臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第六十二話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

18階層で、暗闇の森の中で暗躍しているもかもしれない闇派閥を発見した俺たちは、レフィーヤを先頭に気配を殺してバレないように尾行を続けていた。

 

 

「静かに移動してください……気配を殺して」

 

「了解した」

 

「は、はいっ……でも、誰なんですか、あの人たちは?」

 

「ケンマ、もしかして、この人は………」

 

「ああ、その通り全くの白だ。ベル、いいか?あいつらは、【ロキ・ファミリア】の敵対勢力だ」

 

「ろ、【ロキ・ファミリア】とっ?」

 

「悪いがこの件に関しては詮索は無しだ。場合によっては、ギルドからペナルティが課される可能性もある」

 

 

これ以上ベルに詮索させないために、『ギルド』の

名前を出しながら嘘を言う。こうすることで純粋無垢のベルならば、これ以上は詮索はして来ないだろう。

 

闇派閥と思わしき奴らは、暗闇で方向感覚が狂いそうなのに迷うことなく真っ直ぐ移動していることから、間違いなく奴らは『入り口』へと向かっているのだと理解できた。

 

 

「追いますよ」

 

 

レフィーヤに指示に頷いてから俺たちは動き出した。

 

しかし、その途中で何の前触れもなく地面が割れ、全身に浮遊感が襲い掛かる。その瞬間、俺たちの呼吸は僅かに止まった。

 

そして、自然的に叫喚の叫びが口から放たれる。

 

 

「「「───ぅぁああああああああっ!?」」」

 

 

全身に襲い掛かる浮遊感と風を切る音、その二つからかなりの高さから落下しているのを察知した俺は落下の恐怖を抑えながら全身を龍のオーラで覆う。

 

次の瞬間、感じたのは何とか無事に着地出来たしっかりとした足場とバシャンッ!という水飛沫が舞い上がる音と何かしらの液体。

 

 

「何とか着地できたな………」

 

 

かなり高さから落下したみたいではあるが、龍のオーラを全身に覆っていたお陰で全くダメージを感じることはなかった。

 

けれど───────

 

 

「「熱っ!?」」

 

「ベル!レフィーヤ!大丈夫か!?」

 

 

直ぐ側にいる二人から小さな悲鳴が聞こえたので、何事かと思えば、二人は顔をしかめていた。それはまるで、何かを我慢しているような。

 

二人のことを良く観察してみれば、穴底にある紫がかかった液体に浸かっている脛から下の部分からジュウッと、まるで焼き肉が焼けるような音と共に煙が立ち上っていた。

 

他にも、紫がかった液体の下には無数の人間の骨、多種多様な武具、モンスターのドロップアイテムと思わしき物があちらこちらに沈んでいた。

 

 

「溶解液か!?」

 

『相棒が溶解液に溶かされてないのは、全身に龍のオーラを纏ってるからだろう。オーラの放出を止めれば、じわじわと溶かされていくぞ』

 

(なるほど、道理で俺には熱く感じないし、足から変な煙も上がっていない訳か)

 

『それよりも上を見ろ、相棒』

 

「上?」

 

『例の「極彩色のモンスター」だ』

 

「ッ!!」

 

 

ドライグに促されるまま上を見上げると、そこには天井の中心にまるで植物が人の形を模したような見たこともない、毒々しい極彩色のモンスターが逆さかずりに垂れ下がりながら揺らめいていた。

 

それを見た途端、俺は途端に臨戦態勢に入りながらブーステッド・ギアと《エクス・デュランダル》を出して、ベルたちに注意喚起する。

 

 

「二人とも上だ!」

 

「「!?」」

 

「し、新種……?」

 

「あれは………極彩色の、モンスター!?」

 

 

天井にいる極彩色のモンスターの情報は俺の頭には全くない。間違いなくこいつは『ソード・オラトリア』のアニメではなく原作の方に出てくるモンスターに違いない。

 

けれど、ゲーオタでアニオタである俺ならば、モンスターの外見からどういった攻撃を仕掛けてくるのか何となく察知できるはすだ。

 

 

「【プロモーション・クイーン】ッ!!」

 

「なっ!極彩色のモンスターは、魔力に反応するってケンマは知ってるでしょう!?なのに、どうして!?」

 

 

新種の極彩色のモンスターの外見的特徴は、左右の触手───あれは伸縮自在と見ていいだろう。他には頭部の巨大な目玉と中空の冠のような不思議な器官。あれは、何かしらの特殊攻撃を仕掛けてくる器官だと思っていいだろう。以上のことから近接は伸縮自在の触手のようなツル。遠距離は、冠のような不思議な器官による特殊攻撃といった感じだろう。

 

そしてレフィーヤの言う通り、極彩色のモンスターは魔力に反応する。

 

 

「ああ、知ってるとも!知ってる上で、魔法を使ってるんだよッ!!」

 

 

当然、俺の魔力に反応して極彩色モンスターの巨大な目玉がギョロリと動いて俺に標的を定めると、左右の触手を振るってくる。極彩色モンスター───ちょっと呼び難いから今度から『森の番人』と呼称しよう。

 

森の番人が振るってくる触手に合わせて、俺も《天閃の聖剣》と《破壊の聖剣》の能力を同時に使いながら《エクス・デュランダル》の聖なる波動を高速で飛ばす。

 

すると、聖なる波動がいとも容易く森の番人の触手を切り裂いて、切り裂かれた先端部分からは聖なるオーラに焼かれているようで煙が上がっている。また、俺が飛ばした聖なる波動には《破壊の聖剣》の能力も乗せているので、そのまま肉壁へと波動が衝突すると森の番人がダメージを受けているようで叫びをあげ絶叫する。

 

 

「二人とも、奴は攻撃をする前に目玉で標的を追っている!攻撃も同じで、視線の先に繰り出してくる。奴の目玉を見れば躱せるはずだ!」

 

「たった一度の攻防で、新種の攻撃動作を把握するなんて…………けれど、これで攻撃手段である触手がなくなった。これなら!」

 

 

メインの攻撃手段である触手を除去できたことで、レフィーヤは魔法の詠唱へと入り始めようとするその時だった。森の門番の冠型の器官が不気味に青く光る。

 

その瞬間、俺たちは何かしらの攻撃が来る予兆だと直感したがそれよりも速く、単眼を囲う青の冠から殺人的な超音波が放たれた。

 

 

『アァァ───────!!』

 

 

文字通り耳をつんざく音の蹂躙に、俺たちはあらん限りに目を見開いて、苦しみの絶叫を上げる。

 

 

「「「~~~~~~~~~~~~~~っ!?」」」

 

『Reset!!』

 

 

超音波はオーラの膜すら通り抜けて、俺にダメージを与えたと判断したのかブーステッド・ギアから溜めいた倍加の力がリセットされてしまう音声が鳴ってしまった。そんなのは転生してから初めてなので困惑も襲い掛かる。

 

更に超音波は、俺たちの平衡感覚を奪いに来ているのも相まって、俺の身体を覆っていた龍オーラの制御が疎かになり、脛の辺りからヒリヒリとした痛みを感じ始める。

 

 

『しっかりしろ、相棒!』

 

「ぐっ、くぅっ…………!?」

 

 

ドライグの声は聞こえるが超音波の影響でまともに身動きすら出来ない。森の門番は、その隙を見逃さなかった。

 

しかし、狙われたのは俺ではなくベルだった。そのことに気付いたレフィーヤは、ありったけの力で喉を震わせてベルに注意喚起を促す。

 

 

「────っ!? 逃げてっ!!」

 

「ま……に……あ……えっ!!」

 

 

《エクス・デュランダル》の聖なる波動で切断された触手は、予測通り伸縮自在のようで残った部分を伸縮させて、鞭のようにしてベルに襲い掛かる。

 

俺はそうはさせまいとレフィーヤとは別にありったけの力を振り絞り、ベルと触手の間に無数の聖剣たちを地面から創造して盾代わりにする。が、今の俺の精神状況は平常時と比べて明らかに悪い。故に、聖剣たちの強度があまりにも足りない。

 

ベルもベルでレフィーヤの声が届いていたようで回避を試みているが間に合わない。空間を引き千切り、無数の聖剣の盾たちを粉砕しながら押し寄せる二本の触手を前に、ベルは地を蹴り付けて、穴底に突き立てっていた一つの武具に飛び付いた。

 

己の上半身をすっぽり隠せるほどの大きさの盾をベルは咄嗟に掴み上げて構えた。けれど、盾越しであっても森の門番の触手による攻撃は強く。炸裂音を立てながら、ベルは弾丸のように吹き飛ばされた。

 

 

「がっっ!?」

 

「ベル!」

 

「ベル・クラネル!」

 

 

弾丸のように吹き飛ばされたベルは、肉壁へと激突。その際に、頭を切ったのか額から鮮血が撒き散らされた。間もなくして激突した壁から背中が剥がれ、バシャッと音を立ててベルは溶解液の泉に落下した。

 

それを見ていた俺は、友を傷付けられたことで怒りが一気に頭を支配して、内側から爆発的に龍のオーラが迸り、ブーステッド・ギアの宝玉も呼応して凄まじい輝きを放つ。

 

 

「この野郎ォォオオオオオ!!」

 

『そのままぶつけてやれ、相棒!』

 

「ベルの仇だ、喰らいやがれ!撃龍拳!!」

 

「無詠唱!?」

 

「僕まだ……死んでないよ!?」

 

 

俺の左拳から放たれた撃龍拳は、倍加もしていないのにかなり大きな飛龍となって森の門番へと迫る。

 

そして、撃龍拳が森の門番へと命中すると大爆発を起こす。それによって厄介な超音波は止むが、あまりにも手応えが弱いとそう感じた俺はレフィーヤに魔法を詠唱するように叫ぶ。

 

 

「レフィーヤ、詠唱を頼む!今の一撃でも倒せてない!!」

 

「ッ!──【解き放つ一条の光、聖木の弓幹】!!」

 

 

レフィーヤの詠唱が始まると、彼女の存在を誇示するかの如く展開される山吹色の魔法円。水面の下で円が広がり、輝きが揺らめきながら立ち上げる。

 

『魔法』の詠唱が開始されたことで魔力に反応したのか、爆煙を身体を揺すって掻き消しながら森の門番は単眼でレフィーヤを捉える。

 

 

「【汝、弓の名手なり!狙撃せよ、妖精の射手───】」

 

『アァァ─────』

 

 

レフィーヤを単眼で捉えた森の門番は彼女の詠唱を阻害するべく、再び冠型の器官から閃光を放った後、厄介な超音波を響き渡らせる。

 

その超音波と張り合うようにレフィーヤは呪文を大きく奏でる。

 

 

「【っっ────穿てッ、必中の矢ぁ!】」

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 

突然、五条の炎雷が森の番人に命中したと思えば、炎雷を放った主であるベルは、溶解液に下半身を漬けたままで片手を森の番人に向けていた。

 

それによって、厄介な超音波が途切れる。

 

 

「いい加減、その不快な音も飽きて来てんだよ!そんなに聞かせたいなら、レフィーヤみたいな美声に生まれ変わってからにしやがれ!!」

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

「クロス・クライシス!!」

 

 

レフィーヤの魔法に合わせるように、《エクス・デュランダル》を《デュランダル》と《真のエクスカリバー》の二振りに分離させてから聖なるオーラを高める《デュランダル》、《真のエクスカリバー》に統合されている《祝福の聖剣》、ブーステッド・ギアの譲渡よる三種の効果で聖なるオーラを驚異的なまでに増幅させた一撃を✕の字にして放つ。

 

レフィーヤの【アルクス・レイ】と俺の【クロス・クライシス】をその身に受けた森の番人は、抵抗する間もなく天井ごと消失して見せた。

 

縦穴の主を失ったことで、岩盤が一気に崩壊を始めた。

 

 

「俺が足場を作る。二人とも、そこから上に登ってくれ!」

 

「わかりました!」

 

「うん!」

 

 

『聖剣創造』で足場となると聖剣を空中に幾つも創造、それを足場にして崩壊する岩盤から逃れるように『迷宮の楽園』へと脱出した。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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