元帝王はありふれた世界で暴れまくる   作:紙の子

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第12話

シアは元々は家族とこの樹海を旅していたが、帝国軍に見つかり家族は捕まりシアだけは何とか逃れたらしい。

 

 

「…なるほどなぁ…」

 

 

「お願いします!助けてくれるなら私で出来る事は何でもします!」

 

 

シアは自分の身を犠牲にしても囚われた家族を助けたいみたいだ。

俺様は別に興味が無いのでハジメに任せようと視線を向けた。

ハジメもどうしたものかと悩む。

目の前に生のウサミミ美女がいる。

しかしハジメにはユエが既にいる。

ハジメの視線に気付いたシアは失言を発する。

 

 

「で、でも! 胸なら私が勝ってます! そっちの女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

 

 

〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟

 

 

 

峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊する。恥ずかしげに身をくねらせていたユエがピタリと止まり、前髪で表情を隠したままユラリと二輪から降りた。

 

 

「あぁ〜…知らね」

 

 

俺様はこの後どうなるかの未来が見えたが面白そうだと見守る。

震えるシアのウサミミに、囁くようなユエの声がやけに明瞭に響いた。

 

 

 

……お祈りは済ませた? 

 

 

……謝ったら許してくれたり

 

 

………… 

 

 

死にたくなぁい! 死にたくなぁい!

 

 

「〝嵐帝〟」

 

 

 

アッーーーー!! 

 

 

 

突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に

打ち上げられるシア。彼女の悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、グシャ! という音と共に俺様達の眼前に墜落した。

 

 

まるで犬○家のあの人のように頭部を地面に埋もれさせビクンッビクンッと痙攣している。完全にギャグだった。その神秘的な容姿とは相反する途轍もなく残念な少女である。ただでさえボロボロの衣服? が更にダメージを受けて、もはやただのゴミのようだ。逆さまなので見えてはいけないものも丸見えである。百年の恋も覚める姿とはこの事だろう。

 

 

ユエは「いい仕事した!」と言う様に、掻いてもいない汗を拭うフリをするとトコトコとハジメの下へ戻り、二輪に腰掛けるハジメを下からジッと見上げた。

 

「……おっきい方が好き?」

 

 

「え、えぇっと……」

 

 

「…ウサミミ好き?」

 

 

「……」

 

 

「……んっ、なら良い」

 

 

ハジメが答えないので、ユエは少し不満そうに唇を尖らせて、無造作にハジメの腕を取り自分の胸に押し当てた。

むにゅっと形を変えるユエの豊満なバスト。

ちなみにユエは無いわけでない着痩せするタイプである。

それを腕越しに感じ、ハジメの頬が僅かに赤くなる。

 

 

「……おっきい方が好みなの?」

 

 

「……別に、そういうわけじゃ無いけどさ」

 

 

ハジメは気まずそうに目を逸らすが、ユエは気にせずハジメを見つめ続ける。

 

 

「……ウサミミ…すきなんだよね?」

 

 

 

「いや、まぁ……嫌いではないよ?」

 

 

「……どっち?」

 

 

何と答えても地雷を踏み抜きそうな気がして、ハジメは話題を変えることにした。

 

 

「…うわぁ…本気でゾンビみたい。頑丈とかそう言うレベルを超えている気がするんだけど……」

 

 

「……………………ん」

 

 

いつもより長い間の後、返事をしてくれたことにホッとしていると、ズボッという音と共にシアが泥だらけの顔を抜き出した。

 

 

「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに……」

 

 

涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明なことを言いながらハジメ達の下へ這い寄って来た。既にホラーだった。

 

 

「おいシア。今場面って言ったな?それはどう言う事だ?」

 

 

「え? あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

 

シアの説明する〝未来視〟は、彼女の説明通り、任意で発動する場合は、仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだ。これには莫大な魔力を消費する。一回で枯渇寸前になるほどである。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わず、シアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動する。これも多大な魔力を消費するが、任意発動程ではなく三分の一程消費するらしい。

 

 

「そんなすごい固有魔法持ってて、何でバレたんだよ。危険を察知できるなら帝国軍の連中にもバレなかったんじゃないか?」 

 

 

俺様の指摘に「うっ」と唸った後、シアは目を泳がせてポツリと零した。

 

シアの反応に俺様とハジメは納得した。

 

 

「はぁ…今回の1件はハジメに任せる」

 

 

「えっ?!ぼ、僕?!」

 

 

「助けたいんだろ?別に興味はないが面白そうだから付き合ってやる」

 

 

「……分かったよ」

 

 

俺様の言葉に溜息を吐きつつ、ハジメはシアの前にしゃがみ込む。

そして、シアに向かって手を伸ばし、一言だけ告げた。

 

 

「と言うことでまずは樹海を抜けるのに案内してもらっていい?」

 

 

ぐしぐしと嬉し泣きするシア。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。

 

 

「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それで3人のことは何と呼べば……」

 

 

「ん? そう言えば名乗ってなかったね…僕はハジメ。南雲ハジメだ」

 

 

「……ユエ」

 

 

「紅月王牙」

 

 

「ハジメさんにユエちゃんに……王牙さんですね!」

 

 

三人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、ユエが不満顔で抗議する。

 

 

「……さんを付けろ。残念ウサギ」

 

 

「ふぇ!?」

 

 

ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。

 

 

「ほれ、取り敢えずシアは後ろに乗れ」

 

 

「は、はい!」

 

 

「…ハジメ。王牙の後ろに乗っていい?」

 

 

「えっ?!う、うん」

 

 

ユエは俺様の後ろに乗り、シアはハジメの後ろに座る。

 

何故ユエが俺様の後ろに乗ったのかは数日後に分かることをこの時は知らなかった。

 

 

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