#コンパス 桜華忠臣の受難   作:K+#ガソ林

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オペレーション 桜華-2

 

 

 ───目を、開ける。

 

 一叫。

 

「閃ッ。」

 

 一殺。

 

 地を揺るがし轟音を上げるほどの震脚から放たれた、光の矢の如き一閃。

 

 だが、アダム・ユーリエフの目に見切られる。

 

「守護障壁を展開。」

 

 アダムは自身が持つカードを起動し、その効果を発現する。

 【全天首都防壁 Hum-Sphere LLIK】。

 全ての攻撃を拒絶する、非干渉防壁。

 その硬度は、忠臣の愛刀を容易く折った。

 

「───ッ。」

 

 忠臣は動揺する。

 だが、それは、明らかな隙だ。

 

「俺の剣は───。」

 

 アダム・ユーリエフの魔剣が、蒼き軌跡を刻む。

 

「───何人も見切れぬ。」

 

 忠臣が、その肩ごと腕を完全に切り落とされようとする時、やっと月夜叉が転移妖術を使用する。

 これは月夜叉の位置と、忠臣の位置を入れ替える妖術である。

 

 月夜叉は体を両断され、絶命した。

 

「月夜叉。」

 

 光の粒子となって消えた。

 

「ふむ。」

「貴様、ただのカードではないな。」

「金枠だろう。」

「金枠であれば、身代わりになってでも生かすのが合理的だ。」

 

 アダムが忠臣に近づく。

 静かな城内では、彼の足音しか、この場に響くものはない。

 忠臣を助ける者は、ここにはいない。

 

「氷柱よ、いでよ。」

 

 アダムの言葉に呼応して、成人男性程の大きさの巨大な氷柱が、円形となって二人を囲む。

 氷の闘技場の中で、アダムは忠臣へと剣を向けた。

 

「騎士団長の名にかけて、貴様を生かして返す気はない。」

 

 これで、エイワズに乗っての脱出も、不可能なものになった。

 

「ふん。」

「それは好都合なことだ。」

「こちらとて貴様を逃すつもりは無かったからな。」

 

 忠臣は月夜叉から託された、【千血妖刀 牛鬼村正】を起動する。

 忠臣の愛刀が、瞬時にその手に収まった。

 

「貴様…立場がわかっているのか?」

「…いや。いい。」

 

「言葉は不要。」

「来い───!」

 

 

 

 ───目を開ける。

 

「行くぞ、侵入者。」

 

 忠臣と相対するは、蒼き騎士。

 アダム・ユーリエフ。

 

 …忠臣は、カードを起動したことで、やっと【千血妖刀 牛鬼村正】の力を把握した。

 今まで、ずっと身につけていた愛刀の力を把握していなかったというのも、また不思議な話だが。

 

 相対する敵の意識の隙間を感じとり、アダムは魔剣を差し込む。

 

「カラドボルグッ!」

 

 筋肉の強張り、瞬き、涎、凝視。

 人間が生活を行う際に、"何気なく行う"動作、身体機能。

 それらは、アダムからすると、致命的な隙となる。

 

 忠臣の目の前に現れた、鋭く、蒼き剣閃。

 本来なら、受けれないはずだ。

 本来なら、負傷した忠臣が防げるはずがない。

 だが、忠臣はなんでもないように、刀でそれを受け止め、力を受け流す。

 

(我の記憶に、またしても制限がかかっていたということか。)

 

 予測していたのだ。自身の身体がいつ、無駄な動きをするのか。

 アダムがいつ、切りかかってくるか。

 忠臣は反撃に移ろうとするが、刀は強固な力で固定され、とても動かせない。

 

「馬鹿めッ!」

 

(我が村正を起動したことで、条件を満たし、記憶の制限が解除されたといったところだろうか。)

 

 …アダムはカードの力を使用していた。

 名を、【-蒼王宮- 第一魔剣 サヴァイヴァーニィ】。

 アダムの持つ、氷の魔剣である。

 

 魔剣から伸びる氷枝が、村正を絡め取り束縛していた。

 

「…クズの考えそうな事だ。」

 

「下準備は終わりだ…!」

 

 緑と蒼、二つの視線が交差する。

 

 今、村正は全く動かせず、忠臣は身動きが取れない。

 このままでは、アダムの魔剣の力によって容易く殺害されるだろう。

 

 だが、【千血妖刀 牛鬼村正】にも真の能力があった。

 

 その能力としては───。

 

「───閃。」

 

 攻撃している際に、雷となる。

 刀身が、雷電へと変化する。

 即ち神速。

 即ち無形。

 防ぐこと───。

 

「なっ。」

(全天、きど───。)

 

 ───能わず。

 

「がっ。」

 

 アダム・ユーリエフの心臓は、雷電の刃にて穿たれた。

 深く、深く、村正は彼の肉体を貫いた。

 

 が。

 かの男には秘密があった。

 アダム・ユーリエフはグスタフ・ハイドリヒ、ぶれいずどらごん、ゲネラールの三体と同時に戦い、勝利した。

 

 それにはもちろん、理由がある。

 彼は、彼の氷結能力は、全てを凌駕する。

 

 変幻自在にして、千変万化。

 

「…下準備は終わりだ、と言っただろう。」

 

 村正に纏わりついた氷が、変化する。

 周囲の温度が一段と下降し、空気中の水蒸気が霰となって地面へ落ちた。

 

「…アルマ一刀流、奥義。」

 

王の剣(フランベルジュ)。」

 

 祈るように、傅くように。

 

 彼の剣。

 2人の周囲を囲む氷柱の壁。

 

 それらから、波濤の如き勢いで氷枝が伸びる。

 それこそが、アダム・ユーリエフの誇る奥義である。

 例えるならば、氷の槍衾。

 

「よもやだな。」

 

 まさか、心臓を貫いても負けるとは。

 【千血妖刀 牛鬼村正】の能力ではこの状況を脱すことはできない。

 だが、忠臣は最後まで抵抗すると決心した。

 それが、月夜叉の献身に唯一答えられる行為だからだ。

 

 アダムを見れば、治癒の効果を持つカードを起動したのか、傷口が既に塞がっていた。

 

「貴様が使わせた。」

「誇るがいい。刀使い。」

 

 アダムは忠臣を、強く睨みつけた。

 

「俺の膝を地につけたのは、お前で2人目だ。」

 

 忠臣は襲い来る氷を斬撃にて払うが、全く効果はない。

 無制限に氷は忠臣に突き刺さらんと侵攻する。

 

「…我の完敗だ。誇れ、騎士。」

 

(次があれば、狙うのは頭部であるな。)

 

 ついに、忠臣が氷の枝によって串刺しにされようとした、その時だった。

 

 

「ゲームバズーカ流を見せてやるッ!」

 

 ひとりの英雄の一声が、死の静寂を塗りつぶした───。

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