臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
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石黒ケンマ
Lv.2
《基本アビリティ》
力 :I0 → F300
耐久 :I0 → F391
器用 :I0 → E429
敏捷 :I0 → G216
魔力 :I0 → C693
超回復 :I
《魔法》
【プロモーション】
・『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『女王』に昇格できる。
・昇格した物によって、一定時間アビリティ能力超高強化補正。
詠唱:【プロモーション・────!!】
【】
【】
《スキル》
【赤龍帝を宿し者】
・早熟、進化する。
・想いの丈によって効果向上。
・想いの丈によって効果持続。
【魔力操作】
・イメージによって対象魔法の行使が可能。
・対象魔法分の体力、魔力、精神力のいずれかを消費。
・効果、威力はイメージに依存。
・任意発動。
【言語和訳】
・全ての言語を和訳。
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「と、トータル二○○○オーバー…………さ、さすがに七度目となれば耐性が付くわね」
「やっぱり十日近くも更新してなかったから一回で滅茶苦茶伸びてるな!」
久しぶりに更新した俺の【ステイタス】を書き写した羊皮紙をヴィクトリアと共に二人で確認しながら、隣で頬を引き連らせるヴィクトリアを他所に成長しているのを実感する。特に、前回更新した時に一番数値が低くかった『器用』が現状二番目に高い値を叩き出しているのは喜ばしいことである。
【ステイタス】を書き写した羊皮紙は、『中層』から帰ってきたあとギルドに【ランクアップ】の申請をするため、もしもの時に必要な場合に備えて残して置く。今までの【ステイタス】の写しもしっかりと残してある。
「明後日には、ベルたちと『中層』へチャレンジするのよね?」
「ああ、新しい世界へ挑戦する。そのために、今日はヴィクトリアに【ステイタス】を更新してもらったんだからな」
「あまり無茶をしないでね。 あなたとドライグから龍の力は戦いを呼び寄せると聞いてるから………」
「無茶しないのは約束できないけど、ヴィクトリアの下に必ず帰ってくるのだけは約束する」
赤龍帝を宿している俺を心配してくれるヴィクトリアに必ず帰ってくることを約束すると唐突に肩を引っ張られ、急なことに対応できず、そのままヴィクトリアの豊満な胸の中に抱き締められてしまう。
この世界に転生して、約一ヶ月弱が経過するがヴィクトリアのこの行動は初めてのため、童貞の俺は彼女の色香に心臓が暴れ馬の如く跳ねる。
「ッッッ!!?」
「必ず、生きて、わたしの下に帰ってくるのよ」
「約束する。必ず帰ってくる」
必ず帰ってくる。そのためにも、今まで色々と準備をしてきた。新しい魔剣の確認や防具の新調、中層で遭難したあとの対策を書き記したヴィクトリアとついでにヘスティア、リューさん宛の置き手紙等。
その過程でエイナさんが『サラマンダー・ウール』のクーポン券をベルに渡してくれたのは、とても有り難かった。
そして、あっという間に【ステイタス】を更新してから三日、『中層』へと挑む日となった。そのため本日の早朝鍛錬は臨時休み。ヴェルフに依頼したベルのライトアーマーとは色違いの赤いライトアーマーと中層攻略には必須装備である『サラマンダー・ウール』を身に纏い、『豊穣の女主人』の店先でリューさんを初めとした五人の師匠たちに加えてシルたちの見送りを受ける。
「イシグロさん、どうかお気をつけて」
「私たちとの鍛錬の経験を活かして、冒険者くんたちと必ず一緒に帰ってくるんだよ」
「少年のあのプリケツは、ケンマの働きにかかってるニャ!必ず少年を守り通すニャ!」
「気を付けてニャ~」
「ケンマさん、気をつけてくださいね」
「無事に帰ってきたら、ウチへ飲みに来な!」
それぞれから見送りの言葉を持って、最後はヴィクトリアからの言葉を待つ。
「ケンマ、そこに跪いてくれるかしら」
「わかった」
お願いされるまま、ヴィクトリアの前で膝を着く。すると、彼女は俺の両頬に手を添えて一言言ってから額をキスを落とした。
「あなたに"勝利の女神"の祝福を」
「「「「「!!」」」」」
まさかの額へのキスに俺も含めて、リューさんたちも驚き、息を飲んだ。
嗚呼、これはより一層生きてヴィクトリアの下に帰って来なければならない理由が出来てしまった。勝利の女神様から祝福されたのに死ぬだなんて罰当たりなことができるものか。
「それじゃあ、行ってくる!」
○●○
「皆さん、霧を抜けます!」
10階層とは比べ物にならない深い霧の中で、種族補正で視力が秀でている小人族のリリが霧の終着点が近いと断言する。
全員はぐれないように五メートル前後を維持しながら足首まで伸びている草原を駆け抜ける。そして、霧が薄くなったのを感じるとあっという間に抜けて、視野が広くなったのを感じる。
「見つけました、あれが中層の入り口です!」
「あれが!」
所々存在する無数のモンスターの群れの更に奥にある、一部この階層とは壁面の色が異なる岩で構成された洞窟があった。それが『中層』への入り口である。
「まだモンスターが残っています!油断しないでくださいっ!」
「ベル、片付けるぞ!」
「うん!」
今のパーティーで戦闘力が突出している俺たちで『ハード・アーマード』を速攻で片を付けて、次のモンスターの殲滅へと移る。
何体かモンスター倒しているとLV.2 の聴覚がかすかに何かが羽ばたく音を捉えた。その羽ばたく音の主は、この階層だと一種類しかいないのでベルたちに注意喚起を促す。
「『バットパット』がいるぞ!気を付けろッ!」
「「「!!」」」
小型でありながら厄介な怪音波を発して、冒険者の動きを止める『バットバット』がいることを理解したベルたちは一様に顔付きが変わった。
「どこだ、どこにいる!?」
上を見上げて、宙を舞う蝙蝠種のバットバットを探す。その間、左手で腰に巻いているホルスターから投擲用のテーブルナイフほどの魔剣を引き抜いて置く。
しかし、俺が奴を捉えるよりも先にバットバットはヴェルフに怪音波を仕掛けた。
『───キィイイイイイッッ!』
「うぐっ!?」
「ヴェルフ様!」
怪音波を受けて、平衡感覚を狂わされたヴェルフはオークがいる目の前で身体をぐらつかせる。それを見ていたベルは直ぐリリへ、バックパックに備え付けられた大剣を直ぐに引き抜けるように短く指示出す。
「リリ、大剣!」
「はい、ベル様!」
オークはベルに任せて、俺は怪音波を発し続けているバットバットを捕捉。直ぐ様、左手の魔剣ナイフを飛行しているバットバットへ投擲。
「見つけた!そこだッ!!」
『キィイッ!?』
LV.2 の力で核である魔石を貫かれたバットバットは空中で灰化して、砕けた魔石と魔剣ナイフだけが草原の上に飛来する。
厄介な奴を倒したことで怪音波から解放されたヴェルフは、未だに鈍い身体を気合いで動かして、ベルがオークの棍棒を大剣で粉砕したところで懐へと踏み込み、オークの首を大刀で刎ねる。
「……あー、悪いな。ケンマが注意してくれたのに油断した」
「いやぁ……仲間、だしね」
ベルとヴェルフ、二人の会話を聞きながら俺とリリはまだ残っているバットバットを矢とナイフで正確に討伐していく。
周囲のモンスターを殲滅し、魔石と魔剣ナイフ、矢を出来るだけ回収してから中層の入り口で四人で正方形を描きながら座り、打ち合わせという休憩を取る。
無論、打ち合わせの指揮は四人の中でパーティー経験が豊富なリリが行う。
「では、最後の打ち合わせをします。中層からは定石通り、隊列を組みます。まず、前衛はヴェルフ様」
「俺でいいのか?」
「むしろここ以外、ヴェルフ様の務まる場所がありません。いえ、リリが偉そうに言えたことでないのですが………すみません、続けます」
四つ並ぶ丸の中のうち、前から二番目と三番目の丸がナイフでつつかれる。
「ベル様はリリと中衛を。ヴェルフ様の支援です。攻守と共に行ってもらうため、負担が一番大きくなってしまいますが………よろしいですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「後衛は攻撃魔法と治療魔法、両方を使えるケンマ様にお願いします」
「分かった。それと俺からも最後に言いたいことがある」
「分かりました」
このあとに言うことは、今の良い雰囲気を壊すことになりかねないが万が一のことを考えて言って置く必要がある。それは今までひた隠しにしてきた『魔剣創造』と『聖剣創造』のことである。
『魔剣創造』のことを話せば、間違いなく魔剣嫌いのヴェルフが反応してくるはずだ。しかし、中層は何があるか分からないと師匠であるリューさんやアドバイザーであるエイナさんも口酸っぱくしながら言っていた。なので、ここは臆病になることが必要不可欠だ。
「分かっているとは思いますが、このパーティーは安定しているとは決して言えません。LV. 的な観点からベル様の負担が大きいからです。窮地に陥れば立て直しは出来はしますが、困難を極めます」
「要は一度でも判断を誤れば命取りか。厳しいな」
「尻尾を巻いて引き返しますか? 今ならまだ間に合いますよ?」
「馬鹿を言え。俺はさっさた上級鍛冶師になるんだ。近道を前に背中をなんか向けられるか」
既に恒例ともいえるのやり取りをするヴェルフとリリを眺めて、俺は微笑ましく思えてしまった。それはきっとベルも同じだろう。
「恒例のやり取りしてるところ悪いんだが、さっき言った俺の話を聞いてもらってもいいか?」
そう言い出すと三人とも俺に注目する。
「まず初めに、こんな時に雰囲気を悪くするようですまないが中層に行く前に言っておきたいことがあるんだ。俺は──────魔剣と聖剣を創造、造ることができる」
その一言を放った途端、空気が凍てついた。しかし、俺は話を続ける。
「何故、こんな話を切り出したのかは俺がお前たちのことを信頼における仲間だと思ったからだ。そして、中層からは遠距離からの火炎攻撃を仕掛けてくる『ヘルハウンド』がいる。もしもの時を考えて、皆にはこれを持っていて欲しい」
何もないところから手元に《火除けの魔剣》を一振創造して見せる。それを見ていた三人は本当に魔剣を創造できるとは思ってもみなかったようで息を飲んだ。
それもそうだろう。鉱石やモンスターの素材も無しに武器を創造できる、それはまるで神々の力と遜色ないはすだ。
「ケンマ、一つ聞かせろ。俺にそのライトアーマーを作らせる時に言った言葉、魔剣がいらないと言ったのはお前自身が魔剣や聖剣を造れるからか?」
「ああ、その通りだ。魔剣と聖剣を創造できるからこそ、ヴェルフが魔剣を嫌う理由も分かる」
「じゃ、じゃあ、今まで僕といた時に使ってた剣は全て魔剣と聖剣なの? なら、どうしてケンマの剣からは
俺が創造した剣から
「その答えは簡単だ。今まで創造した魔剣に属性を付与してないからだ。属性を付与しなければ、魔剣もただの剣か切れ味が良い剣に成り果てるだけだ」
「魔剣に属性を付与しないだと………?」
「ああ。魔剣と聖剣を創造する時に、どんな剣にしたいかは俺のイメージ次第。強度は俺の精神状況次第なのがちょっとした難点だがな」
『魔剣創造』と『聖剣創造』の能力と難点を説明すると、鍛冶師であるヴェルフは大きな溜め息を吐きながら何かを飲み込んだように思えた。
「色々と納得は出来ないことがあるが、理解はした。まったく、とんだ鍛冶師泣かせだよお前は……」
「まぁ、他にも鍛冶師を泣かせる物があるがな」
「まだあんのかよ!ふざけろ!?」
「なにはともあれ、俺が話したいことは以上だ。全員、これを懐に持っていてくれ。サラマンダー・ウールも万能じゃないからな」
「人の話しを聞けよ!」
「あっ、あともう一つ。俺、この間、LV.2 に【ランクアップ】したから」
「「「はああああああ!!?」」」
オリ主たちの新本拠地候補
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