元帝王はありふれた世界で暴れまくる   作:紙の子

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第10話

王牙達は現在オルクスの最奥にある反逆者の住処にいる。

 

100層に到着した3人。

扉を開けて中に入ると4本の首の蛇、ヒュドラが魔法陣から現れる。

本来ならハジメとユエの2人に任せようと考えていた王牙だったが、2人のイチャイチャ姿を見てイライラした王牙は出て早々にヒュドラを圧殺した。

 

ヒュドラを倒すと奥の扉が開き中に入る。

 

まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず〝太陽〟と称したのである。

 

次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

取り敢えず一階から見て回る。暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレを発見した。どれも長年放置されていたような気配はない。人の気配は感じないのだが……言ってみれば旅行から帰った時の家の様と言えばわかるだろうか。しばらく人が使っていなかったんだなとわかる、あの空気だ。まるで、人は住んでいないが管理維持だけはしているみたいな……

 

王牙とハジメとユエは、より警戒しながら進む。更に奥へ行くと再び外に出た。そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。どこの世界でも水を吐くのはライオンというのがお約束らしい。

 

「まんま、風呂だな。こりゃいいや。何ヶ月ぶりの風呂だか」

「や、やっと体が洗えるよ〜」

 

思わず頬を緩めるハジメ。最初の頃は余裕もなく体の汚れなど気にしていなかったハジメだが、余裕ができると全身のカユミが気になり、大層な魔法陣を書いて水を出し体を拭くくらいのことはしていた。

 

そんなハジメを見てユエが一言、

 

「……入る? 一緒に……」

 

「……一人でのんびりさせて?」

 

「むぅ……」

 

素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿に、一緒に入ったらくつろぎとは無縁になるだろうと断るハジメ。ユエは唇が尖らせて不満顔だ。

 

二階は殆どの部屋が封印されており入れない。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

 

しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……

 

「……怪しい……どうする?」

 

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。

 

「ハジメ、お前が乗れ。ユエは準備だけしておけ」

 

ハジメは魔法陣へ向けて踏み出した。そして、ハジメが魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

やがて光が収まり、ハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

 

中央に立つ王牙の眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

 

 

 

 

 

 

そうして始まったオスカーの話は、俺様が聖教教会やリリィで教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は〝神敵〟だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、〝解放者〟と呼ばれた集団である。

 

彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか〝解放者〟のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。〝解放者〟のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

彼等は、〝神域〟と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。〝解放者〟のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、〝解放者〟達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした〝反逆者〟のレッテルを貼られ〝解放者〟達は討たれていった。

 

最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。

 

「……なるほどなぁ」

 

「壮大な話を聞いたね……」

 

 

 

「と言ってもエヒトはこの世に居ないがな」

 

『えっ?!』

 

突然の発言にハジメとユエは驚きの顔をする。

それはそうだ。エヒトは俺様が転移される前に殺したからだ。

 

「ま、気にするな。それよりもだ。俺様達が元の世界に帰るには神代魔法が7ついるみたいだな」

 

「そうみたい……」

 

 

 

 

 

 

その後俺様は書庫に潜りこの世界の事や他の神代魔法に関して調べている。

ハジメはお風呂に、ユエはいつの間にか姿を消した。

多分ハジメの所だと思うが。

 

(……神代魔法は全部で7つ。生成、重力、再生、魂魄、昇華、変成、空間……これらを手にした時、帰る手段が見つかるかもしれない)

 

俺様は本を閉じて他の書籍に手を伸ばす。

それはどうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。

その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。

 

「……つまり。他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」

 

次のページにはその創設者が居るだろう場所が書かれていた。

よく思うと俺様は全ての神代魔法を手にしている……黙っておこう。

 

「当面の目標は迷宮攻略だな」

 

俺様は書庫から出てハジメが居るだろう風呂場に向かう。

別に男同士だし無言で入っても構わんだろうと扉を開ける。

 

「おーいハジメ。ちょいといい……」

 

俺様の目の前ではユエに押し倒され顔を真っ赤にしているハジメの姿が見える。

しかもユエは背中にタオルがかけてあるだけでハジメからだとユエ姿は丸見えだ。

俺様はゆっくり後ろに下がり

 

「避妊はしろよ〜」

 

「ま、待って王牙君!誤解だよ〜!!」

 

慌てて弁解しようとするがユエに馬乗りにされているせいで上手くいかない。

俺様はさっさと部屋を出て行った。

 

 

 

 

隠れ家で暮らしてから1週間、その間にハジメとユエの訓練の為と王牙がオスカーが設計したゴーレムを改良して”プロトゼロ”を制作。

手始めにと50層の魔物を相手にすると瞬殺した。

その後は2人の訓練相手にして経験値を上げる。

 

ハジメはユエの魔法に魔力消費が激しいと思ったのかユエに〝魔晶石シリーズ〟と名付けたアクセサリー一式を贈ったのだが、そのときのユエの反応は……

 

「……プロポーズ?」

 

「なんでやねん」

 

ユエのぶっ飛んだ第一声に思わず関西弁で突っ込むハジメ。

王牙は腹を抱えて高笑いしている。

 

「それで魔力枯渇を防げる。 今度はきっとユエを守ってくれるだろうと思って……」

 

「……やっぱりプロポーズ」

 

「いや、違うから。ただの新装備だから」

 

「……ハジメ、照れ屋」

 

「……最近、ユエが人の話聞かないよ?」

 

「……ベッドの上でも照れ屋」

 

「止めて!? そういうのマジで!」

 

「ハジメ……」

 

「はぁ~、何?」

 

「ありがとう……大好き」

 

「……うん」

 

「なぁ〜そう言うの2人っきりの時にしてくれないか〜?」

 

「王牙君……少し黙ってて」

 

「はいはい〜」

 

王牙は笑いながら三階の魔法陣を展開する。

 

「さ〜て!ここから出たら俺様達は異端者だ。下手したら指名手配なんてのも有り得る。覚悟は出来てるな?」

 

「うん!」

 

「ん……」

 

「俺様達の目的はこの世界から帰還。例えクラスのアイツらが敵になろうと俺様は殺す。その覚悟はあるな?」

 

「勿論」

 

「……私も」

 

3人は魔法陣に乗り、光に包まれる。

 

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