ、ベル!ファイアボルトッ!!」

 

 

【魔力操作】のスキルでベルの『魔法』である【ファイアボルト】を行使、俺の手から五条の炎雷が放たれて、その悉くを《魔法喰らい》は消し去る。

 

《魔法喰らい》が炎属性の魔法である【ファイアボルト】を消し去ることが出来たということは、『中層』に現れる『ヘルハウンド』の火炎にも有効だということが証明された。

 

 

「炎属性の耐性もばっちりだな。それじゃあ、今度は、ブーステッド・ギア!!」

 

『Boost!!』

 

 

当面の目標であった炎を消し去る魔剣が出来上がったので、ここからは耐久限界を調べる方向へとシフトしていく。手始めに六回ほど倍加した魔法をぶつけてみる。

 

ブーステッド・ギアが装備された左手を真っ直ぐ伸ばしながら爪先に魔力を収束させていく。イメージするは、オサレなバトル漫画に出てくる仮面を付けた敵キャラの技、赤い攻撃といったらドラゴンショット以外に他が浮かばなかった。

 

 

「虚閃」

 

 

二の六乗で六十四倍された【虚閃】が、上下左右のダンジョンの壁を赤い閃光で呑み込んだ光景を見て、過去の経験から「これはやらかした!?」と思うよりも先に大爆風が俺の身体を掬い上げて後方へと吹き飛ばした。

 

 

「がああああっ!?」

 

 

爆風によって揉みくちゃにされながら何度も身体に強い衝撃が襲いかかる。何度かに渡って衝撃を受け続けていると身体の勢いが弱り、倒れ伏した身体を起こすと代用品としてホームに埃を被っていたギルドから支給された胸当てが何ヵ所か凹んでいて、そのくらいの勢いで吹き飛ばされたのだと理解する。

 

自分がLV.2 であり尚且つLV.1 の最後に更新した『魔力』の基本アビリティの値がSSだったことを今更ながらに思い出して、少し大きめのダンプカーが通れるくらいの通路で六十四倍も強化した魔法を放てばどうなるかなんて分かりきっていたのにも関わらず、安易に倍加してしまった自分に後悔する。

 

今頃地上では、突如として生じた大爆発でオラリオの街が揺れた真相を確かめようとギルドが動き始めるはずだと考えながら、さすがに岩肌が完全に消失してダンジョンの内側が見え隠れしているこの場に留まるのは危険だと思い逃げ出す。

 

 

『相変わらず、人目がなければ相棒は自重というものを考えない男だな』

 

「悪かったって! 俺だって虚閃を撃ってから自分がLV.2 で、最後に【ステイタス】を更新した時に魔力のアビリティがSSだったのを少しド忘れしたんだよ!?」

 

『しかし、LV. とやらが一つ上がるだけでこうもかわるとはな。さっきの一撃は、イッセーがフェニックスの小僧の眷属に放っていた魔力よりも威力があったぞ』

 

「フェニックスというとライザーか、でもその眷属に放った魔力といえばドラゴンショットだよな。さらにそれを受けた相手となると、『戦車』のイザベラか」

 

 

ドライグの感想を聞きながら、それから導き出された『ハイスクールD×D 二巻』のワンシーンを思い浮かべながら肝心の六十四倍の【虚閃】を受けた《魔法喰らい》がどうなったを把握する。

 

すると『魔剣創造』から威力に負けて、存在その物が跡形もなく消し飛んでいることは判明したので態々取りに戻る必要も誰にも拾われる心配もなくて安心する。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈sideエイナ〉

 

 

 

「急いで上級冒険者宛に冒険者依頼を作成しろ!昨日のミノタウロス事件といい、ダンジョンの『上層』で何が起こっているのかを冒険者たちに確かめさせるんだ!!」

 

「は、はい!」

 

 

ギルド本部では、私も含めて全職員が慌ただしく動きいている。その理由は、数分前に突如として起こった巨大な揺れが原因、それも机に乗せていたティーカップが揺れで床へ落ちるほどの大きいものだった。

 

そんな事件が厄介なことに数日もすれば三ヶ月に一回行われる神々の会合、『神会』が行われる前に行ればギルド本部が慌ただしくなるのも必然的である。

 

 

「もう~!どうしてこう『神会』が数日後に迫ったこんな時にこんなことが起こるのよ~!それにこういう時に限って、【ロキ・ファミリア】の冒険者たちは『遠征』でいないし~!!」

 

「泣き言を言ってないで手を動かしなさい、ミィシャ!」

 

「うぇ~ん、エイナ~!?」

 

 

私が『学区』に居た頃からの友人で、ピンク色の髪を特徴とした童顔の女性であるミィシャ・フロットが涙目になりながら泣き言を言って来るので、いつもの如く檄を飛ばしながら自分も急いで作業を行う。

 

ただ作業を行う中、私は自分が担当している駆け出しの冒険者である二人の男の子のことが心配でならない。何故なら昨日、ダンジョンに向かってから私の下に一度も訪れていないからだ。

 

二人とも何かしらのトラブルに巻き込まれる体質なのか、【ロキ・ファミリア】が撃ち漏らしたミノタウロスから始まり、『怪物祭』での【ガネーシャ・ファミリア】が調教する予定だったモンスターの脱走や未確認のモンスターの遭遇。最近では、またミノタウロスが『上層』に現れたという報告も受けているので、いくら心配しても足らないくらい心配させてくれるものだから苦労が絶えない。

 

 

「二人とも、無事だよね………」

 

 

心配のあまり思わず呟きが口から出てしまうほどに、二人のことが心配だった。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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