臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
《千本桜》を花刃を野営地に戻る目印として落としていたことをベルに説明すると、ダンジョンにはまず咲くことがなく、まして春を終わろとしている今の季節に咲いているはずのない桜の花弁が何故あるのかをリューさんに訪ねられてしまった。
俺としても、手紙に桜の花弁を目印にしてくれと書いてしまっている以上どうやって答えものかと悩んでいると、リューさんがどんな人だろうと信頼していると本人に言ってしまったことを上手く使われてしまい、逃げ道がなくなってしまったその結果、リューさんの過去を教えてもらった対価として、俺が魔剣と聖剣を創造できることを打ち明けることにしたのであった。
そして、今、俺たちは【ロキ・ファミリア】の野営地が目と鼻の先のところまで戻ってきている。
「本当に良かったのケンマ? リューさんに魔剣と聖剣のことを話して」
「リューさんなら大丈夫だ。エルフである前に、俺はあの人を信頼しているからな」
「ケンマが良いなら、僕は何も言わないけど……」
「俺のことよりもベルは自分の身の心配をした方がいいぞ。神ヘルメスに拉致られたとはいえ、アイズたちの水浴びを覗いちまったんだろう? 【ロキ・ファミリア】の皆さんに殺される前に謝りに行けよ?」
「そ、そうだった……僕、アイズさんたちの水浴びを覗いちゃったんだった」
リューさんたち【アストレア・ファミリア】の壮絶な過去を聞いて、頭から離れていた覗きの件をベルに伝えてやると分かりやすくげんなり項垂れる。
「俺も一緒に謝りに付いてってやるよ。今まで何処に居たのかも話すのにも俺が居た方がいいだろう?」
「そうしてもらえると助かるかな」
「それじゃあ、取り敢えずテントに戻って装備を外してからにしようぜ」
テントを出てからそれなりに時間が経っているので、ヴェルフも《真のエクスカリバー》を十二分に観察することが出来たはずだ。そうでなくても、貴重な伝説の聖剣を観察できる時間を与えたのだから、もう回収しても文句を言われる筋合いは無いし、ヴェルフも理解してくれるはずだ。
そうして、俺たちはテントにそのまま行こうとしたところで、偶然にもベルを探しに来たと思われるアイズと出くわした。
「あ」
「あ」
「あちゃ~」
タイミング的に良いのか悪いのか判断に困るタイミングで、アイズと鉢合わせした所為かアイズとベルは互いに固まってしまった。
二人は、お互いに裸を見た、見られたの関係故にしばらく手をもじもじと合わせていたり、足元に視線を落としていたりしていると、意を決したアイズがベルに話しかけようとするが羞恥心が上回り上手く言葉に出来ていなかった。
「……えっと、うんと……」
そんな年相応の反応を見せているアイズとは裏腹に、隣にいるベルはダラダラと滝のように汗を流していたかと思うと、次の瞬間には土下座の構えで盛大に謝罪のことばを述べていた。
「すっ、すいませんでしたあああああああ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
「あ、あの……もういいから……ね?」
さすがのアイズも土下座をしながら謝罪の絶叫を上げるベルに困惑しているようだ。しかし、ベルの顔が耳まで真っ赤なのに釣られて、困惑していたアイズも再び顔が赤くなる。
それを俺は、直ぐ側でバレないようにニヨニヨしながら眺める。何せ、アニメでは見られなかった光景が目の前で繰り広げられていれば、『ダンまち』ファンの一人としては見逃せませんなぁ。
「は、はぃ……僕、みなさんに謝ってきます……」
「うん……いってらっしゃい」
「それじゃあ、俺も付き添いに行ってくる」
「あっ、ケンマ!」
「なんだ?」
「ヘルメス様の覗きの件、アキたちに教えてくれて、ありがとう。もしケンマがアキたちを呼んでくれなかったら、レフィーヤがすごいことになってたと思う」
「あー、なるほど、レフィーヤはあの場に居たのか………取り敢えず、感謝は受け取っておく」
レフィーヤが偶然にもアイズの裸を覗いてしまったベルに問答無用で『魔法』を放とうとしている光景が容易く浮かんでしまう。お互いにアイズへ憧れを懐いているが故に嫉妬する。要はレフィーヤの一方的な同族嫌悪である。
テントで装備を外して、ヴェルフから《真のエクスカリバー》を回収した後、予定通りベルと共にベルが覗いてしまった女性陣に一人ずつ丁寧に、全力で謝罪しに行ったのだがその都度、ベルは土下座をするものだから女性陣も土下座しながら滅茶苦茶謝罪しまくるベルにこれ以上は怒れない様子のようで、無事に許してはもらえた。
「取り敢えず、全員に許してもらえたな」
「う、うん………何とかね」
「まさか、神ヘスティアが説教しながら滅茶苦茶なことを言うなんて面白いことをするとは思わなかったぜ。アスフィさんは、まぁ……お疲れ様ですとしか言葉が出ないな」
アスフィさんに謝罪しに行った時は、ベルが謝罪すると彼女も自分の所の主神が招いたことだとお互いに───
『いえ、僕の方こそ……!』
『いえいえ、元はといえばうちのヘルメス様が……!』
────というようにお互いがお互いを譲らずに謝り合戦をしていたので第三者である俺が今後、ヘルメスがベルに再び変なことをすれば【ヘルメス・ファミリア】が責任を負うことということを提案したことで、話が纏まった。
そして事の発端であるヘルメスの所へ行けば、そこで本日一番のハプニングが俺へと起こる。
「あの……ヘルメス様。神様やアスフィさんからすごい怒られたって聞いて大丈夫ですか?」
18階層には既に『夜』が訪れているため、魔石を燃料にして明かりを灯す魔道具の『魔石灯』で足元を照らしながらヘルメスの顔を確認すると奴の顔はボッコボコで元の優男の原型を留めていない状態で、両手両足をガチガチに縄で縛られ、吊し上げの刑に処されている何とも無惨なヘルメスの姿がそこにはあった。
「ひいっっ!!!」
「ベル、バッ───」
あまりの無惨さに魔石灯を持っているベルが絶叫を上げながら尻餅を付く所為で、ベルの頭が膝に手を付いてヘルメスの顔を確認していた俺の顎に命中し、そのまま後ろへ数歩後退するとムニュンッと手に収まり良くてとても柔らかい何かを鷲掴みしてしまった。
「っっ痛てぇ………ベル、お前なぁ!!って、あれ?なんだ、この柔らかいの?」
「~~~~~~~~ッッ!!?」
手に収まりが良くてとても柔らかい何かの正体を確かめるために何回か指に力を入れていると、ドライグから忠告が入る。
『相棒、ソイツからその手を早く離した方がお互いの心身のためだぞ』
(なんだよ、ドライグはこの手に収まりが良くてとても柔らかい何かの正体が分かったのかよ?)
『ああ、俺からしたらトラウマモノだ。だから早く
離してくれ!でないと意識が………はぁ、はぁ、意識が薄れる………』
(ドライグからしたらトラウマモノ?ドライグのトラウマ……二天龍のトラウマ……ハッ!おい、まさか!? 嘘だと言ってくれドライグ!俺も男として、憧れは持っているがこんな形は嫌だ!!)
『……………………うへへ、おっぱい、たのちーなぁ』
(あ、これは手遅れですね。分かります)
数秒も満たないで精神崩壊気味のドライグとの会話で、俺の手に───よりにもよって左手に収まる柔らかい物体の正体が判明したので、そちらに顔を錻が軋むようにゆっくりと向ける。
するとそこには、プルプルと身体を震えさせながら涙目で、これ以上ないほどに耳まで顔を真っ赤に染ながら俺を睨み付けているレフィーヤの姿があった。
お互いに目があった瞬間、俺も初めて母親以外の異性の胸を触ったことで思考がトチ狂っている所為かあらぬことを言ってしまった。
「え、えーっと……れ、レフィーヤって、もしかして着痩せするタイプ?」
「…………言い残す言葉は、それだけですか?」
「【プロモーション・ナイト】ッッ!!」
「け、ケンマもベル・クラネルも………絶対に許さなァアアアイッ!!!」
「ひいいいいいいいいいいいいッ!!?」
羞恥心と怒りを滲ませるレフィーヤに恐れを成した俺は、本能のままに【プロモーション】の魔法で『騎士』へと昇格して、『敏捷』のアビリティに超高補正をかけて夜の森の中をベルと共に疾走する。
「待ちなさぁ────────いッ!!!」
「役得なのは分かるが、あんなラッキースケベはベルだけでいいだろう!?」
「ちょっ、人を勝手にラッキースケベ発生装置みたく言わないでッ!?」
「じゃあ聞くが、今日だけで何人の裸を覗きやがった?!片手で足りない数の女の裸を覗いたのを俺は知ってるからな!?」
「ここに来て、それを言うのはズルくなぁい!!」
「知るかッ!てか、【プロモーション】を使ってる俺と同じ速度で走ってるベルに俺は驚きが勝ってるんだが!?」
夜道なので無意識に速度を落としてるとはいえど、『騎士』でかなり移動速度が上がっているのにも関わらず、ベルは俺の隣を全く離れることなく走り続けている。こういう時の主人公補正は滅茶苦茶チートだと、俺は何度も思う。
それと思ったことがある。事故とはいえ、異性であるレフィーヤの胸を触ったのに禁手に至れなかったということだ。やっぱり、布越じゃなくて生でなければ駄目なのだろうか? また歴代赤龍帝は一部を除いて皆、イッセーに感化されて胸フェチの変態と化していた。ならば今代の赤龍帝である俺も感化されていても可笑しくない。何故ならば、原作、アニメでイッセーの胸でのパワーアップに爆笑していた読者の一人なのだから。
なのに、俺は禁手に至れなかった。至れなかった原因を確かめようにも肝心のドライグは先程からこの有り様だ。
『おっぱい怖い、おっぱい怖い、おっぱい怖い、おっぱい怖い、おっぱい怖い、おっぱい怖い、おっぱい怖ィイイイイ!!』
「マジでごめんよ、ドライグゥゥウウウウ!!」
「ドライグって誰ェエエエエ!?」
この世界には『ハイスクールD×D』のようなドラゴン専門の精神カウンセラーは存在しない。今よりもドライグのおっぱい恐怖症が進んでしまえば、今後の戦いでどうなるか分かったものではない。そうならないためにも、禁手に至る方法にはおっぱいを使わないようしないといけないと改めて認識する。
ドライグがおっぱい恐怖症で精神が崩壊してからしばらく、森の中を走り続けていた体力的に限界になり、俺たちは走るのを止めた。
「「「はぁ……はぁ……はぁ……」」」
「ま、また迷った……」
「さ、さすがの俺も今回は目印を落としてくる余裕がなかった……」
「わ、私の所為だって言うんですか!? も、元はと言えばっ、貴方たちが逃げ出したのが悪いんじゃないですか!よりにもよってこんな森の深くまで!」
「あ、あの時のレフィーヤの睨み付けには本能的な恐怖を感じてな………」
「ぼ、僕もに、逃げなきゃ、こ、殺されると思って……」
「そんな訳ないじゃないですかっ、私を何だと思ってるんですか!? ベル・クラネルにはちょっと酷いことをするつもりだっただけです!」
「僕だけって、やっぱり酷いことをするつもりだったんじゃないですかぁ!?」
「ち、因みに俺は……?」
「聞きたいですか?」
「いえ、遠慮しておきます」
「ケンマだけズルい!!」
ベルとレフィーヤの見苦しい言い合いが繰り広げれる中、ベルが握ったままの携帯用の魔石灯が口論に合わせてゆらゆらと灯りを揺らめかせる。
「大体、
「あ、それは多分俺がアドバイスしたからだと思う。毎回ベルが恥ずかしくて逃げてるみたいだから、今度逃げたら何が何でも追いかけろって、アドバイスをしたんだ」
「えっ、そうなの!?」
「因みに、俺も一日だけアイズとベルの特訓に参加したことがあるぞ」
「………特訓の件は分かりました。ですが、アイズさんは第一級冒険者、あの【剣姫】なんです!とても強くて綺麗で可憐なんです!誰とも知れない下級冒険者が稽古を付けてもらえるような人じゃないんです!非常識極まりありませ────ん!」
「因みに、特訓を申し出たのがアイズだった場合は?」
「そ、それは…………」
「それは?」
「兎に角、それなのに
「本音を隠せてないぞ、レフィーヤ……」
最早、この口論はレフィーヤのベルに対する嫉妬の捌け口となってしまっている。ベルもベルで言い返さないから余計にレフィーヤが図に乗っているのかあれこれ吐き出してしまっている始末。
これでは、全てレフィーヤが言っていることが正しいと肯定しているようなものだ。こういうところがベルの悪いところである。
「挙げ句の果てにはアイズさんの、は、はっ、裸まで覗いてぇ……!」
「あ、これは弁明できないやつだ」
「ごごごごごごごめんなさいぃ!?」
「見たんですか!?」
「えっ!?」
「見たんですよね!?」
「な、なにをっ!?」
「言わせる気ですか!?」
「すいませんでしたぁああああああ!?」
アイズの裸体をその瞳の裏側に焼き付けてしまったことをベルが白状すると、レフィーヤの目尻には涙が溜まる。
「人として恥ずかしくないんですか!? もう最低です!
「「ぐふぅ!?」」
レフィーヤのその一言はベルだけにとどまらず、偶然にもリューさんの水浴びを覗いてしまった俺にまで広範囲攻撃をもたらした。
「何でケンマまでダメージを受けてるんですか?」
「き、気にしないでください……」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に