元帝王はありふれた世界で暴れまくる   作:紙の子

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第11話

 

王牙とハジメがオルクス大迷宮の訓練中に奈落に落ちた事を報告したメルド、更には光輝が無断で王牙に攻撃した事について話をすると

 

「紅月は俺達を騙して魔人族と結託していたに違いない!

皆も見ただろ、あの禍々しい姿を!」

 

光輝は王牙が魔人族と同盟を組んだと言い、ハジメは王牙に操られて落ちたと言い訳をする。

光輝の言葉を丸呑みしたイシュタルは口を開く。

 

「では紅月王牙を異端者と認定します」

 

イシュタルの発言に教皇や国王までも賛同する。

 

 

 

 

 

 

「参ったわね……」

 

「雫ちゃん」

 

宮殿から自室に戻った香織と雫は今度どう行動すべきか悩んでいた。

 

「香織……私は力をつけてここから出るわ」

 

「雫ちゃん?!」

 

 

「もう我慢の限界よ、それに香織もそうでしょ!王牙が異端者にされて辛いでしょ?」

 

「…うん……」

 

「もちろん今すぐとは言わないわ。この先もっと強い魔物が現れる。ある程度力をつけてからここを出ましょう!」

 

雫の決意に香織は少しだけ安心した表情を浮かべる。

そして二人は明日からの訓練に備えるべく眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まると景色はまだ洞窟の中だった。

 

明らかに地上に出る魔法陣と思っていたハジメは残念がっていた。

 

 

「…どうやらここを進めば地上みたいだな」

 

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

 

「そうか。確かに。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」

 

 

そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと恥じるハジメ。頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、ハジメもユエも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

 

そしてオスカーの骨に置かれていた指輪が反応し正面の扉が自動で開く。

 

近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。

 

 

 

 

 

 

地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 

【ライセン大峡谷】と。

 

 

王牙達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々と暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

 

 

「……戻って来たんだ……」

 

 

「……んっ」

 

 

二人は、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、そして思いっきり抱きしめ合った。

 

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

 

「んっーー!!」

 

 

小柄なユエを抱きしめたまま、ハジメはくるくると廻る。しばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。

「はぁ…目の前に魔物がいるのによく笑ってられるなぁ」

 

 

イチャ付いている2人を無視して王牙はハジメが造った超電磁砲”ジェノサイダー”で恐竜もどきの魔物を倒していく。

 

 

しかしあまりにも弱いので王牙は首を傾げる。

 

 

「……どうしたの?」

 

 

「ん?、あまりにあっけなかったんでな……ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かと思って」

 

 

「王牙が化物なんだよ」

 

 

「ひでぇ言い様だな。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」

 

 

そう言って肩を竦めた王牙は、もう興味がないという様に魔物の死体から目を逸らした。

 

 

「さて、この絶壁、飛ぼうと思えば飛べるが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

 

「……なぜ、樹海側?」

 

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

 

 

「あぁ〜確かに」

 

 

王牙とハジメは、右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。颯爽と跨り、後ろにユエが横乗りしてハジメの腰にしがみついた。

 

 

 

 

 

 

しばらく魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

 

 

魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。

 

 

だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。

 

 

王牙は魔力駆動二輪を止めて胡乱な眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

 

「…なんだあれ?」

 

 

「……兎人族?」

 

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

 

 

「……聞いたことない」

 

 

「じゃあ、あれかな? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

 

 

「……悪ウサギ?」

 

 

それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊し王牙達に届く。

 

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

 

 滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、ハジメ達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。

 

 

「いいのかハジメ?大好きなウサミミが目の前で助けを求めてるぞ〜」

 

 

王牙はニヤニヤしながらハジメに問いかける。

 

すると後ろに抱きついているユエがムッとハジメを睨んでいる。

 

ハジメはどうしたらと焦っている。

 

 

双頭ティラノが逃げるウサミミ少女の向かう先に王牙達を見つけ、殺意と共に咆哮を上げた。

 

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

 

それに敏感に反応するハジメ。

 

 

 

「煩いな!少し黙れ!!」

 

ハジメはドンナーを構えて双頭ティラノを狙い撃つ。

 

聞いたことのない乾いた破裂音が峡谷に響き渡り、恐怖にピンと立った二本のウサミミの間を一条の閃光が通り抜けた。そして、目前に迫っていた双頭ティラノの口内を突き破り後頭部を粉砕しながら貫通した。

 

 

一瞬、ビクンと痙攣した後、ティラノはあまりに呆気なく絶命し、地響きを立てながら横倒しに崩れ落ちた。

 

 

その振動と音にウサミミ少女が思わず「へっ?」と間抜けな声を出し、おそるおそるハジメの脇の下から顔を出してティラノの末路を確認する。

 

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

 

ウサミミ少女は驚愕も顕に目を見開いている。どうやらあの双頭ティラノは〝ダイヘドア〟というらしい。

 

 

「んで?お前は誰だ?」

 

 

王牙の質問にウサミミは我に戻り

 

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

 

なかなかに図太かった。

 

 

 

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