ヒトソウル持ち青毛ウマ娘のトレセン学園生活   作:雅媛

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1-4 栗東寮 先輩の部屋

 ローマンさんの先導で、オグリキャップさんの部屋へと移動を始める。

 

「スリッパとか履かないの?」

「裸足が好きなんです。気になります?」

「いや、そうじゃないけど、貴方ずぼらそうだから、スリッパ忘れただけかなと思って。予備とかあるし」

「んー、何か足にくっついているの嫌いなんですよね。だから裸足主義です」

「ならいいわ」

 

 ぺたぺたと足音をさせてついていっていたら、ローマンさんにそんな話をされた。

 制服を着替えたときに靴下も脱いでしまっているので、現状ボクは裸足だ。

 部屋の床は基本フローリングだし、足跡がつくと嫌と言われたらどうしようと思ったが、スリッパを貸してくれようとしただけのようだ。

 だが、そもそもスリッパが動きにくくてあまり好きではないので、遠慮しておく。

 ローマンさんのスリッパはオグリさんの顔があしらわれたかわいいスリッパなので貸してくれるスリッパにもちょっと興味があったが…… まあ、汚すと大変そうだし。

 一応、メモを取り出して、掃除用のフローリングワイパーを買うことをメモしておく。

 

 渡り廊下を渡って、2号棟の1階にある個室に向かう。

 オグリキャップさんの部屋はそこらしい。

 各棟の1階に一部屋だけ居住用の部屋があり、寮長とか、特別な人が使う部屋となっている。

 少し広かったりするらしいし、基本個室だからかなり優遇されている部屋だ。

 

「そう言えばオグリさんってもう大学部ですよね? なんで寮に残ったんですか?」

 

 トレセン学園は中高一貫だが、併設校が幾つもある。

 日本トレーニングセンター大学というのが、トレセン学園の近隣に存在しており、トレセン学園を卒業するとそちらに進学することができる。通称大学部だ。

 大学はトレーナーを目指す人とかもいる共学であり、トレセン学園のからあまり離れていない場所に存在している。

 なので、寮に住んで寮から通うことも可能だが、基本的に大学部になると皆寮から離れる。残るのは、スーパークリークさんのような寮長をしている人や、中高の学生の生活をサポートするトレセン学園生徒生活部会、通称生徒会のメンバーぐらいである。

 オグリキャップさんはどちらでもなかった記憶だ。まあ、この業界一番の顔だから、残るといえば拒否はされないと思うが、どうして残ったのか少し気になった。

 

「それは、私が今年入学するから心配だからって残ったらしくて」

「あら、ローマンさん愛されてるね」

「お姉ちゃんのこと大好きだからうれしいけど、なんかお姉ちゃんのこと縛ってるみたいで複雑な気分」

「素直に甘えておいていいんじゃない?」

 

 しつこく構ってくるのが嫌、とかならば、対応を考えなければならないが、ローマンさんからはおねえちゃん大好きシスコンのオーラが漏れ出ている。

 だから嬉しいが、一方で大好きだからこそ負担になるのが嫌なのだろう。

 まあ、甘えればいいと思うよ! とは思う。

 ボク個人としてはそう思うとはいえ、口に出し過ぎても逆効果だし、これくらいにとどめておく。

 

「お姉ちゃんすごいんだよ」

「さすがのボクでもオグリキャップさんの活躍は知ってるよ」

 

 三強の一人、オグリキャップは地方から転籍して来たウマ娘であり、有馬記念に2回勝利しているアイドルウマ娘である。

 地方から成りあがってきた出自に、素晴らしい末脚、普段のかなり天然な態度もあり、おそらく今一番人気のあるウマ娘である。

 ちなみに三強のうちのだれのファンかというのは不用意に話すと喧嘩になるので注意が必要だ。

 ローマンさんは純度120%のオグリキャップファンだろう。

 ボクは三強ではないが、オグリキャップさんのライバルであった、ちっちゃくてかわいいタマモクロスさんのファンであるので、黙っておく。というかなんでタマモクロスさんが三強に入っていないのか、常々不満なのだが……

 

「で、私の学費とかも全部出してくれてるの」

「優しいお姉ちゃんだねぇ」

「でも何も返せてなくて」

 

 ちょっとネガティブになるローマンさん。

 話題選択に失敗したと思いながら、何を話すか考える。

 こんなお姉ちゃん大好きな可愛い妹がいるだけでご褒美だと思うが、そんな慰めが通用しないのはよくわかっている。

 単純に気に病んでいるだけではなくて、大好きなお姉ちゃんに何かしてあげたいのだろう。

 まあそれなら、簡単なことが一つ思いつく。

 

「じゃあ何か料理でも作ってあげれば?」

「料理?」

「そそ、手料理。オグリキャップさんと言ったら大食いだし、食べるの好きだろうから何か作ってあげたら喜ぶんじゃない?」

「……お姉ちゃん満腹するだけの料理はさすがに無理だよ……」

「いや、全部じゃなくて一部でもいいと思うんだ」

 

 フードファイターとしてもやっていけそうな大食漢のオグリキャップさん。

 その食事を全部作るのは無理だろう。

 だが、気持ちを込めて一品とか作るだけならそう大変でもないはずだ。

 好きな食べ物とか、そういうのを作るだけでもお礼になるはずだろう。

 

「うーん、考えてみる」

「何だったら手伝うから。料理は多少できるんだ」

 

 うちで料理を作るのは、主に父である。料理好きらしく、結構頻繁に料理を作ってくれる。

 母は基本食べるのが好きで、料理があまり好きではないので、ボクが作るというと喜んで台所を譲ってくれる。

 そういうこともあり、ボクはそこそこ料理ができる。

 なんか今回のことといい、今後と言い、ローマンさんに苦労を掛けることは多そうなので、ここで一度恩を売っておこう。

 そんな打算マシマシの提案である。

 

「うん、よろしくね」

 

 ローマンさんの笑顔がまぶしかった。

 

 

 

 そんな話をしていると、オグリキャップさんの部屋にたどり着く。

 

「おねーちゃーん、はいるよー」

 

 ローマンさんは声はかけたがノックはせず、遠慮なく扉を開けて中に入った。

 オグリキャップさんの部屋は、ボクたちの部屋より一回り広かった。

 ベッドは一つだけ。

 テーブルとソファが置いてあってお話がしやすそうな家具が置いてある。

 中には芦毛のウマ娘が二人いた。

 

「お姉ちゃんやっほ」

「ローマンか。いらっしゃい」

 

 一人はローマンさんのお姉ちゃんであるオグリキャップさん。

 

「なんや、それがキャップの妹かい」

 

 もう一人は、ボクが大ファンな相手、タマモクロスさんであった。

 

「初めまして。お姉ちゃんの妹の、オグリローマンです!!」

「元気なのはいいこっちゃ。で、そっちのでかいのは?」

「はー、はー」

「クロクモさん大丈夫!? なんか息が荒いけど!?」

「いや、生タマちゃん見て動悸が止まらないだけだから全然絶好調だよ」

 

 リアルで見るとやっぱり小っちゃくてかわいいな。

 予想以上の可愛さに、ボクのハートは炸裂寸前であった。

 

「ボクはクロクモと言います!! オグリローマンさんのルームメイトです!! タマモクロスさんの大ファンですので、今日はお会いできて光栄です!!」

「お、おう、元気なのはいいと思うで……」

 

 元気なのがいいとローマンさんが褒められていたので最大限大声で挨拶したのだが、引かれてしまった。解せぬ。

 

「で、ローマン。どうしたんだ?」

「いや、お姉ちゃん、クロクモさん見てよ」

 

 そういってローマンさんはボクのことを指した。

 ボクに注目が集まって少し照れてしまう。

 

「どう思う?」

「ルドルフさんのTシャツだな。私も1枚持ってるぞ。タマがプレゼントしてくれたんだ」

「いやそうじゃないやろ!! ルームメイトがダサい上に痴女みたいな格好してるし、さらに雑な生活してるからアドバイスしてくれって頼みに来たんやろ!!」

 

 オグリキャップさんの発言を聞いてすぐ、タマモクロスさんがツッコミを入れる。

 トゥインクルシリーズ現役時代から、この二人の掛け合いは有名であった。

 でも痴女ってなんだ。単にTシャツと一分丈のレギンスだけの格好だし、そんなに露出も多くないと思うのだが。

 

「そうなのか、ローマン?」

「格好がやばいのは一目瞭然だし、あと髪と尻尾の手入れが全くできてないやん。多分生活が雑だからそういうところがローマンは気になったんやろ」

「よくわかるなタマ」

「お前が最初に部屋に来た頃もこんなかんじやったからな……」

 

 超一流アイドルウマ娘のオグリさん。そんな彼女の髪も尻尾も今は純白に輝いているが、昔はもっと適当だったのだろうか。ちょっと興味がある。

 ちなみにローマンさんを見ると、キャップさんと比べれば全然だが、ちゃんと手入れしてそうである。

 石鹼で洗うだけのボクとはたぶん全く違う。

 こう見ると、ボサボサな尻尾と髪をしているボクと違いすぎて、少し恥ずかしくなってきた。自分でもちゃんとケアとかしてみたい気持ちになってくる。

 

「私もお手入れのこととか詳しくないですし、お姉ちゃんに教えてもらおうかなって」

「キャップにそれを頼むのは難しいと思うけどな……」

「え、でもお姉ちゃん、最近実家に帰るといろいろお手入れしてますよ?」

 

 お風呂で丁寧に、素手だけで洗って、十分流したら髪用と尻尾用で別々のコンディショナーをつけて、さらにお風呂から上がったら何か別のものをつけながらブラシで梳かして、ということとかをしていたらしい。

 ローマンさんがキャップさんと一緒にお風呂に入るぐらい仲がいいことと、あの2種類のブラシはキャップさんからもらったことも同時に分かった。やっぱり仲良し姉妹である。

 

「あれは、キタハラにちゃんとやることを言われているからな」

「キタハラ?」

「キャップのトレーナーや。キャップの世話は全部キタハラが見てる。だからキャップ自身は自分に対してやることはわかっても、どうしてそれがいいかわかってないから、違うことが必要になる可能性がある他人には教えられん」

 

 トレーナーさんって髪とか肌とかの手入れまで見てくれるのか。

 そういう手入れとかがよくわからないボクとしては羨ましい限りである。

 

「せやかてウチもそんなに詳しいわけではないからな。そういうのに詳しい友達探すのが一番やで」

「そうですか……」

 

 正確には聞いていないが、おそらくローマンさんはキャップさんと同じ笠松出身だろう。とするとボクと同じく知り合いは少なそうだ。

 だが、ボクには早速できた友達が一人いる。ローレルさんだ。

 ローレルさんなら詳しいだろうと勝手に思った。髪の毛サラサラだったし、なんとなく詳しそうな気がする。後で聞いてみよう、なんてことを考えていると、タマモクロスさんはボクの格好も気になったようで、さらに話しかけてくる。

 

「というかクロすけ。お前その恰好、寮内とは言えもう少しどうにかならんのか」

「そんなに変ですかね、このTシャツ」

 

 シンボリルドルフTシャツの評判が悪いのは聞いているが、個人的には結構気に入っている。周りには結構受けるし、肌触りもいいのだ。

 だがやはりトレセン学園となると許されないのだろうか。

 

「普通に罰ゲームに使われてるTシャツ常用してるだけでおかしいが…… まあそれ、ルドルフ前会長もよく着てたし、そこまで変やない。というかそこやなくて、もうちょっと他人の目を気にするべきやろ。ウマ娘しかいない寮内からって痴女みたいな恰好はさすがに気を抜きすぎや」

「寮内って、普通にこれで外とか歩いてますけど」

 

 小学校に通っているときなど、これに近い格好で学校に行っていた。動きやすいし。

 そういう話をすると、タマちゃんがとても驚いている。

 

「クロすけ、おまえ、身長とスリーサイズいくつや。入学直前に身体測定あったやろ」

「身長173cm スリーサイズは上から96,58,94だったと思います」

「こんなでかいの付けたウマ娘がそんな薄着しちゃいかんやろ! 卑猥な目で見られるに決まってる!!」

「え、でもボク、数日前まで小学生ですよ?」

 

 ボクの胸をわしづかみしてくるタマちゃんだが、ボクはいまいちピンとこない。だって小学生だし。今やっと中学生になったぐらいだ。

 ロリコンならそういう目を向けるかもしれないが、それはもうどうしようもないし。

 

「クロすけ、カップ数いくつや」

「今つけてるのはHですね」

「ホントでかいな…… Hカップの女がシャツ一枚で、ブラ透けさせてた格好で道歩いてたらどう思う?」

「やばいですね」

 

 ラフすぎるとか通り越していろいろ卑猥な目で見られそうである。

 

「それで下はぴっちりした薄手のレギンスや。どうおもう?」

「ドキドキしてしまいますね。あれ?」

「やっと気づいたか。それがお前や」

 

 そもそもボクは、いままで自分が女性という意識があんまりなかった。

 そして小学生だしと思っていたので、全く何も考えていなかったが、今の格好、すごい格好なのではないか。

 タマモクロスさんの指摘で気づいたボクは急に恥ずかしくなった。

 小学校の男子とか、道行く人とかに自分の痴女っぷりを見せつけていたのかボクは。

 ま、まあ減るものじゃないし、と必死に自分を説得する。

 

「その恰好、外はもちろん寮内でもせんほうがいいで。部屋の中ぐらいにしとき」

「でも、これ以外私服がないんですよね」

 

 タマモクロスさんのありがたいご指摘を踏まえようと思うが、そうすると服がない。

 

「普段は制服着てたらいいやん。ウチもほとんど制服だったわ」

「でも制服って、スカートで頼りなくないですか? 中見えちゃいそうですし」

「そのスカートの中を今まで見せびらかしてたのがお前やけどな」

「たしかに!!」

 

 スカートの中を見られたら恥ずかしいという思いが先行していたが、今着ているレギンスがまさにそのスカートの中身だった。

 よくよく考えたら何を気にしているか全く訳が分からないことにボクは今更ながらに気づいた。

 ひとまず自棄になったボクは、(しな)を作ってタマちゃんに色仕掛けしてみることにする。

 くねくねすると、タマモクロスさんは怪訝な顔をした。

 

「なんや。急にくねくねし始めて」

「色仕掛け?」

「無理があるやろ」

 

 残念ながらまるで効果がなかった。

 

 

 

 ひとまず暫く制服暮らしをすることに決めたボクだったが、お手入れ関係はまるで進展がしなかった。

 ローマンさんは、キャップさんからお手入れセットとか、トレーニング用品をもらっている。

 ローマンさんとキャップさんはかなり似ている。髪質とかも同じようで、流用はしやすいのだろう。

 お姉ちゃんとかいいな、と羨ましく思っているとタマモクロスさんがグッズを渡してくれた。

 

「ほれ、クロすけに古いトレーニング用具やるわ。今日来たのはお古のグッズを誰かにやろうと思ってやからな。丁度ええわ」

「わーい! ありがとうございます!!」

 

 タマモさんからいくつかトレーニンググッズをもらった。

 アンクルウエイトにダンベル、ヨガマットと、部屋で軽くトレーニングできる用のグッズのようだ。

 早速アンクルウェイトを手足につけてみる。

 外見は薄手だが、それでも結構重い。

 ドラゴン〇ールなんかの重い修行着みたいに思えてきてテンションが上がる。

 ついでに匂いをかいでみる。

 

「ちゃんと洗ってるから匂いはせんで」

「残念」

「残念なのはお前や」

 

 何にしろ、大ファンのタマモクロスさんからもらったグッズは大切にさせてもらうことにした。

 

 

 

 もらった荷物をもって、一度部屋へとローマンさんと戻る。

 

「私、地方から出てるから知り合いほとんどいないんだけど、クロちゃんは、誰かそういうファッションとかに詳しい人っているの?」

「ボクも普通の公立校出身だから知り合いいないんだけど、入学式前に一人友達になった子がいるからその子のところ行ってみようか」

 

 友達いない同盟だが、幸いなことに、一人良さそうなこと知り合いになっていた。

 

「どんな人なの?」

「サクラローレルさんって言って、髪の毛サラサラで、とってもきれいな人だったよ。一度向こうの部屋に遊びに行く約束してるし、手入れぐらいは教えてもらえないかなーと」

 

 ひとまず服装は制服に着替えた。

 スカートと考えるとスース―して落ち着かなかったが、いつもの普段着の上にスカートを重ねてると考えると何も気にならなくなった。発想の転換は大事である。

 

「ということで、今から早速行くけど、どうする?」

「私はひとまずいいわ。お姉ちゃんからいろいろ教えてもったし、それ全部試してから考える」

「了解。夕飯は一緒に食べようね」

 

 ボクはローマンさんと別れ、ローレルさんの部屋へと向かうのであった。




アプリなんかだと、タマモのオグリキャップの呼び方はオグリですが、オグリがいっぱいいるのでキャップと呼ばせています。
というか冠名呼ぶのおかしくない?
まあそれを言い出すとタマモ(冠名)+クロス(父のシービークロスから)のタマちゃんは何て呼ぶんだってなるんですが。あとサイレンススズカも。

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