臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第六十七話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「敵の意識を引き付けるなら、やっぱりコレだよな!」

 

 

レフィーヤが指揮する射撃部隊の魔法詠唱が完了するまで俺とリューさん、それからアスフィさんの三人でゴライアスの意識を釘付けにするべく俺たちは奮闘する。

 

そのため《夢幻の聖剣》の能力を使って、幻で出来た俺を複数生み出しながらそこへ『聖剣創造』で創造した聖剣たちを幻と重ねながら攻めるという幻のはずなのに攻撃判定のある、実質分身して攻めているのと変わらない攻め方で畳み掛けていく。

 

 

「なんですか、これは……ケンマが七人!?」

 

「残像……? しかし、これは………」

 

 

アスフィさんとリューさんもまさか俺の数が増えるだなんて思っていなかったようで、驚愕しながらもしっかりとゴライアスに攻撃を与えているところを見るに流石だと思う。

 

対して、ゴライアスだが幻の俺たちとリューさん、アスフィさんの攻撃を鬱陶しそうに両手で払いのけようとするが幻の俺は実態がないため手応えがなく、リューさんとアスフィさんも素早く躱しているので当たる素振りを見せない。

 

しばらく三人で奮闘を続けていると、ゴライアスが崖上にいる射撃部隊を目掛けて『咆哮』を放とうしているのでそれをさせないために【クロス・クライシス】の構えを取ろうとしたその時、聞き覚えのある詠唱と共にゴライアスの口元が爆ぜる。

 

 

「【燃え尽きろ、外法の業】」

 

「この詠唱は………!?」

 

「【ウィル・オ・ウィスプ】!!」

 

「ヴェルフ!!」

 

「俺だけじゃないぜ!」

 

 

ゴライアスの攻撃を強制中断させたのは、ヴェルフが持っている対魔力魔法の【ウィル・オ・ウィスプ】で咆哮に魔力を使うので効果は抜群だった。

 

そしてヴェルフだけが来たのかと思ってたら、彼が指で示す先に【ウィル・オ・ウィスプ】で生じた爆煙の中から白い何かが煙を突き抜けて、そのままゴライアスの腕を軸に回転しつつ切り裂きながら地面へと降り立った。

 

 

「はああああああッ!!」

 

 

その白い何かの正体は、俺たちの親友で【リトル・ルーキー】の二つ名を持つベル・クラネルであった。

 

 

「ベル!!」

 

「お待たせ、ケンマ!」

 

「それほど待ってないさ。お前たちなら必ず来るって信じてたからな!」

 

 

ああ、そうさ、この二人は必ずやって来る。アニメ知識とかではなく、ベルとヴェルフは前世と今世を含めて出来た数少ない親友なのだから来てくれることを俺は疑わない。

 

心内でそう一人で思っていると後方の射撃部隊の詠唱が完了した知らせが伝播して最前線の俺たちにまで届いてくる。

 

 

「前衛、さがれ!射撃部隊の詠唱が完了したそうだ!!」

 

 

その伝令で最前線に俺たちは一斉に退避して、魔法に巻き込まれるないようにする。ある程度ゴライアスから距離を取ると後方の崖上にとんでもない量の魔力が集まっていることに気付いていたが、距離が近くなるとより鮮明に魔力が集まっているのが分かる。

 

その中でも一番前にいるレフィーヤからは目を見張るほどの魔力が集まっている。そして、射撃部隊が魔法の威力を増幅させる魔法石が埋め込まれた杖や剣などを振り上げると足元の魔法円の輝きが弾け、次の瞬間、怒涛のような魔法の一斉射撃により火蓋を切られた。

 

 

『──────────』

 

 

連続で放たれる複数の属性による攻撃魔法。火炎弾や炎の渦、雷の槍、氷の刃、風の刃、数々の魔法がゴライアスに着弾するがその中でも特に凄いのが枝分かれしたような魔力の弾が弧を描きながら一斉にゴライアスへと降り注ぐ、レフィーヤの魔法だ。

 

やがて一斉射撃が止むと聴覚がおかしくなるような轟音も途切れ、全ての冒険者たちが固唾を呑み込んで着弾地点を見守る。

 

立ち込めた煙が薄れて行くとドッ、ドンッと音と共に見えてきたのは顔半分と両腕を焼失し、両膝を付いて顔から踞るゴライアスの姿だった。

 

 

「ベル、スキルで力を溜めてくれ」

 

「えっ、でも………」

 

「あのゴライアスには再生能力がある。だから、ダメージを与えても必ず回復する。そうなった場合のことを考えて、力を溜めた俺とお前で回復が仕切れないほどの一撃で止めを刺す!」

 

 

アニメでは、【英雄願望】で強化した【ファイアボルト】でもゴライアスの顔の上半分を吹き飛ばすのがやっとだった。ならば、俺がそこへブーステッド・ギアの倍加で強化した某オサレなバトル漫画に出てくる血を媒介にして強力な一撃を放つあの技であれば、上半身半分くらいは吹き飛ばせるはずだ。

 

これは殆ど賭けに近い戦法だ。ベルの蓄力が足らなくても、俺の倍加が足らなくても成功しない。二人の溜めた力がゴライアスの回復力を上回っていなければ壊滅寸前まで追いやられる。

 

 

「わかった。やろう!」

 

「よし、ブーステッド・ギア!!」

 

 

ベルが俺の誘いに乗ってくれたので直ぐブーステッド・ギアを具現化させるといつも聞こえてくるはずの音声が聞こえて来ないし、籠手に嵌められている宝玉もいつもの輝きがない。

 

 

「音がならない? それに宝玉の輝きが…………これって、まさか!?」

 

『ああ、相棒の考えている通り、相棒の成長によって、神器のシステムが通常のパワーアップか、禁手に至るかの分岐点に立っている。まるで、イッセーが禁手に至った時の再現だ』

 

(やっぱり、そうなのかドライグ!?)

 

『相棒もそれなりに強敵たちと戦ってきたからな。それにしても、いくらイッセーに憧れを抱いているとはいえ禁手のチャンスまで真似ることはあるまいよ』

 

(俺だって、好きでこんな展開は望んでねぇよ!?)

 

 

この土壇場で、まさかのブーステッド・ギアの不調というアクシデントに見舞われてしまった俺。この状況をどうするか思考を巡らせるが答えが見つからない。

 

 

「ねぇ、ケンマ。ブーステッド・ギアからいつもの音が聞こえないけど…………」

 

「え、えーっと、ぶっちゃけ不具合中みたいだ」

 

「この土壇場で不具合!?」

 

「仕方ないだろう!俺だって、まさか動かなくなるなんて思ってもみなかったんだからよう!?」

 

 

ちょっと口喧嘩になりそうになっているとゴライアスの自己再生が完了したようで、両手を組んでハンマーのように振り上げていた。

 

 

「やべっ!? ベル、伏せろ!!」

 

「ッ!?」

 

 

ゴライアスが両手で組んだ握り拳を振り下ろす寸前、ベルに伏せるように叫びながら俺も飛び付くように地面に伏せると次の瞬間、大草原が爆発した。

 

巨大な両腕が振り下ろされた一撃で、木々や草花は一瞬で消し飛び、大地は大きく隆起し、終いには衝撃波が冒険者たちを軽く吹き飛ばしてみせた。あまりにも凄絶な光景に脳が理解し、処理仕切れないのか現実味がとても薄い。

 

 

「ぐっ、くっ!? べ、ベル、生きてるか……?」

 

「な、何とか……でも、これは………」

 

「ああ、危機的状況ってやつだ……」

 

 

砂や小石を払いながらお互いの安否を確認しつつ、立ち上がり、周りの状況を把握することに努めながら迫り来るモンスターたちを屠っていく。

 

前衛、後衛を問わず震える手を、膝を、地面について何とか起き上がろうとしている者は数えるほどしか居らず。完全に戦局は壊滅状態であった。

 

 

「くそっ、ブーステッド・ギアさえ動いてくれれば……」

 

 

もっと言ってしまえば、禁手に成れればと思ってしまう。しかし、俺が禁手に至る方法が分からない。イッセーに憧れている俺も偶然とはいえ、レフィーヤの胸を鷲掴みにしたが至れなかった。となれば、俺は女の胸では禁手に至れないということに他ならない。女の胸で至れないのであれば男の胸? とか血迷った考えも浮かんだオエゲロピロピロピーなので、そうでないことを切実に祈りまくる。

 

あと一歩きっかけがあれば届きそうなのに届かないもどかしさに苛立ち、歯軋りしているとゴライアスの攻撃から逃れたリューさん、アスフィさんの二人が俺たちの下にやってきた。

 

 

「イシグロさん、クラネルさん、無事でしたか」

 

「俺たちは何とか………ですが、周りの冒険者たちは………」

 

「分かっています。ですから貴方たちは、ここに残って周囲のモンスターたちを。私とアンドロメダでゴライアスを抑えます」

 

「で、でも………!」

 

「このまま蹂躙される訳にはいきません。時間を稼げば、動ける魔導師がもう一度魔法を放てます。それでも駄目ならもう一度倒すまで………何度でも!」

 

「リューさん………」

 

「御武運を」

 

 

時間が惜しい、と言うように話を切り上げてリューさんはアスフィさんと共にゴライアスに向かって駆けて行ってしまった後を眺めているとレフィーヤの詠唱が聞こえてきた。

 

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

 

「この詠唱は………レフィーヤの召還魔法!?」

 

「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ。繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ】」

 

 

レフィーヤが態々精神力を使う『召還魔法』を使うということは、以前俺に使ってくれたリヴェリアさんの回復魔法で傷付いた冒険者たちを治療するのか或いは攻撃魔法または結界魔法を使うのかは分からない。

 

だが、詠唱を始めたことで魔力が集まり、それに反応したモンスターたちが一斉に標的をレフィーヤへと変えた。加えて、ベルも【英雄願望】の蓄力を始めていた。

 

 

「くそっ、考える暇もくれないのかよ!」

 

 

ベルの蓄力にモンスターたちは目もくれずにレフィーヤへと集まっていくのを見て、この後に起きるであろうと展開を知っておきながらレフィーヤの援護に回ることに、心内でベルに謝りながらブーステッド・ギアを解除して《天閃の聖剣》の能力でモンスターたちを高速で屠りまくる。

 

 

「【至れ、妖精の輪────どうか、力を貸して与えてほしい!】」

 

「レフィーヤの邪魔はさせるかよ!!」

 

「【エルフ・リング】!!」

 

 

レフィーヤの詠唱が完了して【エルフ・リング】の発動に成功すると、彼女の足元に展開されていた魔法円の色が山吹色から翡翠色へと変化した。

 

 

「レフィーヤ!リヴェリアさんの結界魔法を!!」

 

「わかりました!」

 

 

叫ぶようにレフィーヤにそう指示を出すと直ぐに頷いて、結界魔法の詠唱へと入ってくれた。何故、回復魔法ではなく結界魔法を詠唱するように指示出したかと聞かれたら、ベルが【英雄願望】で強化した【ファイアボルト】を撃った後に放たれるゴライアスの咆哮もそれなりに防いでくれるかもしれないと思ったからだ。

 

それに万が一にも咆哮ではなく、また両腕による振り下ろしが来てしまってはせっかく回復させても焼け石に水となってしまうので結界魔法による守りに徹することにしたのだ。

 

 

「【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ】」

 

「これで粗方を倒し終わったか?」

 

「【森の守り手と契りを結び、大地の歌を持って我等を包め】」

 

 

レフィーヤが詠唱を紡ぐ中、モンスターたちが周囲から寄って来なくなったのを感じてから周りを見渡しながら索敵をしていると、今度はゴライアスが雄叫びを上げながら詠唱を妨害するために咆哮をレフィーヤに放った。

 

せっかくここまで詠唱が完了しているに妨害されては、全てが水の泡に返ってしまうので真正面から咆哮を何とかするしかなかった。

 

 

『ゴオオオオオオオオッ!!』

 

「やらせない!絶対にやらせない!!」

 

 

真正面からゴライアスの攻撃を破るため、《真のエクスカリバー》を地面に突き刺して《デュランダル》を両手で握り締める。

 

 

「デュランダル、お前はありとあらゆる物を切り裂くことのできる伝説の聖剣だ。だから力を貸してくれ!」

 

「【我等を囲え大いなる森光の障壁となって我等を守れ】」

 

 

両手で握り締めた《デュランダル》を天高く振り上げながら俺の聖剣使いとしての聖なるオーラを全力で流し込む。そして、そのまま一気にゴライアスの咆哮目掛けて渾身の一撃を振り下ろす。

 

 

「はああああああッ!!」

 

「【我が名は────アールヴ】!」

 

 

詠唱完了まで後少しのところで、ゴライアスの咆哮と俺が振るう《デュランダル》が衝突。感じたこともない、途轍もない抵抗力を両手に感じながら歯を食い縛るが、ジワジワと後ろに押し込まれている。

 

ここで俺が退けられたらそのままレフィーヤに当たる。推しであるレフィーヤに当たってしまう。俺は今、推しキャラを背中に背負って戦っているんだ。

 

だったら─────

 

 

「オタクとして負ける訳にはいかねぇよなァアアアアア!!」

 

 

オタク根性増し増しでゴライアスの咆哮を《デュランダル》で斬ることに成功すると背後にいるレフィーヤの詠唱も完了した。

 

 

「【ヴィア・シルヘイム】!!」

 

 

完成した魔法によって、黄金の魔法陣が頭上に出現、やがてそれはドーム状の黄金に輝く結界となってゴライアスの攻撃から俺たちを守護する。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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