臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第五十三話

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

『Boost!!』

 

『Boost!!』

 

『Boost!!』

 

「なぁ、ケンマ。さっきからブーステッド・ギアから鳴ってるその音はなんだ? ぶーすと?それからその剣はなんなんだ?明らかに普通の剣じゃないぞ」

 

「ここまで来たし、話して置いてもいいか。ブーステッド・ギアの能力は、十秒毎に所有者の能力を二倍するんだ。んで、こっちは正真正銘の伝説の聖剣エクス・デュランダル」

 

「十秒毎に能力が二倍になる魔道具に伝説の聖剣!?どんだけチートですか、ケンマ様は!!」

 

「今回の探索だけで、一体俺たちは何回、ケンマに驚かせられれば済むんだろうな。 さすがに慣れを感じ始めた来たぞ。それと…………その伝説の聖剣あとで良く見せくれ、頼むケンマ!」

 

「あ、あははは………」

 

 

縦穴で17階層へと降り立ったあと、『嘆きの大壁』までは少し歩くのでその間にブーステッド・ギアの倍加を溜め込んでいるのだ。

 

《エクス・デュランダル》の聖なるオーラにブーステッド・ギアの倍加を上乗せした一撃を階層主である『ゴライアス』に叩き込み、それでも倒し切れなければベルの【英雄願望】で蓄力した一撃で仕止める。この二段構えの戦法で初の階層主戦へと挑む。

 

この二撃で倒し切れなければ、俺たちがゴライアスに勝てる勝率は絶対的に五割以下を下回る。俺一人であれば、勝率を約六割まで引き伸ばせるが、その場合周りへの被害が尋常じゃないことになり得る。

 

 

(ドライグ、ちょっといいか?)

 

『どうした、相棒』

 

(いやな、イッセーがコカビエル戦で覚醒してみせた、己と相手の力量によって十分な倍加が完了したのかを知らせる機能を、今の俺は使えるのかなって思ってさ)

 

『ああ、使える。相棒はイッセーと違い、己と敵との力量をある程度までは計れているようだが、今までブーステッド・ギアをここぞという土壇場の時にしか使って来なかった。その所為で認識出来る物も出来ていない』

 

(つまり、自業自得って訳ね。でも、俺とゴライアスの力量の差を教えてくれる機能が使えるのはかなりのアドバンテージになるな!)

 

『所詮は巨人族の紛い物、聖書に記されるコカビエルよりは弱いに決まっている。今の相棒なら倒せるだろうさ』

 

(そういうのってフラグだからやめてくれ)

 

 

更に倍加を溜め込みながら『ハイスクールD×D 三巻』で、イッセーが覚醒させたブーステッド・ギアの能力が使えるかどうかをドライグに訪ねたところ、無事に使えることが判明して少し安堵する。

 

今の俺が一度に溜め込める倍加限界は四十八回。更にそこへ【ランクアップ】を果たしたことで体力が向上して、限界まで溜めた倍加を最大八回まで使えるようになっている。

 

 

「ここから先が『嘆きの大壁』……」

 

 

同じ17階層なのに、この先からは今まで通って来た道とは少しだけ異なる。今までそれ程感じなかったが、『嘆きの大壁』の入り口の境と思われる場所から先の壁には、燐光が揺れて、まるで光の粉が舞っているように見える。

 

まさに、ここから先は階層主が守護する領域であることを示唆している。そのことに俺たちは足を止めてしまう。

 

 

『足が止まっているぞ、相棒』

 

「ッ────進むぞ!」

 

 

ドライグに言われて、はっとしながら後ろの三人に声をかけて、今度こそ『嘆きの大壁』と踏み入る。そして一段と縦横に広く、大広間に出るとそこには灰褐色の大きな巨人が中央を陣取っていた。

 

幸いにも、ゴライアスはこちらに気付いていない。今が絶好のチャンス!そう思った俺は、迷わずに地を蹴って走り出して、奴との距離を大体の感覚で縮める。

 

 

「あれが……」

 

「階層主………」

 

「ゴライアス……」

 

「先手必勝だ!」

 

『Transfer!!』

 

 

距離を縮めたことで奴が気付いて、振り向くよりも先に《エクス・デュランダル》の抑え込められていた攻撃的な聖なるオーラを全解放しながら、十分ではないが今まで溜めた倍加を解放する。

 

原作及びアニメでは、京都で暗躍している英雄派たちに《エクス・デュランダル》の本来の使い手であるゼノヴィア・クァルタが先手必勝で放つものと同じ技だが、倍加された力が譲渡されたことで明らかに聖なるオーラが天井を貫いたが、気にせずそのままゴライアスにお見舞いする。

 

 

「喰らいやがれェエエエッッ!!」

 

『!?』

 

 

さすがのゴライアスも振り返った瞬間、目の前に特大の聖なるオーラによる斬撃が迫っていれば驚きもするだろう。けれど、奴はそれをそのまま受けるのではなく、巨人な両手で白刃取りを繰り出してきた。

 

 

「なっ、伝説の聖剣の一撃を止めやがった!?」

 

「ぐっ……!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 

攻撃的な聖なるオーラにかなり溜め込んだ倍加の力を譲渡したのにも関わらず、ゴライアスの力と拮抗状態に陥ってしまった。

 

 

(このままじゃ、ヤバいか!?いや、でも聖なるオーラでゴライアスの掌は焼け始めてる!この状態を俺の方に良い方向だ傾けさせれば…………)

 

 

そう思った矢先、俺の視界に白い軌跡が走りながら耳に鐘の音が聞こえてきた。その二つを認識しただけで、白い軌跡の正体を察することが出来た。

 

最初から俺で仕止め切れないのは想定の内。保険として、主人公に大役を任せていたのだ。

 

だから──────

 

 

「「決めろ、ベルゥウウウ!!」」

 

「決めてください、ベル様ァアア!!」

 

「ファイアボルトォオオオオオッッ!!」

 

 

一体何十秒蓄力したのか分からない【英雄願望】の光が宿った【ファイアボルト】は、『魔法』を放ったベルさえも俺の近くまで吹き飛ばれて戻って来る程の威力でゴライアスに命中、大爆発を引き起こした。

 

その大爆発で、明らかに今まで続いていた拮抗状態の手応えが軽くなった。せっかくベルが作り出してくれた千載一遇のチャンスを逃してなるものかと俺は、身体に宿る聖なるオーラと【プロモーション】も上乗せして、更に《エクス・デュランダル》に力を込める。

 

 

「プロモーション・クィイインッ!!」

 

 

そのまま勢いで《エクス・デュランダル》を振り抜けるかと思った矢先、またしても《エクス・デュランダル》に反発する力の感触が伝わってきた。

 

 

「ッ───!?」

 

『オオオ………オ…………オオ……………オオオオ!!』

 

 

ベルの渾身の【ファイアボルト】で生まれた爆煙の中で、ゴライアスは消し炭になった掌でなく。まさかの焼け爛れて、骨が焦げている巨腕の肘で《エクス・デュランダル》の聖なるオーラを挟み、耐え、抗っていた。

 

けれど、微かに奴の外皮が焦げた胸元から紫色の煌めく輝きが見えた気がした。

 

 

「あれだけの魔法を受けても尚…………!?」

 

「しぶと過ぎるにも程があるぞ!?」

 

 

あと一歩。あと一歩だけ、何かこの状況を打開できる策があれば勝てる。『魔剣創造』も『聖剣創造』もここからではゴライアスと魔石まで届かない、仮に届いたとしたも幼稚園児がスポンジボールを当てるようなもので何の意味も成さない。

 

どうする?

 

どうする?

 

どうする?

 

ドウスル?

 

ドウスル?

 

ドウスル?

 

俺は、何かないかと縋るように辺りを見渡す。見えるのは『嘆きの大壁』とリリ、ヴェルフ、それと蹲りながら息を切らしているベルだけ。

 

いや、リリとヴェルフ、ベルがいるじゃないか!大切な仲間がいるじゃないか!!やったことはない。けれど原作やアニメ、公式設定では表現され、明記されていた。やれてやれないことはないはずだ。

 

あとは…………俺の覚悟次第。

 

 

「ベル、立てるか? 立てるなら少しだけでいい!この聖剣の持ち手をヴェルフたちと握っていてくれ!!」

 

「俺たちまで握るのか!?」

 

「む、無理ですよ!ケンマ様のような聖剣を作れる聖剣使いではないリリたちでは!?」

 

「一時的に聖剣を使えるようにする。だから、俺を信じてくれ!」

 

 

聖剣を聖剣使いでない者でも一時的に使用可能にする。これがこの状況を打破する最後の切り札。

 

もう他に手段はない。

 

 

「だあー、クソッたれ!今度はお前に俺の命を預けるぞ、ケンマ!!」

 

「リリも!この状態で役立たずなサポーターでもやれることがあるのでしたら、ベル様の役に立てるのであれば、どんなことだってやってやりますよ!!」

 

 

俺の叫びに信じて覚悟を決めたくれたヴェルフとリリの両手が《エクス・デュランダル》の持ち手に加わり、僅かにだが下に沈む。

 

残るは─────

 

 

「ベル!」

 

「ベル!」

 

「ベル様!」

 

「うぐっ………くっ、ァアアア!!」

 

 

最後の頼りであるベルは満身創痍で、最早握るというよりも持ち手にぶら下がるようにして《エクス・デュランダル》に体重をかける。

 

三人分の力と重みが加わったところで、俺は片手を持ち手から離して、《エクス・デュランダル》を分離させて《デュランダル》からもう一本の聖剣を引き抜く。

 

 

「聖剣から別の剣が!?」

 

「もしや、それも聖剣ですか!?」

 

「ケンマ………あとは………任せて………」

 

「ああ、任せるぜ。お前ら!!」

 

 

新たに引き抜いた聖剣《真のエクスカリバー》を片手に、【魔力操作】のスキルで全身全霊をかけた一撃をゴライアスに叩き込むための魔法を行使する。

 

魔法のイメージは、潜在魔力が少ないからとワーストワンと蔑まされていたが一つの能力と剣術のみで数多の強敵を打倒してきた最強の剣豪の魔法。

 

 

「俺の最弱をもって、お前という最強を打ち破る…………一刀修羅!!」

 

 

【一刀修羅】の魔法は、己の全ての魔力を一分間だけに身体のリミッターを外して身体能力を何十倍にも引き上げる魔法。ただし、その反動とした一分後には魔力が枯渇───つまり、俺は場合だと【魔力操作】の効果で一分後には強制的に体力、オーラ、精神力を使い果たして精神疲弊と陥ってしまうのだ。無論、途中で解除も不可能であり、一日に一回だけという制約もある。

 

それに一分もいらない。【プロモーション】と【一刀修羅】の魔法に《真のエクスカリバー》に統合されている《天閃の聖剣》と《破壊の聖剣》、これらが揃っていれば今のゴライアスを撃ち取れない通りはないはずだ。

 

故に、満身創痍なゴライアスの胸元にある魔石までは、一筋の赤い閃光となって飛んで行き、そのままの勢いで胸元の魔石に《真のエクスカリバー》を突き立てた、亀裂を走らせる。

 

 

『─────────』

 

 

核である魔石に亀裂が走らされたことでモンスターであるゴライアスは、致命傷となって断末魔を上げることなく天井に届くほどの灰となって消滅した。

 

あとに残されたのは、巨大な魔石と巨大な灰褐色の外皮のドロップアイテムだけだった。《真のエクスカリバー》に統合されている《祝福の聖剣》がここでもその効果を発揮したようだ。

 

 

「っっしゃあ────!!」

 

「嘘じゃありませんよね!? 夢じゃありませんよね!? リリたちだけで階層主を撃破するなんて!!」

 

「あはは……やっぱり……ケンマは……凄いや……」

 

 

三人ともゴライアスを倒せたことに目一杯喜んでいるようだが、【一刀修羅】の制約があるので速やかに頼むことを頼んで置かないとヤバいことになりそうだ。

 

 

「リリ!」

 

「あっ、ケンマ様!やりました、やりましたよ!ケンマのお陰で───」

 

「悪いけど、喜びを分かち合うのは後だ。今は時間がないから早口で指示を出す。まず、ゴライアスのドロップアイテムは何がなんでも死守してくれて、あれは間違いなく滅茶苦茶良い防具になる。それから魔石の使い道が、18階層で道具を補給するための資金に多少は使ってもいい。ただし、最大で六分一までだからな!残りの六分の五は地上に還ってから俺たちで山分けだ。あとは最後に、これまで俺がお前たちに教えてきたことは誰にも教えるな。多分、神々も聞いてくるから注意してくれ。以上だ」

 

 

捲し立てるようにリリへ指示を出しながら《真のエクスカリバー》を《デュランダル》と合体させて、《エクス・デュランダル》にしてから異空間へと収納。

 

他には、ゴライアスとの戦闘が激しかったことを偽造するために『魔剣創造』で敢えて、折れたような不恰好な剣たちを創造して『嘆きの大壁』にばら蒔く。

 

 

「こ、これでよし…………」

 

「あのケンマ様? どうして、そんなに慌ててるのですか?」

 

「最後に使った魔法の副作用が……そろそろ……来るから……だ。こいつを……使う……と……強制……的に………精神……疲弊に……なる……んだ」

 

 

そこまで説明したところで、タイムリミットが迫ってきて身体から力が抜けて行き、瞼も滅茶苦茶重たいし、意識が混濁してきた。

 

 

「えっ、ちょっ、ケンマ様!? そんなの聞いてないですよ!?」

 

「おい、ケンマしっかりしろ!? って、ベルまで意識がねぇじゃねか!? ここに来て、二人して精神疲弊とかふざけろ!?」

 

 

混濁した意識の中、それを最後に俺の意識は闇へと落ちた。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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