───目を開ける。
自慢の拳で全てを吹き飛ばしたブラストアッパー。
ジェニトは強大な力を前にして、本気を出す。
「良かろう。」
「俺が相手をしてやる。」
ジェニトは【きょうせんしの大剣】を蹴り、飛翔。
一瞬で忠臣達の目の前に移動する。
そして、忠臣達へと自身の長剣を投げつけつつ、【レーザー特注忍具 -双天小鳥丸-】を起動した。
忠臣はブラストアッパーを庇い、投げつけられたジェニトの剣を弾く。
「サンキュー!忠臣!」
「我を援護せよ。」
双剣、双天小鳥丸は刀身に沿って展開されるレーザーで敵を断つ、羽根のような軽さの近未来白兵兵装。
当然ながら、【千血妖刀 牛鬼村正】もレーザーで断ち切ることができる。
「相手が悪かったな、刀使い!」
ジェニトの剣が1秒もかからずに、忠臣の剣を溶解させ、容易く断ち切る。
「これで一つ───。」
忠臣の首先まで刃が届こうとしたその時だった。
(村正───起動。)
【千血妖刀 牛鬼村正】の刀身が、雷へと変わる。
ときに、双天小鳥丸はレーザー刀であるが故に、電池と───電気回路を内蔵する。
「ぬッ。」
電気と化した村正の刀身が、双天小鳥丸の電気回路へつながり、過電流(想定以上の電流が流れて、電気回路に負荷がかかること)を起こす。
結果として、双天小鳥丸は過剰なほどの負荷から熱暴走を起こし、爆発。
忠臣はなんとか凶刃から逃れることに成功した。
「ブラスト───。」
(ぐっ、まずいッ。)
武器を破壊され無手のジェニトの背中に、ブラストアッパーの拳が迫る。
また、忠臣は村正の刀身を雷から鉄へと戻していた。
このままでは、2方向からの攻撃に対処しきれず、ジェニトは負ける。
(【アバカン】と、【ワキンヤン】以外の雷の使い手がいるとは───目測を誤ったな。)
("次"は負けん。)
ジェニトは忠臣の刀を、右腕を犠牲に防いだ。命が奪われなければ、それで十分であるから。
「…!後ろを見ろ、拳使い!」
「どうした忠臣!」
「フルークが落ちてきておるわ!」
「んだとォ!?」
ここでジェニトが取った作戦とは、フルーク・クォイツを突撃させ、自分もろとも忠臣とブラストアッパーを爆破させるものだった。
フルークの推進力は凄まじく、500mの距離も10秒あれば通過できる。
「チッ───アッパーッ!!!」
ブラストアッパーは溜めていた拳をフルークに向けて解放。その推進力と拮抗する。
ジェニトはこれを好機に双天小鳥丸を再度実体化、左腕のみで忠臣へと襲い掛かる。
「馬鹿め!遠慮なく死ぬが良いッ!」
忠臣はすかさず村正を起動し、雷の効果を使用した。
当然ながら過電流による過負荷で双天小鳥丸は爆発しようとする。
「俺たちは、"それ"を油断と呼ぶのだ。」
ジェニトは爆発寸前の小鳥丸を忠臣へと投げつける。
「なっ───。」
ちょうど忠臣の手元で小鳥丸は爆発し、持っていた村正が遠くへと弾き飛ばされる。
「今回は逃げさせてもらう。」
(俺達【蒼王宮】に、俺を含め、一人たりとも損害があってはならん。)
(───【ソーン・ユーリエフ】の時のような事は、二度と繰り返すわけにはいかない。)
「───次会う時は、必ず殺す。」
ジェニトは【きょうせんしの大剣】の柄につかまり、あっという間に遠くへと姿を消した。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
フルークとブラストアッパーの戦いは、フルークが圧倒的優勢を得ていた。
元より兵器と人間の戦いなのだから、かろうじて均衡が保たれているのが、むしろ異常ではあるのだが。
「が…ぁ…!!あああああああああ!!!!!」
声を裏返す程の気力はあれど、体は既に答えてはくれない。
大気中のプラズマを起こすほどの力も、それを超える質量で上から叩かれては、無力。
徐々に拳は後ろへ。
(あ───負ける。)
肘が曲がる。
(───負ける…?)
膝が折れる。
(負けるのか…?オレ…。)
拳が、ほどける。
(オレの、全力───。)
力が、抜ける。
ここで、一つ、皮肉な事ではあるが。
ブラストアッパーが負けを認めたその時に、Tele-Passによる忠臣達の転送は、終了したのであった。