ヒトソウル持ち青毛ウマ娘のトレセン学園生活   作:雅媛

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第二章 学園生活の始まり
2-1 実家 入学祝


 昨日は両親親族一同集まって、ボクの入学祝をしてくれた。

 トレセン学園に入るということは親族一同集まるぐらい、世間的には名誉なことである。

 特にうちの一家のように、山奥で農耕ウマ娘ばかりしていたウマ娘にとっては無駄に大騒ぎになるぐらいの出来事であった。といってもどれくらいすごいか誰もわからない。両親もわかっていない。親族もわかっていない。というかボクもよくわからない。

 多分騒ぐ理由にされているだけである。

 

 ちなみに入学祝に集まっているのは、父方母方の祖父母と、父方は父の弟と従弟、母方は母の妹と従妹二人である。

 同世代の中ではボクが一番年上であり、一人っ子のボクは従妹弟たちと遊ぶことも多かった。仲もよいので今日は非常に楽しみであった。

 

 そんなこんなでボクの実家に昨日帰ったのだが、皆に非常に驚かれた。

 制服姿で帰ったボクを見て両親は

 

「クロちゃんがスカートを履いてる!!」

 

 と驚いていた。

 今までずっとスカートを履くのを拒否して来たから当然だろう。

 乙女チックな趣味がある母なんかは、ボクに再三かわいい服を着せようとして来ていたが、すべて拒否して来た。

 そんなボクが制服を着て帰ってきたのだから仰天の出来事だったらしい。

 

「おねえが女になって帰ってきた!?」

 

 ボクのことを「おねえ」と呼ぶ二つ年下の従妹がそんな失礼なことを叫んだ。

 変な男性ヒトソウルさんがついているとはいえ、ボクは生まれてからずっと女なんだが……

 まあ、彼女が言いたいことは、髪や尻尾、肌なんかが手入れされているということだろう。

 今まで野生児で、石鹼で全部洗っていただけだからねぇ……

 今回の手入れなんて、昨日の夜と今日の朝だけの付け焼刃もいいところだ。

 トップクラスのトレセン学園生はもとより、今までちゃんと手入れとかをしてきたローレルさんみたいな新入生とも比べ物にならないレベルである。

 

 だが、確かに今までのボクと比べれば雲泥の差だろう。

 従妹たちには尻尾や髪に集られて、「サラサラ~♪」と触られまくるし、従弟は、なんか照れられて近寄ってこないで、チラチラこちらを見ている。

 いや、お前も触ってもいいんだぞ。特に親しくもないクラスメイトの男子に尻尾を引っ張られたら切れるが、仲の良い親族の男の子に興味本位で触られた程度で怒ったりはしない。

 今までも結構興味深そうに触ってきたじゃないか。

 

「ほら、こっちおいでよ。抱っこしてあげるから」

「いい!」

 

 真っ赤になって従弟は逃げてしまった。

 クラスメイトだったクソガキと違って、従弟は大人しくいい子だ。

 個人的には非常に可愛がっていたし、抱っこしてボクのおっぱいに顔をうずめさせると照れながらもリラックスして、昼寝とかしてくれたのに。

 今日はボクだけじゃなく従妹たちもいるせいだろうか。

 

「クロちゃんが美人になったから照れてるんだよ」

 

 叔父さんがそうフォローしてくれるが、ボクとしてはションボリルドルフであった。

 

 

 

「私もトレセン学園に行きたい!!」

「あたしも!」

 

 従妹らは、ボクを見てトレセン学園に俄然興味を持ったらしい。

 今までも当然、レースなんかを見て興味があったと思うが、ボクが入学したということで興味がより沸いたようだ。

 叔母にそんなことをおねだりしている。

 

「二人とも、お勉強頑張ったらね」

 

 叔母もそんな二人を否定せずに頭をなでている。

 トレセン学園の入学試験は決して簡単ではない。

 全国のウマ娘が、入学希望者に比して少ない席を争う場だ。

 学力、走力、あと面接、どれかで合格ラインを超えれば入学できるが、かなり難易度は高いのだ。

 

 ボク自身はヒトソウルさんという成人男性、しかもおそらくかなり頭の良い人の知識を使っているから学力は簡単にクリアできた。走力もガタイがいいおかげか、クリアできていた。

 そういう意味ではいろいろボクは恵まれているタイプだ。

 

 従妹についてみると、上の子は正直厳しいと思う。小柄でとてもかわいく、素直で真面目ないい子だ。だが頭がそこまでいいほうではなく、走りもそこまで得意な方じゃない。愛嬌と性格で面接突破の可能性がないわけではないが、あそこに面接だけで入学すると痛い目に逢うだろう。正直言えば、田舎でいい人見つけて農業していた方がよほど幸せだと思う。

 下の子は、7つも離れているので判断しがたいが、可能性はあると思う。勉強は姉と同じく微妙だが、体格が非常に良く運動神経も良い。このまま頑張れば走りで入学できる可能性はあるだろう。

 

 そんな二人の様子をほのぼの眺めているのは、母や祖母などのウマ娘勢だ。

 基本ウマ娘というのは善良な性質で、カワイイ子らが頑張るというならば頑張れ! というものである。

 ボクみたいなひねているタイプの方が珍しい。

 

 一方心配そうに見ているのは特に叔父である。

 ボクのトレセン学園入学時も若干反対をしていた。意地悪などではなく心配だったのだろう。

 叔父とボクは血のつながりがあるが、従妹たちとは血がつながってないから何も言わないだろうが…… 心配なのは心配なのだろう。

 

 その心配も根拠がかなりある話である。

 トレセン学園というのは弱肉強食。

 Eclipse first, the rest nowhere.(唯一抜きん出て並ぶ者なし)という、教育機関とは思えないイカれたスクールモットーを持つ場所は伊達ではないのだ。

 まず、中高一貫校であるが、中学時代にトゥインクルシリーズで1勝以上できないと、高校に進学できない。

 未勝利戦はクラシッククラスまでしかなく、高校の生徒が出場するシニアクラスではそもそも未勝利ウマ娘にはレースがないのだ。

 サポート科などに回れば残ることも可能だが、レースをするためにトレセン学園に来て、レースに出れないというのはかなり屈辱であろう。

 そんな制度のため、入学時は1学年400人弱いるのだが、高校進学ができるのは、約半分である。

 

 そして、レースで食べていけるのはほんの一握り、GⅠに勝ったり、重賞にいくつも勝ったりしたようなウマ娘だけである。

 GⅠなんて年間20ぐらいしか開催してない上、一人でいくつも勝ったりするのだから、そこのラインにたどり着けるのは毎年20人もいない。

 入学人数から考えれば5%である。この5%は全ウマ娘の5%ではなく、難関校であるトレセン学園のなかでの5%である。全体で見たら1%なんて余裕で切るだろう。

 かなり分の悪い賭けであり、親としては心配になる数字だ。

 

 さらに、カリキュラムがかなり偏っている問題もある。

 もちろん教育機関であるので、文部省が定めた授業時間は最低限守っているが、座学は午前中のみ、午後はトレーニングという授業割り当てであり、座学は本当に最低ラインである。

 これで中学だけで投げ出されたら、高校受験だってかなり困るだろう。

 そしてトレセン学園の高等部を卒業しても良い大学に行けるかはかなり怪しい。

 内部進学できる日本トレーニングセンター大学はT大に匹敵する難関校である。

 なんせ、目的がトレーナーやURA幹部生を育てる場所なのだ。

 だから、一部のドリームトロフィー所属のウマ娘以外、よほど頑張らないと内部進学しても卒業できないのだ。

 そういう意味でかなり怖いシステムをしているのがトレセン学園である。

 

 だからこそ、生徒は名家と呼ばれる血族で結ばれた互助組織出身者がほとんどを占めるし、格下と見下される地方のトレセン学園でも、どこもそれなりに生徒が集まるのだ。

 地方のトレセン学園は知名度で見たら圧倒的に下であり、走りという面で見たら明らかに格下である。だが、下町の進学校として有名な大井トレセン学園や、ばんバと農業で名を馳せている帯広トレセン学園、工業と数学が強い金沢トレセン学園に、医学部向けの教育をしている高知トレセン学園等、学校としてみたときにはトレセン学園より優秀な進学校はいくつもある、というのが現状であった。

 

 まあボクは天才ですから問題ないわけですが。

 ごめんなさい嘘ですヒトソウルさんのおかげです。

 まあなんにしろ、未勝利で中学卒業になっても進学校に入れる自信がある。

 だからこそ、父や叔父、祖父が進学を許してくれたのである。

 

 そういう意味では、従妹たちについてもそんなに心配ないかもしれない。

 ろくに活躍できずに学園から投げ出されても、実家の農業を継ぐ道がある。

 二人とも叔母と同様、農業自体は好きな、生粋の農耕ウマ娘である。

 実家の農地もどうせ叔母が継ぐのだ。母に渡されても困るだけだし。

 それなら帯広とかのトレセン学園のほうがいい気がするが…… 地味だからなぁ……

 

 キャッキャしている叔母と従妹たち、母と祖母をみながら、ボクはいろいろ考えてしまうのであった。

 もし、トレセン学園進学を止めるとしたら、止められるのは祖父だけである。がんばれ。

 

 

 

 閑話休題。

 入学したからには、入学祝をみんなからもらえた。

 

 叔父は万年筆である。ボクの好みがよくわかっている。こういうかっこいい系の小物は大好きなのだ。趣味もいいので非常に気に入ってしまった。

 母方の祖母はツゲの櫛をくれた。昨日電話で話しただけなので、今日手に入るとは思っていなかったが、どうやら祖母の嫁入り道具らしい。年季が入っていて、艶があるとてもよさそうなものだ。大事なものなのはわかるし、大事に使おう。

 叔父以外の男衆は、みな髪飾り、耳飾りを持ってきた。

 母方の祖父からは、武田菱と桜があしらわれた、両耳に付ける耳飾りである。信玄好きの祖父らしい。

 父方の祖父からは、白い花をメインにした、垂れ下がるような髪飾りである。金魚草かなにかだろうか。花は詳しくないからわからないが、綺麗なものなのは確かだ。

 父からは、大きな赤い花の髪飾りだ。赤は好きなのだが、ちょっとこれは目立ち過ぎではないだろうか。

 どれも嫌いではないが…… こういうじゃらじゃらしたのを髪や耳に付けるのは少し苦手だったりする。

 だが、貰ったからには付けないわけにもいかない。ひとまず全部つけてみたが、頭お花畑になってしまった。

 まあ、何も頭に付けてないと、ファッションを気にする人が多いトレセン学園だと変にみられそうだし、ありがたくもらって日替わりでつけることにする。

 母からは、かわいらしいゴスロリっぽいワンピースが渡された。母は非常に少女趣味な外見ロリである。一児の母にはとても見えず、とてもかわいらしい人だ。

 そして、ボクにこういうひらひらした服を渡してくるのだ。可愛いのは嫌いではないが、身長が170cmオーバーで平均男性より高く、体型も凹凸が激しいボクでは似合わない。どこまで行ってもカワイイ母とは違うのだ。

 正直遠慮したいが、着ないと母が拗ねるのは容易に想像できるので、しぶしぶ着替えて見せることにした。

 こうして、ゴスロリ頭花祭りデカウマ娘の誕生である。

 ちょっとごてごてしすぎている気がする。フルアーマーガン〇ムじゃないんだぞ。

 

「お、おねえちゃん、かわいいよ……」

 

 まあ、従弟君が真っ赤になりながらそう言ってくれたので、多少自分が可愛いと錯覚できたのはいいことだった。

 叔母は、野菜を寮に送ってくれる約束をしてくれた。ある意味一番うれしいあたり、ボクは食い意地が張っているのだろう。

 まだまだ、色気より食い気であった。

 

 

 

 入学祝をもらったら、あとは遊んで食べるだけである。

 従妹弟たちと、走り回って見たりとかしたりする。

 ウマ娘3人とヒト息子1人という、従弟にとっては過酷すぎる条件のかけっこや鬼ごっこである。

 女性不信にならないだろうかと心配になるが、勝てないなりに頑張っていたし、ボクも目いっぱいほめてあげたので、まあ大丈夫だろうと信じたい。

 

 従弟も再会当初はかなり逃げられてしまったが、現在は元の通り甘えてくれている。

 叔母が早世しているので、母親代わり、とはさすがに言わないが、近い女性の親族として、従弟のことはかなり甘やかしてきたつもりである。

 だから逃げられて結構ショックだったが、一時の気の迷いでよかった。

 走り回って疲れたのか、現在はボクの胸に顔をうずめてお昼寝中である。

 かなりボクの胸が好きだが、おそらく母性を求めているのだろう。貧乳家系なのに、どこからの遺伝かわからないぐらいボクは圧倒的に大きいのだ。

 いきなり鷲摑みして来たこともあるクソガキどもに比べれば、ボクが抱きしめないと寄ってこない従弟はかなり紳士的である。

 ほら、そこの従妹たちはエッチとか言わない。お前らだってボクの胸大好きだろうがエロ姉妹。順番に抱きしめてやるから我慢しなさい。

 

「というか、叔母さんに抱きしめてもらいなよ」

「ママは板だからヤダ」

 

 従妹は断固拒否した。

 板はひどくないだろうか。

 まあ、うちの母も板だからよくわかるが。

 

 結局4人でわちゃわちゃしているうちに、みんな寝落ちてしまった。

 さんざん従弟のことをエッチと言っていた上の従妹は、ボクのスカートの中にもぐりこんで、ボクの太ももを抱き枕にして寝ていた。「おねえの生足~」とか「パンツがすごいアダルティ!」じゃないんだよ! 他人の下着を見ているこいつが一番エッチであるとボクは確信したし、真似しようとする下の従妹を止めるのがとても大変だった。

 

 

 

 そんな感じでみんなで遊んで、騒いで、おいしいものを食べて、入学を祝ってもらう会は終了した。

 写真もいっぱい取ったし、入学式の写真は即日現像のところで印刷してもらった。

 ローレルさんやローマンちゃんに渡す写真も確保した。

 

 スーパークリークさんやオグリキャップさんに会った話をしたら、写真が欲しいと騒ぎ始めた母や叔母だったが断固拒否した。

 そんなの約束したら寮長さんに迷惑である。

 ちなみに母や叔母はスーパークリークさんと奈瀬トレーナーの大ファンであり、父はタマモクロスさんのファンである。家族内でも結構推しが分かれるのだ。

 どこの家庭でもこういう家庭内不和はありそうだ。

 

 従弟くんは「ボクはお姉ちゃんのファンだし……」と真っ赤になっていってくれるのが可愛くてしょうがなかった。

 スーパークリークさんと奈瀬トレーナーの写真をねだり続ける従妹らはちょっと見習え。

 

 そんな風に、騒いで、食べて、騒いでをして、最終的には、従妹弟が疲れて眠ってしまった午後9時頃、ボクは父に送られてトレセン学園に戻るのであった。




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