#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

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FINAL桜華作戦-2

 これまでのあらすじ。

 

 歪の地───それは元々、【戦闘摂理解析システム #コンパス】をそのままコピーした複製品であった。

 

 複製された#コンパスのセキュリティデータを解析しようとする【バグドール】を前に、複製された側の#コンパスの管理人である【ボイドール】はセキュリティデータを【ステージメーカー】機能の中に隠す事にした。

 

 【ステージメーカー】機能は膨大なデータ量を誇る機能であり、バグドールを一時足止めする事に成功する。

 

 ボイドールはその隙に、#コンパス内に存在する戦闘摂理解析を行うための戦闘員、また、その補助を行う【ヒーロー】と【カード】のデータを実体化させ、大量の負荷をバグドール側のサーバーへとかける。

 

 その負荷は、本来の#コンパスの本体に使われているほどの高性能なサーバーでなければ処理落ちを頻繁に引き起こすほどで、この行動により、バグドールの活動速度は大きく停滞する。

 

 その後、【ヒーロー】達の協力もあり、外部との通信が確立され、セキュリティデータを大元のコンパスへ移すボイドール。

 

 妨害しようとしたバグドールはアダム、アタリの手により封印され、歪の地は【カード】達が生活を営む大地となった。

 

 ───しかし、それだけでは終わらなかった。

 

 皮肉にも、ボイドール達が開けたオリジナルのコンパスへの通信路を使う事によって、バグドールはコンパスに対する侵攻を可能にしてしまったのであった。

 

 バグドールは長い雌伏と幾たびの綱渡りを成功させ、現地の【カード】勢力である【蒼王宮】を崩壊させ、また、自身の封印をも解除する。

 

 これは、その後の話。

 黄昏を超えた夜の話。

 

 

 

 歪の地は阿鼻叫喚に塗れていた。

 

 【レジスタンス】、【蒼王宮】残党、所属に関わらずあらゆる【カード】がイレギュラーウィルスを植え付けられ…。

 

「うあ、あ、あ!あ!あaaaaaaaaa ! ! ! !」

 

 大多数がその思考をバグドールに塗り替えられてしまい、両組織は壊滅必至であった。

 

 だが、一部のウィルスの進行が進んでいないカード達は寄り合いを作り、なんとかバグドールに対して抵抗していた。

 

 蒼王宮にて起きたグリートとの決戦から唯一逃げ延びた、【金枠のカード】───【オルレアンの乙女 ジャンヌ・ダルク】を柱として、だ。

 

「私の存在が、あなた達の役に立つのであれば…。」

 

 金枠のカードは無制限のエナジー供給能力を持つ上、ジャンヌは過去、イレギュラーウィルスに汚染され、その免疫を持っている。

 免疫持ちからのエナジー供給により、彼らはウィルスの進行を遅らせることができた。

 

 抵抗する地は歪の地、内部───羅針盤街。

 奇しくも、忠臣がこの世界で初めて足を踏み入れた地に、彼ら───【新生レジスタンス】は生活していた。

 

「…くそっ!」

 

 レジスタンスの一員であった【聖女の近衛 デュノア伯】は、倒壊したビル街の中、世界の現状に対して苦悶の表情を浮かべる。

 

 レジスタンスのグループは壊滅、散り散りになった仲間を助けることすらできず、ただただイレギュラーウィルスに侵食された仲間と戦う日々。

 

 十分な休息も得られず、新生レジスタンスは心をすり減らしていた。

 

「…招集か。」

 

 今日もまた、サイレンが鳴る。

 何度も聞いた緊急招集だ。

 デュノアは度重なる戦闘で崩れた街の中を走っていった。

 

 ここは司令ビル。

 羅針盤街にある無事なビルを貸し切り、武装などを設置して拠点として使えるように整備した部屋となる。

 

 【聖女の前衛 ジル・ド・レ】は集まった仲間に指令を送る。

 

「【全翼飛将 グライフ】からの通信だ。ここより西方2kmに大量のイレギュラー感染者が確認できたそうだ。羅針盤街の外…【白い境界】より遠くでの物資調達作業は一旦中止とする。防衛に専念してくれ。」

 

「また、液体金属ロボによる旧レジスタンス内での連絡網が機能しなくなった。旧レジスタンス勢力はここにいる者以外は全てウィルスに侵食されたと考える事にする。」

 

「そのため、今回の侵攻ではともかく、次回の侵攻では旧レジスタンス勢力が敵に合流し、大幅な敵戦力の増強が見込まれる。」

 

「…防衛の際には、バリケードを使った戦術を用い、戦力を欠けさせない事を意識してくれ。」

 

「何度も言うが、進行が進んだイレギュラー感染者は【バグドール】の装甲と同質の強力な外骨格を身につけている。その個体との戦闘はなるべく避けるように。以上だ。」

 

 それを告げると、新生レジスタンスのメンバー達はぽつぽつと防衛地点へと移動しに行った。

 

 会議室に1人残されたジル・ド・レは考える。

 

 何をやろうにも、設備がない。

 武器もない。

 

 イレギュラーウィルスの影響か、この地上では、空の青も黒く染まっている。

 

「…。」

 

 三ヶ月。

 彼ら、新生レジスタンスが耐えた日数だ。

 

 それもこれも、仲間がいると思っていたから耐えれていた。

 

 ───だが、連絡を取り合い、協力し、人員を送り、打開を図って…。

 

 そして、協力者は全員死んだ。

 

 残存勢力は98名から12名まで、数を減らしていた。

 

「…ジル。」

 

「レオンか。」

 

 【聖女の前衛 ジル・ド・レ】は、カードと化す前の戦友、【聖女の後衛 銃士レオン】へと返事をした。

 

「なにかあったか?」

 

「旧レジスタンスに存在する兵器の存在が、【ハイカラ盟友忍者-壬生咲みみみ-】による解析で明らかになった。」

 

「…!」

 

「旧レジスタンスの計画をみれば、その兵器はもう一ヶ月前には衛星軌道上に設置されている。時間をかけて使用権限をジャックすれば動作も可能とのことだ。」

 

「その兵器、もしや…。」

 

「ああ、【連合宇宙軍 サテライトキャノン】。」

 

「かつての【第二次抗争】で使われた、レジスタンス殺しの兵器だ。」

 

 ジル・ド・レとレオンはかつての戦いに思いを馳せた。

 第二次抗争は金枠のカードを蒼王宮が手に入れるための戦い。

 そのための露払いとして、サテライトキャノンは使われ───数多のレジスタンス兵の命を奪っていった。

 

「…心強い。あの威力が我々の味方をしてくれるなら、勝利は目前のようなものだ。」

 

 凶兆は、意図せず彼らに降りかかる。

 

「───ん…?ジル、何か音がするぞ。」

 

 地中から轟音がした。

 

「…なんだろうな。地震か?」

 

 それは、まるで、地面を抉り続けているような───胎動!

 

「近づいてきている…。逃げろッ───地中からだ!!」

 

「───ッ!?」

 

 レオンとジル・ド・レは咄嗟に後方へ飛び退いた。

 

「ブラストォォォォォォォォォ───。」

 

「───アッパー───ッ!!!!」

 

 爆発。

 プラズマの黒炎が、ジル・ド・レとレオンを焼く。

 

「が…ひゅ…。」

 

 炎からは逃れられず、気管が焼け、内臓が熱される。

 一つ呼吸するだけで、内側から剣山に刺されたような痛みが神経を暴れ回る。

 死期を察した肉体から力が抜けていく。

 

(…ブラスト…アッパー…か。ウィルスを…くそっ…。)

 

 司令ビルに破壊の限りを尽くしたのは、旧レジスタンスの一員であった、【一撃必殺 ブラストアッパー】。

 配色が反転し、黒と白のみに染まっているのはイレギュラーウィルス感染者の証だ。

 

(う…ジャンヌ…。無事で…。)

 

「…やっと…希望、が…。」

 

 遺言すらまともに残せずにカードと化す、レオンとジル・ド・レ。

 その際、銃声が一つ鳴った。

 

「…?」

 

 レオンが死に際に天へ向けて引き金を引いたのであった。

 

 …ブラストアッパーは、その目線をレオン達のカードから、外の建物へと向ける。

 

 そこは、倒壊したビルを利用して作られた電算室。

 ジャンヌダルクが潜伏した場所であった。

 

 ここで視点は置き換わる。

 ジル・ド・レの招集後、防衛地点に向かおうとする新生レジスタンスであったが…。

 

「───やぁやぁ。奇人で粋人、狂刃忍者!幽々院ゆららだ。今、基地の方にイレギュラーが進行してきてる。」

 

 物陰に潜伏しながら、自身のスマートフォンに向けて状況を確認するのは【ライバル狂刃忍者-幽々院ゆらら-】。

 

 バリケードはおそらく破壊されたのだろう。

 レジスタンス基地内部に大量のイレギュラーが入り込んでいた。

 

「今回は特に数が多いな…。50体は超えてるんじゃないか?」

 

「!」

 

 突如目線を空へと向けるゆらら。

 その理由は───銃弾だ。

 銃弾がゆららの足を撃ち抜いた。

 

「…狙撃手がグライフの上から狙ってきてるな。」

 

 発射方向を睨みつければ、戦闘機に乗った狙撃手がこちらへ銃口を向けている。

 

 【全翼飛将 グライフ】は、【イタズラ発明家 ニコラテスラ】率いる『テスラ商会』によって大量生産されている。

 イレギュラー陣営が容易に利用できる程度には。

 

「危なっ!…チッ。」

 

 こちらを正確に狙う銃弾に気を配りつつ、退路を探そうとゆららは周囲を見渡すが、漆黒の外骨格を見に纏ったイレギュラー感染者達が周囲を囲っている。

 

(足は動かない。周りには鎧付きのイレギュラー…勝ち目は薄い。)

 

「…電力起動。レーザー刀!」

 

 ゆららは血が流れる足で駆け出す。

 二刀のレーザー刀を振り回して、敵を斬りつける。

 

 だがイレギュラー感染者の鎧はレーザー刀を無力化する。

 

「くそっ!」

 

 弾かれることもなく、ただ、受け流される。

 足の踏ん張りが効かず、ゆららの体勢は崩れ、隙だらけの様相を晒した。

 

「 wing 。」

 

 対してイレギュラー感染者は自身の背中に留まる兵装───イレギュラーウィングをゆららに向ける。

 

「 action 。」

 

(万事…休す…!)

 

 イレギュラーウィルスが濃縮されたレーザーが放たれた。

 

 目を閉じるゆらら。

 

 その刹那。

 

「 セエエエエエエエエエエン!!! 」

 

 一陣の風が吹く。

 

 空から吹き降りた風が、地を浚っていく。

 

「 …!? 」

 

 それは紛れもない、桜華忠臣だ。

 

 滑空した勢いのままに、刀をイレギュラー感染者に突き刺して排除してゆく。

 

 忠臣の勢いが止まった頃には、ゆららの周辺に存在したイレギュラーの軍勢は、全て地に伏していた。

 

「相も変わらず、骨がない者共よ。」

 

「…あちらの方も終わったようだな。」

 

 見れば、ジャンヌダルクが潜伏していた建物でも戦闘が起こり───そして、終了しているようだった。

 

 イレギュラー感染者を拘束している【カード】達が見える。

 

 忠臣は刀についた血を払い落として、液体金属ロボで出来た通信機器を取り出した。

 

「おい、掃討は終わった。"ポータルキー"を落とせ。」

 

 忠臣が通信機器にそう呼びかけると、グライフが彼の目の前に、人一人ほどの大きさの"鍵"を落とす。

 

 見方によっては楔のようにも見える、不思議な物体だった。

 

「よし、よいぞ。それでは───ここを我らが領土とする。」

 

 忠臣はポータルキーを地面に打ち込む。

 

 すると、地に正方形の線が現れる。

 領土を区分するような線は広がり───新生レジスタンスの拠点をすっぽり囲むほどに広がる。

 

 それと同時に、鉛色の空は浄化され───晴れ渡った。

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