ヒトソウル持ち青毛ウマ娘のトレセン学園生活   作:雅媛

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1-2 入学式 入学式開始まで

 少し気持ちが落ち着いてから、ボクはローレルさんと式場に向かい始める。

 お互いをクロさん、ローレルさんと呼びながら、いろいろな話をゆっくりとし始める。

 話題は自然と、お互い通っていた小学校の話になった。

 

「クロさんは、普通の小学校通ってたんですか」

「そうそう、市立の公立小学校だよ」

「ウマ娘の小学校とどう違うんでしょう?」

 

 ローレルさんが興味深そうに聞いてくる。

 言葉遣いや立ち振る舞いから、ローレルさんからお嬢様オーラを感じる。

 おそらく彼女もウマ娘専門の一流小学校に通っていたのだろう。

 それだと確かに、普通の公立小学校に通うウマ娘がどんなだったか、気になるかもしれない。

 おそらく全く想像がつかないのだろう。現にボクも、ウマ娘専門の一流小学校がどんな所か全くわからない。

 

「まず生徒の半分以上が男の子だったよ」

「へー。男の子ってどんな感じなの?」

 

 純粋培養の子っぽい反応だ。

 おそらく近くに同年代の異性なんてほとんどいないだろう。

 だからイメージがわかないらしい。

 ただ、興味津々である。

 

「クソガキで本当に大変だった」

「えっ」

「いやだって、いきなり尻尾引っ張って来たりするんだよ」

「何それ怖い」

 

 思わずローレルさんが、自分の尻尾を腰の横から回してぎゅっと握る。

 尻尾は非常に敏感なのだ。引っ張られたら無茶苦茶痛いのだ。

 

「だから代わりに相手の髪の毛全力で引っ張ってやったりしたり」

「何それ怖い」

「大丈夫、全部引っこ抜いて10円ハゲにしてやったから」

「強いね、クロちゃん……」

 

 若干ローレルさんに引かれた気がする。

 だが、クソガキが悪い事したら反撃しないと本気で痛いのだ。

 先生に泣きついてもいいが、ボクの中の負けん気が反撃を選択させた。

 

 さすがに高学年になるとそこまでやってくるのはほとんどいなくなったが、低学年の頃は大変だったのだ。

 

「最後のほうまで尻尾引っ張って絡んでくるのもいて」

「面倒だね」

「まあ、好きな子にいたずらしたい気持ちだったみたいだけど」

「え?」

「卒業の時に告白されたし」

「ドキドキ」

 

 コイバナは万国共通のネタである。

 特に彼女のようなウマ娘学校純真培養だと、こんな話周りからも出てこないだろう。

 こちらに耳が完全に向いており、すごく興味深そうだ。

 

「で、どうしたの?」

「いや、絶対嫌って断ったけど」

「なんで!?」

「暴力振るってくる相手なんて絶対嫌じゃない」

「確かに……」

 

 あれが恋心から出る行動だとしても、それは小学生だって許されるものではない。

 興味を引きたいならほかの方法を取るべきだったはずであり、ボクは単純にあいつが嫌いだった。

 まあ、それ以前に男性を異性としてみるのが結構難しいのもある。

 男性ヒトソウルの影響だろうか。正直男性には興味がなく、綺麗な女性やウマ娘のほうが好きである。

 特に隣にいるローレルさんみたいな外見は個人的に趣味に合っている。

 もっともまだ知り合って1日でそういう話されても困るだろうし、外見を見て楽しむだけにとどめておく。

 

「でも、クロさん可愛いし、モテたんじゃないんですか?」

「まあ、多少はモテてたんだと思うよ」

 

 ローレルさんはかわいいといってくれたが、ボクの可愛さなどウマ娘の中では下の方、一般的なラインでもそこそこ可愛いぐらいだと自覚している。

 小学校の頃でももっとかわいい子がクラスにはいた。

 

 ただ、程よく可愛くて、男性ヒトソウルのせいで男性っぽい好みで、男の子たちとも遊ぶボクは、かなり近寄りやすい対象だったと思う。

 だから多分モテる方だったと思うし、告白だってされたことがあった。

 

「それで? それで?」

「?」

「どんなロマンスが?」

「小学生にロマンスなんてないよ……」

 

 恋愛小説かなにかの見過ぎである。

 この年齢にロマンスを求めないでほしい。

 

「というかどんなのを期待してるの?」

「ちゅ、チューとか……」

「かわいいなローレルさん」

 

 真っ赤にしながらそれを言うローレルさんが一番かわいい。

 そこまで照れるなら言わなくてもいい気がするが好奇心が勝ったのだろう。

 

「そういうローレルさんはチューしたことあるの」

「な、ないですよ!?」

「真っ赤になって本当にかわいいな!?」

 

 聞いてる方が真っ赤になってて本当に可愛かった。語彙が死ぬ。

 

「まあ、ローレルさんがイメージしているようなロマンスなんてまるでなくて、悪ガキとガキンチョばっかりの楽しい場所だったよ」

「なんかちょっと残念」

「そういうローレルさんのところはどんなだったの?」

 

 前世記憶と照らし合わせても、公立の小学校なんて特に代わり映えもしない。

 むしろウマ娘しかいない小学校のほうが興味があった。

 

「えっと、普通だよ?」

「その普通が気になるんだけど。というかボクの小学校なんて普通オブ普通なんだけど。公立の小学校だし」

「男の子がいる時点で普通じゃないよ!?」

「その発想が普通じゃないよ!? 人類の約半分男の子だよ!?」

 

 ローレルさんの偏り過ぎている意見に思わず突っ込まざるを得なかった。

 

「で、ウマ娘ばっかりだとどんな感じなの? トレセン学園も似たようなところあるだろうし、かなり興味あるんだけど」

「えっとね、時々思い立つと授業中走り出す子が出て」

「いや普通にダメでしょそれ」

「それにつられて走り出す子も出て」

「いやダメでしょそれ」

「最後はみんなで走りだしちゃうこととかかな?」

「学級崩壊じゃん」

 

 ウマ娘学級怖すぎる。

 トレセン学園のクラスでもそんなこと起きたら、きっとボクはついていけず一人取り残される。

 いや、先生が残るから二人か。

 

「大丈夫。月に1度ぐらいしか起きないから」

「毎月の恒例行事としては全然大丈夫じゃないよ」

 

 月一学級崩壊が起きるとか、本気でやばい。

 冗談か本気かわからないのが本当に怖いんだけど……

 戦々恐々としながら、話題を変えることにした。

 ウマ娘学校での恋愛事情だ。

 

「というか、ローレルさんボクの恋愛事情気にしてたけど、ローレルさんの恋愛事情はどうだったの?」

「私?」

「ローレルさん美人だし、ちょっと中性的だからほかの子にモテたんじゃないの?」

「そんなことないですよー」

 

 ないのか。残念なような、安心したような、そんな気持ちである。

 

「でも、ウマ娘同士で付き合ってる子っていなかったの?」

「いたかもしれないですけど私は知りませんね。あまりそういう子たちって、言いふらさないですし」

「なるほど」

 

 なかなか日陰から出てくるのは難しいのかもしれない。

 ウマ娘同士のカップルの存在を認識するのは難しそうだった。

 

「それよりもかっこいい男の先生とか人気だったよ」

「あー、そっか、そういう人はいるのか」

 

 男性が全くいない空間ではない。最低でも教師という男性はいるのだ。

 そこに恋愛感情が集まるのはある意味当然だろう。応えたら犯罪だが。

 とくに、中学生が大学生の男性と恋愛するアニメが最近流行っているし、年上の男性へのあこがれは最近のトレンドかもしれない。

 

「ローレルさんもあこがれの人とかいたの?」

「いなかったですね。どうもぴんと来なくて。私は頼りがいがある人がいいんです」

「学校除いてもそういう人いないの?」

「いなかったですねぇ」

 

 ローレルさんぐらいお嬢様だと、おうちにトレーナーとか居そうだし、そういう頼りがいのある憧れのお兄さんとかいないかと思ったのだが…… そういう人もいなさそうだ。

 まだまだローレルさんもボクも色恋沙汰は遠そうだった。

 

 

 

 そんな風におしゃべりしながら歩いていると、入学式会場にたどり着いた。

 

「じゃあ、5時ぐらいにそっちに遊びに行くから」

「わかりました」

 

 そんな約束をして、ボクはローレルさんと別れた。

 そのまま、自分の席へと向かう。席は予め決まっており、ボクは指定された席に腰を下ろす。

 隣にはすでにウマ娘が座っている。クラスごとに席がまとめられていると聞いているので、おそらくクラスメイトになるのだろう。

 

「こんにちは。初めまして」

「あ、初めまして」

 

 挨拶は大事。古事記も書いてある。いや、書いてないけど挨拶は大事だ。

 脈絡もないが一応自己紹介をしておこうか。

 

「ボクはクロクモ。多分クラス一緒になりますよね。よろしくお願いします」

「よろしくね。私はクリエイトセンドだよ」

 

 芦毛で髪の長い彼女はそう挨拶を返してくれる。

 だが、それ以上話が進まなかった。

 いやだって、同年代のウマ娘と話すのほとんど経験がないし。

 趣味の話だって難しい。絶対この子たち、ドラ〇ンクエストとかやってないでしょ。

 地元の小学校の連中なら、特に男子連中は喜んでやってたが、こんなお嬢様方がファミ□ンなんてやってなさそうである。

 

 どうしようか悩んでいると、反対側にも人が来た。

 

「こんにちは」

「こんにちは」

 

 芦毛のその子と挨拶をして、それだけである。

 芦毛と芦毛に挟まれて、芦毛になっちゃう気分になりながら、ボクは入学式が始まるのを待ち続けるのであった。




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