#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

3 / 32
異世界珍道中-3

 

 

 ───目を開ける。

 

 エンフィールドとの邂逅からキッカリ5分、忠臣は命の危機を味わった。

 

 だが…。

 

(五体の損傷はあるが概ね無事。【カード】とやらも保持している。)

 

 忠臣は、病室のベッドで寝ていた。

 ここはどこか、なぜ死んでいないのか。

 好奇心は尽きない。

 

(…。)

 

 そんな忠臣が、ベッドの脇にある雑誌を見つけたら、即様読み始めてしまうのは当たり前の話だった。

 

 

 

 

 第一次抗争。

 

 【蒼王宮】と他の全組織との抗争をまとめた記事だ。

 

 【蒼王騎士団長 アダム・ユーリエフ】と、

【妖軍一統 ゲネラール】

【荒れ狂う天空王 ぶれいずどらごん】

【絶望の指揮官 グスタフハイドリヒ】

 の3名が交戦、のちにアダム・ユーリエフの手により殺害。

 

 この一戦により各陣営のパワーバランスは大幅に崩れ、【蒼王宮】が歪の地(今の世界の呼称)を支配するに至った。

 

 第二次抗争。

 

 歪の地を支配する【蒼王宮】と、金枠のカードを持つ者達による争いを書いた記事だ。

 

 【狐面討魔士 狐ヶ咲甘色】

 【刹那の殺し屋 ルチアーノ】

 【オルレアンの乙女 ジャンヌ・ダルク】

 【紅薔薇王女 マリア=S=レオンブルク】

 彼ら4名が主体となって【蒼王宮】と交戦。抵抗の末、殺害され、そのカードを奪われた。

 

「総統閣下、月夜叉が失礼いたします。」

 

 コラムにはこの抗争で活躍した数々の兵器が記されている。

 

 【fromテスラ:HM-WA100 ニーズヘッグ】

 

「体の具合はどうでしょうか。」

 

 【ガルガルのピカピカデコ戦車】

 

「…あの。」

 

 【液体金属ロボ Meta doll-774】…。

 

「ちょっと総統。総統!気付いてください!あのー!」

 

「む、少し熟読してしまったようだな。」

「貴様…月夜叉か。」

 

「はっ!妖華帝国妖炎参謀、月夜叉であります!」

 

 【妖炎参謀 月夜叉】

 彼女は忠臣の部下であった麗しい金髪の女性で、妖軍の軍服を身につけている。

 何故彼女がここにいるのか、忠臣には見当もつかなかった。

 

「ここは何処だ。月夜叉。それと、何故貴様もここに?」

 

「鳩羽という都市でございます。総統閣下。私がいる理由は混み合っておりますので後で説明いたします。」

 

「よかろう。」

 

 どうやら、羅針盤街より遠いところへ来てしまったらしい。

 でらクランクストリートから落下したとき、鳩羽の看板も視界の端にあった。

 

「…総統、体の具合はどうでしょうか。一通りの治療は済ませましたが…。」

 

「御託はいい。」

「この世界で我を生かしたと言うのであれば、相応の要件があるのだろう。疾く申せ。」

 

 忠臣は、自身の金枠のカードを月夜叉へと見せる。

 

「金枠のカードの事情を把握済みのようで何よりです。」

「総統閣下、貴方に我々は助力をお願いしたいのです。」

 

 忠臣は眉を顰めた。

「…続けろ。」

 

 

「では、まず、私から一通りのご説明をば。」

「この世界では、通常のカードと金枠のカードの2種類が存在します。」

 

「通常のカードとは、このような物を言います。」

 月夜叉は自身のカードを見せた。

 

「通常のカードは使用者の【エナジー】(生命力のようなもの)を消費してさまざまな効果を発揮することができます。」

「その効果としては、【身体の実体化】と、カードによって定まった【固有効果】の二つに限られます。」

「私がここにいる理由としては、今説明した実体化の力を使ったからですね。」

 

 忠臣にとってこれは初耳であった。

 逆説的に考えると、"通常のカードの者はエネルギーが尽きると身体を実体化できない"。

 エナジーがあれば生き、尽きれば死んでしまうのだ。

 

「さて、金枠のカードですが、こちらは大量のエナジーを生み出すことができます。」

「そのため、金枠のカードを持つ者は、あらゆる通常のカードを無制限に発動可能なのです。」

 

 なるほど。

 

「我のカードは炉心か。」

 

「はい。その通りです。」

 

 忠臣は色々と事情を察した。

 

「貴様ら…通常のカードを持つ者が、我のような者が持つ金枠のカードを手に入れると、無制限に自身のカード効果を発動できるようになると。」

「また、身体の実体化…とやらも、無制限にできると。」

 

「はっ。」

 

 そのために狙われていたのか。

 

「総統閣下には、エナジー炉心兼、我々の指揮官として、助力をお願いしたいのです。」

 

 月夜叉が深々と頭を下げる。

 忠臣は決断を迫られた。

 

「よい。頭を上げろ。」

 

 月夜叉は頭を上げる。

 

「我を救った褒美だ。気兼ねなく、我を使うが良い。」

「この地がVoi dollによって無くなるまでの余興だ。」

 

 忠臣はベッドから身体を降ろし、月夜叉の目を見た。

 

「使うなどと、恐れ多い…。」

 

 月夜叉は目を逸らした。

 

「それより、貴様、我々と言っていたな?仲間がいるようだな。疾く我に見せるがいい。」

 

 忠臣は先を急ぐ。

 生を急ぐ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。