臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第六十六話

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

破砕音と共に水晶から生まれ落ちた『黒いゴライアス』は、そのまま自由落下に身を任せて、下の階層に繋がる中央樹の近くへと落下した。

 

それにより根元にある樹洞は完全に潰され、大樹そのものが半分までは地中に沈み、太い幹もひしゃげている。更にはゴライアスの後を追って、大きな水晶たちが雨か或いは雹のように中央樹の周辺の大草原に突き刺さっていく。

 

 

「何だ、あれ……!」

 

「さっきの冒険者たちの側に落ちたぞ……!!」

 

「黒いゴライアス……!?」

 

「どうして18階層に階層主が………しかも、どう見ても17階層の個体よりも強そうです………!」

 

 

ベルたちが生まれ落ちるはずのない階層主が出現したことに驚愕する中、ゴライアスは足元にいるモルドたち冒険者を蹂躙をしに動き出した。

 

 

「あのモンスター、多分ボクを………いや神たちを抹殺するため送られてきた刺客だ」

 

 

事情が全く呑み込ぬままゴライアスがモルドたちを蹂躙する最中で簡略的に、ヘスティアからダンジョンは神々を恨んでおり、その神々であるヘスティアたちがダンジョンにいることを感じ取ったダンジョンが彼女たちを滅ぼすために用意したのが、あの黒いゴライアスなのだと説明される。

 

だが、急拵えなのか或いは能力を突き詰められているのか、知性は低く、標的であるヘスティアとヘルメスを集中して狙うのではなく手当たり次第に襲っている様子が今も見受けられる。

 

17階層にいた通常のゴライアスと違って、目の前にいる強化種のゴライアスに不意打ちを仕掛けるのは難しいだろう。何より、他の取り巻きのモンスターがいるため、ブーステッド・ギアの倍加の力を溜める暇をくれるかどうかすら分からない。

 

あれこれ頭の中でゴライアスを倒す策をシュミレーションしているが、以前からそうだがアニメ知識に頼りがちで現実味が帯びていない。

 

そんな時────

 

 

「……は、早く助けないと!?」

 

 

俺よりも年下のベルがモルドたちを助けるため、恐怖を振り払って飛び出そうとする。しかし、そんなベルをリューさんが手を掴んで止める。

 

 

「待ちなさい」

 

「っ!?」

 

「本当に、彼らを助けに行くつもりですか? このパーティーで?」

 

 

リューさんの問いかけは無情ではあるが、至極当然の問いかけである。モルドたちは、自分たちの鬱憤晴らしのためにヘスティアを誘拐して、ベルをボコボコにした。友をボコられて、そのボコられた本人が犯人を助けるだなんてお人好しにも程がありすぎる。

 

それに、奴はヘスティアの女神の声を無視した救いようのない奴だ。そんな奴を俺なら助けたりなんかしない。

 

しかしだ。もう一人、バカみたいに正義感や主人公キャラクターなどに憧れた俺が問いかけくる。俺の憧れたあの男たちはそんなことで誰かの命を見捨てるような奴だっただろうか?俺が誇りに思いたい女性は、そんなことを許容する人だっただろうか?

 

そんな自問自答を俺は只管に繰り返す。

 

 

「助けましょう」

 

 

俺の答えが出ないままでいると、ベルは一瞬の迷いはしたが間髪入れずに決断をしていた。その決断にリューさんは目を細める。

 

 

「貴方はパーティーのリーダー失格だ」

 

「ッ!?」

 

 

初めてリューさんから非難の言葉と眼差しを受けて、ベルが狼狽える。そんな友を助けるために、俺も恐怖を振り払って、ベルの背中に平手打ちを決めながらリューさんに訪ねる。

 

 

「だが、間違ってはいない。ですよね、リューさん?」

 

「痛いよ、ケンマ………」

 

「ふっ、よく分かりましたね。さすがは我が弟子です」

 

 

俺の言葉にリューさんは微笑みながら肯定すると、ケープを翻し、一人いち早くモルドたちの下へと向かって行った。

 

前にも思ったことだが、この世界に転生してからというもの俺の性格が前世と変わってきている気がする。なんというか、戦闘狂気質になっている。

 

 

「さて、パーティーリーダー。戦いの前の一言を皆に頼む」

 

「……僕は【ロキ・ファミリア】のフィンさんみたく頭も良くない。リューさんみたく強くもない。ケンマみたく特別な力もない。けれど、僕はあの人たちを助けたい!どうか、僕に力を貸してください!」

 

 

レフィーヤ、ヴェルフ、リリ、桜花、命、千草、ヘスティアに、ベルはそう言うとみんなは笑顔で頷いていた。こいつらも大概お人好しである。そのお人好しに、俺も加わるのだから人のことを言えた義理ではない。

 

さてさて、相手は強化種のゴライアス。であれば『聖剣創造』の聖剣ではなく、正真正銘の伝説の聖剣で挑むべきだろう。そう思った俺は、今回ばかりは人目を気にせず腰に座している聖剣を消して、異空間から《エクス・デュランダル》を引き抜いて、続けて《真のエクスカリバー》と《デュランダル》の二振りに分離させる。

 

ブーステッド・ギアも具現化したい所だが、今回ばかりは間違いなく持久戦になるため体力を削る倍加は、ここぞというところで使う方が合理的である。

 

 

「千草さん、神様をお願いします」

 

 

神であるヘスティアは、モンスターとの戦闘には参加出来ないので同じLV.1 のサポーターでリリのような『スキル』を持たない千草に彼女の身をベルは任せた。

 

ならば、俺もちょっとしたお願いをレフィーヤにするとしよう。

 

 

「レフィーヤ、キミはリヴィラにいる魔導師たちと合流して、指揮を頼みたい。今頃、アスフィさんがリヴィラで冒険者たちに援軍要請をしているはずだ」

 

「わかりました!」

 

 

【ロキ・ファミリア】の団員が居るとなれば、援軍の冒険者たちの指揮も高まる。その結果、アニメよりも良い結果に向かうはずだ。

 

 

「みんな、行こう!」

 

 

ベルの叫びを合図に、千草とヘスティアを除いた九つの影が森を抜け、草原を駆ける。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

ゴライアス討伐とモルドたちを助けるために森を抜けて、草原を駆ける俺たち。正直、リューさんだけならばもっと早く走れるはずだ。これでは彼女のポテンシャルを殺してしまっている。

 

 

「ベル、俺とリューさんは先行してゴライアスを叩く!お前は、モルドたちを何とかしろ」

 

「わかった。二人は先に行ってください!」

 

「リューさん、俺に合わせようとせずに速度を上げてください!」

 

「わかりました。では、遠慮なく!」

 

 

俺の願いを聞いた途端、リューさんの動きが加速。それに追い付くために俺も《天閃の聖剣》の能力と【プロモーション】を『魔法』を同時に使う。

 

 

「【プロモーション・クイーン】ッ!!」

 

 

《天閃の聖剣》と『女王』への昇格でLV.2 でありながらLV.4 の速度と同等の速さで並走する俺に、リューさんは目を見開いて驚くが直ぐに口元が弧を僅かに描いた。

 

 

「イシグロさん、まずはゴライアスの動きを封じます」

 

「はい!」

 

 

ゴライアスの厄介な所はその巨体、それ故に近接攻撃が弱点の『魔石』がある胸部へと当てることが困難。そのため魔導師による砲撃で膝を付けさせるか、ロープなどを使用してよじ登る方法が取られることが多い。

 

なので、援軍の冒険者たちのためにもゴライアスの動きを封じて、近接攻撃を弱点部位に当てられるようにする。他には、負傷した冒険者たちを助けるためでもある。

 

 

『─────アァッ!!』

 

 

草原を駆けているとゴライアスの口元が爆発した。

 

それは大声と共に放たれた衝撃波で、その余波が強風となって俺たちの下まで届く。アニメでは、その衝撃波だけで前衛を壊滅寸前まで追いやるほどの凶悪な一撃なのを俺はよく覚えている。

 

 

「……なんという威力の『咆哮』だ!?」

 

「あんなの直撃したら一溜りもないな………」

 

 

マジであの咆哮だけは受けたないと思った。臆病風に吹かれた訳ではないが、毎度お馴染み臆病は臆病なりに陰湿でねちっこく卑怯な攻め方をしましょう。

 

 

「リューさん!多少リスクが伴いますが、ゴライアスの目を潰してから次は両足の腱を狙うはどうでしょう。人型である限り、奴も俺たちと同じ構造になってるはずです!」

 

「なるほど、確かに一利ある。では、イシグロさんは右目と右脚を。私は反対の左目と左脚を狙います」

 

「わかりました!」

 

 

それぞれ狙う部位を決めれば、お互いその部位に向かって疾走する。依然として、咆哮を主体とする攻撃を行うゴライアスの頭上にリューさんは跳躍だけで到達する。

 

それを見て、LV.4 も大概出鱈目だなと思いながらオーラで身体能力を強化、更に【魔力操作】による精神力で作り上げる足場を踏み台にして俺もゴライアスの頭上へ到達する。

 

 

「フッ!!」

 

「せああああああッ!!」

 

 

目標部位に到達した俺たちのその手に持つ得物を全力でゴライアスの目玉に目掛けて振り抜く。リューは木刀を、俺は《デュランダル》と《破壊の聖剣》の能力を乗せた《真のエクスカリバー》で大きな赤い目玉を潰す。それによって両目からおびただしい量の鮮血が舞う。

 

ゴライアスの鮮血が身体に付着する前に即座に、その場から離脱して次の目標を攻撃する体勢を整える。

 

 

『ゴアアアアアアアアッッ!!?』

 

 

両目を切り裂かれたゴライアスは痛みのあまり両手で目を抑え込む。予想通りの動きをしたゴライアスに俺はニヤリと笑みを浮かべながら次の目標である脚の腱を切り裂くために空中で【魔力操作】による足場を蹴って、腱に飛び掛かる。

 

そして、そのままの勢いで《デュランダル》と《真のエクスカリバー》の刀身を重ねて聖なるオーラを高めながら鳥が低空飛行をするように✕の字切りをアキレス腱部位に叩き込み、腱ごと足首を切断する。

 

反対の脚ではリューさんも同じように腱へ木刀を振るっていて、見事にアキレス腱を断ち切っていた。左右のアキレス腱を断たれたゴライアスは、その場に立っていることすらできず、前のめりに倒れた込んで来る。

 

 

「まだまだぁああ!!」

 

 

倒れて来るゴライアスに追い討ちをかけるべく、奴の顔が落下するであろう地面の位置を確かめながら『聖剣創造』で特大の聖剣を地面から創造して、ゴライアスの頭を特大聖剣で貫く。

 

両目と両脚の腱、そして顔面を潰し、切り裂かれ、貫かれたゴライアスは草原の一部を真っ赤な鮮血で染め上げながら遂には、その巨体を完全に地面へと倒れ伏せた。

 

草原が真っ赤に染まるほどの鮮血から漂う血生臭ささに思わず、袖で鼻を抑えるほどにゴライアスから流れた血が多かった。長い冒険者としての経験があるリューさんは血生臭いのは慣れているようで、特大の聖剣でゴライアスの頭を貫いたことを称賛してくれる。

 

しかし─────

 

 

「イシグロさん、上手くいきましたね。聖剣か魔剣かは判別できませんが、まさかあんな巨大な剣まで生み出せるとは、さすがの私も───」

 

「リューさん、まだだッ!」

 

「ッ!!」

 

 

俺はこのゴライアスが通常種と異なり、自己再生があることを知っているので、倒したと勘違いして警戒心が緩みそうになったリューさんに注意喚起をする。それを聞いたリューさんは、「そんなバカな!?」と言葉ではなく表情で表しながら目を見開き、ゴライアスへと振り返る。

 

振り返った先には、顔を貫いた特大の聖剣から又もやおびただしい量の鮮血をシャワーのように流しながらゆっくり、ゆっくりと己の頭を引き抜いて行くゴライアスの姿があった。

 

その光景を眺めていると遂にゴライアスは巨大な聖剣から頭を完全に引き抜いた。が、それだけでは止まらずに身体から赤い光の粒子を発しながらみるみるうちに損失箇所が修復されていく。

 

 

「自己……再生……!?」

 

「やっぱり強化種だったか………」

 

 

リューさんたちに、この黒いゴライアスが強化種であり自己再生持ちであることを知らせるために巨大な聖剣で奴の頭を貫いた。しかし、それが返って援軍の冒険者たちに畏怖を抱かせてしまったかもしれないが、これも遅いか早いかの違いだと意識を切り替えることにした。

 

 

「どうしたものかな………これじゃあ鼬ごっこだな」

 

 

さっきの攻防で切断した足首から先は灰となって消えてしまったが、自己再生能力で損失箇所から再生するのでいくら切断しようとも魔力がある限りは半永久的な再生をし続けてしまう。聖剣の聖なるオーラも自己再生の影響で効果が乏しくてあまり当てには出来そうになさそうだ。

 

やはり、自己再生持ちの耐久型には強力な一撃必殺を叩き込むかデバフで攻めるのがセオリーなのだろう。と言っても前者はともかく、後者のデバフの手段が俺にはない。

 

仮にあったとしても『聖剣創造』と『魔剣創造』で創造できる斬られた対象の重量を二倍にする能力くらいで他はあまり習得出来ていない。出来ている物では、黒いゴライアスの自己再生に打ち勝てるほどの効果はないだろう。

 

 

「イシグロさん、攻撃が来ます!」

 

「おっと!」

 

 

両目の再生が終わったのか、ゴライアスは左から払うように地面を抉りながら俺たちがさっきまで居た場所を薙ぎ払うと今度は顔の損失も修復が完了したのか天井を見上げながら雄叫びを上げる。

 

その不可解な雄叫びに違和感を感じているとリューさんが慌て始める。

 

 

「いけない!今のはモンスターを呼び寄せるための叫びだ!」

 

「って、ことは18階層にいるモンスターたちがここに集まってくるってことか!?そんなのありかよ!?」

 

 

思わず叫ぶと街に援軍を呼びに行っていたアスフィさんが空からやって来た。

 

 

疾風(リオン)!説明は不要だと思いますが、今来る援軍が一斉射撃の準備を行います。貴方はゴライアスの注意を引き付けてください!」

 

「わかりました。それでは私たちで敵の意識を分散させましょう。聞こえていましたね、イシグロさん」

 

「はい!敵の意識を分散させればいいんですよね!」

 

「え、いや、待っ───」

 

 

アスフィさんが何か言おうとしていたが、それよりも先に俺たちはゴライアスの意識を引き付けるために走り出していた。そして、遠くの方からレフィーヤの声が届いた。

 

 

『いいですか、皆さん!あの人たちが階層主の意識を引き付けてくれます。ですから、信じて詠唱を始めてください!!』

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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