───目を開ける。
「総員、突撃ーーーッッ!!!」
忠臣の号令によって、金枠のカード…【ヒーロー】達は一斉にエンフィールドへと走り出した。
「…ところで、貴様らは一体どうやってここまで来たのだ?」
忠臣はフルアーマー達に聞いた。
「月夜叉の奴の所でエナジーラインを結んだだろ?エナジーラインはエナジー供給元まで繋がってんだよ。」
「はい。それを辿って自分達はきました。」
「途中でワープしすぎで大変だったけどな!大将は流石だぜ!」
今度はフルアーマーが忠臣へ聞く。
「じゃあこちらも質問をば、彼らは一体?」
忠臣は刀を鞘に収めながら答えた。
「奴らは金枠のカードだ。ウィルス…バグドールにより捕えられていた、な。」
「月夜叉の分のエナジーラインが切れておったからな、試しに我が一体のみ、実体化させてみた所───金枠が金枠を実体化させ連鎖しおった。」
「それで今のようになったのだ。」
「…ウィルス…?」
フルアーマー達は、何が何だかわからないようであった。
「…まずは、そこからか。」
忠臣はフルアーマー達にこの世界のことや、バグドールのこと、イレギュラーウィルスのことを話した。
「フン、それじゃ今ここにいるこいつらはバグドールとやらに負けた奴らってことか?」
「おい、【ヒーロー】ん中にはうちの弟子もいるんだぞ!もうちょっと言い方をだな…。」
「しかし、それだと…なんで【カード】であるエンフィールドさんがウィルスにかかっているんですか?」
忠臣は答える。
「イレギュラーウィルスは、ただ浴びせられたりすることで効力を発揮するものでは無い。」
「【エナジー缶】といった【カード】のエネルギー源に感染することで効力を発揮する。」
「おおかた、エンフィールドはこの部屋から抽出されたバグドール印のエナジー缶を摂取していたのだろうよ。」
(レジスタンスの所にあったエナジー缶食中毒とやらも、これの影響であろうな…)
この部屋には、ヒーロー達が磔にされていた。
それは、【エナジー缶】に載せてウィルスがついたエネルギーをレジスタンスへと運ぶためだったのだ。
「じゃあ、こちらの金枠の方々は?」
フルアーマーは今もエンフィールドと戦っている【ヒーロー】達を指差した。
彼らはもともとこの部屋にとらえられており、エナジーを搾取されていたように思われる。
「実はな、奴らもイレギュラーウィルスに感染している。」
「ウィルス入りエナジーの供給源は奴らだ。」
すると、忠臣は軽く衝撃的な内容を言い放った。
「えっ!?」
「おいおい、大将。じゃあなんであいつらは俺たちに協力してるんだ?」
「総統、お前の話を聞く限り、イレギュラーはバグドールの意志のままに動くんだろ?」
そこで、ふっふっふっ、と忠臣は笑った。
「ふはははは。実はな、奴ら、【免疫】をつけおった!」
「【免疫】…?そりゃつまり…。」
「ああ、あの【ヒーロー】どもは少量のイレギュラーウィルスなら物ともせん。」
忠臣が自由気ままにあちらこちらを冒険している最中、ヒーロー達は自らのウィルスに打ち勝っていたのだ。
「ここは奴らに任せ、我らは【十文字アタリ】を倒しにいくぞ。」
忠臣は話は終わりだと言わんばかりに、部屋の中にある転移地点へと歩き出す。
「たしか、そいつ、処理能力が低下したバグドールを飲み込んだ【ヒーロー】でしたか?」
「俺、なんか聞き覚えがある気がするなぁ…。」
「ここまできたら、最後まで付き合ってやる。いこうぜ、総統。」
三者三様の反応を見せつつ、忠臣達一行はワープゾーンへ乗り込んだのであった。
「な、俺の弟子連れてってもいいか?大将!」
「駄目だ。置いていけ。エンフィールドは並々ならぬ相手だ。」
「そんなぁーーッ!」
ただを捏ねるゲームバズーカを尻目に、転送は完了した。
───目を開ける。
そこは、壁が白く塗られた、いかにも無機質な部屋だった。
「ボイドールの情報から察するに、おそらくこの奥におる。」
忠臣は、白い扉のドアノブを回して奥へと入った。
フルアーマー達もそれに続く。
そこは、前の部屋と変わり映えしない、白塗りの部屋だった。
扉がないところぐらいしか変化したところはない。
白い壁に、金髪の少年が寄りかかって眠っていた。
「───来たか。忠臣。」
「いや───【イレギュラー】。」
…忠臣を待ち構えていたのは、白き巨兵。
宇宙連合軍のアーマーに身を包んだ、【連合宇宙軍大尉 ジャスティス・ハンコック】。
「今は違う。わかるだろう?ジャスティス。」
「我には今、一片たりともイレギュラーのウィルスは入っておらぬ。」
ジャスティスは無言でハンマーを構えた。
「…お前が本物か、偽物であるかは問題では無い。俺は常に、考えうる最悪のケースを対策しているだけだ。」
「そこまでいうならば、この俺に殺されて見せろ。お前のカードをオレが実体化すれば、お前にウィルスが仕込まれていたとしてもオレのエナジーである程度は緩和できる。」
「───さぁ、どうする!」
ジャスティスは二択を忠臣に突きつける。
ひとつ、ここで死に、ジャスティスに自身のカードを任せる。
ひとつ、ここでジャスティスを倒し、問答無用でアタリを切る。
「ふむ、そんなもの決まっておろう。」
忠臣は自身の刀を鞘から取り出し───。
───その腹を、切り裂いた。
「忠臣さん!」
「おい、大将!あんた何やってるんだ!」
「やめろ!フルアーマー、ゲームバズーカ。奴が決めたことだ…!」
忠臣へ駆け寄ろうとする二人をスコーピオンが止める。
忠臣の腹は切り裂かれ、その顔は青くなっていた。
だが、口は三日月に笑っていた。
「───これが我の覚悟だ。」
「───見事だ。」
介錯が如く、ジャスティスの持つ巨大なハンマーが忠臣の体を叩き潰す。
忠臣はカードとなった。
「忠臣、すまなかったな…。」
ジャスティスは忠臣のカードを持つと、自身のエナジーを費やして実体化させる。
忠臣の身体が新しく組み上がった。
「良い、気にするな。些事だ。」
忠臣は刀を抜き、少年へと突き立てた。
「十文字アタリを斬るぞ、ジャスティス。」
首筋に刀身が当たる。
「…ただ殺すわけではあるまい。カードに戻すだけでは、バグドールは倒せん。」
厳かな雰囲気が、辺りに満ちる。
「問題ない。"そのため"に我が選ばれたのだ。」
「我が真の力を───解放する。」
眼(まなこ)が二つ、煌(ひか)る。
忠臣の四肢が指先から粒子へと変わってゆく。
「これが我の固有効果───。」
一対の竜の翼。
黒曜石が如く光る尾。
翠の魔力が、彼の爪となり、刀となり、兜となる。
翠の魔力の具足を身につけた、竜鎧武者。
魔力動力式帝皇武神【翠】。
妖国総統…桜華忠臣。
ここに───降臨。
「我がグリートの力は無限の魔力。」
「電脳風にいうのであれば───【データを分解する、無限の力】だ。」
兜から二つの光がアタリを見つめた。
「で、ではアタリ少年はどうなる!?」
ジャスティスは狼狽した。
「なに、案ずるな。分解といっただろう。バグドールとアタリを初めに分けてから分解してやる。」
鎧がカチャリと音を立てる。
「なにせ、奴こそが今回一番の功労者であるからな───。」
「───妖華帝皇斬ッッ!!!」
両手で刀を握り、振り下ろす───。
単純にして明快なる、忠臣の全力を込めた斬撃。
それは、自身の震脚より得た勢いだけでなく、翼、尾を、それぞれ空、地に叩きつけ、さらなる勢いを得る。
また、無限の魔力が翼より放出され、推進力となった。
「───。」
場が光に包まれる。
翠の炎だ。
炎がアタリを包み込んでいる。
ジャスティスの視線を炎が奪う。
斬撃とは、このように威力のあるものであっただろうか。
何か、神聖な光のように思えた。
「───アタリ…少年…!」
【レトロゲーマー 十文字アタリ】のカードが、地面に落ちる。
───瞬間。
黒き光が、翠の炎を喰い潰す。
炭のようなモヤが場を支配した。
視界が一気に紫に染め上がる。
「───なんだと…!?」
忠臣は驚愕する。
アタリとバグドールのデータの剥離は完璧であり、バグドールだって【アダム・ユーリエフ】の影響で動けなかったはずだ。
「───データ損耗率、99%。」
そこにいたのは、黒きモノ。
「98…56…"0"。修繕完了ダ。喜ベ、オマエタチ。」
「オマエタチノ行動ガ、僕ヲ復活サセルタメノ最後ノピースデアッタカラ。」
バグドール。
電脳の新支配者にして、
忠臣達をイレギュラーにした存在が、ここに降誕する。
「馬鹿な!?アタリが消え失せてもアダムが生きてさえいれば、凍結は続くはずだろう!」
ジャスティスは驚愕しつつ、ハンマーを構えた。
「馬鹿ハオマエダジャスティス。ソノ【アダム】ガ死ンダカラニ決マッテイルダロウ?」
バグドールは笑う。
子供の計算違いを笑うように、低俗なモノを侮蔑する。
「───アダムが…!?」
絶望の知らせが、戸口を叩く…!