臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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大変お待たせしました。私生活が一転して忙しく、平日は執筆が滞ってしまい土日や祝日に頑張って、ゴライアス戦の後の後日談がようやく完成しました。

明日からいよいよ『オリオンの矢』の執筆に勤しんで行きますので、今後も「臆病者な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?」をよろしくお願いいたします。



迷宮温泉リゾート&後日談
第七十二話


 

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「行きます!【ヒュゼレイド・ファラーリカ】ッ!!」

 

 

『黒いゴライアス』との激戦から一日、掛け声と共に魔法の杖から放たれるレフィーヤの【ヒュゼレイド・ファラーリカ】の無数の炎の矢。それが今まで『街』の冒険者たちが撤去していた17階層に繋がる階段を潰している土壌に命中すると、大爆発と共に土壌が吹き飛んだ。

 

幸い、その魔法で新たに土壌が降ってくるなんてことはなく。何とか人が通れそうなくらいの穴が出来上がった。しかし、それでも以前のような横に何人も並んで通れるほどの大きさと比べると明らかに狭い。

 

 

「これでようやく上に行けますが、それでも時間がかかりそうですね」

 

「昨日の戦いで、『街』にあった殆んどの武器や道具を消費しました。そのため、彼らも我先にと地上へと戻り、ここで高く売り捌くつもりなのでしょう」

 

「これだから冒険者は………」

 

 

アスフィさんの話にリューさんが補足を加えると、冒険者嫌いのリリが愚痴っている。

 

我先にと地上へと上がりたい冒険者たちで、まともに進めそうにないのでしばらく待っていようと待機していると、土壌の撤去を終えたレフィーヤが戻ってきた。

 

 

「お疲れ様、レフィーヤ」

 

「いえ、これくらいへっちゃらです!」

 

 

レフィーヤに労いの言葉をかけると、彼女は可愛らしくドヤ顔で胸を張る。

 

 

「私のことよりもケンマの方は、もう大丈夫なんですか?」

 

「ああ、身体の方はこの通り!だけど、防具の方がな…………だから、ヴェルフ。地上に戻ったら防具の新調を頼むな」

 

「任せろ!それとベルもだが、ゴライアスの皮の使い道はどうする? 要望があったら何でも言ってくれ」

 

 

ヴェルフの話を聞いて、俺は悩む振りをしながらとあることの可能性のイメージをブーステッド・ギアの本体とも云えるドライグ先生に送りながら訪ねる。

 

 

(なぁ、ドライグ。このイメージって、ブーステッド・ギアでも出来たりする?)

 

『フム………可能性から言って不可能ではないはずだ。相棒も知っている通り、神器は強い想いによって答える。このイメージを成功させるかは相棒の強い想い次第だろう』

 

(出来る可能性があるなら試して見る価値はありそうだな)

 

 

ドライグの答えを聞いて、本格的に『ゴライアスの硬皮』をどうするか悩む。イメージ通りの防具にするかはたまた戦闘衣にするかで迷う。

 

けれど、よくよく考えてみれば今直ぐ必要な訳ではないので早急に決めなくてもいいだろう。アニメでもベルが持っている『黒いゴライアスの硬皮』も四期に入ってから防具として使われるようになるのだからそれでいいだろう。

 

もしくは、敢えて春姫が【ヘスティア・ファミリア】に加入してから彼女に【ウチデノコヅチ】の魔法でヴェルフのLV. をブーストしてもらった状態で『硬皮』を防具にしてもらえば、より強固な防具が完成するのではないだろうか?

 

そう考えるとその時が楽しみで少しだけニヤケしまう。

 

 

「ど、どうしたケンマ?! いきなりニヤニヤしだして、ちょっと気持ち悪いぞ!?」

 

「いやなぁ? ちょっと面白い防具と武器のイメージが湧いてきて、それをどうヴェルフに作ってもらおうかと考えてたらワクワクでニヤケちまった」

 

「あー、それは何となく分かるぜ。こー、自分のイメージが水のように湧いてきて止まらない感じだよな」

 

「そうそう、そんな感じ」

 

 

いやぁ、同じ感覚を共感してくれる友がいてくれるのは嬉しいことだ。前世では友達という友達が出来なかった元ボッチなので転生して良かったと改めて思う。

 

ヴェルフと二人で新しい装備のイメージをあれこれと話合っていると、いつの間に地上に戻りたい先頭の冒険者たちがいなくなっており、ようやく俺たちも地上へ戻ることが出来そうだ。

 

 

「それでは、改めてこれから地上へ帰還します。各々、忘れ物や陣形などの質問はありませんね?」

 

 

地上と帰還する間のパーティーリーダーを勤めるアスフィさんの問い掛けに俺たちは問題ないため、頷いて返答する。

 

 

「では、出発します」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

18階層を出発してからしばらく、14階層辺りまで何の滞りもイレギュラーもなく戻って来れた。そんな時、ヘルメスが感傷深く、黒いゴライアスとの戦いの感想を言う。

 

 

「いやぁ~、まさに大・激・戦、だったねぇ!」

 

 

ヘルメスの言う通り、確かにあの戦いは激戦だった。その所為で死にかけたがお陰で無事に禁手へと至ることが出来たので戦いに参加して良かったとは思うが二度目はごめんだ。

 

 

「本当は、18階層で、もう少し休んで行きたかったんだが……オレとヘスティアがいる以上、そうはいかないからなぁ」

 

 

これまたヘルメスの言う通り、神であるヘルメスとヘスティアがふとした拍子で抑えている神威を解き放ち、黒いゴライアスのようなイレギュラーが起きないとも限らないので早急に地上へと帰還するのは賛成だ。それは、このパーティーの全員が同じ思いだろう。

 

しかし、ヘルメスの18階層でもう少し休んでいたいという意見にも賛同者はいる。それはリリとヘスティアである。

 

 

「ホントです。ヘスティア様さえいなければ、ベル様にはリリと一緒にリヴィラでゆーっくり休んで頂けたのに!」

 

「何を言っているんだい、サポーターくん!ベルくんは早く帰って、ボクと一緒にゆーっくり休みたいに決まってるっ!」

 

「ヘスティア様とじゃ、疲れが取れません!ベル様はリリがいたわってねぎらって尽くして差し上げます!」

 

「何を言ってるんだっ!ベルくんは三度の食事よりボクといるのが好きなタイプなんだっ!」

 

 

リリとヘスティアがベルを巡って言い争うのは最早見慣れた光景なのだが、見慣れていないレフィーヤと【タケミカヅチ・ファミリア】の者たちは困惑している。

 

 

「万年発情ウサギ………アイズさんだけに飽きたらず、自分の主神やかよわい小人族のサポーターまで………やっぱりここで仕止めておくべきか」

 

「止めたれ、レフィーヤ。そんなことしたら、あとでリヴェリアさんの雷と拳骨が落ちてくるぞ」

 

「うぐっ………!それは出来るだけ避けたいです」

 

 

両手に華状態のベルを後ろから魔法杖を構えようとしているレフィーヤを止めると、前方から複数のモンスターの気配を感じた。

 

それはベルも感じたのか、咄嗟に両腰の剣帯から《ヘスティア・ナイフ》と《牛若丸》を引き抜いて、構える。けれど、武器を構えるのはベルだけではなく、俺やレフィーヤ、リューさん、他の者たちも神であるヘスティアとヘルメスを守るように自分の得物に手を掛けて臨戦態勢に入る。

 

 

「来ますっ!」

 

 

ベルの掛け声と共に物影から現れたのは四体のヘルハウンドだった。更には壁から無数のハード・アーマードまでもが出現してきた。

 

 

『グルルルル────』

 

『ロオオオオ────』

 

 

前方と側面からモンスターの大群が現れたことにヘスティアが恐怖から後退るが、そこへ唯一のヘスティアの眷属であるベルが彼女を守るように前へ出た。

 

 

「あわわわ…………」

 

「大丈夫です、神様!」

 

「へ?」

 

「神様は僕が守ります!」

 

「ベルくん!」

 

 

格好いいことを言うベルに口笛を吹きながら俺もただの魔剣を握りながら【プロモーション】の『魔法』で『騎士』へと昇格する。

 

 

「ひゅ~、格好いいをことを平然と言えるな。やっぱりベルは凄いな。【プロモーション・ナイト】ッ!」

 

「これは………詠唱無しの身体強化魔法!?」

 

「んじゃ、一気に片付けますか!」

 

 

戦闘が始まると三分とかからずにヘルハウンドとハード・アーマードの大群を相手に、誰一人として怪我を負うことなく俺とベルだけ討伐することに成功する。

 

それもそのはず、このパーティーの殆んどが上級冒険者で構成されているため、背中を安心して任せられる。なので、イレギュラーさえなければ『中層』程度のモンスターに遅れを取ることなどあり得ない。

 

そして、『怪物祭』の時よりも強くなっているベルの戦いを自分の目で見たヘスティアは興奮しながらベルを誉めるが────

 

 

「凄いじゃないか、ベルくん……!」

 

「すっごいです、ベル様っ!」

 

「ちょっ、リリ……!?」

 

「なっ!?」

 

 

ベルに抱き付くリリによって、ヘスティアの称賛する声は届くことはなかった。自分の声が届かなかったことに愕然とするヘスティアを他所にリューさん、アスフィさん、レフィーヤ、それにヘルメスまでもが俺たちの動きを誉めてくれる。

 

 

「お見事でした、イシグロさん、クラネルさん」

 

「私たちの出る幕はありませんでしたね」

 

「特にケンマは病み上がりなのに、本当にお見事です」

 

「さすがは【リトル・ルーキー】だ!ケンマくんもLV.1 とは思えない動きだったぜ!」

 

「いや、そんな………あははは」

 

「素直に称賛の言葉は受け取ります。だけど、個人的にはまだ足りない部分が目立って仕方ないですね。さっきの戦闘でも────」

 

 

先程の戦闘のプチ反省会をやっていると、壁に亀裂が走る音が聞こえたので再び俺たちは臨戦態勢に入る。しかし、亀裂からはモンスターではなく、砂が漏れ出していた。

 

その光景を見て、俺の記憶の中から第一期のOVAアニメが甦る。どんどんと砂が抜けて、壁の一部が崩れるとそこには人が通れそうなくらいの穴が現れた。

 

 

「これは………っ!」

 

「未開拓領域………」

 

 

突如として現れた穴の正体をリューさんとアスフィさんが心当たりがあるようで呟く。

 

その呟きを直ぐ側で聞いていたレフィーヤがリューさんに『未開拓領域』について訪ねる。

 

 

「未開拓ってことは…………まだマッピングされていない場所のことですよね、同胞の方」

 

「ええ………それで間違いないでしょう、同胞」

 

「私の記憶でも、この階層にこんな地形はなかったはずです。縦穴とは構造が違います」

 

「つまりは、新発見って訳か……」

 

 

レフィーヤの問い掛けにリューさんが答え、そこへアスフィさんが補足を足して、桜花が関心を持つ。

 

四人の話を聞いて、未開拓領域を偶然とはいえ見つけた功労者であるヘスティアをベルは偶然であることを知らずに誉める。

 

 

「すごいですね、神様!」

 

「あ、うん?ま、まぁねぇ!ボクにかかれば、この程度のことは………!」

 

「神様は何でもお見通しなんですね!」

 

 

偶然であることをベルにバレそうなのを慌てて誤魔化すヘスティアとそれを知らない純粋無垢なベルのやり取りを見ていると、二人の後ろにいる命が鼻をヒクヒクとさせると何かに気付いたのか途轍もない俊敏さで未開拓領域の入り口に這いつくばると犬のように入り口の地面の臭いを嗅いでいた。

 

ヤマト・命といえば、『ダンまち』のキャラクターの中で唯一の重力魔法の使い手と温泉好きであることを記憶している俺は、OVA通りだなと眺める。

 

そんな訳で、命が温泉好きだと知っている【タケミカヅチ・ファミリア】の面々と俺を除いたら者たちからしたら、命の動きは不審極まりないため困惑するのは仕方がなだろう。

 

 

「………お、おい。どうかしたのか?」

 

「まさかっ………!」

 

 

ヴェルフが命に奇妙な行動について訪ねるが返ってきたのは言葉ではなく、歓喜が籠った息吹きだった。

 

 

「はあぁぁっっ…………!」

 

 

そして命はヴェルフの問い掛けに終始答えることなく、一目散に未開拓領域の中へと一人単独で突入して行ってしまった。

 

 

「命っ………!?」

 

「一人じゃ危ないですよっ!」

 

「追いましょう!」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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