冒険者専門弁護士   作:マスターBT

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ゲームやり過ぎで遅くなりました。あと、裁判シーン、今回無しです。上手いこと入れられなかった


金は天下の回りもの 後編

「ギルドに問題事を持ち込まなかった事は感謝しよう」

 

「なに、一冒険者として正しい選択をしただけじゃよ。ま、感謝するなら銀貨くらい恵んでくれても構わんぞ?」

 

 パチパチと焚き火の柔らかな光が暗い空間に三人の影を浮かび上がらせる中、リカルドの呆れを多分に含んだ声とリュウールの快活な声が響き渡りそれに疲れた様子のアルトが苦笑いを浮かべる。現在、彼らはリュウールに拉致される形で移動してきた場所で一夜を過ごしているのだがその場所に大きな問題が抱えていた。

 

「だが、何故森の中にある洞窟で過ごさなきゃならない?」

 

 そう、今彼らがいる場所は人が街を作る様になってから立ち寄ることのなくなりモンスターの棲家となり易い洞窟なのだ。リカルドの敬語が完全に消え去っている辺り、彼の苛立ちを押し測るべきだろう。

 

「借金取りがうるさくてのぅ……必ず返すと言うておるのにわらわらと現れる。故に、洞窟なら来ないと呼んでじゃな、これが大当たり!ギルドで報酬を得てから返すという流れが完璧になったのじゃよ」

 

「……この真性のダメ人間が……」

 

「ハッハッハ!褒めても何も出んぞい」

 

「アルト、俺は寝る。あとは任した」

 

「えぇっ!?」

 

 日頃の疲れに加えてリュウールのあまな駄目っぷりにいよいよダウンしてしまったリカルド。アルトの素っ頓狂な悲鳴を聞きながら横になりそのまま寝息を立て始めてしまった。

 

「お主の師匠は図太い精神の持ち主じゃのう」

 

 クスクスという効果音が付いてそうな笑みを浮かべながらリカルドを見つめるリュウール。彼女本人はお気楽そのものの態度を取っているが、どうやら自分が振り回している事を自覚しているらしく文句こそ言え、寝息を立てている男を面白く感じている様だ。

 

「そうですね……まさか、ここで全投げされるとは思ってませんでしたけど」

 

「なんじゃ、お主も苦労しておるのか?」

 

「まさか。先生の所に居ると選んだのは私自身の意志です。色眼鏡なしで、私を見てくれますし仕事も信頼の上で任せてくれます。ですから、楽しい思いや感謝する思いはありますが、苦労なんてしてませんよ」

 

 焚き火に照らし出された洞窟の外を見つめながらアルトは自身の思いを語る。大切な宝物に触れる様に優しく、それでいて弾んだその声は内容よりも何よりもアルトがリカルドに向ける信頼を表していた。恥じらいの感情が一切無いその姿は純粋な本心である事の証左だろう。

 

「……ふむ。なるほどのぅ、エルフの割に夜に映える金の瞳をしておると思ったがお主そういう事か?」

 

 エルフとは森に生き、日が昇ると起きて月が昇る頃に眠る種族である。彼らは、その性質故か夜目はさほど効かず総じて空の青や草木の緑と言った瞳をしているのが特徴的だ。アルトの様に金色というのは異質と言えるだろう、何故ならその色は──エルフとは対極に位置する魔性の色とされているのだから。

 初めて、アルトがリュウールを見た。金色に輝くその瞳は焚き火の光に霞む事なく、その存在感を主張しまるで月の様であった。

 

「流石はドワーフですね。エルフとの交流が盛んなだけはあります」

 

「嫌味かそれは。まぁ、喧嘩するほど仲が良いとは言うかもしれんのぅ」

 

 ケラケラと笑うリュウールと、薄く微笑むアルト。両者の間に剣呑な空気が流れ、パチっと焚き火の火が跳ねるのを合図にアルトが近くに置いておいた弓矢を手に取り、射る。

 

「がっ……な、何故…」

 

 但し、的となる相手は剣呑な空気を放っていたリュウールではなく洞窟の外に短剣を構えて控えていた男だった。男は一切の明かりなく、彼女らの元に忍び寄っていたにも関わらず自分の肩目掛けて真っ直ぐに飛来してきた矢に驚きを隠せない様だ。もっとも、男が襲撃が失敗に終わり逃げるという判断を下していたとしても直後に全身が痺れた為に何も出来なかったのだが。

 

「……」

 

 静かに次々とアルトの矢が射られ暗闇の向こうからは短い悲鳴と崩れ落ちる音だけが聞こえて行き、焚き火に照らされる場所まで辿り着いたのは馬の召喚獣によって咥えられた男一人だけだった。両腕を上げて項垂れている為に敵意はないのだろう。

 

「久しぶりじゃのぅ。先日は、たっぷりと酒を飲ましてくれて感謝するぞ」

 

「ハハッ……なら、見逃してくれませんかねぇ」

 

「それとこれは話が別じゃ。信賞必罰、罪には罰を与えねばこの世は成り立たん。そうじゃろう?弁護士殿」

 

 扇子で口元を隠しながらしなやかに流れる様に目を細め、寝ていたリカルドの方を見る。

 

「そうだな。それをお前に言われるとは思わなかったが。

 さて、貴方が違法にリュウールさんに金を貸し出し必要以上に回収する所謂、詐欺の疑いでギルドに報告しますが構いませんね?」

 

 立ち上がり、証拠となる借用書を見せつけると男は観念した様に溜息を吐き自らの罪を認めた。仮にこの場で借用書が嘘であると明言したところで寝泊まりをしている彼らを襲うつもりであった事は痺れている部下達や彼本人の身体を探り、武器の一つでも出てくれば傷害未遂として罪に出来る。そうなれば、拘束され詐欺を行なっていたことも明るみに出るのを理解している様だ。

 

「……一つ、聞かせてほしい。何故、我々の襲撃に気がついた?」

 

 男の記憶が確かならリュウールに拉致される様な形でこの場所に連れて来られた筈だ。なら、自分達の事を調べ探る時間も無かっただろうにここまで完璧に対処されてしまった。そのカラクリが気になった。

 

「まぁ色々とあるが、そうだな確信を得たのは弟子が外をずっと眺めていたからだ。遠目じゃ分からないだろうが、警戒している素振りも見せていたしな」

 

 アルトが外を見ていた事、休憩するには邪魔となる位置にずっと弓矢を置いていた事。そして、襲撃するには好都合の良い人気のない洞窟とくればそれくらいの予想は出来ると。何せ連中は単純で、いくら金を回収する為に脅すとは言えギルドまで押し掛ける考え無しなのだから。

 

「……酒飲みなどいい鴨だと思ったんだがなぁ……」

 

「それは否定しないな」

 

「酷いのぅ……」

 

 頭目が諦めたからか、アルトの麻痺毒が効いていたのか率いられていた者たちも容易く拘束を受け入れ次の日には纏めて警察組織へと突き出す事となり、リュウールが背負った莫大な借金は無事に白紙へと戻る事になったのだが……人間、性根はそう簡単に変わらずそして賭博とは運の要素が大きいものであった。

 

「……」

 

「……」

 

「その……沈黙は……やめて欲しいのぅ。主ら、顔が良いから睨まれると迫力がじゃな……」

 

 一週間後、リカルド達の事務所には再びリュウールの姿があった。但し、今度は着物を着ておらずギルド職員指定の制服を着ていた。ここに至る敬意として今度は正規の法に則った賭博で敗北しそのまま借金を背負った結果、いつ死んでもおかしくない冒険者稼業を一時中断させられギルドで稼げと命じられたとの事だ。借金した金はギルドが代わりに支払っている為に給料から自動的に引かれていく仕組みとなっている。

 

「はぁ……ギルドが干渉するって事は相当だろう。お前、幾ら借金したんだ?」

 

「……ざっと金貨三桁くらいは……」

 

 金貨三桁もあれば、王国の一等地に一軒家を建てるぐらいは出来るその金額にリカルドもアルトも目眩を覚える。さしものリュウールも、盛大に目が泳いでおりなんとも情けない表情だ。

 

「……アルト、お前はこうなるなよ」

 

「えぇ。気をつけます、落ちぶれたくないですし」

 

「本人も目の前にズカズカ言ってくれるのぅ!?」

 

 ヨヨヨ……と崩れ落ちるリュウールに揃ってため息を吐いた後に顔を見合わせる二人。言いたい事は沢山あるが、今はまぁ置いておこうと視線で会話をしリカルドは自らの席に、アルトは簡単にコーヒーを淹れて全員に配る。

 

「改めて挨拶しておこう。ギルド、専属冒険者弁護士のリカルドだ」

 

「その弟子のアルトです」

 

「リュウール・ドレ。貴女は本日から、我が事務所の雑務兼会計役となる。……色々と心配だが、新たな仲間としてよろしく頼む」

 

 僅かに微笑むリカルドと明るい笑顔を浮かべるアルトを見ながらリュウールは立ち上がり、リカルドの前に立ち差し出された手を取る。

 

「うむ、よろしく頼むぞ所長」

 

「あぁ。それと、此処に所属している間は賭博などさせないからそのつもりで」

 

「嘘じゃろぉ!?」

 

「金を返し切るまで我慢しろ」

 

 こうして、新たな仲間としてリュウール・ドレが仲間に加わりより一層事務所は賑やかになるのだった。




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