『GBN』。それは、今世界で最も熱いと言われている程の、世界規模で繋がるネットワークゲームだ。正式名称を『ガンプラバトル・ネクサスオンライン』と呼ばれるそれは、仮想世界『ディメンション』の中でそれぞれのガンプラをスキャンしてデータを取り込み、自らの機体としてガンプラバトルを繰り広げるゲーム。そして、そのGBNを舞台に今新たなストーリーが展開されようとしていた。
それは、とある出会い、GBN初心者の『ミカミ・リク』と『ヒダカ・ユキオ』こと『ユッキー』が不思議な少女、『サラ』と出会った直後の事だった。
リクとユッキーは現在中学生であり、GBNに参加するプレイヤー、ダイバーとしてはまだまだ初心者であり素人だったのだ。帰りのSHRの後の放課後、教室に残って話をしている二人。
「リッくん、昨日は楽しかったね~」
そう言って声をかける眼鏡の少年が、ユッキー。ちなみに彼は、リクの事を『リッくん』と呼んでいる。
「うん。何か変なバトル挑まれちゃったけど、まぁそれも良い経験だよね。けど、やっぱりと言うか、折角だからもっと大人数でやりたいよな~」
頷きつつも、そう言ってぼやくリク。
「あ~あ、誰か俺達以外にGBNに誘えそうな人居ないかな~」
「う~~ん。……あ、そうだリッくん!ツトムが居るよ!」
「あ!そっか!そうだよね!」
と、ユッキーの言葉に頷くリク。
「早速声掛けに行こうよ!もう帰っちゃったかな!?」
そう言って鞄を持ち教室を足早に出るリク。
「行ってみよう!」
ユッキーも頷いて、彼の後に続いた。
そして、すぐさま昇降口まで行き、そこから更に走った二人は、正門を出た所で、お目当ての人物の後ろ姿を見つけた。
「あ!居た!」
先に彼を見つけたユッキーが人物を指さす。
「お~~い!ツトム~~!」
「え?はい?」
リクが声を上げながら駆け寄ると、目的の人物が振り返った。
彼は、黒髪のボブカットと少し垂れ目が特徴の、大人しい性格のクラスメイト、『モガミ・ツトム』だった。
「あ、リク君、ユキオ君。どうしたの?」
振り返り、彼らに声をかけるツトム。
「ハァ~間に合った~。実はツトムにさ、お願いしたい事があるんだ」
「??」
リクの言葉に首を傾げるツトム。その後、3人は場所を近くの河川の所に映し、3人して坂の原っぱに腰を下ろしていた。
「それで、話って何?」
「うん、実は俺達今、GBNやってるんだ」
「と言っても、昨日始めたばかりだけどね」
ツトムの質問に答えるリクと、補足するユッキー。
「それで俺達、一緒にGBNをやれそうな人に声かける事にしたんだ。それで、ツトムを誘おうと思ってるんだ。ツトムって確かガンプラ作りしてたよね?それで誘ったんだけど……。ダメかな?」
そう言って確認するリクに、当のツトムはどこか悲しそうに俯いてしまった。
「……ごめん。僕、今ガンプラ作りしてないんだ」
「え?それって……」
「やっぱり、『あの事』を引きずってるの?」
疑問符を浮かべるリクと、何かを知っているのか呟くユッキー。
「え?ユッキー、あの事って?」
「あ、え~っと」
リクがユッキーに聞くと、彼は困ったようにツトムの方に視線を向けた。やがて……。
「そっか。リク君は知らないよね。あれは、僕が小5の時なんだけど……」
静かに語り始めるツトム。
「家で、一人でガンプラを作ってた時、間違ってパーツの大事な所までニッパーで切断しちゃったんだ、僕。その後は、テンパって接着剤で直そうとしたけど上手く行かなくて……。結局、そのガンプラ丸ごと捨てちゃったんだ。そんな事をしちゃった自分が許せなくて、ガンプラを大切に扱おうとしなかった自分が許せなくて……。それで」
「ガンプラから離れたの?」
『コクン』
リクの言葉に、無言で頷くツトム。
「僕にはガンプラを作る資格なんてないってずっと思ってたんだ」そう呟くツトム。しかし、それを聞いたリク達は……。
「そんな事ないよ!」
そう言って立ち上がったリク。
「そうだよ!失敗は誰にだってあるよ!僕も初めての頃は作るの下手だったし、色々失敗した事だってあるもん!」
ユッキーも彼に続いて立ち上がる。
「それに、ガンプラは楽しむ為にあるんだ!だから今を楽しもうよ!俺達と一緒に!」
「リク君」
そう言って、右手を差し出しながら笑うリクを見上げるツトム。そして、彼は……。
「僕は、もう一度ガンプラを作って良いのかな?」
「当たり前だよ!だから一緒に作ろうよ!ガンプラ!」
そう言って、ユッキーも頷く。二人の言葉に後押しされたツトムは……。
「じゃあ、やってみようかな。ガンプラ作りと、GBN」
そう言って、ガンプラに対する意欲を再燃焼させるのだった。
その後、3人はガンプラ探しのために模型店でもあり、GBNアクセス用の端末が併設されたお店、『THE GUNDAM BASE』に来ていた。
「あら?二人ともいらしゃ~い」
そして、中に入った所で一人の女性『ナナセ・ナナミ』が3人を出迎えた。
「こんにちはナナミさん」
「いらっしゃい。って、あれ?その子は?」
挨拶をするリクと、ツトムに気付くナナミ。
「あ、この子は僕達と同じ中学で、幼馴染の……」
「モガミ・ツトムです。初めまして」
ツトムを紹介するユッキーと、自己紹介するツトム。
「ツトム君ね。私はナナセ・ナナミ。このお店の店員よ。よろしくね」
「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
初対面で恥ずかしいのか、顔を赤くしつつ俯きながらも挨拶をするツトム。
「それで、今日3人はどうしてここに?」
「実は俺達、ツトムをGBNに誘ったんです」
「それでツトム用の練習用兼新しい機体を買いに来ました!」
リク、ユッキーの順でそう説明する。
「そっか。じゃあ、良いガンプラが見つかると良いわね」
「「「はい」」」
その後、ガンプラが置かれたスペースを歩き回る3人。だったのだが……。
「う~~ん。僕に合うガンプラって、何だろ」
数百を超えるガンプラの入った箱と棚を前に頭を捻るツトム。
「何か、数が多いと決めるの迷うよね~」
「分かる分かる」
呟くユッキーと同意するリク。その後、更に歩き回っていた時だった。
「あれ?」
不意にツトムの目に何かが映って、彼はそちらに向かった。彼が向かった先にあったのは、キャスター付きの棚で、その上にガンプラとよく似た別の『何か』が積まれていた。
「これって……」
その箱の一つを持ち上げるツトム。彼には、そこに置かれた物に見覚えがあったのだ。
「ツトム、どうしたの?」
そこへやって来るリクとユッキー。
「あれ?これは、ガンプラ……。じゃない?」
積まれた箱を見て呟くユッキー。
「『ジプシー・デンジャー』、『チェルノ・アルファ』。なにこれ?」
リクは積まれた箱に書かれた機体名を読み上げながら首を傾げた。
「それはね、『イェーガー』って言うんだよ」
そんな中で一人呟くツトム。
「え?ツトムこれ知ってるの?」
「うん」
ユッキーが聞き返すと頷くツトム。
「これは『パシフィック・リム』って言うSF映画シリーズに出てくるロボットだよ」
「へ~。でも、何でそのイェーガーってプラモがここに置いてあるんだ?」
「多分だけど、この映画を作った監督さんが日本のアニメとかが大好きだからなんじゃないかな?聞いた話だけど、このシリーズの第1作目に出てくるチェルノ・アルファって機体はザクがモデルだったり、コヨーテ・タンゴはガンキャノンがモデルだって聞いた事があるよ。だからじゃないかな?」
リクの疑問に答えるツトム。
そして、彼の目に一つのボックスアートが映った。無言でそれを手に取るツトム。その箱には、『ジプシー・アベンジャー』と言う単語と機体の絵が描かれていた。そして……。
「僕、これを作ってみたい」
「え?それを作るの?でも、それじゃGBNには……」
そんな事を言い出したツトムにユッキーは困ったような表情を浮かべるが……。
「大丈夫、そっちは別で買うよ。丁度先月のお小遣いも残ってるし、今月分も全然手を付けて無かったから」
そう言って、苦笑を浮かべたツトム。
その後彼は、更に別のガンプラ、『ジム』を買うと早速お店の中にある組み立て用のスペース、ビルドゾーンでジプシー・アベンジャーを作り上げるツトムと、それにアドバイスをするリク達。
そして小一時間ほどして……。
「……出来た」
完成した機体を前に、小さく呟くツトム。
「へ~。これがそうなのか~。カッコいいな~」
ツトムの隣から覗き込みながらもそう呟くリク。
「こっちも素組みだけど映えるね~!」
更に同意するユッキー。そんな中で、ツトムは……。
『僕が作った機体。ガンプラとも違う僕のプラモ、ジプシー・アベンジャー』
密にキラキラと輝く瞳で、その機体を見つめるのだった。
その後、ツトムは二人と別れて帰宅。家に帰ってからジムの製作に取り掛かった。そして、そんな彼の机の傍らにはジプシーが飾られていた。時々手を休めながらも、ジプシーを見つめるツトム。そんな時……。
『……あ、そうだ。どうせだから『あれ』出来るか、試してみよう』
何やら、新しい事を思い浮かべるのだった。
翌日の放課後。再びGUNDAM BASEにやって来るリク、ユッキー、ツトムの3人。そして、ツトムはダイバーギアと言うダイバーの個人情報が入った端末を貰い、それを手にGBNアクセス用の台座型端末がある部屋へと入る。
「あ、あのさ。リク君ユキオ君。実は試してみたい事があるんだ」
「え?何?」
疑問符を浮かべるリク。そんな中で、ツトムが鞄の中から取り出したのは……。
「それって、確かジプシー・アベンジャー?」
「うん。久しぶりに作ったプラモだから、出来る事ならこれが動いている姿を見てみたいんだ。まぁ、GBNにこれを登録できるか分からないし、多分出来ないと思うけど、どうしても試してみたいんだ」
「そっか。じゃあ、やるだけやってみようか」
「うん、そうだね」
ツトムの言葉に頷くリクとユッキー。
その後、ツトムもリクやユッキーと一緒に端末の椅子に座りヘッドセットを装着。端末にダイバーギアをセットし、静かにその手にジプシー・アベンジャーを握っていた。ジプシーを見ながら数回深呼吸をするツトム。そして……。
『物は試し!出来る事なら!』
そう考えながら、ジプシー・アベンジャーをダイバーギアの上に置く。すると、ジプシーの体を上下からスキャンの光が通過する。そしてさらに……。
『log in data confirmed』
電子音性が何かを告げている。
「え?もしかして、入れたの?」
戸惑いながらもジプシーを見つめるツトム。
『Are you Ready?』
「あ、えっと!はい!」
『Dive Start now!』
驚きながらも、ついにGBNにダイブするツトム。
そして、彼が電子空間に入った時だった。突然。
『congratulation!!』
「えぇ!?」
不意に、彼の前にその文字の垂れ幕とファンファーレのような音楽が聞こえて来た。
「え!?何!?どうなってるの!?」
驚き戸惑いながら周囲を見回すツトム。その時。
「はっはっはっ!まさか、本当にイェーガーでGBNに参加しようとする者が現れるとはね!」
不意に、ツトムの前に誰かの立体映像が現れた。それは……。
「あ、あなたは!パシフィック・リムの監督さん!」
第1作の監督であるふくよかな男性だった。
「その通り!さて、ここで君に朗報だよ。実は私は以前からGBNに憧れを抱き、そしてそんな中でイェーガーがガンダム達と共に動く姿を見てみたいと思い、GBNの運営委員会にその事を打診していたのさ。そして、それは『隠し要素』として用意された、と言う訳だね」
「隠し要素、ですか?」
「その通り!そしてその隠し要素に一番に辿り着いたのが、君と言う訳だね。私としては、GBNでガンダムと共に戦うイェーガーを見られるのは嬉しい!」
そう言うと、ツトムの肩に手を置く男性。
「私は君の活躍に期待しているよ!それとこれは私からのプレゼントだ!それでは、良いGBNを!see You!」
最後に、何かの箱を渡して激励の言葉を掛けた男性は静かに消えていった。
そして、とうとうツトムの意識がGBNへとやって来た。入り口から大きなロビーに入るツトム。そこでは、ガンダムシリーズの登場キャラそっくりなアバターや、オリジナルのアバターを使った人々が大勢行きかっていた。
「うわ~~~♪」
ロビーの中を見回しながらも驚くツトム。
ちなみに、今の彼のアバターは黒いズボンに茶色のパイロットジャケット、更にキャップと言う、ちょっと地味な感じだった。そこへ。
「ひょっとして、ツトム?」
「え?」
不意に後ろから声をかけられたツトムが振り返ると、そこにはRPGの登場キャラのようなアバターの少年が二人、立っていた。
「え?あ、もしかして、リク君とユキオ君?」
「っ!やっぱりツトムだ!」
互いに、相手のことに気づいて駆け寄る3人。
「ツトム、GBNに入れたんだね!良かった~!」
「ありがとうユキオ君。あ、そうだ。実は二人に話したい事があるんだ」
「「話したい事?」」
その後、3人は街を一望出来るテラスに出て、ツトムは先ほどあった事を二人に話した。
「隠し要素か~。だからツトムのジプシーもOKになったんだ」
「うん、僕も最初は驚いたけど良かったって思ってるよ」
と、談笑していた3人。やがて……。
「それじゃあ、早速行ってみようか!ミッション!」
「そうだね!」
リクの言葉に頷くユッキー。そして……。
「うん!」
いよいよな展開に、ツトムも胸を躍らせていた。
その後、ミッションカウンターに向かう3人。
「う~~ん、僕たちみんな素人だし、やっぱりこの前やった初心者用にした方が良いかな~」
カウンターの前でミッションを吟味している3人。と、その時。
「あら~?もしかしてリッくん達じゃな~い」
不意に後ろから声が聞こえ、3人は振り返った。
彼らの後ろに立っていたのは、体にフィットしているパイロットスーツの胸元を開けさせ、赤い上着を羽織った男性のような、しかし女性のような人物が立っていた。
『へ!?』
その人物を前に驚き目をぱちくりさせるツトム。
「あ!マギーさん!」
一方で件の人物と知り合いであったリクが笑みを浮かべる。
「こんにちはマギーさん」
「この間ぶりね、二人とも」
ユッキーの挨拶に笑みと共に挨拶を返すマギー。
「ところで、二人と一緒の子は?もしかして新しいお友達?」
「はい。そうなんです」
視線をツトムに向けるマギーと肯定するリク。
「俺たちと同じ中学校で同級生の……」
「あ!」
自己紹介をしなきゃ、と思い慌てて帽子を取るツトム。
「は、はじめまして。リク君たちのクラスメイトで、今日がGBN初デビューの、ツトムと言います。はじめまして」
少し驚きながらも、頭を下げるツトム。
「こちらこそよろしくね。改めて、私はマギーよ」
と、ひとしきり挨拶をする4人。
その直後。
「あ、そう言えばあの子は居るかな?」
「あの子って、誰?」
不意に呟いたリクに疑問符を浮かべながら首をかしげるツトム。
「あぁ実は俺たちがGBNにデビューした日に出会った女の子がいるんだ。前はちょっといろいろあってさ」
「そうだったんだ」
そんな話をしていたツトムとリク。
そして、噂をすればなんとやら、と言わんばかりに……。
「見つけた」
不意に、リクとユッキーの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。二人が振り返ると、そこに居たのは白い服装に銀髪の少女だった。
「二人とも、ひょっとしてこの子が?」
「うん。……って、あぁそう言えば自己紹介してなかったかな。えっと、俺はリクって言うんだ。改めてよろしく」
「僕はユッキー、よろしくね」
「あ、えっと、ツトムと言います。はじめまして」
「それなら私も。マギーよ、よろしく」
リク、ユッキー、ツトム、マギーの順で挨拶をする。
「君の名前は?」
「……サラ」
リクが聞くと、少女改め『サラ』は少しだけ間を置いてから答えた。
そうして、彼、彼女たちは出会った。
その後、5人はフレンド登録を済ませ、近くのカフェに入る。
「成程、ツトム君のGBNデビューも兼ねて何か良いミッションが無いか、探していたのね」
「はい。俺もユッキーも今日が2回目だし、ツトムも初めてだから何か良いのが無いかな~って思って」
と、マギーの質問に答えるリク。
「そうだったの。……所で、ツトム君はどんなガンプラを使ってるのかしら?量産型?それとも専用機?」
「あ、えっと。……実は僕、使ってるのはガンプラじゃないと言いますか……」
「え?」
その後、ジプシーの事、隠し要素の事を説明するツトム。
「成程、隠し要素ね~。運営側も面白いイースターエッグを仕込んでいたものね」
「あ、でも、不味いでしょうか?GBNにイェーガーを持ち込むなんて……。やっぱり止めた方が……」
会話をしていて、不味いと感じたのか俯くツトム。しかし……。
「良いんじゃ無いかしら、別に」
「え?」
ツトムはマギーの言葉に顔を上げた。
「運営側が正式に許可している事なんだし、だったら誰にだってそれを咎める権利なんて無いわ。……それに、こういうのは楽しんだものの勝ちよ。だからあんまり躊躇う必要なんて無いわ」
「マギーさん……!ありがとうございます!」
ツトムは、笑みを浮かべながらマギーに対して頭を下げた。
その後、再び話はミッションの事になった。
「それじゃあ、初心者な3人にはこんなミッションは如何?」
画面を呼び出し、何かを操作するとそれをリク達3人に向けるマギー。
「ミッション名は……。『濃緑の奪還作戦』?」
名前を読み上げるユッキー。
「えっと、内容は……。森林の中にある敵部隊に防衛されたコンテナを奪取し、それを一定時間守る事。一定時間守りきれば勝ち。制限時間内にコンテナを奪取出来ないか、参加機体が全滅したら負け、か。面白そうだね」
内容を読み上げ、笑みを浮かべるツトム。
「よし!じゃあこれをやってみよう!」
そう言って席から立ち上がるリク。
そうして、ツトムの初ミッションが決まった。
カタパルトから出撃態勢を取る3人。
ちなみに、今のジプシー・アベンジャーはサイズが調整され、リクやユッキーのダブルオーダイバーやジムⅢビームマスターと同程度のサイズになっていた。加えて……。
「ツトムのジプシー、イェーガーって事だからやっぱり他と違うね」
通信タブを開いて、ツトムと会話するユッキー。ユッキーやリクの場合は、周囲をドーム状のエネルギーに覆われ、空中に浮かぶレバーなどを立った状態で操作する。
一方のツトムにはそのようなレバーは一切無く、今の彼は青いスーツを全身に纏い、何も無い空間に直立していた。が、その足裏部分や背中には接続部があり、機械が接続されていた。
「イェーガーの操縦方法はGガンダムのと似てるし、イメージとしてはそれが一番近いかな」
「「「へ~~」」」
ツトムの説明に、リクとユッキー、サラが頷く。ちなみに、サラはリクのダブルオーダイバーに同乗していた。
そして、いよいよ出撃の時間となった。
「ユッキー!ジムⅢビームマスター!」
「リク!ガンダムダブルオーダイバー!」
「あ、えっと、つ、ツトム!ジプシー・アベンジャー!」
「「「出ます!!!」」」
そして、3人の機体がカタパルトから発射される。空へと躍り出るビームマスター、ダブルオーダイバー。
「ほら見てよツトム!俺たち飛んでるよ!」
そう言いながら、振り返るとリク。
しかしそこに、ツトムのジプシーはいなかった。
「って、あ、あれ?ツトム?」
そして……。
「そう言えばジプシーは飛べないんだった~!!」
彼のジプシーは、眼下の街に向かって真っ逆さまに落ちていった。
「「つ、ツトム~~~~!」」
そんな彼を慌てて回収するリクとユッキーのガンプラ。
結局、ジプシーはビームマスターとダイバーに両腕を握られる形で空輸される事になった。
「……その子って、飛べないの?」
と、ドストレートに聞くサラ。
「う、うん。……ごめんね二人とも。ジプシーは飛べないって事すっかり忘れてて」
「良いって良いって。気にすること無いよツトム」
と、謝るツトムをフォローするリク。
「あ、所でさツトム。ジプシーってどんな武器付いてるの?教えてよ」
「え?え~っと。まず、両腕に変形式プラズマキャスター。プラズマブレード、肘に加速用のエルボーロケット。後、右腕にグラビティ・スリング。背中のウィングにはミサイル発射装置も付いてるね」
と、ユッキーの質問に答えるツトム。
「へ~。結構あるんだね」
「うん、これでも映画の主役機だから。アベンジャーは、どっちかって言うと近距離とか中距離での戦いが多いかな」
「じゃあ、戦う時は俺とツトムが前衛でユッキーが後衛だね」
ユッキーの言葉に頷くツトム。更にフォーメーションを考えるリク。
そして、そうこうしていると……。
「あ。二人とも、見えてきたよ。あのゲートを潜ったらミッションスタートだ」
二人に伝えるように呟くユッキー。リクとツトムは、その言葉に表情を引き締めた。
「よし、行くよっ!」
リクのかけ声と共に、4人はゲートを超えた。
ゲートを抜けた先は、森林地帯だった。
「ここがミッションエリアか」
周囲を見回しながら呟くリク。
「リッくん、上空にいると狙われるから降下しよう。ツトムのジプシーも下ろさないと」
「うん、分かった」
二人はゆっくりと高度を下げ、ツトムが降りられる高度になると、ジプシーの手を離した。
音を立てて着地するジプシー・アベンジャー。更にその周囲に、ダイバーとビームマスターが着地し、周囲を見回す。
「周囲に敵は居ないみたいだね」
着地したジプシーが周囲を見回しながら呟く。
「えっと、目標のコンテナがあるのは、情報によるとあっちの方向みたいだね」
そう言って方向を指さすビームマスター。
「よし。じゃあ早速行ってみよう」
ビームマスターが示した方向へ歩き出すダイバー。それに続くビームマスターとジプシー。
やがてしばらく歩いていると……。
「あ、ねぇ二人とも。あそこ」
不意にツトムのジプシーが近くにある小高い丘を見つけた。
「あそこから周囲を見渡せないかな?大まかな位置しか分からないし、あそこからならコンテナを見つけられるかも」
と、提案をするツトム。
「よし、行ってみよう。但し見つからないようにね」
そんなユッキーの言葉に3人は頷いた。
そして3人の機体、ダイバー、ビームマスター、ジプシーの3機は、丘から顔だけを出すようにして周囲を見回す。
「あっ。……リク、あそこ」
そして、リクと一緒に居たサラが目標を見つけその地点を指さした。
丘の、彼等から見て2時の方角。丘から少し離れた森の中に、1箇所だけ開けた場所があり、そこに銀色の大きなコンテナと、それを守る『リーオーNPD』を呼ばれる量産型ガンプラの姿がある。その数5機。
「リッくん」
「うん。きっとあれだね。でも、護衛が5機も居るのかぁ」
「やっぱり、5機もいるとしんどい?」
と問いかけるツトム。
「うん。俺達もやっぱりGBN始めたばかりだからね。どうしよう」
「「う~~ん」」
リクの言葉にユッキーとツトムはしばし頭を捻る。
「そうだな~。こういう時は二つの方向から同時に仕掛ける、とか?」
と、二人に提案するツトム。
「それって、どんな風に?」
「え~っと、僕のアベンジャーとリク君のダブルオーは接近戦が得意だし、僕達2機が別々の方向から仕掛けて相手を攪乱して、そこをユキオ君のビームマスターが支援する、ってのはどうかな?」
「成程。うん。良いと思う」
「だね、それで行こう」
ツトムの作戦に頷くリクと、更に同意するユッキー。
こうして、彼等3人の初ミッションを成功させるため、彼等は動き出した。
彼等は、護衛のリーオーに気づかれないように、静かに近づいていった。彼等は殆ど3方向から攻める形となる。
「ユッキー、ツトム。俺は予定の場所に着いたよ。そっちはどう?」
「こちらユッキー。狙撃ポイントに着いたよ。……何だがMS小隊っぽいね」
「こ、こちらツトム。こっちも準備OKだよ」
リクとツトムのダブルオーとジプシーが木々の影からリーオーたちの様子を伺い、ユッキーのビームマスターは2人から少し離れた所で待機している。
「よしっ。それじゃあ、三つ数えたら行くよ?」
「うん」
「わ、分かった」
リクの言葉に頷くユッキーとツトム。ツトムは今回が初めての戦いとあって緊張気味だ。
「行くよ。3、2、1。ゴーッ!!」
リクが叫んだ次の瞬間、林の中からダイバーとジプシーが飛び出した。
こうして、ツトムの初ミッションが始まった。
だが、彼等にこの先、大きな運命が待ち受けている事を知る由は無い。
物語はまだ、始まったばかりなのだから。
第1話 END
楽しんで頂ければ幸いです。感想や評価など、お待ちしてます。