臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
「ほなら、色々とケンマには吐いてもらうから逃がさへんで」
「あははは…………やっぱり、こうなったか」
【ロキ・ファミリア】の拠点である『黄昏の館』に訪れた俺たちはレフィーヤの口添えもあって、あっさりと団長であるフィンさんの執務室へと招かれた。けれど、そこにはフィンさんだけではなく主神のロキを始め、リヴェリアさん、ガレスさんも居た。
取り敢えず、当初の目的であるレフィーヤを『黄昏の館』に送り届けることとゴライアスの魔石を換金した総額の六分一が入った袋をフィンさんに渡すことにした。
そして、用は済んだので即座に回れ右して、この場から去ろうした途端、両肩にそれぞれ違う手が乗せられて、あれよあれよとフィンさんとロキの二人と対面するような形でソファーへと着席させられてしまった。
「さて、先日レフィーヤに18階層でキミたちが地上へ帰還するまでの護衛を僕は任せた。しかし、僕たちが8階層まで戻って来た時、ダンジョンが不自然に揺れた。念のため、うちの団員であるクルスたちに後続隊であるリヴェリアたちの様子を見に行かせた」
当時、フィンさんたちが感じたことを踏まえながら指を組んで、親指で顎を支えながらフィンさんは話を始めた。
「すると、リヴェリアたちは無事だった。けれど、キミたちとレフィーヤは後続隊にはいなかったとリヴェリアとクルスたちから聞いている。ましてや、17階層と18階層に繋ぐ入り口が土砂で塞がっていたとも聞いている。さすがにここまでの情報が集まってしまってはキミたちに何かがあったのは明白だ」
「とっとと洗いざらい吐いた方が楽じゃぞ、ケンマ」
「私も今回は愛弟子であるレフィーヤが関わっているからな。我々が先に行ったあと、ケンマたちが残った18階層で何があったのかをしっかりと知っておく必要がある」
俺が逃げ出せないようにしているのか、フィンさんの説明を聞いている間にリヴェリアさんは俺の背後に、ガレスさんは執務室の入り口の前で腕を組んで仁王立ちをしながらフィンさんの説明に援護する。前後にLV.6 がそれぞれ一人ずつ、唯一の入り口にもLV.6 が一人、計三人のLV.6 がそれぞれ俺を逃がさないように陣形を固めている。完全に詰んでいる気がする。
もしも、仮に逃げだそうとしても昼間の温泉で『赤龍帝の鎧』を使ってしまったので、今はインターバル中で鎧を纏うことが出来ない。完全無理ゲーである。
「あっ、ドチビと白髪の少年はもう帰ってもろうてええで。あとは、そこのケンマに全部吐いてもらうから」
完全に意識が俺に向いている為か、ロキはヘスティアとベルに用はないと帰るように促す。それを俺は援護するようにベルたちに帰るように言う。
ここで下手にヘスティアを残していると18階層の出来事をフィンさんたちに説明する際、間違いなくロキがヘスティアと衝突して話が拗れる可能性がある。なので、ヘスティアとベルには『黄昏の館』から去ってもらう必要があるのだ。
「神ロキもこう言ってますからベルと神ヘスティアはもう今日は帰って、自分たちのホームでベルを労ってやってください。フィンさんに話すのは俺だけで十分ですから」
「わかった。あの戦いでタケの所の子と同じくらいの重症者だったケンマくんがそう言うならそうさせてもらうよ。ロキ、今回はキミの所の子供たちには大いにお世話になったね。感謝するよ」
「僕からも、色々とありがとうございました」
「ガレス、神ヘスティアとベル・クラネルを外まで送ってくれ」
「任せておけ、団長」
俺の言葉を聞いて、ロキに言われるよりも納得できたのかヘスティアとベルは普通に『黄昏の館』から去ろうとすると、客人だけで外まで帰らせるのは失礼だと思ったフィンさんが入り口に仁王立ちしているガレスさんに二人を見送るように指示を出した。
それをガレスさんは簡単に了承して、二人を先導しながら執務室から出て行った。
「すまない、ケンマ。ガレスが戻るまで楽にしてもらって構わない」
「わかりました。ガレスさんがいない状態で18階層での出来事を話すとフィンさんも二度手間になりますもんね」
「察してもらえてありがたいよ」
「フィン、私はお茶を淹れてくる」
「頼むよ、リヴェリア」
今度はリヴェリアさんが、ガレスさんが戻ってくる合間にお茶を用意してくると執務室から出て行った。
「ところでケンマ、レフィーヤからキミとベル・クラネルは彼女と共に闇派閥の残党が操る極彩色のモンスターたちと戦ったと聞いたよ」
「ええ、ちょっと無茶な戦い方をした所為で気絶しましたけど……」
「レフィーヤから聞いていると思うけど、キミたちが極彩色のモンスターたちと戦ったあと、僕たちの方でも色々と調べてみたが何も得られる物がなかった。しかし、闇派閥が居たことから何かがあそこにはあるはずだと僕は踏んでいる」
「あっ!そういえば闇派閥の一人が、俺たちが倒した新種の極彩色のモンスターのことをヴェネンテス、食人花をヴィオラスと呼んでいました」
「ヴェネンテスにヴィオラス……か」
二種の極彩色のモンスターの名前をフィンさんに伝えると親指をペロリと舐めた。その光景にちょっとだけオタク魂が疼いた。何故ならアニメのフィンがやっていた仕草をフィンさんが目の前でやったのだから何にも感じないようでは『ダンまち』ファンとは名乗れないだろう。
そんな興奮を表に出さないように必死に隠している俺とは裏腹に、フィンさんは客人である俺とヴィクトリアの前で親指を舐めたことを恥じた。
「おっと、すまない。客人の前でやることではなかったね」
「いえ、気にしないでください。俺も咄嗟のことでやらかすことはありますから」
「そう言ってもらえると助かる。さて話を戻そう。キミたちが戦ったあの穴には何も得られる物がなかった。しかし、僕は何かあると思っている。だから、キミの見解も聞かせ欲しい」
「そうですね…………素人目線と絵空事を合わせた俺の見解としては、二つ可能性がありますね」
「聞かせてくれ」
「まず一つは闇派閥の主神───邪神の【恩恵】を刻まれた者にしか見えない、もしくは開けることのできない入り口がある。二つ目は前者と似ていますが【恩恵】ではなく、魔道具を鍵にしているのではないかと」
「なるほど、【恩恵】と魔道具による鍵か………。確かにそれならどちらも持っていない僕らが何も得られなかった理由が成り立つ」
先日、18階層でレフィーヤに話した可能性を丸々フィンさんに話すとフィンさんも納得が行ったのか聞き返してくることや質問をしてくることはなかった。ついでに『嘘』は付いていないのでロキにも指摘されることはなかった。
18階層で行った闇派閥関連の話が終わると、先ほどベルとヘスティアを見送りに出ていたガレスさんが茶菓子が乗った銀のお盆を持って、その後ろにいるリヴェリアさんは片手に純白で高級感のある装飾が施されたティーポットを持って戻って来た。
「待たせてしまってすまない。お茶の用意が出来た」
「いや、大丈夫だよリヴェリア。キミたちが戻って来るまでの間、ケンマと二人でレフィーヤたちが倒した極彩色のモンスター関連の話をしていたところだったからね」
「ほう。それは興味深いな」
「フィンたちは今回の遠征でもあの極彩色のモンスターにしてやられたそうだからのう」
「加えて言うなら新たな敵も増えた」
フィンさんの話を聞いたリヴェリアさんは興味深そうにしながらも人数分のティーカップに上品な香りがするお茶を注ぎ、ガレスさんは感慨深そうに自慢の髭を触る。
そして、リヴェリアさんから紅茶の入ったティーカップを俺とヴィクトリアは差し出され、一口飲んで喉を潤すとそれを見計らったようにフィンさんは次の話を切り出した。
「さて、役者は揃った。僕たちが去ってからの18階層での出来事を聞かせてもらおうかな」
「はぁ……わかりました。ただし、大前提として今から話す内容は他言無用でお願いします。でないとフィンさんたちもギルドからペナルティーを課せられる可能性がありますから」
「何故、そこでギルドが出てくるのかは後で聞こう。話を続けてくれ」
「そうですね………まずは、後続隊のリヴェリアさんたちが野営地を発とうとしていた頃から話をしましょう」
話の所々でリヴェリアさんの淹れた紅茶と茶菓子などを口にしながら俺はフィンさんたちにボールスたちとの戦いや『黒いゴライアス』との戦いなどについて話した。
その際、俺が《デュランダル》や《真のエクスカリバー》でLV.2 では到底出来ない戦い方やレフィーヤから
「へぇ、僕たちが野営地を発ってからそんな激戦があったとはね」
「これはレフィーヤの【ランクアップ】も期待できそうやな」
「しかし、ケンマも無茶をするものだ。話を聞いていた限りでは、お前はレフィーヤとベル・クラネルを守るために敢えて無謀な賭けに出たとも捉えられる」
「自分は臆病者だとか言って置きながら、一番覚悟のいる場面でケンマは活躍しておる。近頃の若い者にしては、珍しく肝っ玉が座っておるわい」
「それはどうなんでしょう。 あの時、俺は後ろにレフィーヤを背負ってたり、親友のベルを守りたいと思ったから飛び出しただけだから…………」
これに関して『嘘』はない。レフィーヤの時は推しである彼女を傷付けさせたくない、ベルの時はドライグの静止の声を振り切って友を助けたかった。これらの理由から俺の身体は死の恐怖を振り払っていた。
「なにはともあれ、またケンマにはレフィーヤを救ってもらったちゅうことやろう。なぁ、フィン?」
「そうだね。またケンマには借りが増えてしまった」
「いえいえ、借りだなんて!それに今回は俺もレフィーヤから…………あっ、やっぱりなんでもないです」
ヤバい、自分で墓穴を掘ってしまった。それを見逃すほど、『神々の黄昏』を引き起こそうとした道化の神であるロキは生易しくはなかった。
「いやいや、そこまで言っておいて誤魔化すのは無理やろ。リヴェリア、レフィーヤを呼んできい。ケンマと一緒に、二人の間にナニがあったかきっちりと尋問したるッ!」
「ケンマ、先ほど私は愛弟子であるレフィーヤに何があったのかを知っておく必要があると言った。故に、逃げられると思うなよ」
「ま、マジか…………」
それからリヴェリアさんがレフィーヤを呼び出して、レフィーヤからどんなお礼をしてもらったのかについてロキが尋問する。最初こそ、レフィーヤは俺に何をお礼したのか解らない様子であったが俺の視線が彼女の唇に集中しているのに気付いた途端、俯きながらこれでもかと耳と顔を真っ赤に染めた。
それを見た俺も釣られて顔が熱くなってしまい、誤魔化すようにレフィーヤから視線を外して頬を掻く。そんな俺たちを見たロキとヴィクトリアは、自分たちの眷属同士の間で完全に何かあったと確信を持ったようで詰め寄られる。
「ごめん、レフィーヤ。今度は俺がやらかした」
「いえ、私もギルドで二回やってますから………」
「そこッ!何をこそこそと喋っているのかしら?」
「そやそや!この際、二人の間でナニがどうなって、どうなったのか、洗いざらいぶちまけてもらうでぇ!」
「「さあさあ!!」」
ロキとヴィクトリアの執念地味た追求に根負けした俺たちは、最終的にヘルメスの策略でレフィーヤが俺の額へキスをしたことを暴露。
すると、二人とも口裏を合わせたように「あの腐れ優男が…………」と言葉を漏らしていた。しかし、ロキは分かるが何故ヴィクトリアまで? もしかして、ヴィクトリアはヘスティア的なアレで俺のことを? なんてアホなことを考えるがたかだか出会って約二ヶ月でそんなことが起こり得るなんてあり得ないと考えを切り捨てる。
これがイッセーのように命賭けでヒロインを救う展開ならば話は違ってくる。アーシア然り、リアス然り、小猫然り、ロスヴァイセ然りである。
○●○
「はぁ…………疲れた」
「自業自得よ」
ロキとヴィクトリアから尋問を受けたあと、【ヴィクトリア・ファミリア】のホームへと帰って来た俺たちは早速【ステイタス】の更新へと移った。
上半身裸でベッド上にうつ伏せで寝るとその横にヴィクトリアが腰をかけて、指に針を刺し、神の血である【神血】を俺の【ステイタス】が描かれている背中へと落とす。
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石黒ケンマ
Lv.2
《基本アビリティ》
力 :F300 →D581
耐久 :F391 →C633
器用 :E429 → B798
敏捷 :G216 → D519
魔力 :C693 →B853
超回復 :I→ H
《魔法》
【プロモーション】
・『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『女王』に昇格できる。
・昇格した物によって、一定時間アビリティ能力超高強化補正。
詠唱:【プロモーション・────!!】
【】
【】
《スキル》
【赤龍帝を宿し者】
・早熟、進化する。
・想いの丈によって効果向上。
・想いの丈によって効果持続。
【魔力操作】
・イメージによって対象魔法の行使が可能。
・対象魔法分の体力、魔力、精神力のいずれかを消費。
・効果、威力はイメージに依存。
・任意発動。
【
・勝利の加護。
・洗脳、隷属、汚染の無力化。
・戦闘続行時、発展アビリティ『耐呪』の一時発現。
・戦闘続行時、発展アビリティ『魔抗』の一時発現。
・戦闘続行時、発展アビリティ『勝利』の一時発現。
・戦闘続行時、修得発展アビリティの全強化。
・戦闘続行条件は、戦意が続く限り続行。
【言語和訳】
・全ての言語を和訳。
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「これは…………!?」
「どうかしたか?」
突然、ヴィクトリアが驚いたような声を出すのでうたた寝していた意識がそちらに集中する。
「…………新しい『スキル』が発現したわ。それとアビリティがまた脅威的に伸びてるわね」
「は?新しい『スキル』? どれ、見せてくれ」
「少し待っていて」
新しい『スキル』が発現しているとヴィクトリアから聞いて、気になって仕方ない。けれど、三十秒もしないうちに彼女が俺の背中にある【ステイタス】を羊皮紙に映して、見せてくれた。
「『
「ケンマがわたしを大切にしていることがこうして、目に見えて分かると嬉しいものね。フフフ」
「発現原因は…………間違いなくアレだな」
「そうね、間違いなくアレね」
『中層』に挑むあの日、『豊饒の女主人』の店前で受けたヴィクトリアからの祝福という名の額へのキス。あれが間違いなく新しい『スキル』である『
「これって絶対に『レアスキル』だよな。前世でも発展アビリティが発現するスキルなんて見たことも聞いたこともないぞ。それも三つと来たもんだ」
「発動条件も戦う事とシンプルで簡単なものね」
「バレたら狙われる要素がまた増えた………」
「頑張りなさい、ケンマ」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に