───目を、開ける。
己の全力を持って、ジル・ド・レ達を退けたブラストアッパー。
忠臣はというと、爆炎の巻き添えになりながらも、なんとかカードにならず、生きていた。
土壇場で、月夜叉から貰っていた【宇宙連合軍 ステルス迷彩】を起動し、体を覆うことによって、爆炎からのダメージをある程度カットしていたのだ。
「ぐ…ぬ…。」
だが、右腕を切り落とされたために、右肩からの出血が激しい。
傷口も爆炎で焼かれたことで、多少止血はできたのだが、あと少しでも放置されれば即座にカードとなってしまうだろう。
「オイッ!忠臣!…ぐっ。」
ブラストアッパーが助けに入ろうとするが、すでに身体に【エナジー】(生命力のようなもの)はほとんど残っておらず、そのため、回復用のカードも使えない。
(このまま、終わんのかよ…!)
その時だった。
無数の足音が、階段を登る音がする。
後続部隊だ。
デュノア伯が忠臣達を見つける。
「なんと!間に合わなかったか…!漢衆!彼らの治療を!」
デュノア伯が号令を上げると、後続部隊のうち何人かが忠臣達を担架に乗せ、回復カードをかけるなどして監護する。
彼らは、【祭りの粋!オトコの手筒花火!】というカードより実体化されたカード達。
彼らは、火事対策などから担架や、怪我人の取り扱いについてはよく学んでいた。
デュノア伯は周辺調査を行うものの、【全翼飛将 グライフ】は既に飛び去ってしまっていて、なんの手がかりをも掴む事は出来なかった。
忠臣達は【聖女の親友 修道女マリー】、【楽団員 アルプ】、【保健室の救急セット】と言ったカード達により、10時間程の治療を行うことで、なんとか回復することができた。
「もう出血は止まりましたが、エナジーを補給しなければ血液は戻りませんので、予後には十分に気を付けてください。」
忠臣は修道女マリーから、【エナジー缶】を手渡された。
「感謝する。」
(四肢の欠損も時間をかければ治るのか、回復カードというものは。)
忠臣にとっては、驚くべきことであった。
ここで戦争をするとして、底なしのエナジーを持つ金枠が、大量の回復カードを持てば、もう勝利したようなものだ。
負傷兵は全て五体満足の状態まで回復することができるのだから。
病院から外に出る忠臣。
まだ、ブラストアッパーは治療中だ。
「おや…?彼は…。」
帽子を被った金髪の男性が、忠臣を見つけた。そのまま忠臣に近づいて、話しかける。
「おーい!君!俺だよ、覚えてないか?」
「む、貴様は…。」
話しかけてきたのは、エンフィールド。
【武器商人 エンフィールド】であった。
忠臣は刀を抜いた。
「待ってくれよ。ミスター桜華。今回はやる気じゃないんだ。事を荒立てるつもりはない。」
エンフィールドは身振り手振りを駆使して、戦闘意欲がない事をアピールする。
だが、忠臣としても、一度殺されかけた相手を信用するわけにはいかない。
「…信用できんな。それにしても、よく回る舌だ。」
「切ってやろう。近う寄れ。」
「遠慮させてもらう。あと、今回の話は内密なんだ。場所を変えよう。」
「よかろう。」
忠臣達は路地裏へと移動した。
忠臣からすれば、戦闘になるにしても、路地裏のように逃げ場がない場所であれば、村正の力でエンフィールドを始末することができるからだ。
「ミスター桜華。アンタが金枠だって事、俺は知ってる。だから、今回は橋渡しをしに来たんだ。」
「ふむ。詳しく。」
「金枠のカードは殊に、レジスタンスにとっては重要な資源。遊ばせておくわけにはいかねぇ。ミスター。アンタも同様にな。」
「だが、アンタには…やってもらわなきゃならないことがある。まだ名が知られていない金枠は貴重なんだ。」
「【蒼王宮】が最近、地下で妙な動きをしている。調査なのか、罠でも仕掛けているのか、それはわからないがな。」
「だが、もしかすると、【封印】をした強力なカードを探してる可能性がある。」
【蒼王宮】が地下世界で活動していること。これについては、ブラストアッパーとの初対面の際に、聞かされていたことだ。
だが、【封印】とは…?
「【封印】とはなんだ。」
「ああ、知らなかったか。【封印】ってのは、あまりに強力なカードが使用される事を恐れ、地下深くに【封印】する行為さ。」
「【連合宇宙軍 サテライトキャノン】、【対消滅ロングレンジライフル Hum-Buster】、【必殺!滅殺!超重力子砲 G-バズーカ】が【封印】処理を受けた主なカードだ。」
「…俺がロングレンジライフルを持ってたというのは、誰にも言わないでくれよ?狙われてしまうからな。」
「いいだろう。」
忠臣は適当に返事しておいた。
「というわけだ。ミスター。カードが封印されている地下で活動する、【蒼王宮】がきな臭い事はわかったろう?」
「アンタには、【蒼王宮】が地下でやってる事を調査して欲しい。十中八九、【封印】されたカードの回収だと思うけれどね。」
「対価を言え。商人。」
「…そのかわり、オレはアンタが金枠だとバレないように裏から手を回す。」
「…ふむ。よい。ちょうど暇をしていたところだ。手伝ってやろう。」
「話が早くて、助かるよ。ミスター。」
ここに、二人の契約が結ばれた。
「偵察任務の人員に、アンタを紛れ込ませておく。アンタがレジスタンスに所属している限りの契約だ。」
「了解した。対価の分は実力にて、示して見せよう。」
日は暮れる。
何時かの日とは、場所も、敵も、仲間も違う、そんな日だった。