───目を開ける。
皆がいる。
ならば。
「これ以上の無様は、晒せぬなぁ!!」
炉心、稼働。
忠臣のエナジーがイェーガーの血液となって、あらゆる出力を向上させる。5倍…いや、10倍の行動速度が保証された。
「おおー!エナジー量80000基分!残弾の心配無用だね!」
「本来のスペックを解放だー!」
「忠臣!よくやったぁ!!」
忠臣の分解の魔力によるバリアが深くなったことをきっかけに、アリスとジャンヌがイェーガー内へと戻る。ジャスティスがそれを迎えた。
「…ジャンヌ。」
「…ふふ、らしくないこと、しましたね。」
「いや、君らしかった。…それでこそ、ジャンヌ・ダルクだ。」
「…ありがとう。」
外へ目を向ければ、バグドールだ。
バグドールの攻撃力は依然増したまま、何も行動しなければ、ジリ貧になることは間違いない。
「トレースシステム、オン!忠臣!君が思った通りにイェーガーを動かせるよ!───ブッタ斬っちゃえ!」
「───わかった。」
イェーガーと、忠臣の動きが連動する。
特殊兵装の刀を抜き、上段に構え───。
「…リブートシーケンス、スタート───。」
「逃さん。」
ボイドールの能力、転移。
理論上は分解の魔力でもなんでも他の場所に移動することが可能だ。
それは完全防御と、防御無視の攻撃を可能とする。
だが───それなら、何故、人の右半身だけ転移といったことは出来ないのだろうか。
その答えとしては、ボイドールの固有効果にも、ボイドールによるセーフティがかかっていた、と言うことだろう。
このような例もある。ならばやはり、明確な弱点がある。
(ボイドールがこんな危険な能力を野放しにするはずがない。何かしらの弱点、それは───。)
故に、忠臣は───弱点をついた。
「…転移ガ発動シナイ。」
「予告から入らねば、発動せんのだろう。」
イェーガーはバグドールの数メートル近くに移動していた。
「…転移告知から───最短で9秒経たなければ発動しない。」
「どうやら、その答えはあっていたようだな。」
妖華、帝皇斬。
かつての小国を帝国にした一撃が、バグドールの身体を二つに割った。
「グ、ガ、ア。」
「魔力は断面から貴様を分解する。」
逃しはしない。
バグドールの残滓は、ことごとく分解する───。
「ア、アア、ぁ。」
「───安らかに、逝け。」
「グアァァァァァァァァァァ!!!」
黒雲、爆散。
バグドールの身体は四方八方に飛び散り、飛び散った先で塵となり、塵は風に溶けて消失した。
最大稼働の速さのために、転移は、間に合わず…。
「…た、倒した…!?」
「バグドールを、倒したぞおおおおおおおお!!!!」
ジャスティスの高らかに宣言する。
戦いは、終わりだと。
人々は抱き合い、勝利に喜ぶ。
「リリカァ!!」
「ルルカ…!ありがとう!」
「リリルル再開…!と、尊い…!」
「…久しぶりだな、月夜叉。」
「月夜叉…よく、帰ってきた。」
「ゲネラール…。総統…。私、変になってて、その…。申し訳ありませんでした!」
「…全て許す。良い余興であった。…今日は無礼講だ。好きにせい。」
「…総統ーーっ!!」
「っおいおい、抱きつくな。」
「ガハハッ!月夜叉も可愛い所があるのう!」
再開に咽ぶ者が居れば───。
「ハァ…ギャリギャリ出来ズ終わっちゃっタどうしよウ。」
「ム、ソウデスネ…決マリマシタ。私ノ本体ニ報告シテオキマス。」
「…ギャリギャリさせてくれるノ?」
「サァ、ソレハ後ノ【お楽しみ】デス。カピッ。」
未来を案ずる者もいる。
「忠臣!よくやったな!」
「大将ォォォォォォォォォ!!!」
「こら!貴様ら鬱陶しいわ!」
「自分も抱きついていいですか!?」
「…ふん、許可する!」
「…総統閣下は甘いねぇ…。どれ、俺も行くか。」
「スコーピオンも!?」
…これにて、歪の地、果てはバグドール事変が解決したのだった。