臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第六十九話

 

 

 

 

〈sideベル〉

 

 

 

 

「僕は……英雄になりたい」

 

 

そうだ、僕は『英雄』になりたいんだ。あの時も僕は同じことを心の底から思ったんだ。弱い自分だって奮い起こしてみせるような、強い英雄みたいな男になりたいって…………。

 

小さな呟きと共にあの日、生まれて初めて『冒険』をした日の感覚が火種に薪をくべるように徐々に燃え盛ってくる。

 

 

「『もし、英雄と呼ばれる資格があるとするならば────』」

 

 

茂みの中からその声が響き、幼い頃に聞いた亡き祖父の声が僕の頭に甦る。

 

 

「ヘルメス!?」

 

「『剣を執った者ではなく、盾をかざした者でもなく、癒しをもたらした者でもない』」

 

 

この台詞は、僕が今よりももっと幼い頃にお祖父ちゃんが英雄になるために語ってくれた言詞。

 

これはもう一つの僕の原点だ。

 

 

「『己を賭した者こそが、英雄とよばれるのだ』」

 

 

嗚呼、そうだ。お祖父ちゃんの言うとおり、自分の身を賭けて僕を助けてくれた親友のケンマは、まさしく英雄と呼ばれるにふさわしい人だ。

 

 

「『仲間を守れ。女を救え。己を賭けろ』」

 

 

じゃあ、そんな人に救われた僕は?

 

 

「『折れても構わん、挫けても良い、大いに泣け。勝者は常に敗者の中にいる』」

 

 

英雄になれない? いや、違う。僕は一度負けた。そして泣いた。敗者となった今の僕なら這い上がる以外に何もない。勝者は、英雄は、常に敗者の中にいるのだから!!

 

 

「『願いを貫き、想いを叫ぶのだ。さすれば───』」

 

 

そう、それが─────

 

 

「「「『───それが一番格好のいい英雄だ』」」」

 

「え?」

 

 

どうしてヘルメス様がお祖父ちゃんが言っていた言詞を知っているかはわからない。そんなことよりと、懐かしいお祖父ちゃんの言葉を言い切ると僕とヘルメス様以外の声にもう一人、最後に僕たちと同じことを述べた存在に目を向ける。

 

すると、そこには左手に真っ赤な籠手を身に付けて笑顔を浮かべながらゆっくりと立ち上がろうとしている親友の姿があった。

 

 

「よう、ベル。クライマックスタイムには間に合ったか?」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

~少々、時間を遡り~

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

真っ白な世界が広がっている。けれど、どこか見覚えのある白い世界だ。

 

 

 

「ここは………もしかして、俺死んだ?」

 

『いや、相棒はまだ辛うじて生きている』

 

「ドライグ!? ってことは、ここはブーステッド・ギアの中ってことか?」

 

『ああ、どういう訳かお前さんがあの巨人擬きの一撃を大楯を持った人間と共に受けたあと、お前さんの意識だけがブーステッド・ギアの中へと引き摺り込まれた』

 

「引き摺り込まれたって……原因は? 外に出る方法は?」

 

『詳しいことは俺にも分からん。しかし、懐かしい波動を…………いや、それはありえんことだ。忘れてくれ』

 

「お、おう」

 

 

要領を得ない答えが返って来たがドライグが忘れろと言うのだから、今は気にしないことにしよう。

 

 

「しっかし、初めて来たな………ブーステッド・ギアのなか」

 

 

アニメでは、歴代赤龍帝の残留思念が弧を描いた椅子に座っているシーンがあったが今ではその椅子すらない。本当に真っ白な空間以外はなくなっているようだ。

 

 

「なぁ、ドライグ。この空間はどのくらい続いてるんだ?」

 

『さぁな。俺も全てを把握している訳ではないが、かなりの広さを有しているのは事実だ』

 

「じゃあ、この空間の果てにはブーステッド・ギアのシステムが有るわけか」

 

『ブーステッド・ギアのシステムに何か気になることでもあるのか、相棒』

 

「原作………俺が知っているイッセーを主人公にした物語だと、乳と尻への恐怖を克服するためにドライグとアルビオンがその………和解するんだ。イッセーとヴァーリの時代が二天龍にとって最悪の時代なんだって………」

 

『…………そうか、そういう考えもあるのか』

 

「んで和解を果たしあと、お互いの神器に潜って生前の力を取り戻すために奮闘するんだ。ドライグの場合は『透過』が使えるようになる」

 

『それは本当か、相棒!?』

 

「ああ、本当だ。それに『白龍皇の籠手』が変化した『白龍皇の妖精達』でアルビオンの『半減』と『反射』が自由自在に使えるようになったのは滅茶苦茶興奮したのを覚えてる」

 

 

『デイウォーカー編』で偽赤龍帝として人工的に作り上げた『偽赤龍帝の籠手』を装備したユーグリッドを倒す時にイッセーが白龍皇の力を覚醒させたシーンには、『ハイスクールD×D Hero』でサイラオーグの戦いで流れたBGMをスマホで聞きながら読み返したものだ。

 

マジで、ライバルの力を使えるようになるのは熱い展開過ぎてワクワクが止まらなかった。懐かしいことを思い出しながら真っ白な空間を散策することにした。

 

あてもなく真っ白な空間を只管歩いているとようやく一つの家具を見つけた。よくアニメでバーとかにある円形のテーブルのバーテーブルがあった。そのテーブルの上には一冊の本が置かれていた。

 

 

「これは…………ハイスクールD×D一巻?」

 

 

何故、こんな物があるのかはわからない。けれど、久しぶりに娯楽と呼べるラノベを手にしたのだ。今がそんな時ではないことを分かっているが、ベルが無事なので何とかしてくれるだろうという思いで本を開こうとした瞬間、ブーステッド・ギアを装備した腕が本を開こうとしている俺の腕を掴んだ。

 

 

「本当ニ、イイノカ?」

 

「ブーステッド・ギア?」

 

 

腕の正体を確かめるために、腕で伝いながら視線を滑れせていくとその先にはまさかの『赤龍帝の鎧』を纏った誰かが俺の腕を掴んでいた。

 

 

「赤龍帝の鎧!?」

 

『バカな、そんなはずはあり得ない!? この波動の感覚は…………■■なのか!?」

 

「ドライグ? ドライグは、赤龍帝の鎧を纏っている奴が誰なのか分かってるのか!?」

 

『ああ、分かっている。しかし、これはどういうことだ。お前は確かに……あの時………』

 

「■■ニモ、詳シイ事ハ分カラナイ。気ガ付イタラ、コノ姿ダッタ」

 

 

ドライグが言っているあの時とは間違いなく、次元の狭間でイッセーがサマエルの毒を喰らった時のことを指しているのだろう。それにしても鎧を纏っている奴の声が変声機みたく弄られているようで、歴代赤龍帝の誰のなのかを見破ることが出来ない。

 

まるで、今はその時ではないような演出だ。加わって一人称までもが聞こえない徹底ぶり、マジで今はその時ではないようだ。

 

 

「歴代赤龍帝の誰だか分からないけど、本当にいいのか、どういう意味だよ?」

 

「コレヲ見ロ」

 

 

先代赤龍帝が指で示した先にあったのは、宙に浮かぶホログラムだった。それに映しだされたのは、涙を流しながら詠唱を唱えるレフィーヤと俯きながら涙を流しているベルの映像だった。

 

 

「おい、どういうことだよ…………なんでベルがいるんだよ!? せっかく俺が身代わりになったんだから、早くゴライアスを倒しに行けよ!!」

 

「身代ワリ、ソレガ原因ダロウ」

 

「は?」

 

「御前ノ記憶ヲ少シダケ見サセテモラッタ。御前ガ身代ワリニナッタコトデ本来ハ訪レル事ノナイ挫折ガ、今アノ少年ニハ襲イカカッテイル」

 

「じゃあ、ベルがゴライアスを倒しに行かないのは俺の所為なのか?」

 

「自分ノ所為デ友ガ、仲間ガ傷付イテシマッタトイウ挫折。不調トイエド、御前ナラバ一人デモ倒セテイタカモシレナイトイウ劣等感。ソレガアノ少年ノ足ヲ、覚悟ヲ鈍ラセテル」

 

「そんな………俺は普通に合理的で効率的な方法だったから」

 

 

俺という異分子が、ベルがゴライアスを倒しに行く妨げになっていることに苛立ちが湧いてくる。

 

映像を見続けていると回復魔法を唱えて、ある程度まで俺と桜花の治療を済ませたレフィーヤはヘスティアから感謝の言葉をかけられたあと、その場から立ち上がり、俯いているベルに向かってずんずんと歩み寄っていく。

 

そして─────パシンッ!!

 

乾いた音と共にレフィーヤは掌を振り抜き、ベルは振り抜かれた掌によって無理矢理に顔を他所へと向けられ、遅れて自分が叩かれたのだと気付いたのか片手で頬を抑えている。

 

 

 

『いつまで、そうやってウジウジしているつもりなのかと聞いているんです。答えてください、ベル・クラネル』

 

『………』

 

 

レフィーヤの問いに、ベルは答えない。いや、答えられない。

 

 

 

『はぁ………失望しました。それにちょっとでも貴方のことをライバルだなんて思った私が愚かでした。今の貴方を()()()が見たらどう思うでしょうか』

 

『ッ!!』

 

 

そのたった一言でベルは息を呑んだ。それが起爆剤となったのかベルの顔に変化が訪れた。それはまるで、赤いミノタウロスとの戦いで見せた冒険者としての覚悟を宿した強い眼差しだった。

 

ベルの強い眼差しを目にして、親友が立ち上がろうとしているのに呑気にラノベなど読んでいられるほど暇ではないだろうと思い、覚悟を決める。

 

 

「俺、戻るよ。憧れのイッセーもはぐれ悪魔になってでも復讐を成し遂げようした木場佑斗を一人にはしなかった。だから、俺もベルを一人にはしない!」

 

 

そうだ、俺が憧れた兵藤一誠という男はおっぱいのことばかり考えて、おっぱいで成長するどうしようもないスケベな色欲魔で、おっぱいドラゴンという異名まで付けられるどうしようとない男ではあるが、友を見捨てたりはしなかった誠実な男だった。

 

それにイッセーのヒロインの一人である塔城小猫こと白音がイッセーに言っていたではないか「優しい『赤い龍の帝王』になってください」と、ならばイッセーに憧れている俺も優しい赤龍帝とやらになっても問題はないはずだ。

 

そう思った途端、俺の左手が赤く輝きを放ち、左腕にブーステッド・ギアが具現化されていた。同時に俺の中で何かが分かった気がした。

 

 

「なるほど、イッセーもこの感覚に任せて禁手に至った訳か」

 

 

禁手に至る切っ掛けを感じた俺は、ゆっくりだが身体が浮いて行くような浮遊感を感じ始める。これは俺の意識が目覚める前兆なのだろう。

 

ならば、この切っ掛けを与えてくれた先代の赤龍帝に感謝の言葉を残して行くのが礼儀だろう。

 

 

「先代の赤龍帝、アンタが誰なのかは分からない。けれど、俺に大事なことを思い出させてくれた。だから、ありがとうございます!」

 

「気ニスルナ。ソレヨリモ早ク行ッテヤレ」

 

「はい!」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈side???〉

 

 

 

 

 

「行ッタカ」

 

 

後輩を見送ってから一人呟く。

 

 

『ああ、行ったようだ。しかし、本当に驚いたぞ。まさか、お前が残留思念として残っているとは……。何度も探したが全く見つからなかったからてっきり、歴代たちと共にサマエルの毒に殺られたとばかり』

 

「ソレニツイテハ、"■"ニモ分カラナイ。気ガ付イタラコノ有リ様ダ」

 

『なにはともかく、お前が残っていることが分かっただけでも俺は嬉しいぞ』

 

「ソウ言ッテモラエテ、"■"モ嬉シイナ」

 

『それでこれからお前はどうする。 歴代のように次代の赤龍帝を眺めるつもりか? それともこれで成仏するのか?』

 

「ヤリ残シタ事ヤ、生前へノミレンハ沢山アル。シカシ、コノ姿デハ何モ出来ヤシナイカラ。当分ハ、後輩ノ行ク末ヲ観察サセテモラウサ」

 

『そうか。しばらくはお前といられるのだな』

 

「アア、ダカラ当分ノ間ヨロシク頼ム、ドライグ」

 

『それはこちらの台詞だ、■■■』

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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