臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
どうも、黒牙雷真です。
長らくお待たせしてしまっているのとタグでは『章ごと投稿』と乗せていますが、仕事で忙しいのと劇場版の書き留めしている話数が二桁越えたので我慢できずに一部を投稿することになりました。
今回の章としましては前編投稿と後編投稿に分かれてしまいますが、どうかお楽しみください。
では、これにて新章『囚われし月の女神と希望の赤龍帝』の始まり、始まり。
第七十八話
〈sideケンマ〉
「どうだ、ケンマ?新しいライトアーマーの調子は」
「問題ない。使い慣れたあの壊れたライトアーマーと同じ感覚だ」
「そりゃあ、俺が作った防具だからな」
「ヴェルフ、僕の方も問題ないよ」
「そうか。なら、良かった」
『黒いゴライアス』の戦いから数日、俺は壊れたライトアーマーをヴェルフに新しく作製してもらい、今日はそれを取りに彼の工房へと来ている。ベルはアニメと違って防具が壊れることはなかったが『中層』でかなりガタが来ていたようで手直しと改良をすることになったのである。
目的の防具が手に入ったので、ダンジョンへと潜らない今日はこれ以上防具を付けている必要はないので防具を外そうとするとヴェルフから待ったが入る。
「ケンマ、防具を外すのはちょっと待ってくれないか」
「えっ、何でだ?」
「『中層』で見つけた未開拓領域の温泉で言ってたろう。俺が作った防具の上からでもあの真っ赤な鎧を装備できるって、だから見せてくれないか?」
「見せるのは別にいいが、鎧を纏うのに一分必要だぞ?」
「たかだが一分なら待ってやる。だから見せてくれ」
「分かった」
新しい防具を作って貰ったので、お返しとしてヴェルフの頼むを叶えるためにブーステッド・ギアを出してカウントを始める。
『Count Down!!』
「ねぇ、ケンマ。どうしてブーステッド・ギアを出したの? それに今の音は、あの戦いの18階層で聞いたのと同じ………」
「まぁ色々とあってな。あの時、レフィーヤのお陰で温泉で見せた鎧を纏うことができるようになったんだ。けどまだ俺が弱い所為か、一日一回しか鎧を纏うことができないし制限時間もある」
「一日一回に制限時間? なんだそりゃ!? それじゃ、鎧の意味が無ぇじゃねぇかよ!」
「だけど、その反面破格の能力が備わってる。LV.2 の今の俺が鎧を纏った状態なら、能力無しで尚且つ素手で『中層』のモンスターは一人で倒すことが可能なはずだ。階層主のゴライアスなら能力を使えばソロでも倒せるだろう」
「なっ、ソロであのゴライアスを!?」
推定LV.5 のポテンシャルを秘めていた『黒いゴライアス』を倍加の能力を使って殴り飛ばすことが出来たんだ。であれば、通常種である階層主のゴライアスでも『赤龍帝の鎧』を纏えば一人で倒せるはずだ。
18階層へと決死の強行軍中に四人がかりで何とか撃破することに成功したあの階層主を一人で倒せると、俺の言葉を聞いたヴェルフとベルは息を飲み込む。それもそのはず、『赤龍帝の鎧』を纏った俺は身体能力だけならばLV.4 に匹敵すると言っているのだから。
「おっと、そろそろだな」
「もう一分経つのか………どんな風に赤い鎧を纏うのか楽しみだね、ヴェルフ」
「そうだな。俺が作った防具の上からあの鎧がどんな風に纏われるのか、滅茶苦茶楽しみだ。それに、ここならあの時ダンジョンで調べられなかったことも調べれることが出来そうだから、そっちの意味でも楽しみだぜ」
「んじゃあ、刮目して見よッ!!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
ブーステッド・ギアから禁手化の音声が鳴ると、俺の身体から赤いオーラが迸り、やがてオーラは真っ赤な鎧を形成していく。その一部始終を目の当たりにしていたベルとヴェルフは子供のように目をキラキラと輝かせながている。
「これがブーステッド・ギアの新たな姿、『赤龍帝の鎧』だ!」
「ブーステッド・ギア・スケイルメイル………」
「ウェルシュ・ドラゴン……バランス・ブレイカー………マジでその籠手はドラゴンの素材を使ってたんだな」
禁手化の音声を聞いたヴェルフが『赤龍帝の鎧』の素材がドラゴンであることに反応する。
「やっぱり今の音声を聞いたら分かるか。その通り、ブーステッド・ギアとブーステッド・ギア・スケイルメイルは二天龍と称された強力なドラゴンの素材を使っている。特殊な能力もそのドラゴンが持っていたものだ」
「二天龍……そんなドラゴン聞いたことないぞ」
「僕もそんな龍の名前は今まで英雄譚でも聞いたことも見たこともないよ」
「ま、これも他言無用で頼むな」
「いやいや、言ったところで誰も信じねぇだろう。二天龍なんて誰も知らねぇドラゴンの素材を使った籠手が鎧になるだなんて………」
「うん、僕もヴェルフの言う通りだと思うな………」
二人の言い分も尤もだろう。籠手が鎧になるだなんてのはこの世界ではあり得ない。それこそ、アスフィさんでも籠手から鎧になるような魔道具を作るには、『神秘』の発展アビリティ評価がA辺りにならない限りは難しいだろうと俺は思う。
そう一人で思っているとヴェルフがおもむろに大きな溜め息を吐いた。
「はぁ………」
「どうした、ヴェルフ。そんな大きな溜め息を吐いて」
「どうしたもこうしたもねぇだろう。ケンマのことを知っていくに連れて、改めてお前に俺みたいな下級鍛冶師が必要なのか分からなくなってきたぜ」
「おいおい、温泉の時にも───」
「分かってる、これはただの嫉妬だ。それに改めてその真っ赤な鎧を見て分かる。今の……いや、俺だけじゃないな。うちの団長の椿ですら、その鎧を越えるような防具は作れないだろう」
「【ヘファイストス・ファミリア】の団長でも!?」
「だからこそ、どこのどいつだが知らねぇが心底嫉妬しちまう。その鎧を作るのにどんだけ鎚を打ち、どんだけの技術と想いを注ぎ込んだのか、俺には到底計り知れない」
一人の鍛冶師としてヴェルフはこのように『赤龍帝の鎧』を称賛するが、実際のところ鎧とブーステッド・ギアを生み出したのは鍛冶師でも人間ですらない。異世界に存在した『聖書の神』と呼ばれる神が己の命とドライグの亡骸を引き換えに神器として誕生させた物だ。
それ故に、神滅具はおろか普通の神器ですら『ダンまち』の世界に生まれて、生きている人間たちに作り出すことは不可能だろう。
「だけど、少なくとも学ぶことはできるはずだ。目の前に実物があるんだからな!」
「なら、好きに観察してくれ」
「有り難てぇ!」
それからは以前と同じように鑢や小鎚などで削ったり、叩いてみたりと鎧の強度や素材サンプルなどを手に入れようと試みたがこれまた以前と代わり映えなかった。
「強度や素材なんかは以前と同じで全然分からなかったが、防具の全体像が見えて勉強になるな」
「強度ならそれなりにあるぞ。試しにベル、思い切り鎧を殴るか蹴ってみろよ」
「えっ? いいの?」
「大丈夫、大丈夫。LV.2 の力じゃこの鎧に皹一つ入れることなんて出来やしないから」
「むっ、そこまで言うなら全力で行くよ?」
「おう。来い来い」
俺は防御の姿勢を取らないことを表すために、両手を広げてベルの攻撃を迎え入れる。
「それじゃあ…………はあああああああッ!!」
一度、臨戦態勢に入ったベルは工房の床を思い切り蹴って、そのまま身体を捻って遠心力を加えたアイズ直伝の回し蹴りを鎧を叩き込むが、盛大な衝突音がするも鎧には全く持って皹の一つや凹みすら見当たらない。
むしろ──────
「ッッ───がああああああ!?」
「おい、ベル!?」
「バカ、力の入れすぎだ!?」
本当に全力で蹴った所為で、蹴りの威力が鎧の強度に負けて、逆にその反動がベルの足へとダメージとして行ってしまったのだ。そのため、ベルは蹴った足を抱えながら悶え苦しんでいる。
「あ、足が……足が……!?」
「光よ集え、全治の輝きを持ちて、彼の者を救え! キュア!」
「はぁ、はぁ、はぁ………あ、ありがとうケンマ」
「全く心配かけやがって…………」
即座にベルの足へ【キュア】の魔法をかけて治療したので、例え折れていたとしても小走りができるくらいには治っているはずなので、ダンジョンに行かないのであればこれで十分だろう。
ベルの怪我を見て、大丈夫そうだと判断した俺は『赤龍帝の鎧』を解除して、ヴェルフから貰ったライトアーマーを外して箱に入れてからギルドに向かうことにした。
「それじゃあ、そろそろ俺はギルドに行くからこれで。ヴェルフ、防具ありがとうな」
「おう。また何かあったら直ぐに言ってくれ」
「もちろん、その時は頼りにさせてもらう」
○●○
ヴェルフの工房から出た俺は寄り道せずに一直線にギルドへと全速前進。その道中で屋台の準備をしている店を発見したり、青い下地に黄色の月と女性らしきイラストが描かれチラシの張り紙などを何回か見受けられた。
「何かの祭りだろうか? 『怪物祭』の時はヴィクトリアがシフトだから誘えなかったし、今回は誘ってやるか」
ヴィクトリアと祭りを回ることを考えながらギルドの前までやってくると昼間の時間帯ということもあって、コアタイム時よりはかなり冒険者の数が少ない。
そのため、あっという間にエイナさんが受付をしているところまで行くことが出来た。
「ちわーっす、エイナさん」
「こんにちは、ケンマくん。今日はどうしたの?」
「実は………先日、【ランクアップ】しまして」
「ご、ごめん、ちょっと待ってくれるかな!この話の流れ、すごーくデジャブを感じるんだけど…………」
エイナさんはそう言いながら右手を付き出して、喋るなと静止のジェスチャーをしながら反対の左手をこめかみに当てて、頭痛いのジェスチャーを同時に行う。
そんなエイナさんを見て、俺は苦笑いを浮かべてしまう。何故ならこの話を彼女は、以前ベルと同じことを話しているのだ。
「因みにケンマくんが冒険者になってからどのくらい?」
「冒険者になったのは、今から一ヶ月半前くらいです」
「本っっっ当に何でキミたちは冒険者になって一ヶ月で【ランクアップ】できるのよ!?」
「あははは………成長期だから?」
「そんなので済まされません!」
それから始まったのは個室での【ランクアップ】した者なら誰でも受ける【ランクアップ】までの経緯の調査である。けれど、話すことは殆どない。何故なら、先日の中層から帰ってきた時に殆ど話しているし、中層へと挑む前までの経緯はベルと全く代わり映えしないのであっさりと終わった。
「はぁ………ベルくんといい、ケンマくんといい、こんな内容を上に報告できる訳ないじゃない。何よ、キラーアントの群れを二人で撃破したり、『怪物祭』で推定LV. が4の新種のモンスターをソロで撃破したり、LV.4 とLV.6 の元冒険者たちに周五日の鍛練を付けてもらったりとか。絶対に他のLV.1 の冒険者たちには真似できないわよ!?」
「普通に死にますね」
「他人事みたく言わないの!!」
自分でも【ランクアップ】するまでの経緯は波乱万丈だと思ってたりする。一ヶ月半前までは普通の市内の公立に通う一般的な高校生だったのが、今では上級冒険者と呼ばれる存在なのだからな。
「あっ、そうだ!【ランクアップ】した際、『レアスキル』が発現したんですけど、エイナさんにこれまでに似たような『スキル』が発現した冒険者がいないか教えて欲しかったんです」
「んー、スキル関連か………滅多なことではそういうことは開示されないからケンマくんの期待に答えられるかは分からないよ?」
「有るなら有る。無いなら無い。それだけでいいんです」
「分かったわ。それでどんなスキルなの?」
「それがですね…………とある条件下で一時的に発展アビリティが発現するレアスキルです」
「はっ?はあああああああ!?」
またしてもエイナさんから驚愕の絶叫が放たれた。
「なによそれ!? 一時的に発展アビリティが発現するスキル!? そんなのレア中のレアスキルじゃない!!」
「ですよねぇ………俺も聞いたことも見たこともなかったし」
「ケンマくん、キミってベルくんよりも規格外なんじゃないかしら?」
「それは何となく自覚してます」
「はぁぁぁ、あまり本人の前でこんなことを言いたくないけど。キミたちは本当に話題性というか破天荒にも程があるよ………」
「本当に苦労をおかけします。あと、ギルドに来る前に青い下地に黄色の月と女性らしきイラストが描かれたチラシがあちこちで貼られていたんですけど、あれは何かの祭りですか?」
「ああ、それなら『
これって間違いなく劇場版の話じゃないか。となると近いうちにベルがアルテミスに選ばれて、『エルソスの遺跡』で『アンタレス』と戦う運命にある。
俺の身体に宿るドラゴンの性質がアンタレスの戦いに悪い影響を与えなければいいなと思うのと同時に、戦いに備えて身体の一部をドライグと取引することを頭の隅に置く。
(ドライグ、その時は頼むな)
『ああ、任せろ相棒』
章の名前が安直だと思われたそこの貴方……私にネーミングセンスがあるとお思いですか?私にそんなものは皆無ですので、今後ご理解をいただけると助かります。
以上です。
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に