臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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七十六話を書いていて、思ったとがあります。


レフィーヤって、こんな性格だったか?と…………。


第七十六話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

ヴィクトリアの熱烈な抱擁によって殺されかけてからお着付きを取り戻したあと、俺、レフィーヤ、ベル、ヴィクトリア、ヘスティアだけがギルドに残り、ヴェルフとリリとはギルドの前で解散することになった。

 

そして、残った五人とエイナさんでギルドの個室へと移動して、軽い報告をすることになった。

 

 

「それで? どうして、キミたちはリヴェリア様から聞いた予定よりも一日遅れて来たのかな?」

 

 

全員が椅子に座るや否や眼鏡越しでも分かるほど圧のかかったエイナさんの笑顔が俺たちに突き刺さる。その笑顔が絶対に逃がさないからと言葉にせずにとも、その背中に背負っている個室の入り口である扉が物語っている。

 

しかし、これは困った。アニメで、『黒いゴライアス』の件は『神災』として情報が秘匿されることになるのだが、アニメのエイナさんがそのことをどこまで聞いて、知っているのかまでは俺も記憶に覚えがない。

 

 

「んー、エイナさん、絶対に他言無用で報告書にも書かないって約束できますか?」

 

「えっ? 他言無用は分かるけど、どうして報告書まで?」

 

「それだけヤバい出来事だったということです。場合によっては、エイナさんのギルド職員としての立場も危うくなるかもしれませんし」

 

「そんなに危ないの?」

 

「遅かれ早かれ、神ウラノスからあの出来事に関わった者たちに口外厳禁が言い渡されるはずです。それを破るようならペナルティーも辞さないでしょうね」

 

 

ここまで言えば、聡いエイナさんなら止まってくれるはずだ。もしも、仮に止まらずにギルド職員を辞めるはめになったら【ヴィクトリア・ファミリア】に勧誘するまでだ。

 

俺の話を聞いて、しばらく目を瞑って考えをまとめているエイナさんの出方を待つ。

 

 

「…………わかったわ。そこまで言うなら報告書にも書かないわ」

 

「賢明な判断ですね」

 

 

それから俺たちは18階層での出来事を掻き摘まんで話せる部分をエイナさんに話した。全てを話し終えると、一呼吸置いてからエイナさんにそれはそれは深ーい溜め息と蟀谷(こめかみ)に手を当てる頭痛いの仕草を取られてしまった。

 

 

「まったく、どうしたらキミたちはそんな騒動に巻き込まれるのよ…………」

 

「どうして、って言われても………」

 

「あははは………どうしてだろうなぁ………」

 

 

俺とベルは苦笑いしながらエイナさんの言葉を躱す。

 

 

「何はともあれ、二人とも無事に帰ってきてくれて良かった」

 

 

その言葉を聞いた俺とベルは、示し合わせたようにお互いの顔を見てから笑顔で同じ言葉をエイナさんに言う。

 

 

「「ただいま、エイナさん」」

 

「うん、お帰り!」

 

 

エイナさんの笑顔の「お帰り」を聞いたあと、俺は彼女にとあることを訪ねる。それは18階層で【ロキ・ファミリア】に依頼した階層主のゴライアスの魔石の運搬。そして、それに伴って身分証明としてリヴェリアさんに渡した聖剣がエイナさんの下に届いているかどうかだ。

 

 

「ところでエイナさん、先日、リヴェリアさんから一本の短剣を渡されませんでした?」

 

「えっ?う、うん、渡されたけど、どうしてケンマくんがそのことを知ってるの? リヴェリア様からは近いうちに受け取り手が来るから詳しい話はその人からって……それと凄い大きな魔石を短剣の持ち主が来るまで任されたけど……」

 

「それは多分、ケンマのことですね。ゴライアスの魔石の持ち主はケンマですから」

 

「ちょっ、レフィーヤ!?」

 

「えっ、あっ!」

 

 

そこまで言ってしまったら既に遅い。なんせ、目の前に座っているエイナさんが俯きながらプルプルと震えているのだ。それを見たレフィーヤは、思わず出てしまったと言わんばかりに自分の口を両手で抑えてる。

 

 

「…………ご、ごめんなさいケンマ」

 

「出ちゃったものは仕方ないさ。それにいずれはバレていたと思うし、気にしなくていいぞ」

 

 

そこからは鬼の副だ……ゲフンゲフン……般若のような怒りを宿したエイナさんからそれはそれはありがたーいお説教を受けたのは語らずとも察することができるだろう。

 

約一時間ほどに渡るお説教から解放された俺は机に伏せてグダグダになってしまった。一緒に同じ決死の強行軍を乗り越えたベルは、我関せずという自分も巻き込まれないようにひたすら苦笑いと冷や汗を流していた。

 

この薄情兎め、いつか化け蛙の餌にでもしてやろうかな? とちょっとした八つ当たりを考えながら短剣の話を掘り起こすことにした。

 

 

「と、ところで、エイナさん。リヴェリアさんから受け取った短剣はどこに?」

 

「それなら下にあるわよ? リヴェリア様から預かった物だから、あの方の冒険者情報が詰まってる専用の場所にしまってあるの」

 

「じゃあ、それを持ってきてもらっていいですか? それとヴィクトリア、俺が『中層』に行く前に俺の部屋に仕込んでおいた短剣はまだ持ってるか?」

 

「ええ、持ってるわよ。現に、ここにあるわ」

 

 

俺の問いにヴィクトリアは即答しながら抜き身の一本の短剣を取り出して見せた。取り出された短剣にエイナさんは目を開いて驚く。

 

 

「えっ、嘘っ………どうして、その短剣を神ヴィクトリアが………!?」

 

「あら、そんな驚くことかしら? ロキのところのハイエルフの子供に渡された短剣の持ち主は、ケンマよ。なら、ケンマの主神たるわたしが同じ短剣を持っていてもおかしくはないんじゃないかしら」

 

「それは……そうかもしれませんけど……」

 

 

エイナさんの驚きに対して、ヴィクトリアは然も当然とばかりに答えて見せる。正直、ヴィクトリアの答えに俺は焦りを覚えていた。自然な流れで『聖剣創造』のことを話してしまうのではないかと、本当に焦りを覚えた。

 

けれど、それは杞憂だったようでちょっと深く深呼吸をする。

 

 

「何はともあれ、これで階層主の魔石はケンマが持ち主だと証明された訳だけれど、貴方のことだからこれで終わりではないのでしょうケンマ?」

 

「ああ、もちろんだ。エイナさん、すみませんがその魔石を換金してもらって、換金した総額の六分の一を別に分けといてくれませんか? 18階層から魔石を運搬してもらって【ロキ・ファミリア】に運搬依頼の報酬として支払うことになってるので」

 

「わかったわ。換金係には私の方で言っておいてあげる」

 

「よろしくお願いします」

 

 

これで無事に約束通り、フィンさんたち【ロキ・ファミリア】への報酬金は用意出来そうだ。あとは、その報酬金を持って、【ロキ・ファミリア】にレフィーヤを送るだけなのだが十中八九、フィンたち三巨頭とロキにはあれやこれや質問責めを受けるのは逃れられないだろう。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「お待たせー、魔石の換金が終わったよ」

 

「んあ?」

 

 

椅子に座ったまま自分でも気付かない内にうたた寝をしていたようでエイナさんの声で意識が覚醒し始めると、視界が横になっているのと頬に感じる柔らかい感触、更には頭を撫でられている感覚に疑問が生まれる。

 

 

「あ、起きました?」

 

「レフィー……ヤ?」

 

「はい、そうですよ。おはようございます、ケンマ」

 

「何故、俺はレフィーヤに頭を撫でられて………それにこの柔らかい感触は……まさか……」

 

「膝枕です。ケンマったら、船を漕いでいるといきなり私の肩へ凭れかかって来るなり、名前を呼んでも、身体を揺すって起こそうとしてもなかなか起きなかったんですよ。なので、膝枕をしちゃいました、エヘヘ」

 

「お、おう、そうか………」

 

 

元々、レフィーヤが可愛い美少女なのは知っていたが何故か以前よりも彼女が可愛く見えるのは気のせいだろうか? 正確には、18階層でレフィーヤから額にキスをされてブーステッド・ギアが禁手に至ってからである。

 

と、取り敢えず魔石の換金を終えたエイナさんが戻って来たので身体を起こすことにしよう。俺のお願いで換金をして来てもらっているので、その俺が寝たままなのはとても失礼に当たる。

 

レフィーヤの膝枕から離れて身体を起こしながら凝り固まった肩を軽く回して解していると、ドサッ、ジャラリッというかなりの重さの硬貨が重なり合う音がテーブルの上で鳴る。それはエイナさんが持ってきたゴライアスの魔石を換金した総額の六分の一のヴァリスが入った布袋から響いた物だ。

 

 

「はい!ケンマくんに言われた通り、換金した魔石の六分の一がこの袋に入っているわ。残りの六分の五はどうするの?」

 

「それは後日、ベル、ヴェルフ、リリの三人と山分けにしようと思っているのでそれまでは【ヴィクトリア・ファミリア】の通帳に」

 

「わかったわ」

 

 

俺とエイナさんの会話を聞いていたベルとヘスティアがあまりの内容に驚きながら聞き返して来る。

 

 

「け、ケケケケンマくん! い、いいい今の話は本当かい!?」

 

「ちょっと神様!?」

 

「本当ですよ、神ヘスティア。あの強行軍を俺一人では出来ませんでしたから、それに18階層のあの激闘で俺の防具は全損していますからそれも踏まえてもちょっと神ヘファイストスにコンタクトを取りたくて」

 

「ヘファイストスにかい?」

 

「はい、個人的にちょっと気になることもあるので」

 

 

気になることとは、劇場版のことである。もしも、劇場版の話に展開が移るのであれば《デュランダル》と《真のエクスカリバー》のメンテナンスをしておいた方が良いのは明白だ。

 

現状、禁手に至って間もない今の俺でアルテミスを取り込み、神格を得たアンタレスを相手にどこまでやれるのかは未知数過ぎてイメージすら付かない。なので、万全を尽くすのが最善の手だろう。

 

 

「それじゃあ、目的の【ロキ・ファミリア】への報酬金も用意出来た訳だし、俺とレフィーヤはこのまま『黄昏の館』に行くよ。ヴィクトリアはどうする?」

 

「無論、付いていくわよ。偶然とはいえ、ロキの子供たちにケンマがお世話になったのだからその挨拶をするくらいは、親としても主神としても当然のことだもの」

 

「はぁ……ヴィクトリアがそう言うならボクもベルくんもダンジョンでロキの子供たちにお世話になったからね、とても癪だけど挨拶くらいはしないとね。本当に癪だけど」

 

「神ヘスティアは、そんなにうちのロキと仲が悪いんですか?」

 

 

ヘスティアのことをあまり知らないレフィーヤが、自分の主神たるロキの話が出てきたので思わず尋ねてしまう。

 

 

「ああ、天界に居た頃から向こうの方が毎回突っ掛かってくるんだよ。ま、その度に毎回返り討ちしてやってるけどね!」

 

 

得意げな表情と共に胸を張るヘスティア。それに伴って、胸部の強化外装が大いに揺れる。それはそれは大いにブルンブルンと揺れておられる。

 

 

「あー、なるほど………」

 

 

そう呟きながら何故ロキがヘスティアに突っ掛かるのかを察したレフィーヤは、瞳からハイライトを少しずつ消しながら、己の胸部をペタペタと触りだし、あろうことかこの場で爆弾発言を繰り出した。

 

 

「だ、大丈夫!ケンマは、私の胸を鷲掴みにして着痩せするタイプだって言っていたもの………そう、私は着痩せするタイプだから大丈夫……なはず」

 

「へぇ、ケンマはわたしがいないところでそんなことをしていたのね……詳しいことを聞かせててもらおうじゃない」

 

「け、ケンマくんがウィリディス氏の………む、胸を鷲掴みぃぃい!?」

 

 

本日二度目になるレフィーヤの発言で混沌が再来した。

 

 

「それには色々と深い訳があるんだぁぁあああ!!」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「だ、ダンジョン探索よりも疲れた…………」

 

 

レフィーヤの爆弾発言でエイナさんからのあらぬ誤解を解いてからギルドの外に出ると、空は既に夜の帳を迎え始めていた。

 

 

「ごめんなさい、ケンマ。また私の所為で………」

 

「だ、大丈夫………こういうことに巻き込まれるのは想定内だ」

 

 

『ダンまち』の世界に転生する際に願ったブーステッド・ギアの副作用として、強敵と戦う運命や女難の相は覚悟していたのでこの程度あれば許容範囲内である。

 

けれど、アニメにはなかったレフィーヤのうっかり発言には少しばかり驚いた。それでも推しのちょっとした一面が見れて、内心では嬉しいことだ。

 

 

「ケンマくん、さすがにあんな必死で弁明していたのに想定内とは思えないよ」

 

「そうね。さすがにあんな必死で弁明していたら想定内とは思えないわね」

 

「さて、何のことやら? それよりも早く行こうぜ。さすがにこれ以上レフィーヤの帰りを待っているリヴェリアさんたちを待たせると後で何を言われることやら」

 

「さ、さすがにリヴェリア様もそこまでは………」

 

「いんや、18階層でフィンさんに呼ばれた時に【ロキ・ファミリア】の三巨頭が圧をかけながらゴライアスを倒した方法について聞いてきたぞ」

 

「そ、それは………」

 

「ま、さすがにバカ正直に言えないからレアスキルで倒したって誤魔化したけどな」

 

「それ、同じ【ロキ・ファミリア】の私の前でバラしていいことなんですか!?」

 

「大丈夫大丈夫。リヴェリアさんたちには誤魔化したのは即バレしたから」

 

「それは全然大丈夫では、ないのでは」

 

「そうとも言う、アハハハハ!!」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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