───目を開ける。
謎の勢力の手助けにより、【蒼王宮】から命からがら生き延びた忠臣一行は、【妖軍一統 ゲネラール】の襲撃を受け、バラバラに吹っ飛ばされてしまった。
忠臣が目覚めたのは、ある無人島であった。
名前は、鶲(ひたき)。
「見事に何もない所であるな。」
ヘリの降下地点にも見えるような平らな黒石が中央に敷かれているだけで、住居も何もない。
忠臣はなんとかこの島を脱出し、スコーピオン達と合流しなければと考えた。
「…余興なら、最後まで見届けるのが筋であろう。月夜叉。」
その矢先だった。
鶲の中心部が盛り上がり、凄まじい土煙ととんでもない衝撃波が上空へと噴き出した。
多くの地層を破壊する轟音を伴って、巨大な岩盤が上空へと打ち上がる。
「!」
忠臣は見た。
岩盤を押し上げ、上昇させていたのは、1人の人間の、アッパー。
状況は全て、ただの人間の拳が、岩盤を打ち上げ、地層を破壊し、半径50m程の穴を作り出したことを示していた。
忠臣は身構え、刀を抜く。
「…ゲホッゲホッ。ゲホッ。」
無造作に整えられた金髪。
「…ん?あれ?人いたのか。おい、アンタ、怪我とかしてないよな。」
ボロボロの黒い道着。
「オレはブラストアッパー。」
炎を纏う左拳。
「アンタの名前は?」
【一撃必殺 ブラストアッパー】。
穴から出てきた超人の名だ。
「我が名は桜華忠臣。」
「先ほどの絶技、圧倒されたぞ。」
「あーいや、今、話してる場合じゃねぇんだわ。」
忠臣の話を遮り、ブラストアッパーは上空へと視線を向ける。
その視線の先には、浮遊している【きょうせんしの大剣】の、剣の腹に乗った、【-蒼王宮-白翼騎士 ジェニト】の姿があった。
「まだ俺は倒されてないぞ、反逆者。」
白く染まった髪。
「もう勝ったつもりでいるのなら、お笑い草だな。」
黒と白の二色を基調とした、極寒地で闘うための装束を身につける男。
鈍色の剣をこちらへと向ける。
「…ブラストアッパーと言ったな貴様。我に状況の説明を行うことを許す。」
「いいぜ。けど、協力しろよな。」
「オレは【蒼王宮】に抵抗するやつらの集まりに入っててな。」
「【蒼王宮】が地下世界でなんかやってるって聞いて、オレが偵察にきたんだが、あいつに見つかっちまった。」
「だから今あいつと敵対してんだ。説明したぞ。」
「よかろう。」
【蒼王宮】は特段憎くはないが、レジスタンスに協力すれば、月夜叉を奪還できる可能性がある。
「貴様の手伝いをしてやる。」
「で、どうするのだ?ブラストアッパー。敵は空に浮いておるぞ。」
「ちょっと持ち堪えれば、【恒星間転送装置 Tele-Pass】で脱出できる。忠臣、アンタも一緒にうちに転送されることになるけどな。」
「好都合だ。それで良い。」
ジェニトは、仕掛けてこない敵2人に対して痺れを切らした。
一枚のカードを起動する。
「…貴様らが空中の敵にわざわざ仕掛ける馬鹿どもではないのはわかった。」
「だから、少しテストだ。」
「【コレ】を切り抜けたら───我が本気を出すにふさわしい者と認めよう。」
起動したカードの名は、【機航師弾 フルーク・クォイツ】。
山一つ程の体積を持つ、超超巨大飛空艇だ。
「爆撃開始。」
「チリも残すな。」
空中を飛ぶフルークから、空を黒く埋めるほどの【爆術死鬼 ツクモ】が飛び出してくる。
ツクモは自力で移動可能な戦略爆弾で、指定したタイミングで正確に爆発することができる。
忠臣はこれらの兵器を過去に使ったことがあったので、この状態がいかにまずいかを改めて感じとる。
(エンフィールドの店で、ロングレンジライフルを向けられた時と同じような展開だな。)
あの時はフルアーマーが防いでいるうちに、月夜叉が脱出させたようだが。
(───ならば、我は何故、あの時、ベッドの上で目覚めたのか。)
意識が連続していなかったことが、忠臣は少し気になった。
「おおっし!行くぜぇーっ!」
ブラストアッパーは左拳に力を溜め…。
「ブラスト───アッパーッ!!!」
地面を覆い尽くすツクモに対して、拳を解放した。
ブラストアッパーはその特殊な技術により、拳を振った際に空気中の分子をプラズマ化させることができる。
プラズマ化した分子は非常に不安定であるために活性化し、とんでもないエネルギーを生み出す。
そのエネルギーが巨大な爆炎と化して相手を襲うため、ブラストアッパーの拳は、まさに、一撃必殺を体現するのだ。
忠臣達へと侵攻していたツクモ達はブラストアッパーの拳により爆散。
「───ほう。」
ジェニトは忠臣達に対する評価を改めることになった。