#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

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スティールユー-3

「あら?此処はどこかしら?嫌な音がするわね…ノイズが弾けるような…。」

 

「わからないけど、リリカの匂いがするわ。あっち。」

 

「ひぇぇ!?なんかすっごい…ロボ?ですか?バグドール…って言うんですよね。」

 

「あの青いリング…アレに転移させられたのか。配られたデータにあった、ボイドールの転移能力か。お嬢様方、護衛は任せてくれ。」

 

「おおっと。ニーズヘッグの旦那。旦那は目が利くだろう。俺がお嬢様方を守るから、旦那は哨戒を頼む。」

 

「オジサン達!お気遣いはありがたいっスが、こちとら守られる気は無いっス!いざと言うときは自分の身を気にしてくれっス!」

 

「クフフ…。振られてしまいましたねぇ、オジサン方。此処は他ならぬワタシがボディーガードを務めましょう。」

 

「輪廻のオッサン!助かるっス!」

 

「お、オッサン…。このワタシが…。」

 

「陰険ヤクザ…ま、気にすんなよ。歓迎はしてやるぜ。タバコ、吸うか?」

 

「電子タバコならあるぞ。端子から直吸いだがな。」

 

「いえ、お嬢に嫌われてしまうので、現在辞めてますから、お気遣いなく…。」

 

「あっちよ、あっちにリリカが…。」

 

「た、単独行動!危険です〜…!」

 

「ほら、男達!ボディーガードを名乗るなら、慰め合ってないで早く護衛してくださって?」

 

 ヴィオレッタ、ルルカ、アリス、ニーズヘッグ、イグニス、ゲームバズーカガール、輪廻…7体のヒーローは、突如として行われた転移に困惑する。

 

「うわぁ、ここ、すっごく紫…!」

 

「おおう、こりゃおどろおどろしい…。とんでもねぇことになりそうだぜ…。」

 

 周囲は薄暗い青。

 空間には時折り赤のノイズが走る。

 下を見下ろせば、データの欠片が瓦礫となり、円を作って周回している。

 

 ここは、Hello :-) irregular World。

 

 バグドールの居城であり───決戦の場だ。

 

「…!戦闘を検知、中央部だ!」

 

 ニーズヘッグ達は現在、中央部から外れた端の方の足場にいた。

 

「誰と誰っスか?」

 

「忠臣と───バグドール!」

 

「げぇーっ!?」

 

「大変!助けに行かないと!皆、行くよ!」

 

「は、はい〜!」

 

 報告を聞いた直後、彼らはデータの瓦礫に乗り、忠臣のいる中央部の足場へと急行する…。

 

 忠臣とバグドールは向かい合っていた。

 

「秘策デス。」

 

 バグドールが出したのは、【妖炎参謀 月夜叉】の【カード】。

 

「…それが、秘策と。」

 

「オマエハ自分ノ弱点ヲ把握シテナイヨウダナ。」

 

 バグドールは、月夜叉のカードにイレギュラーウィルスを注ぎ込む。

 

(───まずい。)

 

「───穿ッ!」

 

 忠臣は全力で踏み込み、バグドールを切り付ける。

 だが、斬撃は、ひょい、と避けられた。

 

「既ニ、身体のコントロール自体ガ難シイデショウ。」

 

 忠臣は片膝をつく。

 顔色は真っ青だ。

 そして右目の色が、黒白に変わっていた。

 

「わ、れに…何を…。」

 

「月夜叉、彼女ハオマエニ【エナジーライン】ヲ繋ギマシタ。」

「エンフィールドノ【ロングレンジライフル】ニヨッテ、オマエガ殺害サレタ時ニデス。」

 

 思い返すかつての記憶。

 ブラストアッパーとの共闘、ジェニトとの攻防で想起した疑問。

 

(あの時はフルアーマーが防いでいるうちに、月夜叉が脱出させたようだが。)

 

(───ならば、我は何故、あの時目覚めたのか。)

 

 連続せぬ意識───その答えは、死だった。

 

「ボクガヤッテイルノハ、エナジーラインノジャック…。無事、成功シマシタ。イレギュラーウィルスガオマエニ供給サレテイルハズデス。」

 

 苦しみで這いつくばる忠臣。

 喉を引っ掻き、足をがむしゃらに動かして必死にもがく。

 

「があ、あ!?う…ああ、あ…aaaaaaaaaa!?」

 

 身体中から、イレギュラーウィルスが吹き出す。

 現在、忠臣は分解の魔力を生成できない。

 なぜなら、分解の魔力の源であるエナジーが、そのままイレギュラーウィルスに置換されてしまっているからだ。

 これでは、やりようがない。

 イレギュラーウィルスを材料にして、分解の魔力を生み出すことはできないのだから。

 

 忠臣の身体が、化け物に変貌しようとしたその時だった───。

 

「氷点術式、展開─── アルマ一刀流、奥義、王の剣(フランベルジュ)。」

 

 忠臣の身体を、氷が包む。

 バグドールは急いで飛び退いた。

 

「遅い。」

 

 空間が、大気が、全てが凍りついていく。

 アダム以外の全てが、今。

 凍結した大気中の水が、虎の形をしてバグドールを追う。

 

「お前の前に立つ男を誰だと思っている。」

 

 バグドールは氷の虎に飲まれ、その活動を停止した。

 

「セントグラード騎士団団長───アダム=ユーリエフだ。」

 

「ソーン=ユーリエフもいます!」

 

 凍結兄弟───此処に集結!

 ユーリエフ兄弟に駆け寄る新生レジスタンスの面々達。

 

「アダム!久しぶりだな!」

 

「アタリか…。すまない、俺が不甲斐ないせいで、このような事態を引き起こしてしまった。」

 

「別にそんなん関係ねぇよ!ゲームってのはな、コンティニューが一番大事なんだぜ!」

 

「…ふふ、ありがとう。」

 

「ソーン!刀一郎!無事だったか!」

 

「ブラストアッパーさん!」

「ブラストアッパー。」

 

 アタリとアダムが談笑している中、ブラストアッパーがソーン達に話しかける。

 ソーンらは事の顛末を話し始めた。

 アダムを討伐した後、ブラストアッパーや、やめるちゃんと言った【カード】はイレギュラーウィルスに感染しながらも実体化したため、レジスタンスに回収されることができた。

 だが、ソーンや刀一郎はイレギュラーに感染せず、【蒼王宮】本拠地に残っていたのだという。

 

「僕は多分、兄様の魔力で守られていたんだと思います。イレギュラーが感染できないように…。」

 

「俺はそのおこぼれを授かったってところだな。」

 

 アダムの能力は絶対凍結。

 ウィルスの侵攻を凍結させるなど、わけもない事だ。

 

「談笑中いいかしら?」

 ルルカが焦燥した顔でアダムらに尋ねた。

「この空間…縮んでない?ドリーム測量によると、秒速で30cm縮んでる…!」

 

 面々は驚愕した。

 

「空間が…縮んでいる…。」

 

《 ソレニツイテハ、ボクガ答エマショウ。 》

 

「バグドール!」

 

 空間全体にアナウンスが響く。

 無音の空間にエコーが響く。

 

《 オマエ達ヲ何ガアッテモ殺セルヨウニ、空間ニ細工ヲシマシタ。 》

《 コノママオマエ達ハ収縮スル空間ノ壁ニツブサレテ死ニマス。何ヲシテモ無駄デス。 》

 

《 アダム、オマエノ凍結能力ハ、外部カラノ処理ニ無力。ボクガコノ空間ノ外デ処理ヲ行エバ、手モ足モデナイノデス。 》

 

 バグドールが言っているのはこうだ。

 アダムの凍結能力は凍結した物体のあらゆる処理を停止させることができる。

 ならば、処理を行うバグドール自身が凍結されなければ、たとえ空間を凍結させられても、空間を収縮させる処理を行えるということ。

 

 現に、アダムが抵抗のために放った氷壁は簡単に打ち壊され、空間の収縮は止まらない。

 

「くそっ…!」

 

「…お前たち!全力攻撃だ!今できるのはそれしかねぇ!うおおおおお燃えろおおおおお!!」

 

 イグニスの号令と共に、ヒーロー達は自身が繰り出せる中での最高の威力の技を放つ。

 

「ドリームマジカルフレイム!」

「ドットモンスター軍団!行けぇぇぇ!!」

 

 だが。

 

「アルティメットデルミンビーム!」

「ブラスト───アッパァァァァ!」

 

 どの技も。

 

「アイシクルコフィン!」

「ミサイル全弾発射!当たれよ!」

 

 全くと言っていいほど───作用しない。

 

「ゲームバズーカ流を見せてやるっす!」

 

「待たせたな!移動するのに手間取った!」

 

「師匠!良いところに!」

 

 ゲームバズーカと、ゲームバズーカガールの連携攻撃。

 

「Gバズーカ起動!最大火力!合わせろよ!」

 

「そっちこそ!…3!2!1!」

 

「「吹っ飛べぇぇぇぇぇ!!」」

 

 しかし───拮抗が、精一杯。

 

「ぬ…う、これでは、もう…。」

 

「…まだ、手はあるはず。トマス様、ジャスティスが拠点に残った理由を思い出してちょうだいな。」

 

「ヴィオレッタ殿…ですが、此処は何処とも知れぬ場所。いくら最終兵器が高性能だといえど、此処に辿り着くなんて不可能では…。」

 

 トマス達は全員、バグドールの使ったワープにより、此処に移動させられた。

 助けを求めようにも、座標がわからなければ意味がない。

 

「いや…無理じゃないよ。トマス。」

 

「零夜殿…。」

 

「もう一人の僕が確かに見ているんだ。彼らが此処に辿り着く可能性を…!」

 

 世界が、揺れる。

 

「うあっ!?大地の精霊の怒りか!?」

 

「地震です!机の下に隠れないと…しゅびっ!」

 

「コクリコちゃんだけは生き残らせてやる…!うおおおおおお!」

「ゆりかご〜。」

 

「遅いぜ!ジャスティス!」

 

 みしり、みしりと天蓋が割れる。

 

「待たせたな。アタリ。」

「忠臣の魔力の探知に手間取った。すぐ助けてやる。」

 

 空間はひび割れ、剥がれ落ちる。

 アタリ達をひび割れから覗くのは、テスラ製、【帝皇機神 ケーニヒ・イェーガー】。

 

 改造され、8腕となった巨大人型兵器である。

 メグメグがジャスティスは通信を入れる。

 

「ポータル、5基分注入!」

 

「座標入力完了!ッてぇええええ!!」

 

 ポータル5基分の、貯蓄された分解の魔力が放出され、空間を削り取る。

 

《 小癪ナァァァァァ!!! 》

 

 大量のバグドールが、イェーガーの邪魔をしようと特攻するが───。

 

「へへーん!残念!このイェーガーは常にポータル10基分の分解の魔力バリアを纏ってるんだ!」

 

 テスラの言うことを証明するかのように、バリアへ突っ込んだバグドールの群体は全て塵となった。

 

「ジャスティス!」

 

「お前たち、早くイェーガーに乗り込め!全員だ!」

 

「ど、どうしたんだよそんな急に!」

 

「下を見てみろ!」

 

「下?…っ!?」

 

 アタリが足場の端から下を見下ろせば、そこにはイレギュラーウィルスで作られた海が存在していた…!

 

「こ、これ…!」

 

「ああ…。なりふり構わないと言ったところだろうな。」

 

「───みんな!早くイェーガーに乗り込め!足場がイレギュラーウィルスに沈むぞ!」

 

「えぇ!?」

 

 アタリの指示により、さまざまな【カード】や【ヒーロー】がイェーガーの中に乗り込んだ。

 

「───桜華忠臣、ジャスティス・ハンコック、ニコラ・テスラ…!僕ヲソコマデ怒ラセタイカァァァァ!!」

 

 イレギュラーウィルスの海が一点に集まる。

 この世界全てのウィルスが、一つの巨大な生命体となる。

 無限の羽持つ悪魔───バグドールの誕生だ。

 

「此処デ全テオワラセテヤル…!」

 

「───全員で、生きて帰るぞぉ!!」

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