臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第八十七話

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

『アンタレス』のクローンたちとの戦闘から三日。夕暮れが迫る中、俺たちは谷間にある川を下るように抜け、再び森の上を竜で飛行している。

 

そして、とある位置から境に、木々の葉の色だけでなくその大木や草花までもが紫色へと変色している異常現象を目の当たりにする。つまりは、『エルソスの遺跡』まで後少しのところまで辿り着いたことを意味している。

 

そのことから俺は、記憶に残っている『オリオンの矢』で次に何があるのかを先読みしながらブーステッド・ギアを具現化、禁手のカウントダウンを始める。

 

 

「なっ!」

 

「どういうことだ………」

 

「なんですか、これ?」

 

「森が……死んでる……」

 

 

紫色に変色してしまっている森を見て、上からヘスティア、ヴェルフ、リリ、ベルの順でそれぞれの感想を言葉にして溢す。目の前に広がる訳のわからない現象に困惑しているとその答えをアルテミスが述べた。

 

 

「アンタレスの仕業だ……そして……あれがエルソスの遺跡……」

 

「あそこにアンタレスが………」

 

 

森を中央にポツンと存在している『エルソスの遺跡』に全員で意識を集中させていると、俺の前に座っているアルテミスが唐突に胸を抑えて苦しみ出す。

 

突然、アルテミスが苦しみ出したことに意識が遺跡から彼女へと移る。それに伴って俺は、焦りながらドライグに『赤龍帝の鎧』の顕現はまだかと急かす。

 

 

「くっ……!」

 

「ッッ、ドライグ!!」

 

『待たせたな、いつでも行ける!』

 

「ギリギリに間に合ったかッ!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

 

何とかアンタレスがアルテミスの神威を使った攻撃が空から降り注ぐよりも前に『赤龍帝の鎧』が間に合った。即座に鎧を顕現させると一気に限界まで倍加を高めて、そのまま空に目掛けて特大サイズの撃龍拳を放つ。

 

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

「喰らい尽くせ、撃龍拳!!」

 

「ちょっ、ケンマ!?」

 

「なにやってんだよ、お前ッ!?」

 

 

俺の行動にベルとヴェルフがオラリオで【月牙天衝】を今回の旅にレフィーヤとアイズが同行できないことを伝えに来たアキさんが、俺たちを見つけやすいよう空に放った時と似たような反応をするが、今回ばかりはそんな生易しい状況ではないので返答してやれない。

 

そのため、俺の返答の代わりに空へ放った特大サイズの撃龍拳が遥か上空で何かと衝突して、空気を揺るがすほどの大爆発を引き起こした。けれど、それだけでは収まらずにその爆発の爆煙から光輝く何かが突き抜けて、俺たちへと降り注ごうとしている。

 

 

「チッ、やっぱりアレだけじゃ駄目か!全員、躱わせええええッッ!!!」

 

「「「ッ!!」」」

 

 

俺の渾身の叫びを聞いた皆は、今が危機的状況だということが今更になって理解が追い付いたようで慌てて竜を操作して、散り散りに回避行動を行う。

 

ただ回避するだけでは足らないと判断した俺は、再び瞬時に倍加を限界まで高めながら【プロモーション】の魔法で『僧侶』へと昇格。【プロモーション】で補正を掛けた第二撃を爆煙の中を突き抜けて来た光の攻撃目掛けて放つ。

 

 

「【プロモーション・ビショップ】ッ!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

「今度こそ喰らい尽くせ、撃龍拳!!」

 

 

補正の掛かった二発目の撃龍拳は、一発目とは違って放つ時に八岐大蛇のような多頭の飛龍をイメージしながら喰らいもらした光に向かって放つ。するとイメージしたのが八岐大蛇のような飛竜のため、ギュルギュルと撃龍拳の龍たちの首があちらこちらへと伸びて動き、光に喰らい付いていく。

 

それの光景は、まるで前世で見ていた優しい王様になろうと金色の魔物の少年が放つ究極の雷撃龍に似ていた。二度にも渡るフル倍加による撃龍拳で、何とかアンタレスが放ったと思われる天から降り注ぐ光を喰らい尽くすことに成功した。

 

しかし、威力の増した撃龍拳と光が再度衝突したことによって先ほどよりも爆風が強くなり、一度目の爆風に耐えていた竜たちも二度目は耐え切れなかったようで爆風に煽られて、地上へと落下することになった。

 

 

「アルテミス、しっかり掴まってろよ!」

 

「お、オリオン!?」

 

「くっ……神様!!」

 

「うわあああああ!? ベルくん!!」

 

「くそっ!」

 

「きゃああああ!?」

 

「うわあああああ!?」

 

 

 

皆の悲鳴が聞こえる中、俺は一緒に乗っていたアルテミスを守るために竜ごと俺の龍のオーラで包み込み落下の衝撃に備える。

 

常日頃から某オーラの四大行のアニメと同じ鍛練の仕方をしていたお陰で、乗っている竜にまでオーラを纏わせることが出来たことで落下による衝撃は殆ど受けずに俺とアルテミスは不時着した。けれど、他の皆は俺たちのようなオーラで守ることは出来ないので心配だ。

 

 

「ぐっ………アルテミス、怪我はないか?」

 

「ああ、私は何とも………」

 

「そうか」

 

 

取り敢えず、アルテミスに怪我はないようだ。竜の方はドライグに確認してもらうとこちらも身体や翼にも怪我はないそうだ。残るはベルたちの安否だけだ。

 

落下したことによって生じた土煙が立っているなか、そんなに離れていないはずのベルたちに叫んで安否を確認をする。

 

 

「ベル、リリ、ヴェルフ、神ヘスティア、それからヘルメスも無事か!?」

 

「なんとか僕と神様は、大丈夫だよ……」

 

「死ぬかと思った~………」

 

「俺とリリスケもなんとか生きてる……」

 

「一体、さっきのは何なんですか……!?」

 

「オレをついでみたいに呼ぶのは酷くないかなぁ、ケンマくん………」

 

 

全員、返事ができるということは返事通り、大した怪我もなく無事に不時着できたということだろう。全員の安否を確認したところで、一度状況を把握することを努めるとリリの問いにアルテミスが答える。

 

 

「おそらく、私を……いや、(ケンマ)が持つ槍を狙ったのだろう」

 

「えっ?」

 

「ケンマが持つ槍を?」

 

 

今の攻撃は俺が背負っている『槍』を狙って、アンタレスが仕掛けて来た物だとアルテミスがそう告げるとベルたちの視線が『槍』へと集中する。

 

しかし、それも直ぐにそんな状況ではなくなった。何故なら、カサカサと草木を揺らしながら「キィキィ!」と独特な鳴き声を上げて、薄暗い森の中に無数に光る赤い模様………つまり、以前討伐したアンタレスのクローンの成長した個体たちが俺たちの周りを包囲しているのだ。

 

それを認識した俺たちは、アルテミス、神ヘスティア、ヘルメスを背中に【恩恵】を持っている四人で四方を抑えるように臨戦態勢に入る。

 

 

「モンスター………」

 

「まずいなぁ、これは……」

 

「こいつら……この間、ケンマが蹴散らした奴か……」

 

「……いや、大きさも型も違う。多分、前回の奴らの上位個体だ」

 

「上位個体!?」

 

 

目の前にいるクローンたちが前回の上位個体であると冷静に把握しながらこの場をどうやって切り抜けるかを只管に考える。

 

ただ単純にこの場を切り抜けて逃げ出すだけなら俺がフル倍加の一撃で逃げ道を作れば可能だ。しかし、それをすれば森の一部が消し飛ぶことになる。他の選択肢があるとすれば、一度禁手化を解除して、前回同様に聖剣の《千本桜》で蹴散らす選択肢以外は今の俺にはない。

 

他にやれることはないかと無い頭で思考をフル回転させていると聞き慣れた声で覚えのある詠唱文が薄暗い森の中に響き渡る。

 

 

 

「【来たれ、さすらう風、流浪の旅人】」

 

「ッッ、この詠唱は………ブレード・ブラックスミス!!」

 

 

森の中に響き渡る詠唱文を耳で捉えた俺は、この詠唱文を聞き間違えることはないと確信しながら『赤龍帝の鎧』を解除して、手に握っている聖剣を地面に突き刺して、『聖剣創造』の力を解放。

 

解放された『聖剣創造』の能力で俺たちの周りから聖剣の壁が俺たちを囲むように生まれる。この聖剣の壁は、以前5階層で創造することに成功した《魔法喰らい》で作ってあるので万が一にもあの人の『魔法』が俺たちに来たとしても《魔法喰らい》がその魔法を喰らって、無力化するだろう。

 

 

「【空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ】!【星屑の光を宿し……敵を討て】!」

 

「来る!全員、魔法の爆風に備えろ!」

 

「「「ッッ!!」」」

 

 

響き渡る詠唱文が終わりを迎えようとしていたので、皆に魔法が放たれることを周知させて爆風に備えさせる。すると、走りながら詠唱する平行詠唱をしていたあの人がその身体に魔力を漲らせながら木々の太い枝を踏み台に、高く飛躍して、上空から魔法を放つ。

 

 

「【ルミノス・ウィンド】!」

 

 

上方から放たれる無数の緑の球体があっという間にクローンたちを屠り、残ったのは土煙と魔石だけだった。

 

そして、天から緑葉のような外套を身に纏う一人の妖精が俺たちの前に降り立つ。その妖精は周囲に危険がないことを確認すると聖剣で出来た壁を数回ノックして、壁を解除するように促してくる。その指示に俺は迷うことなく、聖剣の壁を解除して妖精に挨拶と感謝の言葉をかける。

 

 

「どうも、リューさん。助かりました」

 

「無事でなによりです。しかし、まさかこんな所でイシグロさんたちと出会うとは………」

 

「リューさんこそ、どうしてここに……?」

 

「厄介な冒険者依頼があると同行を依頼されました。彼女たちに」

 

「アスフィさん!」

 

「【ヘルメス・ファミリア】………」

 

 

何故、リューさんがいるのかベルが尋ねると、その問いに答えながら彼女は近くまで来ていた【ヘルメス・ファミリア】の面々に振り返る。

 

リューさんが振り返った先に【ヘルメス・ファミリア】の面々がいることを確認できたが、一名だけ様子が変だった。その一名とは、【ヘルメス・ファミリア】の団長であるアスフィさんで様子がおかしいのはヘルメスに対する怒りである。

 

そして、ついにアスフィさんの堪忍袋の緒が切れて、今にも逃げ出そうとしているヘルメスを逃がさなかった。

 

 

「ヘルメス様ぁぁ………!」

 

「ぎっ!や、やぁ、アスフィ………!うぅぅ!?」

 

「このスットコドッコイ!遺跡の監視を私たちに押し付けて一人で帰るなんて!」

 

「お、落ち着けアスフィ。だから槍の持ち主を捜しに行くためだって………」

 

「それでも勝手にいなくならないで下さい!」

 

 

ヘルメスがアスフィさんに叱られている様子を俺たちは呆れながら眺めていると、まさかのアルテミスがヘルメスに助け船を出した。

 

 

「アスフィ、ヘルメスを許してやってくれ」

 

「アルテミス様………」

 

 

アルテミスの静止の声でアスフィさんも冷静さを取り戻したのか、俺たちがいることに驚く。けれど、直ぐに状況を把握する。

 

 

「……ケンマ………なるほど、槍を抜いたのは貴方ですか。あの黒いゴライアスを殴り飛ばせる貴方であれば納得です。期待していますよ」

 

「あははは………あまりそのことはまだ広げないでくれると助かるんですけどね」

 

「で、アスフィ。状況は?」

 

「悪化する一方です。森の侵食は広まり、モンスターは今も増殖中。近隣の村は既に壊滅しています」

 

「遺跡への侵攻は?」

 

「門に阻まれ、すべて失敗に終わっています」

 

「……そうか……」

 

「……門ですか?」

 

 

アスフィさんとヘルメスの会話に出てきた「門」という言葉に、ベルは違和感を感じたのか後ろに立っているリューさんに尋ねた。

 

 

「ええ。その所為でアンタレスの下まで辿り着けない」

 

「開けられないんですか?」

 

「我々の力では………」

 

 

現状がどういう状況なのかを一部把握した俺たちは、これ以上ここに居ては再びクローンたちに襲われかねないので【ヘルメス・ファミリア】が野営している野営地に移動することになった。

 

幸い、劇場版とは違って竜たちに怪我はないため、神であるアルテミス、ヘスティア、ヘルメスを俺、ベル、アスフィさんで守るように二人乗りして、残る一頭にはヴェルフとリリが二人乗りして空を翔びながら野営地へと向かった。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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