#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

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桜華 アンダー・ザ・屍(しー)-2

 ───目を開ける。

 

 忠臣はブラストアッパーと、レジスタンス本部、【箱庭石】の一室へと集まっていた。

 偵察任務のブリーフィングを行うためだ。

 

「えー、今回の任務の内容をお伝えします。」

 

 まとめるのは、暴動鎮圧にも協力していた益荒雄、デュノア伯。

 

「あなた方【5人】には、先週、特に【蒼王宮】の者達が作業をしていたところへ赴き、偵察を行なっていただきたい。」

 

 そう、5人。

 今回の作戦は、忠臣とブラストアッパーを含めた5人で当たることになる。

 

「点呼を取ります。桜華忠臣。」

 

「うむ。」

 

「ブラストアッパー。」

 

「おう。」

 

「デリンジャー。」

 

「ハイ。」

 

「おにいちゃん。」

 

「あ…はい。」

 

「やめるちゃん。」

 

「うーっす!」

 

「よし、全員いますね。」

「今からあなた方をTele-Passにて、先程言いました作業現場へと転移させます。」

「いいですか?猶予は3時間です。」

「前回のブラストアッパーが襲撃されたケースを踏まえ、3時間後にあなた方は、強制的にこちらへと帰還することになります。」

 

「やべーなっ。危険すぎてウケる。」

 黒髪の現代的な装束をした少女、【#夜行犯罪特区 #やめるちゃんアゲ】が声を上げた。

 

「アルバイトじゃすまねぇぞ。不安なら帰れ。」

 

 金髪の青年、【銀行強盗 デリンジャー】がやめるちゃんを威圧する。

 

 紫色の髪、赤と青のオッドアイが特徴な少年。

 【おにいちゃん ぎゅーってして】はひたすら俯いて、標的にならないようにしているようだった。

 

「支給品として、【エナジー缶】を3つ。使い切りですが、【保健室の救急セット】も持っていってください。」

 

 忠臣達は物資を取得し、バックパックへと詰めた。

 詰め終わると、指の先から身体が透明になっていく。

 Tele-Passによる転移の予兆だ。

 

「ブラストアッパー。指揮は貴様に任せる。この任務とは長い付き合いだろう?」

 

「責任重大だな。でもまぁ、俺に任せてくれ!危険な場所は多少知ってるしな。」

「他のみんなもそれでいいか?」

 

「おう。」

 

「反対なーし。」

 

「…わかりました。」

 

 忠臣は、今度も個性的なメンバーと共に冒険に出向くのであった。

 

 ───目を開ける。

 

 松明が土の壁を照らす。

 木が天井を支え、そこかしこにスコップが落ちている。

 

 ここは、炭坑に似ていた。

 

「ブラストアッパー。」

 

「ああ。みんな、俺についてきてくれ。」

 

 ブラストアッパーが先導する形で、忠臣達は坑道を進む。

 

「なー、偵察っつってもさー。何も見つかんないじゃん。意味あんの?」

 

 ブラストアッパーについていき、誰とも出会わないまま、20分程度歩くと、ついにやめるちゃんがぼやき出した。

 

「今んとこ、真っ直ぐ移動してるだけじゃねぇか。」

 

 デリンジャーも追随した。

 

「みんな、これを見ろ。」

 

 ブラストアッパーは、携帯端末型の【液体金属ロボ Metadoll-774】を忠臣達に見せた。

 

 そこには同心円状のレーダーのようなものが写っていて、中心の点の近くに、赤い点が点滅していた。

 

「うそ、これ液晶?ぱなくね。」

 

「液体金属ロボは、ほぼなんでもできるからな。レーダー代わりにするのもわけないんだ。」

「説明するぞ。このレーダーの中心が俺達。そして、赤い点がカードを示している。」

 

「ふむ、なるほどな。我らの近くに今、カードが存在しているということか。」

 

「へー、たまげたな。」

 

「すごい…。」

 

 ブラストアッパーは坑道の壁を、自慢の拳を振るって破壊した。

 

「よし、思った通り、此処の壁だけ薄かったな。この奥に【蒼王宮】の奴らがいるに違いない。」

 

「ま、待ってください。行く前に、その、僕を先頭にしてください。」

 

 ブラストアッパーの言葉に割り込んで、おにいちゃんが立ち塞がった。

 

「僕の固有効果がもしかしたら皆さんを巻き込んでしまうかもしれません。先頭でいかせてください。」

 

「わかった。じゃあ、俺は二番手だ。ガキンチョ、危なくなるかもしれないから、きちんと俺の指示には従ってくれよ?」

 

「もちろんです…!」

 

 先頭から、お兄ちゃん、ブラストアッパー、デリンジャー、やめるちゃん、忠臣の順番で突入することにした。

 

(…これは…。)

 

 そこで忠臣達が見たのは、予想外の光景だった。

 

「なんなんですか…これは…!」

 

 黒の部屋。

 

 自身が立っているのかどうかもわからないほど、地面は黒く染められていた。

 

 赤と青のラインが、心臓の鼓動のような間隔で壁に走る。

 

 チューブのようなモノで磔にされた、19人の、人間たち。

 ときどき、エナジーらしき緑色の奔流が管の中を通る。

 

「…全員、ぴくりとも動かねぇ。」

 

 デリンジャーが飛び出して、彼らの脈を測る。

 

「まるで、死体みたいだ。」

 

 死体のように、呼吸もせず、磔にされている彼ら。

 

 忠臣は、彼らの中に、ひとつ見知った顔があった。

 

 それは、忘れることのないモノ。

 

「───これは、我か。」

 

 そう、桜華忠臣が、壁に磔にされていた。

 

「…気味が悪いな。」

 

「同感。バズる前に凍結されそー。」

 

「…うぷっ。コクリコまで…。」

 

 おにいちゃんも見知った顔を見つけたようだ。

 

「知り合いか?小僧。」

 

「妹です…。」

 

「どうにか助けられねぇかな。拘束具が全く壊せねぇ…。」

 

「おそらく、殺してカードに変えた方が速いだろう。撃ってみるか?」

 

「ここ危険じゃん?音出すとかやばくね?」

 

(…。)

 

 何もかも不明。

 故に、忠臣はブラストアッパー達に確認を取った。

 

「おい、貴様ら。方針を決めるぞ。静粛にせい。」

 

 皆が押し黙る。

 

「ひとつ。ここで引き返し、応援を呼ぶ。」

 

「ひとつ。ここの全てを調査する。」

 

「ひとつ。人員を分け、この二つを行う。」

 

「これらの方針のうち、ひとつに絞り、行動を行うことにする。」

 

 

「…オレは、引き下がれねぇ。なんか、すごくモヤモヤするんだ。」

 と、ブラストアッパー。

 

「俺もだ。それに、引き返すにしても、まだなんの情報も得てねぇだろ。」

 と、デリンジャー。

 

「…妹を、コクリコを、放ってはおけない。」

 と、おにいちゃん。

 

「調査は手分けした方がいいっしょ?私も残るワ。」

 と、やめるちゃん。

 

「よし、方針は決定した。我らは制限時間まで調査を続行する。」

 

 この時点で、既に転送してから30分が経っていた、

 

「我が見張りをしておく。貴様らは入念にこの部屋を調べよ。」

 

 忠臣の鶴の一声にて、皆が調査を行う。

 

 調査の結果、どうやらこの部屋は、奥に進むための扉が無く、密室であるらしいことが判明する。

 

「ふむ。」

 

 だが、部屋の中央に窪みがあり、それがワープ装置なのではないかとも。

 

「村正を起動する。」

 

「臣ぴーサイコーじゃん!」

 

 【千血妖刀 牛鬼村正】を起動すると、電力が復旧。

 ワープ装置らしきものはその機能を取り戻した。

 

「…ここに入ったら、戻ってこれぬかもしれん。」

 

「忠臣。アンタの心配はもっともだが…大丈夫だろう。Tele-Passの転移範囲はそれこそ無限だ。」

 

「であれば、行くぞ。」

 

「おー!」

 

「お、おー!!」

 

「少しワクワクしてきたな。」

 

 初めにブラストアッパーが転送されたことを確認し、ワープ装置の中に飛び込む忠臣達。

 

 …この先にあるものは、知り得てはいけないこと。

 

 今の世界の常識を、ひっくり返すもの。

 

 禁忌の蓋を破ったことを、彼らはまだ、知らない。

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