#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

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桜華 アンダー・ザ・屍(しー)-3

 ───目を開ける。

 

「…ここは。」

 

 地面は───ない。

 地平線は───ない。

 重力は───ない。

 

 そこは見渡す限り───【黒】しかない世界だった。

 

 男達は浮遊していた。

 

「───ヨウコソ、ボクノ、【#コンパス】ヘ。」

 

「ボクノ名ハ、バグドール。」

 

 電子音がこだまする。

 それを始点に、CとP、二つの文字を弄った黒き構造体がさっと現れる。

 

 視界に、ノイズが走る。

 空間に走る次元の裂け目は、テレビの砂嵐の如くだった。

 

「オマエ達ガココニ来ルノハ、モウスコシ後ダトオモッテイタゾ。」

 

 "いつか見た光景だ"。

 

「【#イレギュラー 亡国の王】。」

 

 電子音は忠臣に告げた。

 忠臣の、真実を。

 忠臣がイレギュラーであることを。

 

 

 桜華忠臣は、思い出した。

 

(この世界はすべて複製。)

(テストケースだ。)

(バグドールの箱庭だ。)

(隔離されていたのだ。)

(全ては、イレギュラーを作るためだった。)

(初めから、今に至るまで我らは、データの泡だったのだ。)

(全ては演算だ。)

(今からは精算だ。)

 

 身体に紋様が走る。

 黒き紋様だ。

 忠臣を飲み込んで、染める。

 

「───忠臣ッ!」

 

 仲間の声も、届かない。

 元々、忠臣は潜在的な敵であった。

 歪の地を運営するための手駒だった。

 

 あの憎き、【アダム・ユーリエフ】を捕まえるためだけの。

 

「サア、タチアガレ。亡国ノ王ヨ。」

 

「正常ナ機能デモッテ、今一度ボクノ役ニタツガイイ。」

 

 

 

 ───忠臣の身体が、"割れる"。

 

 外殻が剥がれ始める。

 

 ぽろぽろと、崩れて消える。

 

「aあ。そうdeあったna…。」

 

「わreは初meカラ、コの"はらわた"の奥に、飼っteいたノだ…。」

 

 角が。

 竜の角が。

 爪が。

 長き爪が。

 腕が。

 四の腕が。

 顔が。

 地獄の悪魔が如く。

 

 人ではない。

 

 黒き体毛。

 緑の紋様。

 歴史に語られる、ハヌマーンのような。

 神の獣であった。

 

 ───黒緑の、その怪物の名は。

 

 

「G u R e e e e e e e e e e e e e T o ! ! ! !」

 

 

 G-R-E-E-T。

 

 グリート。

 

 神敵。

 

 忠臣だったモノは、その四腕で空間を暴力的に引っ掻き、時空の裂け目を開ける。

 無限のエナジーが為せる技だ。

 

「【アダム・ユーリエフ】ヲ、殺シテキナサイ。」

 

 発破を受け、そこから、飛び立つ。

 

「…!待てよ!忠臣!」

 

 ブラストアッパー達もこれを機に、裂け目へと突入した。

 

 

 

 

 

 …静寂が、またしてもこの空間に訪れた。

 

 空間に表示されたバグドールの【ホログラム】が消える。

 

 元よりこの場には、来訪者たる忠臣達以外の人物は、誰も存在していなかったのだ。

 

 …彼らを、除けは。

 

 地面に置かれた映写機を破壊するハンマー。

 

 すると、空間はただの白い部屋へ戻る。

 

 ハンマーの持ち主は舌打ちする。

 

「…バグドールが最後に残したホログラムか…。クソっ。奴め、"消える"前にこんなモノを用意していたとはな…。」

 

 【連合宇宙軍大尉 ジャスティスハンコック】。

 

「…空間遮断機能か、これは。」

 

 映写機の中に仕込まれていたのは、【ドリーム☆コンパクト】。

 本来であれば、魔法少女が人払いの結界を展開するための【カード】である。

 

「この【カード】のせいで、一体何がやられていたのかわからんかったな…。」

「…【少年】の守衛を行うだけで満足していた、俺のミスだ。」

 

 ジャスティスは部屋を後にし、【少年】の近くへと戻る。

 

 ただの一般人に見える少年が、壁を背に眠っていた。

 時が違えば、ゲームを遊んで悔しがったり、笑ったりするような、そんな普通の少年だ。

 …彼は眠っている。

 これからも、永遠に眠り続けるだろう。

 

「…アダム、頼んだぞ。」

 

 ジャスティスは【蒼王宮】騎士団長の名を口にする。

 

「お前が【voi doll】を見つけられれば、もしかしたら───。」

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