ハジメとシアは観光地でデートをしている。
王牙、ユエ、ティオの3人は別行動して買い物をしている。
王牙は買い物袋を両手に持つも何か真剣な眼差しで考えている。
ティオよりも長く王牙と共に居たユエは王牙が何かを考えている事に気付き声をかける。
「…昨日の話が気になる?」
「あぁ…」
それは昨日の事。
イワンと話を終えて宿に向かおうとした時にだった。
「そう言えば君たちはウルの街は行ったかね?」
「あぁ。と言ってもすぐに出てウィルを助ける為に山に向かったが」
「なるほど。実は先程ウルが壊滅したと言う報告があってな」
俺様達は顔を見合わせる。
「…壊滅した理由は?」
「…約6万の魔物の襲来だ」
王牙は誰の仕業なのか理解した。
「…なるほどなぁ。ティオを催眠したと言う黒魔術師の仕業か」
「しかし、その黒魔術師は何が目的でウルを?」
イワンは何故ウルが襲撃を受けたのか理解していない。
するならハイリヒ王国やフューレンを狙う方が資材や奴隷も手に入る。
「勇者の連れと…豊作の女神が目当てだろう。
後は…魔人族に操られた馬鹿な勇者の連れだろう」
「…理由を聞いても?」
イワンは未だに理解していないので王牙は席に座り説明する。
「理由は簡単だ。
豊作の女神…畑田愛子の天職による植物の成長能力、どれだけ汚い汚染場所でもアイツが居れば真緑の自然な場所に早変わりだ。
多分魔人族は食糧難なんだろうな。
だから豊作の女神がいるウルを狙った」
「…ではもうひとつの魔人族に操られた方は?」
「俺様達と一緒に来たやつに闇魔法が高い男が1人居た。
どうせ魔人族に『君が豊作の女神を捕まえ街を壊滅させたら勇者の称号を与えよう』と唆され裏切って魔人族の操り人形にされたんだろう」
「…………」
イワンは無言になる。
「まぁ、俺様はあの街や住民がどうなろうと関係ねぇ。俺様に刃を向けたんだからな。
アンタも気をつけな。後ろ盾してくれるだけ感謝するが、俺様に刃を向けた場合即座にこの街を壊滅させるから」
王牙は殺気を飛ばしながら警告し、部屋を出ていく。
「さて、どうしたものかなぁ〜俺様は興味ねぇから生きていたとしても助ける気はねぇし」
「…いいの?」
「そもそも俺様嫌われてたみたいだからな」
ドカァァァン!!!
すぐ近くの建物の壁が破壊され、そこから二人の男が吹き飛んできた。男達は悲鳴も無く地面に着弾し、そのまま顔面で地面を削りながら数メートル先で漸く停止する。ピクリとも動かず、まるで屍の様……というより本当に屍だった。
更に、同じ建物の窓を割りながら数人の男が同じ様にピンボールの様に吹き飛ばされてくる。その建物の中からは壮絶な破壊音が響き渡っており、その度に建物が激震し外壁が罅割れ砕け落ちていく。
そして十数人の男がとてもお見せ出来ない状態か手足を奇怪な方向に曲げたまま絶命して表通りに並ぶ頃、遂に建物自体が度重なるダメージに耐えられなくなった様で、轟音と共に崩壊した。
野次馬が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らす様に距離を取る中、王牙、ユエとティオは聞きなれた声と気配にその場に留まりつつ、呆れた表情を粉塵の中へと向けた。
「あれ?」
「あれ? ベリアルさんにユエさんとティオさん? どうしてこんな所に?」
「それはこっちのセリフだ。随分と激しいデートだな」
二人はデートに出かけた時の格好そのままに、シアは武器を携えてユエ達のもとへ寄って来た。可愛らしい服を着ていながら、肩に凶悪な戦鎚を担ぐシアの姿はとてもシュールだ。
「あはは。私もこんなデートは想定していなかったんですが、成り行きで……。ちょっと人身売買している組織の関連施設を潰し回っていまして……」
「……成り行きで裏の組織と喧嘩?」
呆れた表情のユエにシアが乾いた笑いをする。王牙がどういう事かとハジメに事情説明を求めて視線を向けた。
「まぁ、丁度人手が足りないから。説明するから手伝ってくれないか?」
地面に転がる男達を通行の邪魔だとでも言う様に、王牙は壁際に蹴り転がし説明を聞くことした。
「それで指定の場所に行ったがミュウってガキはいなかったと?」
「うん。それにシアだけでなくユエやティオも誘拐しようと計画していたみたい」
「それで?ミュウって言うガキを救出すればいいのか?」
「うん。だけど組織自体の数が多いからどこにいるか分からないんだ」
「しゃあねぇ。ハジメとユエ、シアとティオ、俺様の3組で手分けして探すぞ。何か分かれば念話で繋げいいな」
ハジメとシアで別れたのは、ミュウを発見した場合に顔見知りがいた方がいいと考えたからである。
納得した4人はそれぞれ別れて捜索を始めた。