臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
「よう、ベル。クライマックスタイムには間に合ったか?」
「は、はは、ははは!うん、もちろんだよ、ケンマ!!」
危ッッねぇエエエエ!!!もう少し遅れてたらベルが『アンタレス』の矢に貫かれて殺されていた。間一髪、俺の蹴りが間に合ってくれて良かった………。
さて、ここからどうやって攻めるかだよなぁ。このまま戦っても、さっきと同じ展開になるのは明白だ。新しい姿に変わって『赤龍帝の鎧』にも何か新しい能力があれば思うが─────
『そういうことなら良い知らせがあるぞ、相棒』
(えっ、マジで?)
何か新しい能力に目覚めていないかと思っているとドライグから良い知らせがあると告げられた。
『これは俺も予想だにしていなかったことだ。何せ、歴代赤龍帝でもこの力を目覚めさせたのは相棒が最初だからな』
(歴代赤龍帝でも俺が最初………?あの歴代赤龍帝の最強の二人、エルシャとベルザードでもか?)
『そうだ。あの二人やイッセーですら目覚めさせたことのない赤龍帝の力だ』
エルシャやベルザード、イッセーですら目覚めさせたことのない赤龍帝の力─────そこまで考えた辺りで俺は新しく目覚めたという赤龍帝の力に心当たりが出てきた。
(まさか…………!?)
『ああ、相棒が思っている通り「透過」の力だ。俺は、この力は聖書の神によって消し去られたとばかり思っていたが。奴め、何かしらの条件が満たさないと解放されないように特殊な仕掛けを施していたな』
『透過』────それはドライグが生前持っていた能力の一つで、ありとあらゆるモノを文字通りにすり抜ける能力だ。そして、これは俺の独自解釈だが使い方によっては某ゲームの壁抜けやタイム連打のようなこともできるだろう。
しかし、この『透過』の能力は、本来であればドライグと対となる存在であるアルビオンとの和解が成立しなければ目覚めることのない能力のはず。なのに、それが目覚めたとなれば新しい赤龍帝の姿に透過の能力、とんだご都合展開だな、こりゃ……。
いくら今の展開が劇場版のモノだからいえど、映画がこんなあまりにもご都合主義過ぎて僅かに引いてしまうが、現実の話であれば別だ。現実ならご都合主義は大歓迎!なにより、俺はトゥルーエンドよりもハッピーエンドにすると決めた!
「おっと、復帰し始めたか」
ドライグに『透過』の能力を使えるようになったと知らされて、その本来の解放方法などについて色々と思い馳せていると蹴り飛ばされたアンタレスが体勢を直して、こちらに向かっていた。
それも蹴り飛ばされたことが大変ご立腹なのか、怒りの叫びを上げている。
『オオオオオオオオオ!!!』
「アンタレス、今の俺をさっきの俺と同じだと思うなよ。こっからは正真正銘のクライマックスタイムなんだからなッ!!」
某【時の運行を守る】仮面ライダーのような台詞を口にしながら翼を羽ばたかせて、アンタレスと肉薄しながら左右から迫りくる六本の鋏による連続攻撃を翼を羽ばたかせて回避したり、某機動戦士のような動きで回避したり、《エクス・デュランダル》で切り伏せたりして、どうにか奴の魔石がある懐へと潜り込むとそのままの勢いで甲殻に覆われている魔石の部分に二度蹴りをかます。
「フッ!ハァアアアッ!」
すると『鎧』の時とは違い、【プロモーション】も倍加もしていないにも関わらず二度の蹴りでアンタレスの身体が軽く吹き飛び、ご自慢の甲殻にはしっかりと大きく手応えの跡が大きく凹みとなって残された。二度蹴りを受けた奴もまさか甲殻の上から蹴られて、吹き飛ばされてダメージを受けると思っていなかったのか声にならない叫びを上げていた。
『…………………………』
「やっぱり、『真紅の赫龍帝』と同様に強くなってるな」
確かな手応えを感じた俺は、今の俺ならばアンタレスと対等以上の戦いができる確信を得られたので、慢心などせずに短期決戦を心掛けながら畳み掛ける。
それからは魔法と倍加を一切使わずに只管物理攻撃でアンタレスの身体にダメージを蓄積させていく。魔法や倍加を使えば、あっという間にダメージは与えられるがそれでは同じ轍を踏むだけなのと奴が怒りに任せてチャンスを作り出してくれるのを待っている。
すると、狙い通りにアンタレスはアルテミスの本体を封じ込めている魔石を露出させて『光の矢』を形成し始めた。それをしっかりと見た俺は甲冑下で笑みを浮かべる。
「そいつを待ってたぜ!!」
『光の矢』を形成する間、アンタレスは動けないことを何となく察していたので全速力の飛行で奴の魔石へと突貫。一直線に突撃してくる俺を見て、アンタレスも狙いが魔石だと察したのか『光の矢』を形成するのを止めて、甲殻で魔石を守ろうとするが今の俺の方が奴が甲殻を閉じるよりも早く魔石へと到達する。
甲殻が閉じるよりも先に魔石に到達した俺は、甲殻に邪魔されないように《天閃の聖剣》と《破壊の聖剣》の能力を併用した《エクス・デュランダル》で高速で切り裂いて、そのままその直ぐ側に《エクス・デュランダル》を深く差し込み、《擬態の聖剣》で刀身に返しを作る。ここまでは魔石を殴った時と同じ展開だが、今回の狙いはこの先にある。
魔石を守る甲殻を切り裂いたことで僅かであるけど再生するまでの時間が稼げる。なので、このまま左腕を魔石の中にあるアルテミスの本体へと伸ばしながら叫ぶ。
「いくぞ、ドライグ!いくぜ、ブーステッド・ギィイアアアア!!」
『Penetrate!!』
アルテミスを助けたいというありったけの想いを左腕に注ぎながら赤龍帝の第三の能力である『透過』を使って、左腕を魔石へ躊躇なく突っ込む。するとズボッ!という効果音などはせず、どんどん左腕が魔石の中へと入っていく。その際、アンタレスも自分の核である魔石に異物が入り込んだことで苦しみの悲鳴を上げながら暴れだす。
奴の悲鳴を聞きながら更に魔石へと左腕が入っていくと、まるでドロドロしたスライムに腕を突っ込んでいる感覚に近い感触が左腕に伝わる。そして遂に左手がアルテミスの肩に到達し、そのまま彼女の二の腕へ左腕を動かして、しっかりと掴んだらアンタレスの暴れる動きに合わせて、アルテミス共々一緒に奴の懐から飛び退く。
「シャオラーッ!」
アンタレスの魔石からアルテミスを救い出せたことに歓喜の雄叫びを上げたら、《エクス・デュランダル》を持ったままではアルテミスが危ないので《擬態の聖剣》で俺の腰に【指輪の魔法使い】の変身ベルトにそっくりなベルトに擬態させてからアルテミスをお姫様抱っこで抱き抱える。
超絶ご都合主義モリモリで何とか無事にアンタレスからアルテミスを救い出すことに成功すると、ブーステッド・ギアから【アルテミス・ファミリア】の皆の涙声が混じりの歓喜の声が聞こえてくる。
『アルテミス様!』
『アルテミス様、よくぞご無事で………!』
『ありがとう!ありがとうございます、赤龍帝殿!』
『やはり、貴方は私たちの"希望"だ!』
『わああああああ!!』
最早、ブーステッド・ギアの精神世界で狂喜乱舞してそうなほどの喜びような彼女たちの声を聞いて、俺も思わず甲冑の下で笑みが溢れる。
【アルテミス・ファミリア】の歓喜の声を聞きながら、劇場版では見られなかったハッピーエンドに近づいていることの実感をジワジワと味わいながらもアルテミスをこのまま抱き抱えたままでいる訳にも行かないし、アンタレスも完全に倒した訳でもないので、一度冷静さを取り戻すために深呼吸をしてから意識を切り替える。
意識を切り替えたらアンタレスを倒すべく、素っ裸のアルテミスを抱えたまま離れた場所にいるベルの下へと一度降りることにした。
「ケンマ!アルテミス様?!」
「無事だ。呼吸もある」
「良かった」
抱き抱えている間、規則正しい呼吸で二つの果実が揺れているのをチラリと見てしまったのはベルには内緒だ。けれど、ブーステッド・ギアの精神世界にいる【アルテミス・ファミリア】の皆さんが滅茶苦茶批難の言葉を飛ばしてくる。
だって仕方ないじゃない。お姫様抱っこしている関係上に加えて、今の新しい形態の禁手の視野が大きく広がりながら複眼使用になっているからどうしても見えてしまうんだもの!
そんな訳で着地して直ぐに上半身だけ鎧を取り払って、今回の旅のためにヘルメスが用意した戦闘衣を素っ裸のアルテミスに素早く着せて、ベルに彼女を託す。
「ベル、アルテミスを連れてリューさんたちともう一人のアルテミスと合流してくれ。ここからは手加減無しでアンタレスをぶっ倒す!」
「わかった。アルテミス様のことは僕に任せて、ケンマは全力でアンタレスをやっつけちゃって!」
「なら、少しだけベルにも力を貸してもらうかな」
「僕に?」
「拳を合わせてくれ」
俺は小さく右拳を突き出しながらベルにそう伝える。
「わかった!それでケンマの助けになるなら!」
「アルテミスのことを頼んだぞ、親友」
「ッッ……うん!任せて、親友!」
ベルと拳を合わせたあと、俺は再びアンタレスに向かって飛翔。その時、苦しみながら奴の身体から何やら複数の青白い光が湯気のように天井に上がっているのが確認できた。
これは一体─────
『大方、理をも捩じ曲げる力の源であるアルテミスを失ったことで、これまでに蓄えていた力の制御がままならなくなったのだろう』
「つまり、弱体化してるってことでいいんだよな?」
『ああ、その解釈で間違いない。今の奴ならば、あの再生能力も無尽蔵ではなくなっているはずだ』
「なら、再生が出来ないようにその力を奪えば、もっと簡単にアンタレスを倒せるってことだよな!」
『相棒、お前、まさか……あいつの力を!?』
「かなりの博打だけどな」
元々、あの力を使うつもりでベルと拳を合わせて、ベルの『幸運』の発展アビリティに願掛けした。俺にまで『幸運』が作用するかは完全な未知数だが、それでもやらないよりはやった方がいいだろう。
こういう覚悟を決める場面になると毎回思う、異世界転生しても人生ままならないことが多いと。全く、波乱万丈な人生に嫌気がさしてしまうが今は全力でアンタレスを倒すことだけに集中する。
「覚悟、決めるぞ!ドライグ!」
『応、相棒!』
力がどんどん失われていることに踠いているアンタレスに向かって最高飛行速度からのドロップキックを叩き込もうすると、奴は俺が蹴りの構えを取る寸前に攻撃的な気配を感じた取ったのか、咄嗟に下半身の二本の大きな鋏と上半身の六本の普通の鋏で防御姿勢を取った。
「うりやあああああッ!!」
『!!??!?』
最高飛行速度によるドロップキックで一番手前の下半身にあった大きな鋏二本と上半身にあった六本の内の三本を蹴り抜いたが四本目が捥げる寸前、五本目が最早使い物にならないほどにダメージを与えたが魔石に届くことはなかった。
倍加をしてないとはいえ、まさか新しい今の赤龍帝の姿で鋏全てを貫通出来なかったことに驚くが当初の目的である「接触」は果たせた。
「奪いやがれ!『白龍皇の籠手』ッ!!」
『Dvide!!』
右手に意識を集中させて、ドライグの魂に刻まれたブーステッド・ギアと瓜二つで白いカラーリングの『白龍皇の籠手』を具現化、そのまま『半減』の能力でアンタレスの力を半分にして、それを自身の力へと転換させる。
奇跡的とも呼べる割合の『白龍皇の籠手』を具現化させながら『半減』の力まで使って、内側から膨大な力の奔流を感じているとドライグが口調が変わるほどに驚いている。
『マジか!? そんなことが有り得るものなのか!? だとしたら、相棒の潜在能力はエルシャやベルザードすらも…………』
「どうした、ドライグ? ディバイディング・ギアと半減の力を使ったからブーステッド・ギアに何か不具合でも出たか?」
『いや、そうではない。イッセーの時は、右腕のそいつを出すには生命力を削るデメリットがあった。だが、相棒はそうではなかった。むしろ、デメリット無しで具現化させてみせた。まぁ、アルビオンの力を使った際には、少なからず生命力を消費している。どうも、いいこと尽くめではなさそうだな』
「戦いに問題がないならそれでいい!このまま奴から奪った力で特大のをお見舞してやらッッ!」
『半減』で奪ったアンタレスの力を全て両手に集めて、全力の【九頭龍拳】を放つ。
「ツイン・九頭龍拳!!」
某グルメなアニメの主人公のように両腕を突き出して放たれた十八頭の龍たちは、雄叫びを上げながらアンタレスを捕食対象として一直線に向かっていく。
流石のアンタレスもアルテミスを失って、自身が弱体化していることを察して十八頭の龍に捕食されることを良しとはしないようで、口元に紫色の光を溜めてビームで相殺しようとするが此方とてそれを良しとはしない。
「やらせねぇよ?」
『DivideDivide!!』
ビームを溜めているところに『半減』の能力で力を半分に削り、更にそこへ追い討ちをかけるように『半減』の能力を行使してやれば溜めていたはずの力が突然霧散する。それによってアンタレスは訳が分からないと示すように硬直してしまった。
それが完全に致命的な隙となり【ツイン・九頭龍拳】の龍たちがアンタレスの身体に到達し、その身体を貪り始める。
「これで三回………ドライグ、あと何回までなら半減の力を使える?」
『今でも寿命を削っているが、使うとしたら二回が限界だ。それ以上は言わずとも分かるだろう、相棒』
「了解。あと二回ね」
ドライグに『半減』の能力を使うのは残り二回が限界だと注意された俺は、それをしっかりと頭に残しながら【ツイン・九頭龍拳】でボロボロの『アンタレス』の出方を観察する。
奴の力の源であったアルテミスの本体は救出しているので、あの理不尽めいた再生能力や『光の矢』を使ってくることはない。だが、アンタレスは以前18階層で激闘を繰り広げた『黒いゴライアス』と同じで黒い身体をしているのでこれで終わるとは思えない。
ならば、何かされる前に倒すのがベストだろう。
「止めを刺すぞ、ドライグ!」
『ああ!』
アンタレスに止めを刺すために一度空中から地面に降り立ち、最大まで倍加を高めながら仮面ライダーのような必殺技の構えを取る。
「はああああああ!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』
「フッ!」
高めた力の全てを右足に収束させて、勢いよく駆け出し、途中で高く飛び上がり、渾身の飛び蹴りをアンタレスに向かって放つ。
「だあああああああッ!!」
『────────』
【ツイン・九頭龍拳】によって全ての鋏を貪れ、完全に無防備なアンタレスは黒いゴライアスのような魔力を消費して行う高速再生を見せることなく、俺の渾身の飛び蹴りで魔石を砕かれ、あっけなくその身体を灰へと変えた。
そんなあまりにもあっけない終わりに、俺は言いようもない不安感だけが残った。それはドライグも同じだった。
「なんだ、このあっけなさは………?」
『分からん。やはり、力の源であるアルテミスを取り除かれたことに加えて、三回に渡る「半減」によってかなり弱体化していたのではないか?』
「それならいいんだけど…………」
オリ主たちの新本拠地候補
-
第六区画 『竈火の館』の近く
-
第七区画 元ヘスティア廃教会
-
西地区 豊穣の女主人の近く
-
北地区 適当に