ヒトソウル持ち青毛ウマ娘のトレセン学園生活   作:雅媛

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1-3 栗東寮 ルームメイト

 退屈な、お偉いさんのあいさつを無事睡眠時間で切り抜けると、入学式はすぐに終わった。

 多分いびきはかいていないから大丈夫である。

 横の2人にはばれてそうだが、気にしないことにした。

 

 ボクは、腕でよだれをぬぐうと、さも真剣に聞いていましたよという雰囲気を醸し出して立ち上がる。

 このあとボクは、寮へ向かう。入学式後から、新入生は寮には入れるのだ。

 どこか寄り道することも可能だが、さっさと行ってルームメイトを確認したいし、荷物も整理したい。

 入学式が終わって学園内の探索に向かう人

 学園のカフェで何か食べようとしている人

 学園の外へ遊びに行こうとしている人

 そんな人たちもみながら、ボクは寮へと向かう人の流れに乗るのであった。

 

 

 

 寮の場所は、学園の正門を出て、道路を挟んだ向かい側である。

 敷地内に入ると、中央に通路があり、向かって右側に美浦寮、左側に栗東寮が存在した。

 それぞれの寮は4階建ての4つの建物が渡り廊下でつながっているような形をしていて、入り口も寮ごとに4か所ずつある。

 ボクの部屋は栗東の4-339だから…… 一番奥の4号棟の、3階の39番の部屋、となる。

 どの入り口からでも部屋へは行けるが、寮生のそれぞれの下駄箱は、自分が所属する棟の入り口にあるから必然的にその棟の入り口、ボクだったら4号棟の入り口を使うことになる。

 寮の周辺で談話している子たちを横目に、ボクはまっすぐと一番奥の、4号連の入り口に向かう…… その前に、寮長さんに挨拶をすることにした。

 それぞれの寮長さんが寮の敷地の入り口にいて、皆に挨拶しているのだ。

 

 すでに人だかりができて、あいさつの列ができているところに、ボクも並ぶ。

 挨拶自体は一言で終わらせているらしく、列の進みは速い。

 まあ、一寮あたり800人ぐらいいて、新入生だけでも100人は超える数がいるのだから、のんびり挨拶をしていたら日が暮れてしまう。

 すぐにボクの番も回ってきた。

 

「クロクモです。よろしくお願いします」

「栗東寮長のスーパークリークです。困ったら気軽に頼ってくださいね」

「わかりました」

 

 挨拶して、握手して、終わりである。

 だが、生クリークさんを見れたボクとしてはかなりテンションが上がる。

 スーパークリークといったらオグリキャップ、イナリワンと並ぶ三強といわれた超有名ウマ娘である。

 数々の激闘は、ボクもテレビ越しで全部見ており、テレビの中のヒロインが目の前にいるというだけで、テンション爆上がりである。

 そんな風にテンションが上がるのはボクだけではないようである。

 他の子の挨拶を見ていると興奮しすぎて早口になってしまうぐらいならいいほうで、テンションが上がりすぎて走り出す子や、気絶してしまう子も出るぐらいであった。

 

 本当はボクだって、そういう人たちに並ぶ成績を得る必要があるのだが、今はまだ、ミーハーで楽しむ程度だっていいだろう。

 クリークさんのぬくもりが残る手を見ながら、ボクは自分の部屋へと向かうのであった。

 

 

 

 寮に入り、玄関でローファーを脱いで下駄箱に入れる。

 部屋ごとに下駄箱は分かれており、靴が4,5足は入りそうなぐらい大きい。

 制服のローファーと、トレーニング用のスニーカーと、あと私服用の靴なんかを入れるのだろうか。

 そのまま靴下で中に入ると、上に行く階段と、その横に広い談話スペースがあった。

 談話スペースはかなり人が居る。

 上級生っぽい人もいれば、新入生っぽい人もいる。

 後輩にいろいろ教えてくれるべく待っている先輩がいるのかもしれない。

 そこに交じりたくなる衝動を押さえつつ、ボクはまず自分の部屋に向かう。

 荷物整理もしたいし、制服も着替えたい。

 制服はかわいいのだが、小学校生活全くスカートを履かなかったボクとしては、スカートというのはどうも慣れないのだ。

 走って捲れて中が見えたらとか考えてしまい、現在も下にスポーツスパッツを履いている。それでもちょっと心もとなかった。

 

 ついでに部屋に戻ればルームメイトとも会えるかもしれないし、ルームメイトと会えたら一緒に寮内を探索しよう。

 そんなことを考えながら、ボクは部屋へと上がっていった。

 

 寮はロの字型の真ん中が2階以上は空いている構造になっており、廊下も外に面しているので開放感があって明るかった。

 3階に上がり、それぞれの部屋番号のプレートを確認しながら、自分の部屋を探していく。いくつかの部屋の下にはその部屋の住人の名前が書いてある。

 新しい紙から、古い紙まであり、おそらく新入生用に付けていて、そのままつけ続ける人もいれば、外してしまう人もいるのだろう。

 何にしろ、部屋を間違える、ということはなさそうである。

 ボクの部屋は…… と左回りに順々に探していく。301,302…… 順番に回っていく。

 

 途中に共同トイレと、談話スペースも見つけた。テレビがあったり、棚にいろいろごちゃごちゃ置いてあったり…… きっと遊んだりもできるのだろう。

 先輩らしいウマ娘がくつろいでテレビを見ている。また後でここにも立ち寄ろうと心の中でメモをした。

 そのまま3階を一周して、ほとんど階段に近いところまで来たところで、やっと部屋を見つけた。

 ワンフロア40部屋らしく、階段横の右側の部屋が340号室で、ボクの部屋はその隣だった。

 そんなことに気づいていなかったボクは、優雅に意味もなく一周してしまったようだ。少し恥ずかしかった。

 部屋番号のプレートを見るとボクの名前ともう一つ名前が書いてある。

 オグリローマン。

 当然知らない名前だが、どんな子だろうか。

 扉を開けて、ボクは中に入るのだった。

 

 

 

 扉を開けると、背中が見えた。

 芦毛の真っ白な髪の彼女は段ボールを開けているらしい。

 おそらくオグリローマンさんであろう。

 扉があいた音に気付いた彼女は、ボクの方に振り向いた。

 

「初めまして。ルームメイトとしてお世話になる中等部1年生のクロクモです。よろしくね」

「こっちこそ初めまして。オグリローマンよ。私も中等部1年だから同い年ね。よろしく」

 

 にかっ、と笑う快活そうな彼女だが、どこかで見たことがあるような顔な気がする。

 どこだろうか。知り合いではないと思うのだが……

 

「部屋のルールはおいおい決めましょう。まずは荷解きしないとね」

「はーい。あ、あとで一緒に探検行こうよ。ローマンさん、ボクより先に着いてるってことはどこにもよってないでしょ」

「いいわよ。じゃあさっさと片付けちゃいましょう」

 

 そういって作業に戻るローマンさん。

 ボクも段ボールを開けて荷物を取り出し始める。

 予備の夏服の制服を入り口横のクローゼットにかける。母には制服が傷まないように毎日交互に着るように強く言われている。

 あとは体操服。シャツとブルマ、上下のジャージがそれぞれ3組。

 これを制服の下に置く。

 後は下着類や靴下をクローゼットの下の棚の中に入れて、外行き用として持たされた白いワンピースを掛ける。

 部屋着のTシャツとレギンス、あとはタオルをしまえば服は終わりである。

 残りは机横の本棚に教科書を詰め込んで、文房具類を机の上に置く。

 最後に持ってきたファミコンとゲームボーイを机の上において完了である。荷物少ないな。

 

 段ボールもさっさとたたんでしまい、一通り終わるが、ローマンさんはまだ苦戦している。

 ひとまず制服から着替えるかな、と制服を脱ぎ始める。

 

「ちょ、ちょっと何してんのよ!?」

「いや、制服から着替えようかと思って」

「いきなり服を脱ぎだすからびっくりしたわ……」

 

 たしかにちょっと驚くかもしれない。共同生活はこういうところも気を使わないといけないんだなと感じた瞬間だった。

 

 

 

 制服を全部脱ぎ捨てて、上はブラジャーだけ、下はスカートの下に履いていたレギンスだけの姿になる。

 制服はクローゼットに掛け、代わりにシンボリルドルフコラボTシャツを取り出す。

 皇帝シンボリルドルフの珠玉のギャグが書かれたTシャツである。

『アルミ缶の上にある蜜柑』と文字が書かれ、缶と蜜柑のイラストが書かれていた。

 それを着て、服装は完成である。ずいぶん身軽になった気がした。

 

「ちょっとクロクモさん、ずいぶんラフすぎない?」

「んー、でも普段からこんな格好だったし」

「いろいろ問題がありそうじゃないそれ……」

「でも小学校もこんな格好だったよ?」

 

 そんな変な格好だろうか? 

 ルドルフTシャツが良くないのだろうか。

 ひとまずベッドに腰掛け、ぼんやりとローマンさんの荷物整理を眺める。

 

「というか、クロクモさん、荷物少なすぎない?」

「そうかな? 足りなければ買い足す予定だけど」

「髪用のブラシと尻尾用のブラシは?」

「?」

「……」

 

 そういえばブラシは持ってこなかったなと思い出す。

 だが、髪用と尻尾用で分けるとか、かなりおしゃれに気を遣うんだなとぼんやり聞き流した。

 

「あと髪と尻尾のケア用品は?」

「お風呂にシャンプーとトリートメントはあるって寮の栞に書いてなかったっけ?」

「……」

 

 何か致命的な間違いをしているような気もするが、知識がなさ過ぎて全くわからない。

 ヒトソウルさんに聞いても、なんせ男性だったせいか、そういう知識はほとんどなかった。

 

「クロクモさん、いろいろ準備が足りないものがあると思うのだけれども……」

「どうなんだろう、よくわかんないや。足りなければ購買で買いなさいってお小遣いはもらってるよ」

「ひとまず、先輩とか、経験豊富な人の意見を聞いた方がいいと思うわ」

「そうかもしれないけど、頼れる相手がいないよ」

 

 知り合いなど、入学時に会ったサクラローレルさんぐらいだ。

 入学式の隣にいたクラスメイトとのコミュニケーションは失敗で終わっている。

 先輩などとんと候補が浮かばない。さっきぐるっと回ったときに談話室にいた人に聞いてみようか。

 そんなことを考えていると、ローマンさんがアイデアを出してくれた。

 

「私のお姉ちゃんがいるから、このあと一緒に会いに行きましょう。多分、うん、多分聞くといいと思うわ」

「へぇ、お姉ちゃんがいるんだ。どんな人?」

「オグリキャップっていうんだけど」

 

 ローマンさんがあげた名前は予想以上に大物であった。




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