臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第四十三話

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

「ちわ~すッ」

 

「いらっしゃいませ、イシグロさん」

 

 

ギルドにて、エイナさんに帰還報告してからホームで『魔剣創造』のバリエーション研究をしながら時間を潰して、予定の十八時より少し早いタイミングで祝勝会が行われる『豊饒の女主人』にやってくるとリューさんが出迎えてくれた。

 

 

「まだ二人は来てないですけど、いいですか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。席は確保されているので、ご案内します」

 

「お願いします」

 

「ご予約のお客様がお見えになりました!」

 

 

鍛練の時以外はあまり聞かないリューさんの大きく声を張る接客に新鮮味を感じながら予定のテーブル席へと案内してもらう。

 

テーブル席に座ったらメニューを見ながら店の中にいる冒険者たちを視界の端に捉えながら知っている人はいかないと思っているとあっさりと見つかった。その人とはお互いに初対面ではあるがアニメで見たことのある男性冒険者がアニメ通り、向かいの席に座って仲間たちとお酒を飲み交わしている。

 

 

「あ、そうだ!」

 

 

彼らが飲み交わすお酒を見て、ちょっとしたことを思い付いたので俺の中にいるドライグに相談することにした。

 

 

(おーい、ドライグ)

 

『どうした、相棒?』

 

(前世の情報サイトでドライグたち、ドラゴンはお酒を好むって書いてあったんだけど、ドライグもそうだったりする?)

 

『無論だ。俺たちドラゴンは戦いと宝、美味い食い物。そして、雌を好む種族だ。まぁ、俺はどちらかというと戦いを多く好んでいたがな』

 

(それで喧嘩の理由が分からなくなるほど長い間、アルビオンと殺り合って神器に封印されるまでが流れね)

 

『た、確かにそうだが……。それで、何が聞きたかったんだ?』

 

(いやな、この一ヶ月ドライグのお陰もあって俺もLV.2 に【ランクアップ】したじゃん? そのお礼として、ドライグにブーステッド・ギアからお酒を飲ましてやりたいなと、思ってな。できるか?)

 

『相棒、お前ってやつは…………。よし、任せろ!なんとかして神器のシステムを弄って、酒を飲めるようにしてやる!ヤッホー、久しぶりの酒だ酒ー!酒が飲めるぞー!!』

 

 

それを最後にドライグはしばらくブーステッド・ギアの奥底へと潜ってしまった。

 

まぁ、好きな食い物が食べれないのは誰しもが苦痛を感じるはずだ。それに先代の赤龍帝であるイッセーは俺とほぼ変わらない歳で学生だった。そのため、お酒を入手することなんて滅多になかったはずだし、俺みたくブーステッド・ギアをこんな使い方をする考えもなかったはずだ。

 

ブーステッド・ギアの使い方について少し考えにふけていると、店の入り口からヴィクトリアに先導される形でリリがやってきた。

 

 

「ケンマ様、お早いですね」

 

「今日は俺持ちだから少し早めに来てたんだ」

 

「なるほど、ベル様はまだですか?」

 

「ああ、主役はまだだ。主役が来るまで好きな物を注文していからな」

 

「ありがとうございます」

 

 

ベルが来るまでの間、暇な時間が生まれるのでこの時間を使って、リリにヴェルフを俺たちのパーティーに加える事後報告をすることにした。

 

 

「そうだ、リリ。前に俺の知り合いをパーティーの仲間に入れたいって言ったの覚えてるか?」

 

「ええ、もちろん覚えています。それがどうか……もしかして」

 

「事後報告で悪いが、ベルと相談してヴェルフを俺たちのパーティーに加えることになった」

 

「はぁぁぁ………事前に相談はされていましたし、何よりケンマ様のお知り合いということなのでこれ以上とやかくは言いませんが。リリは、ヘスティア様からベル様の身の回りを頼まれています。ですので、今後は新しい方を編入させる際には事後報告ではなく、しっかりリリとも対面してから編入を考えていただきたいです」

 

 

ヴェルフのパーティー加入を事後報告でリリに伝えると、深い溜め息と愚痴混じりで次回からは気を付けるように注意を受けてしまった。

 

 

「本当にごめん。でも、新しくパーティーに加入するヴェルフは、偶々ベルのライトアーマーを作ってる鍛冶師なんだ」

 

「つまり、物で釣られたと?」

 

「そうとは言わないけど、ヴェルフは信じられる鍛冶師だよ。それに、今後はあいつに色々と世話になるだろうしな」

 

 

ベルのライトアーマーを作っているのがヴェルフだと教えると「物で釣られたなと」リリに睨まれてしまったが間違いなく今後、ヴェルフ・クロッゾという一人の鍛冶師に俺たちは色々と世話になる。なので、ヴェルフのパーティー加入は何としても認めてもらう必要があった。例え駄目だとしても、ベルにゴリ押してもらえばリリは納得するので心配はしていなかった。

 

それからしばらく、ヴェルフの特徴についてリリに説明していると息を切らしながら遅れて主役であるベルがやってきた。

 

アニメにはなかったが、大方『未知』と『娯楽』が好きな神々に勧誘やらスキルの詳細やらを聞かれて逃げ回っていたのだろう。そう考えると中層から帰ってきたあとに【ランクアップ】の申請する俺も同じ轍を踏むことになると思うと少し憂鬱になる。

 

そして、ベルが店にやってきたことでお酒を飲んでいた冒険者たちが一同にベルに注目する。

 

 

「一躍人気者になってしまいましたね、ベル様」

 

「それも良し悪し問わずな」

 

「そ、そうなのっ? 何だかすごく落ち着かないんだけど……さっきも、知らない神様たちに追いかけ回されちゃって……」

 

「名を上げた冒険者の宿命みたいなものです。ベル様に限った話ではありませんし、どうか我慢してください」

 

 

笑いかけるリリに、ベルは苦笑いを浮かべる。

 

 

「そんじゃあ、主役のベルも来たことだし、始めるか!」

 

「それじゃあ、あたしも混ざらせてもらうわね」

 

「【ランクアップ】おめでとうございます。クラネルさん」

 

「今日はたくさん飲んで、楽しんで行ってね。ヘスティアのところの眷属の祝賀会だからね」

 

「えっ、ヴィクトリア!? それにリューさんまで?!」

 

 

ベルの【ランクアップ】を記念した祝賀会を上げるために何か注文をしようとした矢先、注文をしてもいないのにお盆に料理を乗せたウエイトレス姿のヴィクトリアとリューさんが俺たちの側にある空いている席へと座る。

 

突然二人が座るから驚いてしまった。しかし、アニメではリューさんとシルのはずだったが、ヴィクトリアがいるからシルと立ち位置が変わったのだろうか? 

 

アニメと違うことに今後の流れがどうなるのか少し気になったが、リューさんがいる時点で、向かいに座っている冒険者たちの対処は何とかなるだろう。最悪は、かなり目立つが『魔剣創造』と『聖剣創造』で黙らせればいいだけのことだ。

 

 

「あの、お二人ともお仕事はいいんですか?」

 

「私たちを貸してやる存分に笑って飲めと、ミア母さんからの伝言です。後は金を使えと」

 

 

アニメと同じ台詞をリューさんから聞いて、ベルと一緒に苦笑いを浮かべながらカウンターの奥にいるであろうミアさんに視線を向けると、いい笑顔で飲み物を煽るジェスチャーを送ってきた。

 

 

「ははは………そんじゃあ改めて、ベルの【ランクアップ】を祝ってッ!」

 

『『『乾杯ッ!』』』

 

 

音頭と共に俺たちは手に持ったジョッキをぶつけ合う。

 

俺は相変わらずお酒ではなくジュース。ベルは今回ミアさんの勧めでエールに挑戦。リリは『神酒』のこともあって俺も同じくただのジュース。ヴィクトリアは普通に果実酒。リューさんは水だけを突き通した。

 

料理が運ばれてくれば、ベルに集まっていた注目も自然を霧散して行ったので気兼ねなく料理にありつく。しばらく料理と飲み物に舌を打っていると、リューさんから今後の探索について訪ねられた。

 

 

「クラネルさん、イシグロさん、今後はどうするのですか?」

 

「そうですね………まずは防具の新調を最優先で考えています。先日の一件でベルは防具を全損、俺は半壊してしまって殆ど防具がない状況です。なので明日は、ベルと共に【ヘファイストス・ファミリア】にいる知り合いの鍛冶師の工房に行くつもりです」

 

「なるほど、そうでしたか」

 

 

明日は、ヴェルフのところで防具を新調するつもりだとリューさんに説明すると、リリが申し訳なさそうに俺とベルの名前を呼ぶ。

 

 

「あの……ベル様、ケンマ様」

 

「どうしたの、リリ?」

 

「どした?」

 

「それが、実は下宿先の仕事が急遽立て込んでしまって……明日、リリはご同伴できそうにないのです」

 

「え、そうなの?」

 

「ベル、こればっかりは仕方のないことだ。俺たちも事前に、リリに明日の予定を話すことなく今言ったわけだし、お互い様だろう」

 

 

お互いに予定を話さなかったことで生まれたすれ違い。それに明日はダンジョンに行く訳でもないのでリリが気に止む必要はない。

 

 

「それにリリ、明日の目的は【ヘファイストス・ファミリア】で防具の新調だ。神ヘスティアとの約束があるならば、【ヘファイストス・ファミリア】でバイトをしている本人に同行してもらえばいい」

 

「それは………そうですけど、分かりました」

 

 

俺の解決法にリリは納得がいかない様子だ。

 

 

「イシグロさん、その後は?」

 

「装備を新調した後のことはまだ。ただ、俺個人としてはまだ到達していない『上層』を踏破してからベルと共にギルドのアドバイザーから『中層』の知識をしっかりと学んでからと考えています」

 

「僕もケンマと同じことを考えています。あとは、11階層で今の体の調子を確かめようと思ってます。もしそこで攻略が簡単に進みそうだったら、12階層までは足を伸ばすつもりです」

 

「ええ、それが賢明でしょう」

 

俺はまだしも、ベルは今日の朝に【ランクアップ】をしたばかりで【ランクアップ】した後の変化にまだ慣れていない。その変化になれるまでは地道に戦うしかないだろう。俺の場合は、最初から全力で挑んでもリューさんたちに返り討ちにあってるので大体の感覚で今の体がどんな具合なのかを把握し始めている。

 

ただし、先日の【虚閃】は反省しなけばならないと思っているリューさんからアニメ通りの忠告を受けた。

 

 

「差しでがましいことを言うようですが………中層へ潜ることはまだ止めて置いた方がいい。貴方たちの状況を見るに、少なからず私はそう思います」

 

「つまりリュー様は、ベル様とケンマ様、リリの三人では中層に太刀打ちできないとそうお考えなのですか?」

 

「そこまでは言うつもりはありません。ですが、上層と中層は違う。モンスターの強さも数も出現頻度も、能力の問題ではなく、ソロでは処理しきれなくなる。貴方たちは仲間を増やすべきだ」

 

 

仲間なら既に当てがある。それをリューさんに話そうとしたところで、向かいに座っていた冒険者の一人が待ってましたと言わんばかりに笑いながら立ち上がる。

 

 

「はっはっ、パーティーのことでお困りか?【リトル・ルーキー】」

 

「へっ?」

 

 

立ち上がった冒険者が俺たちに振り返った時、俺のその冒険者の顔を思い出した。そいつは、18階層でヘルメスと結託してベルに冒険者の洗練を与えたり、アステリオスとの戦いではベルを応援するキャラクターだった。

 

 

「仲間が欲しいんなら、俺たちのパーティにてめえを入れてやろうか?俺たちはLV.2 だ。中層にも行けるぜ?けどその代わり………」

 

 

ベルを仲間に入れてやる対価を言うとした途端、やつの視線は俺の隣に座っているリューさんへと向けられた。

 

 

「このえれぇ別嬪なエルフの嬢ちゃんを、貸してくれよ」

 

「ヴィクトリアを選ばないところは良識があるけど、それでも命知らずってスゲェ…………」

 

 

思わずそう呟くとそれが聞こえていたのか標的が俺へと変わる。

 

 

「おい、今なんつったよ?おい!」

 

「す、すみません! ただ、ここの店員さんに何かあれば女将さんが黙ってないから命知らずは怖いなって言ったんですよ」

 

「んだと!? 俺たちはLV.2 だぞ!酒場の女将なんぞに負けるかよ!!」

 

「なら一応忠告して置きますけど、ここの女将さんは元ではありますけど、あの【フレイヤ・ファミリア】の元団長ですけど。それでも負けませんか?」

 

「は?」

 

 

『豊饒の女主人』の女将が【フレイヤ・ファミリア】の元団長であることを知ったやつは、間抜けなことを上げた。

 

 

「ミア母さんのLV. は6、二つ名は【小巨人】です」

 

「加えて言うなら今朝もLV.4 の冒険者を二人、拳骨一発で沈めてたわね」

 

 

リューさんとヴィクトリアの補足を聞いて尚且つカウンターにいるミアさんへ視線を移したそいつは、次第にガタガタと震え始める。

 

てか、これってアニメの流れからはずれてるから18階層でこいつから冒険者の洗練を受けるのは、もしかしなくても俺になるのか? それはそれで嫌である。

 

 

「まぁ、ここは穏便に済ませましょうよ先輩。一杯奢りますから」

 

「ちっ!」

 

 

ベルをだしに、リューさんを奪おうとしたやつは自己保身を選び、舌打ちをして元の席に戻った。

 

 

「すみません、こっちのテーブルの皆さんに一番強いお酒を人数分お願いしまーす!」

 

「「「「ふざけろ!」」」」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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