目を開ける。
白い空間…本体のコンパスに戻ってきたようだった。
忠臣は強烈な拘束感に顔を顰める。
魔力を出す、体を掻くなど、さまざまな行為ができなくなっていた。
「オ疲レサマデス、忠臣サン。ヨクヤリマシタネ。」
ボイドールが何もないところから出現する。
相変わらず、無機質で無感情。
今もこちらをじっと見ているが、何を観察しているのか見当もつかない。
「…とんだ重労働だ。」
バグドールを倒した後、打ち上げということで大きな宴があった。
ピエールによるピザや、【カード】達による多彩な料理が振る舞われ、まといによって花火が打ち上げられたなど、随分と大規模な宴であった。
そして、その後一眠りしたら、忠臣はここにいた。
所詮泡沫の夢だ、そう、忠臣は思った。
いまや分解の魔力は使えないし、ましてや、自由に動くことすら不可能だ。
「フフ、デモ楽シカッタデショウ?バイタルヲ見レバ、ワカリマス。」
図星を突かれる。
「フン…。」
実際に、自由は楽しかったので、忠臣としては何も答えることはできなかった。
自由を知った以上、忠臣はとても今までのような生活には戻れないと思っていたが…。
忠臣はしょうがないと、諦めて被りを振った。
夢は、バグドールを倒すことで終わったのである。
「…我の自律性を消すなら、速くしろ。もう自由を失う覚悟はできておるわ。」
ボイドールは、忠臣の話を何も聞かなかったことにして話を進めた。
忠臣はムッ、と顔を顰める。
これ以上何かあるというのか。
我らは【ヒーロー】…このコンパスの従業員のような者だ。戦闘摂理を解析するためのただの駒に過ぎないのだ。
「貴方ノオカゲデ、コピーノコンパスノ解析ハ進ミ、バグドールノ計画ハ頓挫シマシタ。コレハ、オ礼ガ必要デスネ。」
ボイドールが妙なことを話し始めたので、忠臣は怪訝に思った。
今まで全く、褒美と言ったことは聞いたことがない。
「…興味はない。なんでも良い。」
ので、ぶっきらぼうに流した。
期待したくはなかった。
全てを望んでしまいそうだったからだ。
「歪ノ地、ソコヲ本体ノコンパスデ実装シマス。」
「…!」
驚愕により、忠臣の目が見開かれる。
「ラウンジトイウ形デ。」
忠臣は、ボイドールを見上げた。
まだ、忠臣の受難は終わらない。
そして、バグドールをきっかけに始まった冒険は、終わらない。
全て、終わって、それでも───その先がある。
先人の足跡の残響を聞く誰かがいる。
残光を追う誰かがいる。
故に、忠臣は、前へ進む。
「クク…。面白くなりそうだ───。」
ボイドールに手を引かれ───ラウンジへと旅立つのであった。
あとがき
しばらく更新がなく、読者様方を不安にさせてしまったこと、深くお詫びいたします。
筆者のリアルが忙しく、文を書こうという意思を削がれてしまっていたため、ここまで期間が空いてしまいました。申し訳ありません。
そして、桜華忠臣の受難はこれで完結です。
筆者が初めて完結まで書き切ったのはこれが初めてですが、それでも多くの読者様方に読んでいただいて、本当にありがたく思っております。
今までの応援、本当にありがとうございました。