臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
重力の結界。それこそが【タケミカヅチ・ファミリア】のヤマト・命の唯一の『魔法』にして、オラリオでも稀に見ない強力な魔法でもある。
それ故に、推定LV.5 のポテンシャルを持つ『黒いゴライアス』も容易には結界を破壊することは出来ず、少しずつだが地面を陥没させながら圧縮され初めている。
しかし、相手は階層主。その存在は伊達ではなく、溜め池が出来そうなほどに地面が陥没したところで重力の結界が破られる。
「破られますっ………!?」
『オオオオオオオオオッ!!』
「くっ……!」
「結界が……!?」
「大丈夫。あいつが来るはずだ!」
結界が破れたことに少なからずリューさんとアスフィさんに動揺が走る。だけど、俺は知っている。このタイミングであの男が『意地と仲間』を秤に掛けることを止め、友のために、仲間のためにその剣を振るうことを。
「お前らァ! 死にたくなかったらどけぇえええええええ!!」
その叫びと共に男は走る。手には飾り気の一切ない柄と刀身だけの長剣。岩から削り出されたような無骨な外見にも関わらず、その刀身はまるで炎を凝縮したかのように猛々しく、そして美しかった。
「あれが、本物の魔剣…………あれが『クロッゾの魔剣』」
同じ魔剣を創造し、扱う者として、その魔剣に思わず見惚れてしまうほどに美しく、力強い気配をビシバシと感じ取った。
そして、クロッゾの魔剣が振るわれる。
「火月ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
その瞬間、誰もが目を炎の色に焼かれた。
魔剣から放たれる真紅の轟炎。大上段から振り下ろされた魔剣から巨大な炎の奔流が迸り、一直線にゴライアスを呑み込んだ。
「あれが、『クロッゾの魔剣』……!」
「魔剣が………正式魔法を超えた威力を!? 規格外過ぎる!」
炎焔の大渦に、リューさんとアスフィさんが戦慄している最中、俺は『魔剣創造』でとあることをやろうと試みようしたが魔剣を生み出せないことに困惑する。
けれど、即座に『ハイスクールD×D』の公式設定になかったが原作には明記されていたことを思い出したので、意識を切り替えて記憶に残っているゲームに出てくるとある風魔法の詠唱を唱えながら力を高める。
「恐慌たる烈風、還れ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』
「虚無の彼方!フィアフルストーム!!」
【魔力操作】によって、イメージ通りに【フィアフルストーム】がゴライアスの足元から繰り出されると、真空の刃が巨軀を切り裂き、裂傷から舞う鮮血を烈風によって勢いが増した炎焔の渦が外皮を燃やしながら蒸発させる。
あまりの炎焔の勢いと真空の刃にゴライアスも自慢の自己治癒が追い付かずに目に見えるほどに損傷箇所を増やしていく。
『─────────────』
声にならない苦痛の叫びを上げるゴライアスを眺めていると側にいるリューさんから名前を呼ばれる。
「もしや………あなたは、イシグロさんなのでは?」
「あっ、やっぱ分かります?」
「ええっ!?」
リューさんに名指しで訪ねられたので、どうせいずれは顔バレはするだろうと思って、兜だけ外して素顔を見せる。すると、一緒にいるアスフィさんが全身甲冑の男が俺だと分かると驚きのあまり眼鏡がズレる。
「やはり、イシグロさんでしたか。その籠手に見覚えがあったのと詠唱している声で分かりました」
「ですよね。あっ、この鎧についてはあまり詮索しないでくださいね。アスフィさんも、その“サンダル“や“兜"について詮索されたくはないでしょう?」
「ッ…………」
『赤龍帝の鎧』について詮索させないために、アスフィさんが持つ虎の子の空飛ぶ魔道具や姿を消せる魔道具を兜を付け直しながら話に持ち出すと目に見えて動揺が走る。
それはそうだろう。今まで唯一無二の空を飛ぶことのできる魔道具を自分だけが持っていると思っていたところを魔道具を超える異世界産の神様が製作した神器で飛んでいるところを横で見ていたら詮索したくもなるものだ。それも稀代の魔道具製作者なんて謳われていれば尚更のことだろう。
「───みんな、道を開けろぉおおおおおお!!」
ヘスティアの叫びが響き、注目が集まるとその先には白い光を今までよりも強く輝かせながら疾走するベルがいた。
(悪いな、ドライグ。せっかく禁手に至ったのに、殆んど活躍してなくて)
『別に構わんさ。あの巨人族擬きを殴り飛ばした一撃、実に爽快だった。それだけで十分だ』
(ありがとう、ドライグ)
ドライグに禁手へと至ったがあまり目立った活躍をしていないことを謝るが、ドライグはゴライアスを殴り飛ばしただけで十分だと言ってくれた。なので次回からは、チャンスがあれば場所と場合が合えば遠慮なく赤龍帝の力を存分に振るうことを心に決める。
正直、今の俺でもあのゴライアスを倒すことは可能なのだが、この戦いで奴を倒すのはベルでないと困る理由があるのだ。それは物語の流れというやつだ。
この戦いでベルがゴライアスに止めに刺して、冒険者の口伝で【アポロン・ファミリア】に目を付けられ、喧嘩を売られ『戦争遊戯』へと発展し、それで【アポロン・ファミリア】に勝利して【ランクアップ】を果たしてもらう。それが俺の狙いでもある。
「決めろよ、ベル!」
そんな思惑を考えながら俺は腕を組んでいつでもベルを助けられるように鎧を維持したままで親友の行く末を見守る。
アニメと違って、大怪我を負っていないベルの動きにはキレがある。対して、ゴライアスは俺が威力を増大させた【フィアフルストーム】とヴェルフの魔剣で大ダメージを受けている。今ならば、【英雄願望】の一撃を奴に叩き込めれば勝ちは限りなくベルに巡ってくる。
そして────ついにベルがゴライアスの懐へと飛び込み、足にブレーキをかけ滑るようにして遠心力を加えた『英雄の一撃』を奴へと振り放った。
「ああああああああああああッ!!」
『─────────』
思わず腕で目を覆ってしまうほどの純白の極光が俺たちの視界を埋め尽くし、ベルの咆哮とゴライアスの雄叫びをかき消すほどの轟音が鳴り響く。
少しずつ視界が回復すると、そこにはアニメ同様、上半身を失い、巨大な魔石を露出したゴライアスの姿があった。しかし、それだけではない。残っている下半身部分がボコボコと少しずつではあるが再生を初めている。
「あの一撃さえも………!?」
「執拗いにもほどがある!?」
「大丈夫です」
「え?」
「俺が知っているベル・クラネルなら勝ちます」
だって、ベル・クラネルはこの世界の主人公にして英雄になる男なのだからこんな所で立ち止まってなんて居られない。
その証拠にベルは、命の【フツノミタマ】で出来上がった巨大なクレーターを壁走りしながら加速していき、その勢いを利用して高く跳躍し、腰から《ヘスティア・ナイフ》を抜き放つ。
そして、漆黒のナイフを魔石に突き立てると捻って、魔石をかち割る。魔石を分かたれたことでゴライアスの生命活動が停止、その身体を灰へと変えて、天井まで届くほどだ。天に舞った灰は、巨大な敵を打ち倒したことを祝福するように18階層の『夜』と合わさり、幻想的な光景を生み出した。
イレギュラーで生まれた黒いゴライアスが完全に討伐されたことを目撃した冒険者たちは大地を振るわせんばかりに勝鬨の雄叫びを上げる。
「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」
ゴライアスの最期を見届けた俺は、制限時間が切れる前に森の中へと一人姿を消すために動き出そうとすると、リューさんから何処に行くのかと訪ねられる。
「イシグロさん、どこへ?」
「これ以上、鎧とその所有者を見せる訳には行かないので森の中で外してくるだけです。ちょっと目立ち過ぎましたから」
リューさんの問いにそう答えながら早足で森の中へと消える。
○●○
一人、森の中へと姿を消した俺は、ある程度まで行ったところで周りに誰の気配もないことを確認してから『赤龍帝の鎧』を解除をする。
すると、どっと疲れが襲いかかってくるが動くのには問題ないので後でゆっくりと休もうと思う。明らかに『超回復』ですら間に合わないほどにダメージと疲労が蓄積している。
「疲れたぁ………」
鎧を解除してから改めて自分の身体を確認すると、ヴェルフに作ってもらったライトアーマーが全損、インナーの『サラマンダー・ウール』も辛うじて原型を留めているくらいで護符の効果は見込めそうにない。
これは地上に帰還したら武器以外全部を総取っ替えだ。
「ゴライアスの魔石をフィンさんに預けて正解だったわ………ナイス、昨日の俺!」
昨日の自分に自画自賛しているとあることを思い出した。
「あっ!やベっ、デュランダルのことを忘れてた!?」
ベルの身代わりになって、ゴライアスの平手打ちを受けたあの時に《デュランダル》を失くしてしまったことを思い出した俺は、その場で慌ててしまう。
「どうしようどうしようどうしよう、どうしよう!?」
『落ち着け、相棒』
「そんなこと言ったって!ドライグだって、デュランダルの重要性は知ってるだろう!?」
『ああ、理解しているとも。だからこそ、落ち着けと言っているんだ。相棒にはエクスカリバーがあるではないか、そのエクスカリバーに統合された一本のうちの支配の聖剣ならば、どこかにあるデュランダルを呼び寄せることもできるはずだ』
「あっ、なるほど………その手があったか!」
ドライグから《支配の聖剣》で《デュランダル》を呼び寄せることができるのではないかと教わった俺は、早速《真のエクスカリバー》に意識を集中して、《支配の聖剣》の能力を使って見ることにした。
「来い!デュランダル!!」
支配の能力で18階層のどこかにある《デュランダル》を呼び寄せると風を切る音と共に空から《デュランダル》が回転しながら俺の目の前に振ってきた。
直ぐに《真のエクスカリバー》共々、異空間へと収納しようと持ち手に手を掛けると《デュランダル》から攻撃的なオーラが放たれ、俺の掌を浅く裂いた。
「痛ッ!?」
『どうやら、自分のことを忘れていた相棒へのお仕置きのようだぞ』
「わ、悪かったよ………ようやく禁手に至れたことが嬉しくて、ちょっと忘れてたけど、ちゃんとこうやって呼んだろう? それにお前がいなかったらレフィーヤを守ることは出来なかった。だから、これから力を貸してくれ!」
ちょっとオコな《デュランダル》に頭を下げると、《デュランダル》も納得してくれたのか攻撃的なオーラを納めてくれた。
「ふぅ………改めて、これからもよろしくな」
今度こそ、持ち手をしっかりと掴んでから某不死鳥のマークのゲームに出てくるキャラクターのように《デュランダル》の刀身の腹に額を当てて、呟く。それが終わったら《真のエクスカリバー》と《デュランダル》を合体させて《エクス・デュランダル》にして異空間へと放り込む。
二本しかない伝説の聖剣である《エクス・デュランダル》の回収が済んだので、森から出て、皆と合流しようとするが身体中からギチギチと骨が軋む感触がまだ残っている。
さすがに評価Iの『超回復』のアビリティではそこまで回復が進んでいないようなので、軽く回復魔法を施すことにした。
「ベホイミ!」
【ベホイミ】の魔法でさっきまで感じていた骨の軋みが軽くなり、動き易くなったのとずっと感じていた痛みも引いた。
「そういえば………なぁ、ドライグ」
『なんだ?』
「さっきは聞けなかったが、俺が鎧を解除して、次に鎧を具現化できるまでインターバルってどのぐらいだ? イッセーが禁手に至って直ぐの時は、一日に一度しか鎧を具現化出来なかった記憶があるんだが」
『ああ、間違っていない。イッセーの時は禁手に至った間もない頃はそうだった。相棒の場合は、一度鎧を具現化してから解除すると最低でも約十二時間の間を開けなければ、再度鎧を具現化することはできん』
「となると、無理矢理だが考え方によっては一日二度まで鎧を具現化できる訳か……。解除後に赤龍帝としての能力は使えるのか?」
『そこは心配ない。しっかりと倍加も譲渡も可能だ』
「了解。にしても、これでようやくスタートラインか」
俺の中にある目標のスタートラインであるブーステッド・ギアを禁手に至らせるという目標は達成できた。次の目標は、『聖剣創造』と『魔剣創造』を禁手に至らせることだろう。
『赤龍帝の鎧』は任意である程度までは限界まで倍加を高められる反面、燃費が悪い。ならば、倍加のような能力はないが同じ禁手でも燃費が良い新しい禁手を習得する。そうすることで、二種類もしくは三種類の禁手を状況に合わせて使い分ける。
「それが俺の新しい目標だな」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に