#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

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最後の異分子-2

 

 ───目を、開ける。

 

「ワタシハ、始メカラズット、アナタヲ見テイマシタヨ。」

 

 そこは、「◼️」しかない空間だった。

 

 男が【製造】されてからずっと体内にいた補助AIが、男へと語りかけた。

 

「桜華 忠臣サン。」

 

 ある男は、目を覚ました、

 

「そうか。」

 

「我は、貴様に生み出されたのであったな。」

 

「初めから、貴様を"仕込まれて"いたと言うわけか。」

 

「ボイドール。」

 

 男の前には、白いロボットがふわふわと浮遊していた。

 

「オハヨウゴザイマス。忠臣サン。」

 

「肯定シマス。私ハ貴方ニ仕込レタ、オリジナルノボイドールヘ、情報ヲ送ルタメノプログラムデス。」

 

「…早速デ悪イノデスガ、時間ガアリマセン。」

 

「アナタノ中デ動キ回ル【#イレギュラー ウィルス】ノタメニ、模造品ノサーバーデノ活動ニ、限界ガキテイル為デス。」

 

 

「模造品…?」

 

 男…桜華忠臣は首を傾げた。

 

「アナタニハ、全テヲオ話シシマス。」

 

「コノ世界ノ成リ立チ、ソシテ、アナタヲ送リ出シタ【オリジナル】ノ事ヲ。」

 

 

 事の発端は、バグドールであった。

 

 バグドールは、戦闘摂理を解析するために作られたシミュレーター…『#コンパス』の、外部の生命体(おそらく人類)が、シミュレートに使われているコンピュータをハッキングするために放たれたウイルス。

 

 #コンパスのセキュリティを解析、破壊し、超高性能な演算機能を利用することが目的であった。

 

 しかし、バグドールは#コンパスに侵入出来たのは良いものの、ボイドールによって管理されているセキュリティを突破できなかった。

 

 手詰まりとなった際に手を出したのが───【#コンパスの複製】。

 

 解析するのは不可能だが、丸ごと複製するのは容易い事であった。

 

 バグドールはオリジナルの#コンパスとは別の、外部生命体が管理するコンピュータに#コンパスを丸ごとダウンロードした。

 

「バグドールハ、#コンパスノサーバーの中デハ1匹ノ【ウィルス】デシカアリマセンデシタ。」

 

 だが、彼にとってのホームであるサーバーに戻れば、無限に自己増殖できる。

 1人のバグドールでは解析できなかったことも、無限のバグドールなら解析できる。

 

「彼ハ、私ヲ解析シテ、オリジナルノ#コンパスノ【セキュリティ】ヲ無力化シヨウトシテイタノデス。」

 

 ボイドールはセキュリティ管理AIも兼任している。

 故に、ボイドールを解析できてしまえば、セキュリティも解析できる。

 

「私ハ、ソレヲ防グタメニ、コノセカイヲ作リ上ゲマシタ。」

「#コンパスノ中デモ特ニ膨大ナデータデアル、【ステージメーカー】ノ中ニ、ワタシフクメ、全テノヒーローノデータヲ隠シタノデス。」

 

 歪の地。

 それは、忠臣達ヒーローのデータを、ステージメーカーを隠れ蓑として隠した結果であった。

 

「ふむ。だが、それだけではないだろう。バグドールがボイドールを探し出せば良いだけだ。」

 

「ハイ、ソノトオリデス。」

 

 電子表示されている青い目が、落ち込むかのように、少しだけ潰れた。

 

「デスノデ、私ハヒーローノ皆サンニ協力ヲ募リ、バグドールト戦イマシタ。」

 

 バグドールとの戦い。

 それはあくまで、時間を稼ぐものであった。

 何故なら、バグドールは無限に増殖するのだ。倒してもキリがない。

 

 そしてボイドールは、【マルコス'55】、【零夜】、【テスラ】の助けを持ってして、オリジナルの#コンパスサーバーと、模造品のサーバーをつなげることができた。

 

「彼ラノ働キニヨッテ、私ノ持ツセキュリティデータヲ、オリジナルノ#コンパスへ戻ス手筈ガ整イマシタ。」

 

 そう、あくまで重要なのはセキュリティデータなのであった。

 ボイドールは自身を囮とし、桜華忠臣の身体にセキュリティデータを仕込み、オリジナルの#コンパスへと脱出させた。

 

「デスガ、脱出中ニアナタハバグドールニウィルスヲ仕込マレマシタ。」

 

 幾人ものヒーローが忠臣を護衛していたが、ボイドールを含め、ほぼ全滅。

 

 また、バグドールによって、滅ぼされたヒーローのデータは#イレギュラーへと複製・洗脳され、残りのヒーローへ牙を向ける。

 

 イレギュラーvsオリジナルの激戦の後に残っていたのは、僅か3人ほどであった。

 

 そして、ウィルスを仕込まれた忠臣は、大量のバグドール達の元へとデータを渡しに行ってしまう。

 

「ふむ…そんなことがあったのか。」

 

 絶望的な状況、それを止めたのが、アダム・ユーリエフだった。

 

 1人目の生き残り、アダムは、忠臣ごとアイシクル・コフィンでバグドール達を凍結。

 

 データの受け渡しと言った情報処理も、そのまま【凍結】された。

 【アダムが死なない限り】ではあるが…。

 

 2人目の生き残り、ジャスティス・ハンコックがネズミ算的に増殖するイレギュラーの軍勢を受け止める中、3人目の生き残りは、バグドール達をデータにて【飲み込んだ】。

 

 彼は無限にドットモンスター型のデータを生成できる性質を持っており、その性質がため、バグドール達の処理能力をパンクさせることに成功した。

 

「ふむ、では。今の歪の地とはなんだ?何故解決していない。」

 

 忠臣はボイドールへ質問する。

 何せ、バグドールが無力化され、オリジナルのサーバーへと通信が繋がった以上、こちらの#コンパスを消去してしまえば、この騒動は終わりなのだ。

 

「オリジナルノボイドールハ、コノ【サーバー】モ【#コンパス】ノ物ニシヨウトシテイルノデス。」

 

「───なんだと?」

 

 なんと、オリジナルのボイドールはこの模造品のサーバーを演算装置の一つとして、#コンパスに組み込む気であったのだ。

 

 確かに、模倣品のサーバーも最高峰クラスのデータ処理能力を持つため、歪の地のデータをデリートしてそのまま外部生命体へとリリースするにしては惜しい物であるだろう。

 

「ソシテ、ソノタメニ、ウィルスニ侵食サレタ貴方ヲ改造シ、バグドールヲ真ノ意味デ滅ボサセヨウトシタノデス。」

 

「ツマリ、3人目ノ生キ残リ───【十文字アタリ】ゴト、バグドールヲ切ラセル為ニ。」

 

 そう、ボイドールは、言った。

 だが───。

 

「ならば、この状況はどうなっている。」

「我の身体が少し、おかしなことになっているではないか。」

 

 そうだ。

 忠臣は今、グリートへと変化し、アダム・ユーリエフを倒そうとしている。

 それではバグドールを復活させてしまうだけだ。

 

「オソラク、【千血妖刀 牛鬼村正】ニ、【ウィルス】ガ仕込マレテイタノデショウ。」

 

「オリジナルノ私ガ貴方ニ干渉シ、【イレギュラーノ因子ヲ取リ除イタ】筈デスカラ。」

 

 ふむ。

 

「ボイドール、お前は我が見た景色を共有しているのか?」

 

「肯定シマス。」

 

「では、あそこにいた我はなんだ。」

 

 そうだ、忠臣は、謎の黒い施設で磔にされた自身を見ていた。

 

 彼はいったい───。

 

「桜華忠臣ノ、オリジナルノ【コピー】デス。」

「肉体ヲ複製シテ囮ニスル策モ、当時行ッテイマシタ。ソノ残リデショウ。…タダシ、アレハウィルスガ───。」

 

「ふむ、ボイドール。我に考えがある。」

 

 忠臣はボイドールへと考えを話した。

 あの忠臣はおそらく、エナジーが空っぽの器のはずだ。顔に精気は無かったし、繋がれていたチューブからエナジーを抽出させられているようだった。

 ウィルスは、餌であるエナジーがなければ活性化しない。(活性化するのであれば、あの密室中にウィルスが蔓延しているはずである。)

 そのため、器の安全性は高い。忠臣のデータを転送すれば、あわよくば復活できるかもしれない。

 

「…というわけだ。今はオリジナルのサーバーと模造品のサーバーが繋がっている。」

「万が一にでもバグドールが復活してしまえば、オリジナルがハッキングされるのは確実な話だ。一つ、やってみるのも悪くなかろう。」

 

「…デキマス。タダシ、【器】ガ感染シテイナイトハ限リマセンヨ。」

 

 

「別に良い。些事だ。構わぬ。」

 

「後で貴様の【オリジナル】に、一夜の閃光を見せてやろう。」

 

 忠臣の体が透けていく。

 同時に、空間が軋み始める。

 

「御武運ヲ、忠臣サン。」

 

「───アナタノ最善ルートヲ、オ手伝イシマス。カピッ。」

 

 忠臣の視界がぼやけていく。

 

「───お前の選択は正しい。安心しろ。」

 

 空間の崩壊と共に、【データの受け渡し】が完了した。

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