臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第七十三話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

「いくら【恩恵】で五感が強化されているとはいえ、臭いだけでそれ(温泉)だと分かるとか、あいつの嗅覚は警察犬並かっ!?」

 

 

偶然にもヘスティアが見つけた未開拓領域から漂う臭いを嗅いだ命は、その臭いが温泉特有の物だと分かると、脇目もふらずに一目散に未開拓領域の中へと一人単独で突入して行ってしまった。

 

それを俺たちは、未開拓のため新種のモンスターや既存のモンスターが行き先から道中に現れないかを警戒しながら命の後を追う。

 

ちょっとした円形状の洞窟の下り坂を下って行くに連れて、温泉の湯気による湿気が身体を包み込み、ようやく命の後ろ姿を発見するとそこには広大な温泉に何故か竹で出来た桶がなっている竹林などが広がっていた。

 

 

「温泉………?」

 

「はいぃ~っ、間違いなく温泉ですっ!自分、温泉のことだけは自信があるんです!」

 

 

興奮気味に自分の長所を述べる命。てか、温泉のことだけって、普通に重力魔法とか誇れるだろう。

 

 

「他には、特に何もないようです」

 

「モンスターの気配もありませんね」

 

「モンスターがいないということは、ここはダンジョンが作った、癒しの空間ということなんでしょうか?」

 

「だったら、少しは休憩が取れるんじゃないか?」

 

「それは助かるな」

 

 

周囲の状況と本当にモンスターがいないのかの偵察に行っていたリューさん、アスフィさん、レフィーヤの話を聞いて、俺たちはモンスターに警戒しないで済むと分かっただけでも精神的に楽になった。

 

尚且つ【恩恵】を持たない普通の一般人と変わらない身体能力かそれ以下しかない神であるヘスティアとヘルメスに休む時間を与えられるのは、良いことだろう。

 

などと、現実的な考えをしていると直ぐ側では、またしても奇妙な行動に出ている命が温泉から顔を上げると仕事終わりにビールを飲んで、旨さに浸るサラリーマンみたいな声を上げていた。

 

 

「ぷはぁっっ!」

 

「どう、命………?」

 

「湯加減、塩加減申し分無し!最高の逸品です!是非入って行きましょう!」

 

「18階層以来、疲れも溜まる一方ですし……」

 

「うん。諸君、ここは一つ…………」

 

「「「「温泉リゾートと洒落込もうじゃないか!」」」」

 

 

ヘスティアの音頭に合わせて、リューさん、アスフィさん、レフィーヤを除いた女性陣が掛け声を上げると何故かその中にはヘルメスまでもが混じっていた。

 

そのことに気付いた女性たちは、即座にヘルメスから距離を取る。距離を取られたことを不思議そうにしているヘルメスに、アスフィさんが耳打ちで何かを伝えると納得が行ったようだ。

 

しかし、この変態はアスフィさんの忠告を無下にして悪びれもなくこんなことを言う。

 

 

「ああ!ベルくんがいい思いをしたあれかぁ!」

 

「あ、ああ、ちょっ……!」

 

「あ、う……」

 

 

ベルもベルで、ヘルメスの言葉で18階層でアイズたちの水浴びを覗いた時のことを思い出したのか頬を赤くする。

 

そういう俺もヘルメスの所為で、リューさんの水浴びの光景とレフィーヤの胸を掴んだ時の記憶がフラッシュバックしそうになると、左肩に木刀、右肩には魔法杖が添えられていた。

 

 

「イシグロさん、それ以上はいけない」

 

「ケンマ、あの時は事故ということで見逃しましたが、それ以上思い出したら今回は見逃しませんよ」

 

「りょ、了解です」

 

 

両肩に得物を添えられてしまっているのでこれ以上思い出すことはせず、両手を上げて降参の仕草を取る。

 

そんな俺たちを他所に、ヘスティアたちの話は続いていたる。

 

 

「とにかく。ボクらはヘルメスが居るんじゃ、安心して入れないよ」

 

「温泉は惜しいですけど………」

 

「そんなぁ~!」

 

 

ヘスティアを筆頭にリリもヘルメスがいる状況では温泉には入れないと述べると、大の温泉好きである命が涙を流しながら悲痛の声を上げる。

 

しかし、ここで思わぬ援護の声が思わぬ人から出てきた。その思わぬ人とは、我が師匠であるエルフのリューさんである。

 

 

「…………水着を着ればいい」

 

「あ、あの……同胞の方?」

 

「水着を着れば混浴し放題です」

 

「それ、名案ですっ!」

 

「でも、水着なんて何処に………」

 

 

リューさんのポンコツな案を聞いて、命がそれに賛同、ヘスティアも普通に同調して水着を探そうと考え始めた。

 

それを聞き付けたヘルメスは、羽帽子の下でニヤリ顔を作るや否や、後ろにいるアスフィさんの白いマントを翻す。その際、アスフィさんのスカートまでもが見えそうになり、モーレツのようなポージングになった。

 

 

「こんなこともあろうかと!」

 

「きゃあぁぁっっ!?」

 

「全員分用意してあるのさ!」

 

「もうやだぁ………!」

 

 

アスフィさん、可哀想。それと懲りない神だな、ヘルメス。てか、どうやってマントの内側に多種多様な水着を仕込んであるんだよ!?もしや、ヘルメスの神眼は『ハイスクールD×D』の桐生や元浜のような眼鏡がなくとも、男女問わず身体の凹凸やらを数値化できる能力の持ち主なのか!?

 

なんてアホなこと考えている間に、ヘルメスは案の定、アスフィさんにボコボコにされて天空の城のアニメに出てくる親方と盗賊のように目元を青くされていた。

 

 

「水着は、オレが見立てた特注品だ。遠慮はいらない、もらってくれよ」

 

「まったく、いつの間に…………」

 

「どうして私たちのサイズを………?」

 

「よいではありませんか、温泉に入れるのですから!」

 

「さ、着替えは、その岩の陰で。レディーファーストだよ」

 

 

ヘルメスに促されるまま女性陣たちは水着を持って岩の陰へと入って行くが、リューさんとレフィーヤだけは他の女性陣には付いて行かなかった。だって、二人はエルフだなもの。

 

リューさんはともかく、レフィーヤはせっかくの温泉なのにエルフが故に入れずで残念そうにしているので、推しのためにどうにか出来ないかと思考を巡らせていると、一つだけ二人にも温泉を堪能させる方法が思い付いた。

 

けれど、それは俺にもリスクが伴うものなのでどうしようか迷ってしまう。日頃の師匠への恩返しと推しの笑顔のためと考えたところで覚悟が決まった。

 

そんな矢先、何かがはち切れるような音と共にヘスティアの悲鳴が岩の陰から聞こえて来た。

 

 

「ほわああっ!?」

 

「神様、どうかしましたかっ!?」

 

「な、何でもないんだベルくん!少々予期せぬ事態が起きた!もう少し、待っててくれないか?」

 

「わかりました……。何かあったら直ぐに呼んでください」

 

「うん、ありがとう。ベルくん」

 

 

ヘスティアとベルの会話を聞いていて、ヘスティアの予期せぬ事態とは十中八九水着のキャパオーバーだろうと俺はOVAの記憶から推測。さすがはロリ巨乳、恐るべし。

 

ヘスティアの悲鳴から約数分、岩の陰から頭だけを出した命とアスフィさんがヴェルフを手招きしながら呼ぶ。

 

 

「ヴェルフ殿、ヴェルフ殿。お願いできますか、ヴェルフ殿」

 

「あん?俺………か?ふっ………悪いな、ベル、ケンマ、大男。ご指名、なんでな」

 

「一応言っておく、過度な期待は持たない方がいいぞヴェルフ」

 

「負け惜しみにしか聞こえないぜ、ケンマ」

 

 

命たちに呼ばれてニヤニヤ顔で岩の陰へと入っていくヴェルフ。だが、帰ってきた時にはガックシと項垂れながら戻って来ていた。

 

そんなヴェルフとは対照的に、破れた水着をそこら辺に生えている草と持ち合わせの鉱石などでアレンジした特別な水着を身に纏ったヘスティアがウキウキしながら岩の陰からやってきた。それに続いて、他の女性陣たちも着替え終えて戻って来た。

 

 

「やー、助かったよヴェルフくん!やっぱり持つべきはものは、鍛冶師の友人だね!さすがに手先が器用だって、ヘファイストスに伝えて置くよ!」

 

「あぁ、はいぃ………」

 

「だから、過度な期待は持たない方がいいぞと言ったんだ」

 

「まったく………何を期待していたんですか?」

 

「うるせぇ……」

 

 

リューさんとレフィーヤを除いた女性陣の水着への着替えが終わったので覚悟を決めながら二人に声をかける。

 

 

「リューさん、レフィーヤ」

 

「何でしょう、イシグロさん」

 

「何ですか、ケンマ」

 

「二人も温泉に入りたいですか?」

 

「先ほども言いましたが、私は入れませんので」

 

「私も今回は…………」

 

「もしも、二人だけで入れて、他の誰にも覗かれることのない環境を作れるとしたら?」

 

 

そこまで言うと面白いくらいに二人は話に食い付いて来た。やっぱり、リューさんも温泉に入りたかったんですね。

 

 

「今の話は本当ですか、イシグロさん!?」

 

「その環境を作れる方法とはどんな方法なんですか、ケンマ!? 教えてください!!」

 

「えーっと、方法についてリューさんは心当たりがあると思います。レフィーヤは、この方法で温泉に入るなら【ロキ・ファミリア】の皆も含めて他言無用できるなら二人だけで入る環境を作るけど、どうする?」

 

 

これは最早賭けに等しい。ここでレフィーヤが俺の提案した内容に同意しなければ、リューさんには悪いが温泉を諦めてもらうか、或いはリューさんだけを温泉に入れる環境へとご招待する他ないだろう。

 

さて、レフィーヤの答えは?

 

 

「う~ん、ぐぬぬぬぬ………………わかりました。誰にも言いません」

 

「よし。なら、俺一人だと不安だろうから嘘を見抜ける女神様に同行してもらうとしよう」

 

 

エルフである二人でも温泉に入れる環境を作れることが嘘でないことを証明するため、女神であるヘスティアに呼ぶ。

 

 

「神ヘスティア、少しいいですか? ちょっとばかり頼みたいことがありまして」

 

「ベルくんの友人であるケンマくんがボクに頼みとは、どんなことだい?」

 

「それは─────」

 

 

変態の神であるヘルメスにバレると厄介ごとが増えるので、ここはバレないようにヘスティアに耳打ちで説明。

 

 

「な、なんだって!? キミはそんなことまで出来るのかい!?」

 

「まぁ、出来ます。で、なんでこんな重要なことを神ヘスティアに打ち明けたかと問われると、師匠へ日頃の感謝を贈ろうと思いまして、なので神ヘスティアの協力してもらいたい訳です」

 

「わかった。キミの想いを汲んでやろうじゃないかっ!」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、リューさん、レフィーヤ、二人とも何処か好きな場所を教えてください。そこで環境を作ります」

 

「それでは行きましょうか、同胞」

 

「はい!あと、私のことはレフィーヤで構いませんよ。同胞の方」

 

「では、私のこともリューで構いません」

 

「わかりました。リューさん!」

 

 

アニメでは見たことがないがリューさんとレフィーヤが名前呼びするほどに仲が深まったようだ。でも、これが後々になってストーリーに支障を来さないか心配ではある。

 

そんな心配をしながらウキウキとしたレフィーヤと歓喜をバレないように隠しているリューさんを先頭に彼女たちが選ぶ温泉の場所を俺とヘスティアは付いていく。

 

 

「リューさん、ここなんてどうですか?」

 

「そうですね。多種多様な温泉があるここならば良いかもしれませんね、レフィーヤ」

 

「それじゃあ、まずは二人の専用の場所を作るために、これを見せて置きます」

 

 

二人だけで入れる環境を作る方法である『聖剣創造』で聖剣で出来た小さな壁を創造。それを二人に見せながら、説明の続ける。

 

 

「この通り、俺の力でこの壁を天井ギリギリまで作ります。そうすれば、覗き魔であるヘルメスですら覗くことは不可能なはずです。それとリューさん、その壁を壊してみてください」

 

「わかりました」

 

 

俺の指示を聞いたリューさんは、何の躊躇もなく腰に指していた木刀で聖剣の壁を横一閃。さすがにLV.4 の『力』には『聖剣創造』で作った聖剣の壁もあっさりと破壊されてしまう。

 

 

「この通り、リューさんなら簡単に壁を破壊できるので、壁で分断されても二人なら難なく俺たちと合流できるはずです。ここまでで俺は何か『嘘』を言っていますか、神ヘスティア?」

 

「ううん。ケンマくんは何一つとして嘘は言ってないよ。本当にケンマくんは、覆面エルフくんに日頃の感謝を贈りたいんだろうね」

 

「イシグロさん…………やはり貴方は尊敬できるヒューマンであり、自慢の弟子です」

 

 

面と向かって師匠であるリューさんにそう言われて、思わず照れ臭くなっていると、レフィーヤからジト目を向けられてしまう。

 

 

「なにを照れているんです、ケンマ?」

 

「い、いや、尊敬している師匠に面と向かって言われれば、そりゃ照れるだろう。レフィーヤだと、リヴェリアさんに「さすがは私の自慢の弟子だ」なんて言われる所を想像してみろ。それかアイズにも似たこと言われる所を想像してみろ」

 

「リヴェリア様にアイズさんに………………………デへへへ」

 

 

自分で言っておいてなんだが、レフィーヤの顔が凄いデレ顔になっている。

 

 

「どうだ、わかったか?」

 

「はい!それはとっても!」

 

「それじゃあ壁を作るから、あとは二人で御ゆっくりー!」

 

 

そう言い残して、俺は全力による『聖剣創造』で俺とヘスティアがいる場所とリューさん、レフィーヤがいる場所を聖剣の壁で分断した。

 

 

「それでは、俺たちもベルたちの所へ戻りましょうか。神ヘスティア」

 

「うん!待っていてくれよベルくん!」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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