臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第七十九話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「ミアさん、ジャガイモとニンジン、タマネギと他諸々の野菜の皮剥き終わりました!」

 

「すまないね、ケンマ。今日が『神月祭』じゃなければ鍛練をさせてやれたのに。それもこれもあのヘルメスの所為だよ、ったく」

 

「あははは…………」

 

 

エイナさんに【ランクアップ】の報告をしてから三日。今日は劇場版の『オリオンの矢』に出てくる『神月祭』の当日、そのため『豊饒の女主人』は早朝から大忙しで鍛練をするはずの俺も鍛練をせずに駆り出される始末だ。

 

更には、ヘルメスの冒険者依頼でリューさんが都市外にある劇場版の舞台である『エルソスの遺跡』に出ているのもあって、ミアさんの機嫌がすこぶる悪いのもあって大変である。

 

 

「ケンマ、坊主が来るまでこっちの仕込みを頼むよ」

 

「はーい!」

 

 

機嫌が悪いミアさんを怒らせないためと18階層でお世話になったリューさんに勝手ながら恩返しをするために、必死に仕込みをしていると珍しいことにドライグから声がかかる。

 

 

『おい、相棒』

 

(なんだ、ドライグ。今はちょっと忙しいから後にしてくれ)

 

『まさか、約束を忘れた訳ではないだろうな?』

 

(約束って、なんの約束だよ?)

 

『相棒!貴様、自分で言っておいて約束を忘れたのか!? 相棒が【ランクアップ】とやらをしたから俺にも酒を飲ませてくれると約束したではないか!!』

 

「ああっ!忘れてた!?」」

 

 

【ランクアップ】したあとは、装備を新調したり、LV.2 の身体能力のズレを直したりと色々やっていたら直ぐに『中層』へと挑むことになって危うく遭難しかけたり『黒いゴライアス』と戦うことになったりとドライグのための酒を買う暇もなかった。

 

それ故に、ドライグに言われるまで頭の隅にすら酒のことなんてすっかりと忘れていた。けれど、今なら階層主である『ゴライアス』の魔石を換金したことでそれなりに小金持ちにはなっているはずだ。

 

そう思っていると俺の声を聞き付けてたルノアさんが顔をひょっこりと出してきた。

 

 

「どうしたのケンマ、何か忘れ物?」

 

「わ、忘れ物というか………世話になってる奴に酒を奢る約束をしてたのを今になって思い出して………」

 

「ああ、それでか………」

 

「お騒がせしてすみません」

 

 

ペコペコと頭を下げながらルノアさんに謝罪してからドライグに酒の好みについて訪ねることにした。

 

 

(なぁ、ドライグ。ドライグはどんな酒が好きなんだ?)

 

『そうだな。好みはそれなりにあるが強いて挙げるなら、やはり天然物のドラゴンアップルで作った酒とかだろう』

 

(ドラゴンアップルって、たしか元龍王の一角でイッセーの師匠とも云える魔龍聖タンニーンが悪魔に転生してまで増やそうとしてるドラゴンの食べ物だったよな? 日本人も主食である米から日本酒を作るがドラゴンもそうだったのか?)

 

『ああ。過去にドラゴンと共存を望んだ人間と、それを受け入れたドラゴンたちによって作られた酒をまだ若い頃に飲んだことがある。あれから何百年と経つがあの酒はとても美味だった。思い出しただけでも…………ジュルリ』

 

(そ、そこまでか………)

 

 

自分で好みの酒を聞いといて何ではあるが、ドラゴンアップルなんて珍しい食べ物をこの世界では奇跡が起きない限りは入手不可能である。何せ、ドラゴンアップルは『ハイスクールD×D』の世界の冥界にしかないのだから。

 

となると、手に入れることが出来ないドラゴンアップルの酒と釣り合うようなお酒を考えないといけない。未成年で酒を飲んだことない俺が知っている酒の銘柄といえば、ビール、ワイン、日本酒、ジン、ウォッカ、ベルモット、ピスコ、スピリタス等の代表的な酒だ。

 

 

(因みにドライグはアルコールの強い酒と弱い酒、どっちがいいんだ?)

 

『そりゃあ強い酒の方がドラゴンは好みだ。弱い酒では飲んだ気がしなくて堪らん。強い酒を飲んだ時に感じるあの喉を焼く感覚は、炎を吐く時とは別で心地いい感覚なのだ』

 

(へぇ~、ならドライグにはスピリタスの方がよかったのかもな)

 

『スピリタスとは、相棒の記憶にあったアルコール度数95%の酒のことか?』

 

(そうそう、それ!前世の動画サイトとかでスピリタスを使った料理の動画とか面白くて観てたんだよ。スピリタスに一日漬け込んだ肉や魚を焼いてから解して、更に解した肉や魚に火を近付けるとまだ火が付くことに驚いてたっけな)

 

 

一時期キャンプに憧れを抱いてた頃に観ていた懐かしいことを思い出しながら野菜を微塵切りにしていく。

 

正直な話、《千本桜》を使ってしまえば野菜を切る作業なんてものはどうということはないのだが。今の俺はまだLV.2 で上位冒険者なんて言われているがまだまだ第三級冒険者で弱者に変わりはない。

 

せめて第二級に上がるまでにならないと、団員一人の弱小【ファミリア】だと『戦闘遊戯』を挑まれて負けてしまう可能性の方が圧倒的に高い。例え一発逆転を狙える可能性のある『赤龍帝の鎧』があったとしてもだ。

 

 

「ケンマさん、ベルさんが来ましたよー!」

 

「ありがとう、シル」

 

 

ドライグと会話をしながら黙々と野菜を刻んでいたら、いつの間にかベルが迎えに来たようでシルが教えに来てくれた。なので、野菜を刻む手を止めて、手早く『魔剣創造』で創造した魔剣包丁を魔力へと還元させながら調理場の隅に置いていたベルの《兎吉》と色違いで竜の素材を一つ使っている《竜吉Ver.II》(自分で命名)こと赤いライトアーマーの胴体部を廊下で手早く装備する。野菜を刻む際、どうしても胴体部だけは邪魔になるので外していた。

 

準備が整うと厨房から少し大きめな布で包まれた弁当を片手に大分見慣れてきたウエイトレス姿のヴィクトリアが俺の下へとやって来る。

 

 

「はい、お弁当。今日も頑張ってね、ケンマ」

 

「ああ、今日はヴィクトリアと夜の祭りに行くためにも頑張るさ」

 

「フフフ。期待してはいるけれど、無茶は駄目よ」

 

「わかってるって。俺は臆病者なのを忘れたのか?」

 

「自分で自分のことを臆病者だなんて卑下できるなら今のところは安心ね」

 

「そういうことだ。それじゃあ、行ってくる」

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

 

ヴィクトリアと出掛ける前の挨拶を交わしてから店の前でシルと仲良く喋っているベルに一声掛ける。

 

 

「待たせて悪いな、ベル」

 

「ううん。シルさんから話は聞いてたから大丈夫だよ。それじゃあ、行こうか」

 

「ああ!リリとヴェルフが待ちぼうけしてるはずだからな」

 

「それじゃあ、シルさん。行ってきます!」

 

「シル、行ってくるな」

 

「はい、お二人とも気を付けてくださいね」

 

 

笑顔のシルに見送られながら俺たちは仲間たちと合流するためにバベルの前にある噴水広場へと走り出す。噴水広場へと向かう途中、オラリオの市民たちがベルに向かって応援の言葉をかけたり、店に並ばせていたリンゴなんかを投げ渡していた。ついでに俺もリンゴをもらってしまった。

 

リンゴを片手に噛りながら走り続けていると偶然にも、ギルドから何やら色々と道具が入った箱を持った俺たちの担当アドバイザーであるエイナさんが出てきた所に遭遇した。

 

 

「おはようございまーす」

 

「ちわーす。おっ、このリンゴ美味い」

 

「あ、ベルくんにケンマくん」

 

 

ベルがエイナさんに声を掛けたので続いて俺も声を掛けると俺たちに気付いたのか、彼女は直ぐに笑顔を向けてくれた。

 

 

「何やってるんですか、エイナさん?」

 

「今夜のお祭りの準備。ベルくんたちはダンジョン?」

 

「はい!」

 

「ようやく身体の疲労も抜け出し、新しい防具も完成したので今日からダンジョン探索再開です!」

 

「そうなんだ。気を付けてね。冒険者は───」

 

「「冒険しちゃいけない!」」

 

「えっ?」

 

 

俺とベルは、先んじてエイナさんの口癖を声にしてから方向転換して首を後ろに振り返りながらギルドの前で僅かに困惑している彼女に笑顔を向けてながら、噴水広場へと再び足を向ける。

 

 

「わかってます!」

 

「心配しなくても大丈夫です!」

 

 

俺たちを心配して言ってくれているのは良く理解しているが、出会う度に聞かされては耳にタコである。

 

それから程なくして俺たちは同じパーティーメンバーであるヴェルフ、リリの二人が待っているバベル前の噴水広場へと到着した。

 

 

「リリ!ヴェルフ!」

 

「オーッス!」

 

「お、来たな」

 

「ベル様、ケンマ様」

 

「悪いな二人とも、待たせて」

 

 

二人は俺たちを認識すると笑顔を向けてくれる。

 

 

「二人も来たことだし、それじゃあ………」

 

「行きましょうか」

 

「「「ダンジョンへ!」」」

 

 

俺たち四人は、声を合わせながらバベルを見上げてそう言うのだった。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

場所は13階層。そこは『中層』と呼ばれており、また『最初の死線』とも呼ばれている。加えてLV.1 とLV.2 の冒険者が下級と上級と区別される由縁の場所である。  

 

 

 

「ヘルハウンド二体、来ます!」

 

 

小人族で目が良いリリがそう叫ぶ。

 

 

「ケンマ、片方は任せるよ!」

 

「あいよ!」

 

 

リリの注意喚起の叫びを聞いた俺たちは、互いに一匹ずつ相手取るように『ヘルハウンド』へと肉薄する。

 

ヘルハウンドとの距離がある程度迫って来た瞬間、俺は【魔力操作】の『スキル』で精神力を足裏に溜めて、爆発させるイメージで溜めいた精神力を解放して一気にヘルハウンドとの距離をゼロにしながらすれ違い様に奴の首を切り落とす。

 

 

「せやああッ!!」

 

『─────!?』

 

 

首を切り落とされたヘルハウンド自身も何が起きたのか理解出来ないまま、生命活動が途絶えて核となる紫紺色の魔石だけを残して灰となって消えた。

 

ベルの方へ視線を向けると、ヘルハウンドの噛みつき攻撃を華麗に飛んで避けて、天井から生えている鍾乳石のような先が尖った岩を一瞬だけ足場にしてから岩を蹴り、ヘルハウンドの身体へとナイフを突き刺して一撃で倒していた。

 

『黒いゴライアス』との戦いで俺と同じように【ステイタス】が大幅に上昇しているようで動きにキレが増していることがさっきので直ぐに分かった。

 

 

「やるな、ベル」

 

 

ベルに負けてられないと思った矢先、ヴェルフの方に複数の気配が迫っていることを肌で感じたので注意喚起を促すとベルも同じことをしていた。

 

 

「「ヴェルフ!」」

 

「まかせろっ!」

 

 

俺たちの注意喚起を聞いたヴェルフは、正面から迫ってくる三体の『ハード・アーマード』を両手で持っている大刀で一太刀の下に切り伏せ、魔石だけを残した灰へと変化させた。

 

しかし、ヴェルフに迫っていたのはハード・アーマードたちだけではなかったようで背後からも一体の『アルミラージ』が肉薄していたことにヴェルフは気付いていなかった。

 

けれど、そこへリリが腕に装備しているクロスボウで矢を放った。

 

 

「ふせてください!」

 

「おわっ!?」

 

 

リリの注意喚起に反応して、ヴェルフは咄嗟に屈むと頭上でリリの放った矢がアルミラージの脳天に命中、そのままま魔石となって倒れた。

 

 

「もう、油断しすぎですよ、ヴェルフ様」

 

「ははっ………悪い」

 

 

リリから注意を受けたヴェルフは、苦笑いをしながらそう返す他なかった。俺も咄嗟に太股に刺している聖剣ナイフを抜く暇がなかったので、今回は本当にリリにヴェルフは助けられた。

 

ヴェルフの謝罪の言葉を聞き入れたリリは、ベルにあることを尋ね始めた。

 

 

「そういえば、ベル様」

 

「ん?」 

 

「今夜のお祭りは行かれるのですか?」

 

「うん、そのつもり」

 

「でしたら、リリもご一緒にさせてください!」

 

「もちろん。ケンマとヴェルフもどう?」

 

「ヴィクトリアも一緒でいいなら混ざらせてもらうかな」

 

「なら…………もう少し、稼いでいくか」

 

 

ヴェルフがそう言うと新たなモンスターがダンジョンから産まれ来た。

 

 

「そうだね」

 

「ですね」

 

「だな。んでもって、こっからはクライマックスタイムだぜ!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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