───目を開ける。
エンフィールドとの邂逅からキッカリ5分、忠臣は命の危機を味わった。
だが…。
(五体の損傷はあるが概ね無事。【カード】とやらも保持している。)
忠臣は、病室のベッドで寝ていた。
ここはどこか、なぜ死んでいないのか。
好奇心は尽きない。
(…。)
そんな忠臣が、ベッドの脇にある雑誌を見つけたら、即様読み始めてしまうのは当たり前の話だった。
第一次抗争。
【蒼王宮】と他の全組織との抗争をまとめた記事だ。
【蒼王騎士団長 アダム・ユーリエフ】と、
【妖軍一統 ゲネラール】
【荒れ狂う天空王 ぶれいずどらごん】
【絶望の指揮官 グスタフハイドリヒ】
の3名が交戦、のちにアダム・ユーリエフの手により殺害。
この一戦により各陣営のパワーバランスは大幅に崩れ、【蒼王宮】が歪の地(今の世界の呼称)を支配するに至った。
第二次抗争。
歪の地を支配する【蒼王宮】と、金枠のカードを持つ者達による争いを書いた記事だ。
【狐面討魔士 狐ヶ咲甘色】
【刹那の殺し屋 ルチアーノ】
【オルレアンの乙女 ジャンヌ・ダルク】
【紅薔薇王女 マリア=S=レオンブルク】
彼ら4名が主体となって【蒼王宮】と交戦。抵抗の末、殺害され、そのカードを奪われた。
「総統閣下、月夜叉が失礼いたします。」
コラムにはこの抗争で活躍した数々の兵器が記されている。
【fromテスラ:HM-WA100 ニーズヘッグ】
「体の具合はどうでしょうか。」
【ガルガルのピカピカデコ戦車】
「…あの。」
【液体金属ロボ Meta doll-774】…。
「ちょっと総統。総統!気付いてください!あのー!」
「む、少し熟読してしまったようだな。」
「貴様…月夜叉か。」
「はっ!妖華帝国妖炎参謀、月夜叉であります!」
【妖炎参謀 月夜叉】
彼女は忠臣の部下であった麗しい金髪の女性で、妖軍の軍服を身につけている。
何故彼女がここにいるのか、忠臣には見当もつかなかった。
「ここは何処だ。月夜叉。それと、何故貴様もここに?」
「鳩羽という都市でございます。総統閣下。私がいる理由は混み合っておりますので後で説明いたします。」
「よかろう。」
どうやら、羅針盤街より遠いところへ来てしまったらしい。
でらクランクストリートから落下したとき、鳩羽の看板も視界の端にあった。
「…総統、体の具合はどうでしょうか。一通りの治療は済ませましたが…。」
「御託はいい。」
「この世界で我を生かしたと言うのであれば、相応の要件があるのだろう。疾く申せ。」
忠臣は、自身の金枠のカードを月夜叉へと見せる。
「金枠のカードの事情を把握済みのようで何よりです。」
「総統閣下、貴方に我々は助力をお願いしたいのです。」
忠臣は眉を顰めた。
「…続けろ。」
「では、まず、私から一通りのご説明をば。」
「この世界では、通常のカードと金枠のカードの2種類が存在します。」
「通常のカードとは、このような物を言います。」
月夜叉は自身のカードを見せた。
「通常のカードは使用者の【エナジー】(生命力のようなもの)を消費してさまざまな効果を発揮することができます。」
「その効果としては、【身体の実体化】と、カードによって定まった【固有効果】の二つに限られます。」
「私がここにいる理由としては、今説明した実体化の力を使ったからですね。」
忠臣にとってこれは初耳であった。
逆説的に考えると、"通常のカードの者はエネルギーが尽きると身体を実体化できない"。
エナジーがあれば生き、尽きれば死んでしまうのだ。
「さて、金枠のカードですが、こちらは大量のエナジーを生み出すことができます。」
「そのため、金枠のカードを持つ者は、あらゆる通常のカードを無制限に発動可能なのです。」
なるほど。
「我のカードは炉心か。」
「はい。その通りです。」
忠臣は色々と事情を察した。
「貴様ら…通常のカードを持つ者が、我のような者が持つ金枠のカードを手に入れると、無制限に自身のカード効果を発動できるようになると。」
「また、身体の実体化…とやらも、無制限にできると。」
「はっ。」
そのために狙われていたのか。
「総統閣下には、エナジー炉心兼、我々の指揮官として、助力をお願いしたいのです。」
月夜叉が深々と頭を下げる。
忠臣は決断を迫られた。
「よい。頭を上げろ。」
月夜叉は頭を上げる。
「我を救った褒美だ。気兼ねなく、我を使うが良い。」
「この地がVoi dollによって無くなるまでの余興だ。」
忠臣はベッドから身体を降ろし、月夜叉の目を見た。
「使うなどと、恐れ多い…。」
月夜叉は目を逸らした。
「それより、貴様、我々と言っていたな?仲間がいるようだな。疾く我に見せるがいい。」
忠臣は先を急ぐ。
生を急ぐ。