臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
どうも、夏バテ真っ盛りのグロッキーな黒牙雷真です。
この頃の日本の気温が殺人級で日々、死にかけています。まだ梅雨なのに……………。
今回は後日談として投稿話数は少なめです。次回からは皆さま御期待のアポロン戦になります。どんな風に【アポロン・ファミリア】を蹂躙するかのイメージは大体できあがっているのですが、その途中までが小説を書く上での難所になってきます。
さて、世間話もここまでにして、劇場版の後日談をどうぞ!!
〈Sideアルテミス〉
「ん、んんー………ふあ~、おっと」
鳥の囀りで自然と目が覚め、上半身を起こして伸びをするとまだ身体が完全には目覚めていないのか思わず欠伸が出てしまった。そんな腑抜けたところを隣で寝ている親友に見られたのではないかと羞恥心から警戒するが、当の親友はまだまだ微睡みの中のようだ。
「ベルくん~……かわいいよ~……ムニャムニャ……」
「フフフフ♪」
天界に居た頃から変わらない親友の寝顔に思わず笑みが溢れる。そんな親友の寝顔を眺めたあと、ヘルメスの子供が誂えてくれた衣服を身に纏ってから天幕の外へと出る。
天幕を出ると木々の隙間から射し込んでくる陽光に少々目を眩ませる。こうして、自然豊かな中で太陽の光を浴びれる他愛のない日常がとても喜ばしく感じる。これもオリオンが私を『アンタレス』から救ってくれたからだと思う。
「アルテミス様、おはようございます!」
「ああ、おはよう。ファルガー」
昨晩から交代で見張りをしていたヘルメスの子供であるファルガーが、私を見つけると直ぐに笑顔で挨拶をしてくれるので私も彼に挨拶を返す。
「ファルガー、何か変わったことはあるか?」
「いえ、昨晩もルルネたちと交代してからゴブリンの一匹も見てないですよ。それと昨晩もあの坊主が目覚めることはありませんでした………」
「そうか………今日で五日目、本当に大丈夫なのだろうか」
私は男性用の天幕に視線を向けながら五日目前に起きた出来事を思い出す。今でも思う。あの出来事を語るにはあまりにも劇的な出来事だったと………。
○●○
「おい……あれ!」
「黄金の斬擊……?」
「あれって、ケンマ様の………」
「ああ、間違いねぇ………」
「ケンマのクロス・クライシスだ!」
私の制御から完全に離れてしまった『矢』とオリオン───ケンマの放った黄金の『斬擊』が衝突。その後、世界が悲鳴を上げるように二つの攻撃を中心として空間に亀裂が走り、空間に窓硝子が割れるような現象が起きたのだ。
空間が割れた先から覗けるのは絵具をぐちゃぐちゃにぶちまけたかのように色々な色が混じり合い、濁ったような世界だった。そんな世界がこの世に存在していることを私たち、神々であっても今知った。
「今度はなんだ!?」
「空に穴が………?」
「ヘルメス様、あれは一体なんなのですか!?」
「オレもあれに関しては何も知らない!神であるオレでさえでもだ!」
「あの穴がどんな物なのかはどうでもいいが、このままじゃヤバいんじゃないのか!?」
ヴェルフの指摘したように、次に起きたのは世界がその割れた空間を修復しようとしているのか嵐が逆になったように、全てを吸い込もうとする猛烈な風に身を煽られる現象だった。
「あの穴は、周囲の物を引きずり込もうとしているのか!?」
「全員、踏ん張りなさい!でなければ、訳の分からないあの穴に引きずり込まれますよ!?」
「待ってください!あの穴から遠く離れているリリたちでさえ、踏ん張る必要があるのであれば、あの穴に最も近いケンマ様はどうなんですか!?」
「「「!?」」」
リオンに言われるままに私たちは空に開いた穴に吸い込まれないように踏ん張る。そんな最中リリルカの言葉で、私たちは全員で空にいるであろうケンマへと視線を向ける。
「全員、ケンマくんを探すんだ!」
「
「既に探しています!しかし、この大空の中から一人の人間を見つけるにはあまりにも広大すぎる!」
私たちの中で【恩恵】によって、最も五感が昇華しているリオンにアスフィが彼女の眼ならばと頼りにするが、この大空から一人の人間を探すのはあまりにも無理難題である。
そんな時、ヘスティアから鶴の一声ならぬ、神の信託がリリルカに降りる。
「サポーターくん!キミの変身魔法で、ケンマくんの音を拾えないかい!」
「ケンマ様の音ですか? でも、リリの魔法でも………」
「いや、リリなら出来るかもしれない。ケンマは今、ブーステッド・ギア・スケイルメイルを……あの赤い鎧を装備してるんだ」
「なるほど、鎧同士が僅かに干渉する金属音をリリスケに拾わせる訳だな!」
「鎧の音………それなら何とか拾えるかもしれません!」
「それじゃあ、頼むよサポーターくん!」
「仕方ありませんね!」
ヘスティアの信託により、リリルカはケンマの鎧の音を拾うべく『魔法』の詠唱を唱える。
「【貴方の刻印は私のもの。私の刻印は私のもの。シンダー・エラー!】」
詠唱が完了し、魔法が発動するとリリルカの頭から純白の長い耳が生える。リリルカの変身魔法で音を拾えないかとヘスティアが言っていたので、聴覚に長けている兎人族に変身したのだろう。
「リリ、頼むよ!」
「はい、ベル様!お任せください!」
変身が完了するやリリルカは、頭に生えた耳に手を添えてケンマが身に纏っている鎧の音を拾おうと試みる。しばらくの間、ひょこひょこと兎耳を動かしているとリリルカは、ハッとしたような表情で目を見開き、そのまま指で何かを示す。
「二時の方向、フルプレート鎧の音を捉えました!」
「リオン!」
「こちらもケンマの姿を捉えました!」
リリルカとリオン、二人の耳と眼が捉えた先には赤い小さな何かが空を飛んでいるのが【恩恵】を持たない神である私でも捉えることが出来た。
「ケンマ……!」
「ケンマくん……!」
「アスフィ!念のため、飛翔靴の準備だ!彼を失うわけにはいかない!?」
「分かりました!」
万が一に備えて、ヘルメスもアスフィにケンマを救出に行けるよう準備の指示を出した。眷属が誰一人として居らず、何も出来ない今の私は、神でありながら彼が無事に私たちの下に帰ってくることを天に祈ることしか出来ないでいた。
何か、何か私にもできることはないかとケンマが居るであろう空を睨みながら握り拳を作っていると、ふと誰かに拳を優しく両手で包み込まれる感触で我に返る。私の握り拳を優しく包み込んでくれていたのは、神友であるヘスティアだった。
「ヘスティア………?」
「大丈夫だよ、アルテミス。ケンマくんなら必ず帰ってくる。だって、あの子はアンタレスからキミを救ってくれた『英雄』じゃないか」
「ケンマが、私の『英雄』…………」
ヘスティアの言葉を復唱すると何故か胸の辺りが暖かくて、今までに感じたことのない言葉では表せない感情が溢れてくる。これはなんだ? けれど、ヘスティアのお陰で僅かにだが心にゆとりが出来ていた。
「お願いだ、ケンマ。必ず、私たちの下へ………!」
◇◆◇
〈Sideケンマ〉
「ん、んん~………あ、れ?ここは………」
『ようやく目覚めかけるくらいには体力が回復してきたようだな、相棒』
「ドライグ」
最初に目が覚めると真っ暗で何も見えない空間にいると思いきや、ドライグの声がするや否や暗い空間に真っ赤な炎が広がり、そこには炎よりも赤い身体に緑の瞳をしたドラゴン───ドライグがいた。
ドライグがこうして肉体がある状態で俺の前にいるということは、つまりここは俺の精神世界ということで、無事に俺は次元の狭間の引力から逃げ切ることが出来たということなのだろう。
でなければ、体力と精神力を使い果たして空中で禁手が解除された生身の俺では、次元の狭間の無に当てられて消滅しているはずだ。
「ってことは……こんな感じでいいかな?」
状況を冷静に整理した後、自分の精神世界ということなので、アニメやラノベのように欲しい物を明確にイメージしてからフィンガースナップを鳴らすと暗い空間が一気に明るくなる。
他もドライグが生み出した炎も消え去り、景色も俺の記憶にある前世の生まれ故郷である日本にある遠足などで行ったことのある河川敷の大きな公園に一瞬にして変化する。
「んー、リアル怪獣だな、こりゃ………」
河川敷の公園をイメージしたのはいいが、その景色の中に等身大のドライグが存在しているとリアル特撮怪獣の一匹にしか見えなくて笑えてくる。
「それで? 態々、お前が俺を精神世界に呼び出してまで話をするってことは、何かあったのか?」
『察しが良くて助かる。どうやら、相棒が取り込んだヴィクトリアの【神血】の影響がブーステッド・ギアにも及ぼしているようだ』
「まさか、ヴィクトリアの【神血】という裏技を使ったからブーステッド・ギアや禁手が使えなくなったとかじゃないよな!?」
『そうではない。正直、俺もブーステッド・ギアに及ぼしている影響がどのような影響までかは理解していない』
「よかった………せっかく禁手に至れたのに使えなくなるのは、ゲームのセーブデータが消し飛ぶくらいに損失感を味わう所だったぜ」
『安堵している相棒には悪いが、しばらく俺はブーステッド・ギアの最奥にある神器のシステムを調べてくる。その間はブーステッド・ギアの倍加や譲渡、禁手も使えなくなる』
「ちょっと待て!いくら何でもそれは流石に困るぜ!?せめて、倍加と譲渡くらいは使えるようにしてくれよ!!」
『本来の至り方ではない裏技で、あれだけの力を無理矢理に引き出したんだ。何かしらの機能不全があってからでは相棒も困るだろう』
「た、確かに………禁手に至る直前のような機能不全が出たら困るな」
『それに相棒は歴代赤龍帝と違いブーステッド・ギア以外にも神器があるではないか。それで何とかしてくれ』
「はぁ………わかったよ。その代わり、ブーステッド・ギアの調整は頼んだからなドライグ!」
『ああ、任せておけ相棒!』
ドライグとの会話を終えると現実の俺が意識を取り戻そうとしているのか、周囲の景色が次第に揺らぎ始めていた。
「アポロン戦はブーステッド・ギアと禁手なしかぁ………」
○●○
「ん、んん~………見覚えのない、天井?いや、テントの中か………」
次に目を覚ますと最初に視界に映ったのはテントの天井と思わしき、一本の支柱から四方八方に伸びる棒状の骨組だった。
正直、この展開は二度目なので直ぐに俺が寝ている場所がテントの中だということを察することが出来た。あとは、自分があの決戦から何時間あるいは何日眠り続けていたかである。
「うわっ………めちゃくちゃ身体が固くなってる。こりゃ、二~三日は寝たな」
上半身を起こすと自分の身体の動きが鈍く、筋肉が僅かに引き攣るような感覚が走ったことから数時間や一日では、こうはならないだろう俺の中で推測を立てる。
その後、軽く身体を伸ばしたり、十字に腕を組んで腰回りの筋肉を解すストレッチなどをしてから精神世界でドライグが言っていた通り、本当にブーステッド・ギアが使えなくなっているのかを確かめることにした。
「ブーステッド・ギア!」
ブーステッド・ギアの名前を口にしがら籠手を具現化させようとするが、うんともすんとも言わず何も出てこない。念のため『魔剣創造』と『聖剣創造』を使ってみると、この二つは普通に使えたのでドライグの言う通りブーステッド・ギアだけが使えなくなっている状態のようだ。
それと同時に改めてブーステッド・ギアがなければ、俺は『アンタレス』に殺されるか、アルテミスに『矢』を使うはめになっていただろうと痛感する。
「足りないな。もっと強くならないと」
LV.2 にランクアップする前の【ステイタス】がオールS以上になって、禁手に至ったことで少なからず慢心や満足をしていた自分がいたのは否めない。なので、これからはもっと貪欲に強さを求めるようになろう。
そう思いながら左手にギュッと握り拳を作ると誰かが俺のいるテントにやって来たのか、入り口の布が捲られて、外からの光が射し込んで来て思わず左手で顔を守ってしまう。
「入るぞ、ケンマ」
「ああ、いいぞ」
一声掛けてから入って来たのは、声からしてアルテミスのようだ。なので、こちらも反射的に返事をすると、次の瞬間、金属と木製の何かがぶつかり合い、水気のある何かが勢いよく地面に落ちる音などの色々とやらかしたような音を耳が拾い上げる。
耳が拾い上げた音はアルテミスが運んで来てくれた食事を乗せた食器だったようだ。音の正体を認識すると、その次はアルテミスが勢いよく俺に近付いて来て、力一杯に両肩を掴んでくる。
「ほ、本当に……目を覚ましたのか、ケンマ!?」
「普通に見て、これで寝てるようならお前の目は節穴か?」
「よかった………本当によかった」
アルテミスは俺が目を覚ましたことを両目の端に涙を溜めながら喜んでくれた。だが、流石に大袈裟な気がしてならない。
「二~三日寝てただけで少し大袈裟じゃないのか?」
「馬鹿もの!二~三日ではない、丸五日だ!」
「は?五日?マジで?」
「ああ。だから、こうして私を始めとした皆がケンマのことを心配していたのだ」
「マジか……五日か……そりゃあ筋肉が凝り固まる訳だわ」
アルテミスから明かされた俺が眠り続けて日数を聞いて、自分の身体の固さに納得が行った。それに加えて、この後に押し寄せてくるであろう仲間たちの面会に苦笑いを隠せない。
何故なら──────
「絶対、リューさんに怒られるな」
オリ主たちの新本拠地候補
-
第六区画 『竈火の館』の近く
-
第七区画 元ヘスティア廃教会
-
西地区 豊穣の女主人の近く
-
北地区 適当に